IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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続きだと思った方すみません。
息抜きに本編話数200話記念もかねてハロウィンの番外編です。
どうぞ!








番外編 IT~それを言ったら終わり~

「……うぅ……」

 

「切ちゃん……」

 

「ほら、もう泣き止めよ。もう着くから」

 

「大丈夫だよ、ハヤテさんに相談すれば何とかなるよ」

 

「何とかならなかったらどうするんデス!?」

 

 調、クリス、響たちに慰められながら歩く切歌は叫ぶ。

 今日は11月のとある日曜日。響、未来、クリス、切歌、調の五人はとある事情で相談をするべく朽葉ハヤテを訪ねて彼の事務所に向かっていた。

 

「ハヤテさんにはとりあえず行くことは伝えてあるんだし、きっと力になってくれるよ」

 

「でも!!」

 

「ほら、落ち着いて。お菓子でも食べて落ち着いたら?」

 

 と、未来が慰めながらポケットから棒付きキャンディ(イチゴ味)を取り出す。

 

「あ、ありがとうございますデス……」

 

 未来の差し出したそれを受取ろうと手を伸ばし

 

「「あっ!」」

 

 受け取り損ねた切歌の手から棒付きキャンディが滑り落ち、アスファルトの地面を転がり側溝の穴に落ちていく。

 

「あぁ!未来先輩にもらったキャンディが!」

 

 慌てて切歌はしゃがみ込み側溝の穴を覗き込む。が、その中は真っ暗で中を見ることはできない。

 

「うぅ……ショックデス……」

 

「未来先輩……新しいキャンディは……」

 

「ご、ごめん。さっきのしかなかったんだ」

 

 落ち込んでしゃがんだまま立ち上がらない切歌の様子に調が訊くが未来は申し訳なさそうに言う。

 

「その……切歌ちゃん、もう行こう?」

 

「ほら、アメならあたしが買ってやるから……なんならお菓子くらいあいつんところにあるかもしれねぇだろ?」

 

「デェス……」

 

 響とクリスに言われ、切歌がゆっくりと立ち上がる。と――

 

「お嬢ちゃんたち」

 

 どこからともなく声が聞こえる。

 みな周りを見渡すがあたりには自分たちの他に誰もいない。

 気のせいかと思い歩き出そうとした五人だったが

 

「お嬢ちゃんたち」

 

 再び声が聞こえる。

 

「だ、誰デスか!?」

 

「こっちだよ、お嬢ちゃんたち」

 

 声の主に問いかける切歌に返事が返ってくる。

 声の出所を探して見渡すと、声は足元、先ほどの側溝の穴から聞こえていた。

 

『……………』

 

 五人は顔を見合わせてゆっくりと穴を覗き込む。

 穴の中は相変わらず真っ暗で何も見えない。

 

「だ、誰デスか?」

 

 切歌が穴の中に呼びかけると――

 

「やぁ、お嬢ちゃんたち」

 

 ゆっくりと〝それ〟が顔を見せた。

 〝それ〟はボサボサの赤髪に赤い鼻、顔全面に白塗りの化粧をした、俗に言うピエロだった。

 

「おや?アイサツしてくれないのかい?」

 

 ピエロの言葉に切歌と調が首を振る。

 

「そんなに冷たくしないでよ。風船は好きかい?」

 

 言いながらにっこりと微笑みながら黄色い風船を取り出すピエロ。

 その風船に一瞬手を伸ばしかけた切歌だったが

 

「知らない人から物をもらっちゃいけないデス」

 

「マリアがそう言ってた……」

 

 切歌と調の言葉に他の三人も頷く。

 

「確かにその人の言うとおりだ。知らない人から物をもらっちゃいけないよ」

 

 少し考えるように顔をしかめたピエロは頷きながら言う。

 

「おいらはペニーワイズ。踊るのが大好きなピエロさ」

 

 ペニーワイズと名乗ったピエロはニッコリと微笑む。

 

「君は切歌ちゃんだね?さっきそう呼ばれていた。これでもう友達さ!そうだろう?」

 

「なるほどデス!」

 

「おい、そろそろ……」

 

「だね。そろそろ行かないと」

 

 納得したように頷く切歌の後ろでクリスと未来が言う。

 

「それじゃあペニーワイズさん、私たちはそろそろ行かないとデスから――」

 

