IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

241 / 309
第211話 お礼

「――とまぁ紆余曲折あって、俺はめでたく朽葉ハヤテとなり、国連の犬になりましたとさ。めでたしめでたし」

 

『……………』

 

 颯太の言葉に少女たちは何も反応できず茫然としている。

 颯太の語った内容があまりにも衝撃的だったようだ。

 

「あ、あの……じゃあさっき言ってたチョーカー?は今も……?」

 

「あぁ、ギロチンチョーカーね。――ほれ、このように」

 

 調の問いに颯太は何でもないことのように笑いながらシャツの首元を開いて見せる。

 

「そ、そのスイッチは誰が持ってるかお兄さんは知ってるんですか?」

 

「全部じゃないけどね。スイッチ自体は複数あるって聞いてるよ。ちなみに一個はそこにいる弦十郎さんが持ってるよ」

 

『えっ!?』

 

 未来の問いに答えた颯太の言葉に少女たちが驚き一斉に言われた風鳴弦十郎に向けられる。九人分の視線を受けた弦十郎は一瞬ギョッとしたもののすぐにいつも通りの冷静な表情に戻りゆっくりとポケットから手のひらサイズの小型リモコンのようなものを取り出す。

 

「な、なんで師匠が!?」

 

「そりゃ俺の今の所属がS.O.N.G所属だからだよ。弦十郎さんは俺の直属の上司になるわけだし。俺がやらかしたら決断くださなきゃだろ?」

 

「ああ、彼の言う通りの理由だ」

 

 響の問いに答えた颯太の言葉に弦十郎が頷く。

 

「ただ、少なくとも俺はこのスイッチを押すつもりはないし、これを押すべき状況が来るとも思っていない。正直これも上の人間から持てと言われて仕方なく携帯しているだけだしな」

 

「なるほど……」

 

 弦十郎の言葉にみな納得したように頷く。

 

「まあでも、これで分かっただろ?」

 

「……え?何がデスか?」

 

「俺が海斗の前に名乗り出ない理由だよ」

 

『あっ……』

 

 颯太の言葉にあまりの話の内容に当初の問いを忘れていたらしい少女たちが声を漏らす。

 

「俺はもう死んだことになってるし、生きていることが広まればいろいろとまずい。そんな俺がただでさえ立場の危うい海斗の前に現れれば余計あいつの立場を悪くする。このまま一生あいつに真実を教えないのが正解なんだよ」

 

「でも……」

 

「いいんだよ。これがお互いにとって一番いい状態なんだよ」

 

 何かを言おうとしたセレナの言葉を遮って颯太は苦笑いを浮かべながら言う。

 

「それよりも、ついでだから俺からも二、三訊きたいんだけど」

 

「なんですか?」

 

 颯太の問いに響が首を傾げる。他のメンバーも視線で促す。

 

「うん、ここにいるメンバーは少なからず海斗とは面識あるんだよね?」

 

「そうだな。あいつがIS学園に入学してきたときには翼とセレナは学園に在学してたし、その関係でアタシやマリアとも何度も顔を合わせてたしな」

 

「そこの五人は言うまでもないしね」

 

「ふ~む、てことは……」

 

 奏とマリアの答えに颯太は納得したように頷き

 

「この中に未来の妹になる可能性のある子っているの?まあようはあいつの彼女だって子いる?」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 颯太の言葉に数人の少女たちがギクリとした顔をする。

 

「彼女ではないけど四人……いや、五人か。なんだ、あいつも隅に置けないな」

 

 少女たちの反応を見ながら颯太がニヤリと笑みを浮かべる。

 

「まあ俺に似ずにモテモテでよかった」

 

「お兄さんに似て、だと思うけど?」

 

「俺は全然モテてないですよ。モテてたらもうちょっと実りのある学園生活を――あいたぁ!?」

 

 楯無の指摘に颯太がやれやれと肩をすくめながら言いかけた言葉は楯無による脳天へのゲンコツに遮られた。

 

「いったぁ!ちょ、何するんすか、師匠!?」

 

「ごめん、よく聞こえなかった。なんだって?」

 

「いや、だから、俺は全然モテて――いたぁ!!?」

 

 楯無の問いに答えようとした颯太の言葉を今度は簪によるビンタで遮られる。

 

「ちょぉ!?何すんのさ、簪!?」

 

「ごめん、もう一回言って……」

 

「いや、だからね?俺がモテてたらもうちょっと実りのある――おぼうっ!!!?」

 

 簪の問いに答えようとした颯太の言葉を今度はシャルロットによる頭突きで遮られる。

 

