IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第210話 二つの首輪

 目覚めてから約一か月、俺はあてがわれた個室に引き籠っていた。

 当時警察病院に入院していたけど、それでも事情を知らない誰かに見られるとまずい。そんな訳ありの患者、病院側も対応が大変だっただろう。

 病院の個室に引き籠った俺は特にやることもない。最低二日に一回は師匠、簪、シャルロットの誰かしらが見舞いにやって来る。当時の暇つぶしは師匠たちが持ってきてくれる小説や漫画を読んで過ごすことだった。

 だから、そのとき俺はちょっと不審に思っていた。それまで二日に一回のペースで来ていた三人が四日ほど顔を見せなくなっていた。

 そして前回来てから五日目の昼過ぎ、そろって制服姿でやって来た三人の表情で、俺は全てを察した。

 

『……………』

 

「……………」

 

 三人は難しい顔をして黙って立っていた。その顔は何か大きな覚悟を決めたような顔だった。

 

「その顔は……ついに決まったんですね、俺の処遇が。思ったより早かったですね」

 

 俺は努めて明るく言うが三人の表情は晴れない。

 

「それで?どうなりました?」

 

 俺の言葉に三人は顔を見合わせ、代表するように師匠が一歩前に出る。師匠の手には銀のアタッシュケースがあった。

 

「五日前、正式に颯太くんの処遇が決定したわ」

 

「五日前?なんで決まってすぐに知らせなかったんですか?」

 

「いろいろと準備があったのよ」

 

 言いながら師匠はベッドわきの棚兼テーブルにアタッシュケースを置き、椅子に座る。

 

「颯太くん、あなたの行ったこの一連の事件、騒動は世界中に大きな影響を与えた。おかげで今世界中大騒ぎ。それは覆しようのない事実よ」

 

「ですね」

 

「あれだけの騒動を引き起こした張本人がいまだ生きている、と言うのは世界に与える影響が多すぎる。でも、あなたの置かれていた状況、また、この騒動で得た利益が多大にあったことも事実として加味し――」

 

 師匠はそこで言葉を区切り

 

「それでも、やはり今後のためにも、〝井口颯太〟にはこのまま死んでいてもらう方がいいという結論になったわ」

 

「……そうですか」

 

俺は一瞬師匠の言葉を受け、にっこりと微笑む。

 

「まあそうなるだろうと思ってました。その方がいろんな方面で面倒がないですしね」

 

「「颯太……」」

 

 明るく言う俺に簪とシャルロットが呟くように俺の名前を呼ぶ。

 

「そんな顔すんなよ。本当なら一か月前に俺は死んでたはずだったんだ。それがちょっと遅くなったってだけだ」

 

 俺の言葉に二人は押し黙る。

 

「それで?いつなんですか、俺が死ぬのは?」

 

「さぁ?まあ平均寿命まで生きたとしてあと60年後じゃない?」

 

「………………ん?」

 

 俺は師匠の言葉に一瞬理解が遅れる。

 

「え?でも〝井口颯太〟は死んでいてもらう方がいいんですよね?」

 

「そうよ。だから今朝颯太くんの死亡が公式に世界中に発表されたわ」

 

「……でも俺生きてますよ」

 

「そうね、生きてるわね」

 

「……………えぇ~!?おかしくねぇ!?」

 

「何が?」

 

「何がって!!えぇ~!?おかしくねぇ!?」

 

「どこが?」

 

「どこがって!!えぇ~!?おかしくねぇ!?」

 

「誰が?」

 

「誰がって!!えぇ~!!?あっれぇ~!!?」

 

 師匠、簪、シャルロットの言葉に俺はわけがわからないまま三人の顔を見回す。

 

「なに?何がわからないの?」

 

「何もかもですよ!」

 

 師匠の言葉に俺は叫ぶ。

 

「え?だって、今朝に井口颯太の死亡が公式に発表されたんですよね?」

 

「そうよ」

 

「でも俺生きてますよね?」

 

「そうね」

 

「………え~っと、それってつまり」

 