「ダメだ!!」

 

 立ち上がろうとした切歌にペニーワイズが叫ぶ。

 

「これを忘れてるよ」

 

 言いながらペニーワイズはゆっくりとそれを差し出す。それは先ほど切歌が落とした

 

「さっきのキャンディ!」

 

「そのとおり!」

 

 響の言葉にペニーワイズが頷く。

 

「こっちにみんなでおいで。一緒においらと遊ぼうよ」

 

 キャンディを揺らしながら微笑むペニーワイズだが、五人は顔を見合わせるばかりだ。

 

「こっちにはわたあめもあるし楽しいことばかりだよ。風船もたくさんある。とても綺麗だよぉ~」

 

「でも、私たち行かないと……」

 

「今ならなんと、井口海斗の秘蔵写真もあげちゃうよ?」

 

「「「っ!?」」」

 

 ペニーワイズの言葉に切歌、調、響の三人が反応し身を乗り出す。

 

「ひ、秘蔵写真デス!?」

 

「い、いったいどんな……!?」

 

「気になるかい?」

 

 興奮した様子の切歌と調にニヤリと笑いながらもったいぶって言いよどむペニーワイズ。

 

「なんと…あの井口海斗の幼少期、小学校低学年の頃の写真さ」

 

「「「な、なんだって~(デ~ス)!!?」」」

 

 ペニーワイズの言葉に三人が驚きの声を上げる。

 

「いや、そんなもんなんでアンタが持ってるんだよ?」

 

「落ち着いて三人とも。きっと偽物だよ」

 

「本物さぁ~、嘘だと思うなら――」

 

 クリスト未来の冷静な言葉をにこにこと否定するペニーワイズは左手に数枚の紙を取り出す。それは写真のようだが穴の中が暗いせいでその内容までは見えない。

 

「ほら、これをあげるから確かめてごらん?」

 

「じゃ、じゃあ……」

 

 ペニーワイズに言われ、三人は手を伸ばす。

 

「ほらほら、もっと手を伸ばして」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら三人の伸ばす手に写真を近づけ

 

「でも、これだけは覚えておきな」

 

 まるで口が裂けんばかりに微笑むペニーワイズの顔は

 

「ここから先は地獄だぜぇ!!」

 

 とてつもなく邪悪な笑みだった。

 

 

 ○

 

 

 

「「「うぇへへへ~」」」

 

 ペニーワイズと別れ(なかなかその場を離れない三人を未来とクリスの二人係で引き摺り)ハヤテの会社に到着した五人は応接室に通された。

 通されたのだが……

 

「お前らいい加減その気持ち悪い笑顔やめろよ」

 

「だって……」

 

「見てよこの海斗君」

 

「今のカッコいい先輩とは想像もつかない可愛らしさなんデスよ?」

 

 引き気味に言ったクリスの言葉に三人がニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべたまま答える。

 

「あぁ~この可愛さは罪デスね~」

 

「でも今の頼りになるような雰囲気もあるんだよね~」

 

「なんか私、新しい扉を開きそう……」

 

「「はぁ~」」

 

 そんな三人の様子に未来とクリスの二人はため息をつく。

 

「お前ら、当初の予定忘れてないか?」

 

「忘れてないデスよ」

 

 クリスの言葉に切歌が口をとがらせて答える。

 

「でももういいんデス。もしうまくいかなかったら私はこの小さい海斗先輩を心の支えに生きていくデス」

 

 写真に写る小学校低学年時の海斗の姿を恍惚と眺めて抱きしめる切歌の様子に四人が早くどうにかしないと、と心を一つにしたとき

 

「いやぁ~ごめんごめん。お待たせ」

 

 扉が開き、朗らかなハヤテの声が聞こえる。五人が視線を向けると

 

「はっ?」

 

「ペニーワイズ!?」

 

 そこには笑顔の先ほど別れたはずのピエロが立っていた。

 

「な、なんであなたがここに?」

 

「ん?なんでって……あっ!なんだ気付いてなかったのか!」

 

 一瞬首を傾げたペニーワイズだったが合点がいったように笑う。

 

「僕だよ僕。ハヤテだよ」

 

『はぁ!?』

 

 笑顔でVサインするペニーワイズことハヤテに五人が驚きの声を上げる。

 