「目、目の前に星が飛んだ……」

 

「ごめん、私もよく聞こえなかった。なんだって?」

 

「………なんでもないです」

 

 三人の怒気をはらんだ視線に颯太は縮こまるようにか細く言う。

 

「ま、まあ俺のことはいいんだよ」

 

 咳ばらいを一つして颯太が言う。

 

「ここで何言っても結局最後に決めるのは海斗だからねぇ。まあせいぜい頑張ってアプローチしてやってよ」

 

「面白がってます?」

 

「面白がってる」

 

「面白がんなよ」

 

 未来の指摘に満面の笑顔で答えた颯太の言葉にクリスがジト目で言う。

 

「まあ海斗の恋愛事情については置いておいて、もう一個訊きたいんだけどさ」

 

 と、笑ったまま周りを見渡し

 

「海斗がIS学園に入学する二年前、海斗が誘拐される事件があっただろ?ここの組織がまだ国連所属になる前、日本政府直属の組織だったころに起きたあの事件、聞けば海斗の救出に行ったのはその時のメンバーだったらしいじゃないか?海斗を救った人、ここにいる?」

 

「あぁ、それはあたしと――」

 

「私だ」

 

 と、奏と翼が手を上げる。

 

「そっか、君らか」

 

 言いながら颯太は車椅子に備え付けられていたつえを手に取り、ゆっくりとした足取りで二人の元へ歩み寄り

 

「……ありがとう」

 

 二人に向けて頭を下げた。

 

「うちの弟を救ってくれて、本当にありがとう」

 

「ハヤテの兄さん……」

 

「ハヤテさん……」

 

 頭を下げたまま言う颯太に二人は茫然とそれを見つめ、一瞬顔を見合わせた後

 

「ハヤテさん、顔を上げてください」

 

「そうだぜ、らしくない」

 

「…………」

 

 二人が笑って言う言葉にゆっくりと顔を上げた颯太は

 

「これだけはいつかちゃんと言わないとって思ってたんだ。これまでは君らにも正体隠してたから言えなかったからな」

 

 そう言ってもう一度ありがとうと頭を下げた颯太はゆっくりと車椅子に戻り

 

「さて、説明もしたし、言うことも言えた。それじゃ、〝僕〟らはこの辺で。そろそろ脚を受け取りにいかなきゃいけないんでね。約束の時間過ぎたらキャロルにどやされる」

 

 そう言ってシャルロットに目配せする。

 

「それじゃ、みなさん、これからも僕こと〝朽葉ハヤテ〟とうちの会社のこと、よろしく」

 

 そう言って手を振ったハヤテは車椅子の後ろに着き持ち手を握って押し始めたシャルロットと楯無と簪ともども会議室から出て行き

 

「あ、もう一個忘れてた」

 

何かを思い出したように止まる。

 

「セレナちゃんに、マリアさん」

 

「え?」

 

「は、はい?」

 

 突如呼ばれたマリアとセレナが思わず返事をする。

 

「アメリカで道に迷ってた時、道案内してくれてありがとう。すっげぇ助かったよ」

 

「え……?」

 

「道…案内……?」

 

 一瞬何のことかわからず顔を見合わせた二人は

 

「「あっ!」」

 

 同時に気付きバッとハヤテを見て

 

「ま、まさか……!」

 

「さ、佐藤太郎さん!?」

 

「なんだ、気付いてなかったのか」

 

 苦笑いを浮かべて手を振ったハヤテは、今度こそ部屋を後にした。

 

 

 ○

 

 

 

『……………』

 

 ハヤテの去った後の会議室は不思議な沈黙が支配していた。

 

「海斗先輩のお兄さんが生きていた経緯は分かったデスが……」

 

「思ったよりヘビーだったな」

 

 ぽつりと口を開いた切歌の言葉を引き継いで苦笑い気味に奏が言う。

 

「前々から浮世離れした人だとは思っていたが、まさかあの海斗君のお兄さんだったとは……」

 

「こんなのって……」

 

 翼、マリアが神妙に言う。

 

「わかっていると思うが――」

 

 と、そんな中で弦十郎が口を開く。

 

「今日聞いたことやこの間見たことはくれぐれも他言してはいかんぞ。もちろん、海斗君にもな」

 

『……………』

 

 弦十郎の言葉に九人がしっかりと頷いた。

 

「それでは、話は以上だ。各自ここで――」

 

「なぁ、おっさん」

 

 と、弦十郎の言葉を遮ってクリスが口を開く。

 

「……どうした、クリス君?」

 