 俺はだんだんと師匠たちの言いたいことを理解し始める。

 それを察したように師匠が優しく微笑む。

 

「そう。〝井口颯太〟は今日をもって死亡。颯太くんにはこれから、全くの別人に生まれ変わってもらうわ」

 

「やっぱりそういうことかちきしょう!」

 

 師匠の説明に俺は頭を抱える。

 

「それ、別人になっても結局俺に自由はないんでしょ?」

 

「そうね。あなたにはこれから国連預かりとして働いてもらうことになるわね」

 

「ちなみに拒否権は?」

 

「ないし、もしそれでも拒否すればその残りの60年の人生をもっと自由のない牢屋の中で過ごすことになるでしょうね」

 

「だと思いましたよ」

 

 俺は大きくため息をつく。

 

「でも、いいんですか?いくら国連預かりって言っても俺を野放しにして」

 

「もちろん野放しにはしないわ。颯太くんにはこれを着けてもらう」

 

 言いながら師匠はテーブルのアタッシュケースを開ける。中には黒っぽい輪っかが一つ入っていた。

 

「……なんですかこれ?」

 

「これはね、ここをこうしてね……」

 

 言いながら師匠が操作するとそのリング正面の赤い長方形部分がカシャリとずれ、反対側が外れる。

 

「で、これを――」

 

 と、アタッシュケースからそれを取り出した師匠が簪とシャルロットに視線を送り

 

「「っ!」」

 

「ちょっ!?」

 

 瞬時に動いた二人にベッドの上に座っていた俺は両脇から押さえつけられる。

 

「は~い、動かないで~」

 

「え!?まっ!?」

 

 警戒していなかったせいで上手く押さえつけられた俺は抵抗むなしく二人を振りほどけないまま、師匠はゆっくりとそのリングを俺の首に取り付ける。

 カチリと音がして首に軽い圧迫感が。どうやらそれはチョーカーだったようだ。

 首にぴったりと張り付くように取り付けられたチョーカーを外そうと試すが取れる気配がない。

 

「な、何なんですかこれ!?外してくださいよ!」

 

「ごめん無理」

 

 師匠に言うが師匠は困ったように笑う。

 

「それね、GPS内蔵の特殊チョーカーなの。24時間365日颯太くんの居場所を送信し続けるわ。まあそれだけじゃないけど」

 

「それだけじゃないって……?」

 

「う~ん、なんといったものか……」

 

 師匠は少し考えこみ、何か閃いたようにハッとする。

 

「ねぇ颯太くん、颯太くんって新劇場版エヴァ○ゲリヲンQって見た?」

 

「あ、理解しました」

 

 師匠の言葉に言わんとすることを理解した俺は

 

「って!なんてもの着けてくれてんですか!?」

 

「しょうがないでしょ。それを着けることが颯太くんを生かす条件の一つなんだから」

 

「だとしても何の説明もなしに――ってちょっと待ってください、いま条件の一つって言いました?」

 

「じゃあその首輪の詳しい説明だけど――」

 

「え?スルーっすか?」

 

「そのチョーカーはGPSで颯太くんの居場所を常に送信すると同時にもしも颯太くんが国連の監視下から離脱した場合、リモコン操作でスイッチを入れると……」

 

 言いながら師匠は右手を爆発させるようにパッと開き、口パクで「バァン!」と言う。

 

「まあもちろん世界中どこにいてもってわけじゃないわ。颯太くんとスイッチとの距離が離れてたら作動しない」

 

「ですよね」

 

「だからその物理的な首輪の他にも、颯太くんにはもう一つ別の首輪を用意されたわ」

 

「は?別の?それってどんな……?」

 

「それはね……」

 

 言いながら師匠はいまだ俺の両脇に立つシャルロットと簪に視線を向ける。

 

「……ちょっと待ってください」

 

 俺はその視線に嫌な予感がする。

 

「颯太くんに取り付けた別の首輪――」

 

「待ってください」

 

「それはね――」

 

「待ってくださいよ!」

 

「私たち三人よ」

 

「っ!」

 