「その写真の時点で気付いてると思ってたよ」

 

 笑いながら五人の近くの椅子に向かうハヤテ。

 

「てか、なんだよその格好?」

 

「ほら、この間ハロウィンだったでしょ?君らが来るって聞いて驚かせようと準備したんだよ」

 

「てことは、それも何かのコスプレなんですか?」

 

「え……?」

 

 と、未来の問いにハヤテが動きを止める。

 

「え?待って、みんな『ペニーワイズ』知らないの?」

 

 ハヤテの問いに五人全員が頷く。

 

「まじか……まさか一人も知らないとは……準備した甲斐がない……」

 

 ショボンと肩を落としたハヤテはため息をつきながら椅子に座る。

 

「とりあえず知らないなら帰りにGE○でもTS○TAYAでもいいから行って『IT』って作品借りておいで。それに出てるから。あのスタンドバイミーと同じスティーヴン・キングの作品で面白いから。少年たちのひと夏の青春群像劇!少年たちの成長と葛藤にこのピエロのペニーワイズがいいスパイスとして関わるんだよ!ぜひ見てくれ!」

 

「おう……それはいいんだけどよ……着替えろよ」

 

「え?このままじゃダメ?」

 

「これからまじめな相談するのにその格好だとどうしてもそっちが気になんだろ!」

 

「ちぇ~」

 

 ハヤテは言いながらしぶしぶ部屋を出て行く。

 

「あ、マキ~。お客さんにお茶いれて~」

 

「はぁ!?なんでアタシが!?」

 

「しょうがねぇだろ。いま俺とおまえとムラサキしかいねぇんだから」

 

「だったらムラサキにやらせろよ!」

 

「ムラサキは別の仕事してんの。ほら、頼むよ」

 

「………あぁもう!」

 

 ドアの向こうからハヤテとマキと呼ばれた少女の声が聞こえ、数分後

 

「……邪魔するぞ」

 

 若干不貞腐れた様子で背の高い黒髪ポニーテールの少女がお盆に五人分のコップを乗せて運んでくる。声の様子から先ほどマキと呼ばれた少女のようだ。

 

「どうぞ」

 

 不貞腐れた表情のままそれぞれ五人の前に置いて行く中

 

「ジ~……」

 

 調がお茶を運んできた少女を興味深そうに見つめる。

 

「……なんだよ?」

 

 と、調の視線に訝しそうな顔で少女が訊く。

 

「あ、す、すみません……その……どこかで会いませんでした?」

 

「あぁ?いや、初対面だと思うけど……でも……」

 

 調の問いを否定しながらマキも首をかしげる。

 

「なんだろう。初対面な気がしないって言うか、妙な親近感があるな」

 

「ですよねっ?」

 

 マキの言葉に力強く頷く調。

 

「まあでもやっぱり初対面のはずだぜ。そいじゃ、あのバカ社長もすぐ来るはずだからゆっくりしてな」

 

 言いながらお盆を片手に持ったマキはさっさと部屋を後にする。

 出て行ったマキと入れ替わりにジャージに着替え、顔の化粧を落としたハヤテが戻ってくる。

 

「ごめんね、お待たせ」

 

 言いながら座り

 

「って、ちょっとマキ?僕の分がないんだけど?」

 

「知るか!客に出せって言うから出したんだ!自分の分は自分で用意しやがれ!」

 

「ちぇ~……」

 

 しぶしぶと言った様子で部屋を出て行ったハヤテはコップ片手に戻ってくる。もう一方の手にはお菓子の小袋が数種類入ったか籠も持ってくる。

 

「はい、好きに食べてねぇ~」

 

 言いながら五人の前に籠を置いたハヤテは椅子に座り

 

「それで?今日はどうしたの?」

 

 ハヤテの言葉に五人は顔を見合わせ

 

「実は今日お邪魔したのは、ハヤテさんに助言をいただきたいことがありまして……」

 

「お願いするデス!」

 

 と、未来の言葉を遮って切歌が勢いよく頭を下げる。

 

「先輩と、海斗先輩と仲直りする方法を教えてほしいデス!!」

 

「………は?」

 

 切歌の言葉にハヤテは呆けた顔をする。

 

 

 ○

 

 