「………」

 

 弦十郎の問いにゆっくりと顔を上げたクリスは

 

「……ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

 

 そう真剣な表情で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ひとつ訊いていいかしら?」

 

「なんでしょうか?」

 

 廊下を歩く楯無は隣でシャルロットに押される車椅子に座るハヤテに言う。

 

「なんで彼女たちに正体明かしたの?」

 

「……そりゃ、彼女たちに『火焔』使ってるところを見られたからで――」

 

「嘘だね」

 

 ハヤテの言葉を遮ってシャルロットが言う。

 

「確かにそのことも原因の一つかもしれないけど、それだけじゃないでしょ?それだけならいくらでもごまかしようがあるんだからさ」

 

「それは……」

 

 言いよどんだハヤテは大きくため息をつく。

 

「別に、大した理由はないよ。彼女たちは海斗とも近しい間柄だし、下手にごまかして不信感抱かれるよりある程度事情明かして秘密にしておいてもらう方がいいと思ったんです」

 

「でも、ハヤテなら上手くやったんじゃない?」

 

「買被りだよ」

 

 簪の言葉にハヤテは肩をすくめる。

 

「これでも蚤の心臓なんだよ。それに海斗の大事な人たちだ。あまり嘘はつきたくない。色と嘘は重ねるだけ黒くなる」

 

「あら?嘘の場合は赤くなるんじゃないの?」

 

「赤も重ねりゃ黒くなるでしょ」

 

 楯無の指摘にハヤテはため息まじりに言う。

 

「さっ!とっととキャロルんとこ行って脚受け取って帰りましょ。自分で歩かなきゃなまりそうですよ」

 

「はいはい」

 

 ハヤテの言葉に車椅子を押すシャルロットは返事し

 

「くぅ、やっぱりあそこでパーを出していれば……」

 

「簪ちゃんまだ言ってる……」

 

 恨みがましく自身の手を見る簪に楯無が苦笑い気味に言う。

 そのまま四人は目的の部屋へと長い廊下を歩いて行くのだった。

 




というわけで颯太くんの五年前の出来事の顛末は以上です。
ちなみに次回はシンフォギアメンバーや海斗君、ハヤテくんの設定などについて軽く書きたいと思いますので
今回の話であった海斗君Love勢の五人についてもそこで詳しくやりたいと思います
お楽しみに~!



さてさて、今回の質問コーナーは一般有澤社員さんからいただきました!
質問では二ついただいていましたので今回は一つ目の方からお答えしたいと思います、
「一つ目の質問です。束さんと千冬さんの弟、なるならどちらがいいですか?
理由もお願いします」
とのことですが



颯太「え?どっちも嫌」

おい

颯太「いや、よく考えてみ?まず織斑先生の弟になってみ?一夏みたいな扱いを受けるわけだろ?」

それは……

颯太「で、あの篠ノ之束の弟になるのも箒がいい例だろ。あの人の弟になるとか苦労する未来しか見えない。あと何より生理的に無理」

それお前の個人的なモノが多大に入ってるだろ(;^ω^)

颯太「悪いか?……でも、そう考えたら織斑先生の弟になる方がいいかもな。あの人何気にあれでブラコンの気があるし、うまく取り入れば溺愛してもらえるかも……」

千冬「ほう?誰がブラコンだ?」

颯太「そりゃ織斑先生が………って織斑先生!?な、何故ここに!?」

あ、ごめん。呼んでたのすっかり忘れてた。
ちなみの織斑先生の他にも

束「おいおい、人がいないところで随分と言ってくれるじゃないか」

颯太「た、束博士まで!?――さては作者!貴様はかった!?」

いや、全部お前の自爆だろ。

千冬「で?誰がブラコンだって?」

束「誰の弟になるのが生理的に無理だって?」

颯太「い、いやぁ……それは……え~っと……」

千冬「とにかく、向こうでゆっくりと話を聞こうか」

颯太「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

あぁ~あ、千冬さんと束博士にそろって引き摺られていった……
颯太~!死ぬなよ~!
あ、ちなみに私は姉にするなら束博士ですかね。
あの人身内には甘いですし。どうせならダダ甘に甘やかしてほしいですね(笑)



さて、そんなわけで今回はこの辺で
次回は設定解説になるんでそんなに期間をあけずに更新するかと思いますがなんとも言えません(;^ω^)
あと、お気に入り件数がめでたく3800件に行きましたので番外編も考えましょうかね。
ただ前回番外編書いたところですし
何よりそろそろ番外編のネタが……
まあ考えますね~
それではまた次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。