 俺は自分の最悪の予想が当たってしまったことに唇を噛む。

 

「ふざけないでください!なんですかそれ!?冗談じゃない!そんなものなくたって俺は裏切ったりしませんよ!」

 

「そうでしょうね」

 

「それは僕たちもよくわかってる」

 

「でも、国連や上の大人は、その言葉を信じてはくれないの……」

 

 俺の叫びに三人が答える。

 

「それに、これは強制じゃないの。私たちが嫌だといえば却下されていたわ。最終的には私たち自身が考えたうえで了承したわ」

 

「だったら今からでも遅くない!すぐに連絡してやめるべきです!」

 

「無理よ」

 

「どうして!?」

 

「だって……」

 

 言いながら師匠が、そして二人もゆっくりと制服の上二つほどボタンを外し開く。

 

「それは……!」

 

 三人の首には俺のものと同じチョーカーが着けられていた。

 

「言ったでしょ?準備することがあるって」

 

「そんな………」

 

 俺は三人の首に着けられたチョーカーを茫然と見つめる。

 

「なんで……なんで三人が……」

 

「「「颯太(くん)……」」」

 

「悪いのは俺なのに……俺がやったことで、なんで三人が命かけなきゃいけないんですか!?」

 

 太腿を拳で叩きながら声を殺して言う俺。

 

「やっぱり俺はあの日あの場所で死ぬべきだったんですよ!なんであの日俺を生かしたんですか!?なんで三人がそうまでして俺を生かすんですか!?」

 

「「「……………」」」

 

 俺の言葉に三人は顔を見合わせ優しく微笑む。

 

「確かに颯太くんからしてみたらそうかもしれない。それでも、私たちは颯太くんに生きていてほしい」

 

「それは――」

 

「そう。それは僕らのわがままだよ」

 

「でも、あの日死んでいたかったって言うのも、颯太のわがままだよ」

 

「っ!」

 

 三人の言葉に俺は息をのむ。

 

「颯太くんは私たちが命をかける必要はないって言うけど、私たちは颯太くんが生きていてくれるなら、それは自分の命を懸けるだけの価値があることなの」

 

「僕らは、まだまだ颯太と一緒にいたい。一緒にいてほしいんだよ」

 

「このまま死に別れたら、私たちは納得できない……」

 

 三人の真剣な視線に耐え切れず俺は俯く。それでも三人はそれを許さないとばかりにかがんで俺の顔を覗き込むように見てくる。

 

「私たち三人は颯太くんに助けられたし、あの時のことに責任を感じてるわ。だから、今度は私たちが颯太くんを助ける番よ」

 

「颯太が明日死ぬのなら僕らの命は明日まででいい」

 

「颯太が今日を生きてくれるなら、私たちも一緒に今日を生きるから」

 




颯太くんに真正面から思いをぶつけた三人。
完全に颯太くんの気持ち無視ですね。



さて、今回の質問コーナーです。
今回は一般有澤社員さんからいただきました!
「ロマンを感じる武装は下のうちどれですか?
もしくはそれ以外でロマンを感じる武装を教えてください
・大型のパイルバンカー
・大口径グレネードランチャー
・ガトリングレールガン
・機体全身に近接武器
・ユニコーンガンダムフルアーマ
・ノブリスオブリージュのレーザーキャノン
・ガンダムのズサ、打鉄弐式のような大量のミサイルポッド
・機動性を考えない重装甲と大火力(私の会社ですね)
完全に私の趣味ですね。「押しつけは……不味い……」(しゃ、社長ー!?)
分からなかったらご存じの武装だけでも大丈夫です」
と、いうことですが


私個人としてはパイルバンカーのような一発一発が強いけど使い勝手は悪い武装は好きですね。
それが一発決まるだけで戦況がいっきにひっくり返るような武器にはロマンを感じます。
あとは一定の方面に特化した武装とか。
なので何気に一夏の初期のころみたいな武装がブレードのみ、みたいなのとか胸熱ですね。


そんなわけで今回はこの辺で
次回もお楽しみに!
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