 あれはそう、ハロウィン当日。私たちは海斗先輩にお菓子をもらうために仮装をして行ったデス。

 仮想は私が緑のパーカーのフードに角の生えた悪魔、調が魔女、響先輩と未来先輩がおそろいのフリフリの振袖風の和服、クリス先輩が海賊だったデス。

 五人でそろって仮装して先輩の部屋を訪ねたデス。

 

「「「「「トリックオアトリート!」」」」」

 

 扉を開けた先輩に五人で合言葉を言ったデス。先輩は一瞬驚いた顔をしていたですがすぐに笑って

 

「そういえば今日ハロウィンでしたね。忘れててお菓子用意してなかった」

 

 そう言って私たちをとりあえず部屋にあげてくれたデス。それから

 

「今から購買で買ってきますんでテキトーにくつろいで待っててください」

 

 そう言って部屋を後にしたデス。

 先輩が出てからはじめは私たちも普通に待ってたデス。でも、正直なんであの場であんなこと思いついてしまったのか

 

「そうだ!先輩が帰ってくるまでに何かイタズラするデス!」

 

「でも、お菓子を今用意してくれてるんでしょ?」

 

「いいんデスよ。最初から用意してなかった罰デス」

 

 その私の提案に響先輩や調も乗ってきて、三人で何をするか考えたんデス。でも、なかなかいい案が思い浮かばなくて、最終的に

 

「そうだ!このゲーム機をどこかに隠しておくデス!先輩驚くデスよ!」

 

「いいね!」

 

「今すぐできるイタズラはそのくらいだもんね」

 

「まあそのくらいなら……」

 

「ほどほどにしろよ」

 

 私の提案に響先輩と調はノリノリで未来先輩とクリス先輩はちょっと呆れながらも結局とめなったデス。

 私たちは先輩のテレビゲーム機をベッドの布団の中に隠しておいたデス。

 そして、それから待つこと数分で何も知らない先輩が帰ってきたデス。

 

「お待たせ~。購買で人気のシュークリームが人数分残ってたんで買ってきましたよ~」

 

 笑顔でシュークリームの箱を片手に帰ってきたデス。

 

「クリーム二種類あるからみんな好きなの選んでね~。僕最後でいいんで」

 

 そう言う先輩の言葉に甘えて私たち五人は箱を覗き込んで選び始めたデス。その間に先輩はベッドの方に歩いて行って

 

 ベキッ

 

 嫌な音がしたデス。

 恐る恐る見ると、先輩はさっき私たちがゲーム機を隠した場所に座ってて

 

「何今の音?今確か俺のお尻の下から……は?」

 

 そこには案の定ゲーム機があって

 

「ぼ、僕のPS4~!!?」

 

 先輩が今までに見たことないくらい慌てふためいて叫んだデス。

 

 

 ○

 

 

 

「なるほどね。それでゲーム機が壊れて海斗が怒ったと」

 

「いえ、ゲーム機は奇跡的に無事でした」

 

「あれ?そうなの?」

 

 ハヤテの言葉に調が首を振る。

 

「ん?じゃあ海斗は何で怒って、君らは何を仲直りしたいの?」

 

「それは……」

 

「仲直りするのは私たちと言うより、切歌ちゃんなんですよ……」

 

「ん?」

 

 言いよどむ調と答えた響の言葉にハヤテが首を傾げる。

 

「問題はゲームがちゃんと動くとわかってからんなんだよ。ちゃんと動くのを確認してこいつが思わず『壊れてたらどうしようかと思ったデスが、なんともなくてよかったデ~ス』って言ったらあいつ『いいわけねぇだろ!!』ってブチギレてな」

 

「海斗君があんなに怒ったの初めて見たってくらい怒ってました」

 

「こいつもやめときゃいいのに『ちゃんと謝ったじゃないデスか?』なんて言っちまうもんだから余計ヒートアップしちまってな。そこからはもう言い合いよ」

 

クリスと未来がため息まじりに言う。

 

「で、最後にこいつが言った言葉が地雷踏み抜いたみたいでな。『出てけぇ!!』って切歌と一緒にアタシらまで追い出されたんだよ」

 

「なるほどね……ちなみに最後なんて言ったの?あいつがそこまで怒るって相当だろ?」

 

「「「「それは………」」」」

 

 ハヤテの言葉に四人が言いよどみ切歌に視線を向ける。

 

「その……」

 

 視線を向けられた切歌はゆっくりとハヤテから視線を反らし

 

「せ、先輩のお兄さんネカマユーチューバー、って」

 

「うん、ちょっと待とうか」

 

 切歌の言葉に手を伸ばして制したハヤテは数秒考えこみ、眉間を軽く揉んだハヤテは顔を上げ、

 

「え?もしかして君ら俺のことそう思ってたの?」

 

 思わず一人称が「俺」になってしまいながらハヤテが訊く。

 

「い、いえ!別にそう思ってるわけじゃないデス!ただ、なんか勢いで口を突いて出てたデス……」

 

「………うん、これ以上はなんかいろんな方面で傷つきそうだからやめよう」

 

 ハヤテは小さくため息をつき

 

「それで、ハロウィンってことは数日前だけど、それから海斗とは?」

 

「全然会えてないデス」

 

「海斗君、かなりヘソ曲げちゃったのか私たちとも最低限しか話さなくなっちゃって……」

 

「まあ海斗としてはその場にいたならちゃんと止めろってことなんだろうけどな」

 

 苦笑いの響にクリスも言う。

 

「なるほどね~……それにしても……そっか、あいつまだ持ってたのか……」

 

『え?』

 

 と、感慨深げな様子でハヤテが言った言葉に五人が驚きの表情を浮かべる。

 

「え?先輩のゲーム機をハヤテさんは何か知ってるんデスか?」

 

「まあね」

 

「海斗先輩が怒るなんて、あのゲーム機っていったい何なんですか……?」

 

 驚く五人、調の問いにハヤテは言ったものかと一瞬思案した様子を見せ

 

「そのゲーム機、PS4だったんだよな?」

 

「そうデス」

 

「うん、それたぶん、俺があげたもんだわ」

 

『えっ!?』

 

 ハヤテの言葉に五人が驚きの声を上げる。

 肩をすくめながらハヤテが言う。

 

「あいつが冗談で俺に買ってくれってせがんだゲーム機でな。俺が死んだってことになってからあいつに師匠たちの手から渡したんだよ。生前に預かってたって体で」

 

「そんな……」

 

「まあそれも五年前だし、今となってはもっと性能のいいゲーム機なんてざらに出てるんだけどな」

 

 呆然とする五人にハヤテは笑って言う。

 

「そ、そんな大事なゲーム機だったなんて知らなかったから……」

 

「そりゃ海斗君も怒るよね……」

 

 調と響もショックを受けたようにつぶやき、未来とクリスも少し罪悪感を感じたように顔をしかめている。

 

「まあそれはいいよ。それで、海斗と仲直りする方法だよな?」

 

「デ、デス!先輩のお兄さんなら何か先輩の機嫌を直す方法を知っているんじゃないかと思ったデス!」

 

「機嫌を直す方法、ねぇ……」

 

 ハヤテは思案するように腕を組み

 

「う~ん、ぶっちゃけ言うけどさ、そんなもんないよ」

 

「デデデデ~ッス!?」

 

 ハヤテの言葉に切歌は絶望したような表情で叫ぶ。

 

「正直あいつ普段あんまり怒らない分一回ヘソ曲げるとなかなか面倒なんだよ」

 

 これまでにあったこと思い出しているのはハヤテがため息をつく。

 

「じゃ、じゃあ海斗君が切歌ちゃんを許すことはもうないってことですか?」

 

 心配したような表情で未来が訊く。

 

「ん~……それが案外そうでもないんだよ」

 

『へ?』

 

 と、ハヤテの言葉に五人が驚きの声を漏らす。

 

「海斗って一回ヘソ曲げると厄介だけど、ある程度経てば許そうかなぁって感じになるんだよ」

 

 ハヤテはその内容にもよるけどね、と断ってから続ける。

 

「で、許そうかなぁってなっても、一度怒った手前自分から『許す』って言えないんだよ。何かきっかけがあれば一発で元通りになると思うぞ」

 

「で、でもきっかけなんて言われても……」

 

 ハヤテの言葉に切歌が困ったように呟く。

 

「それこそ簡単だよ。あの年代の男なんてメイド服でも着て三つ指立てて謝りながら『許してくれるなら何でもします』って言えば大抵何とかなる」

 

「「「メッ、メイド!?」」」

 

「ホントかよ?」

 

 驚く三人と疑わし気に見るクリスト未来の視線にハヤテは肩をすくめ

 

「まあメイド服とかなんでもするは半分冗談だけど、素直にもう一度謝るのはいいと思うぞ。ちゃんと改めて謝罪すればそれだけできっかけになるさ」

 

「なるほど……」

 

 ハヤテの言葉に未来が納得したように頷く。

 

「どうだ?参考になったか?」

 

「はい!すごく参考になったデス!!」

 

「ありがとうございます……」

 

「「ありがとうございます!」」

 

「まあ助かったよ」

 

 ハヤテの言葉に五人が礼を言う。

 

「まあこれに懲りずにあいつとはこれからも仲良くしてやってくれ」

 

「もちろんデス!」

 

「まあ、大事な後輩だしな」

 

 ハヤテの言葉に切歌が力強く答え、クリスも少し少し照れたように頷く。

他の三人もしっかりと頷く。

 

「これからも困ったことがあればいつでも相談に乗るからさ。今はもう別人とは言え未来の妹候補たちの力になりたいしね」

 

「「「妹っ!?」」」

 

 響、調、切歌が顔を赤く染めて驚いたように言い、クリスがジト目で睨み、未来が一瞬目のハイライトを無くなったような表情でハヤテを見る。

 そんな様子を見ながら、ハヤテは楽しそうに微笑んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談と言うか今回のオチ。

 あれから帰った五人は帰り道にドンキにより、本当にメイド服を買ったらしい。理由は僕が帰りしなに与えた「海斗はメイド好き」という情報に一年の二人にスイッチが入ってしまったらしい。

何を血迷ったか他の三人も買い、計五人でメイド服で海斗の部屋を訪問し、驚きで呆然とする海斗の目の前でそろって廊下で三つ指立てて謝罪をし、海斗の許しを得たらしい。

 海斗もさすがに美少女五人がメイド服姿で謝罪してくるとは思わなかったのだろう。かなりテンパっていたらしい。

 ちなみに何でもするという申し出も一応は言ったようだが、それは海斗が辞退したらしい。それでもどうしても気が済まないということで響、切歌、調の三人によってメイド服のまま身の回りの世話をされたらしい。

 さすがの海斗もそのアプローチには弱かったようで終始大人しかったらしい。

 

 とにかくこれにて一件落着。

 こうして海斗の機嫌も直り、無事元の鞘に戻ったということだ。

 

 さらにちなみに、俺のおすすめを本気にして「IT」を見たらしいクリスから、「あの説明嘘じゃねぇか!どこが青春群像劇だ!グロ系ホラーじゃねぇか!」と、殴られたのは、また別のお話……

 




そんなわけで少し遅刻しましたがハロウィンの番外編です。
なんか今年のハロウィンは渋谷の方が大騒ぎでしたね。
楽しむのもいいですけどちゃんと節度を持って楽しまないと……(-_-;)

さてさて、このお話の中で本編でまだ出てないのにマキちゃん――井ノ原真紀が初登場しちゃいましたね。
お話の中で調と何か通じ合ってましたが、先に断っておくとこれ別に何かのフラグじゃないですからね?
ちょっとした小ネタです。
シンフォギアかグリザイアファントムトリガー、もしくは両方知らない人のためにヒントを出すと彼女たちの声優が関係しています。
気になる人は調べてみてくださいね(笑)



さてさて、今回の質問コーナー!
今回はsevenblazespowerさんからいただきました!
「ハヤテ! 一狩り行こうぜ!(←質問?)
で、アナザーライダーのデザインって好き?(←質問!)」
ということですが……



ハヤテ「行くぅ~!ナルガクルガでいい?」

一狩り行くのはいいけど質問答えてからね。

ハヤテ「はいはい。それで、アナザーライダーのデザインだったね。僕は嫌いじゃないよ。なんていうかレジェンドライダーをオマージュしつつうまい具合に怪物感出てていいと思う。ちなみに今出てる中ならアナザーWのデザイン好き」

なるほどね。

ハヤテ「もういい?じゃあ一狩り行ってきま~す」



ということです。
そんなわけで今回はこの辺で
次回はちゃんと本編に戻りますのでお楽しみに~!

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