IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第214話 クリスと言えば…

「…はい、そんな訳でね、プロ・ロシアンニンジャ、ムラサキ先生の授業がはーじまーるよー…私のことは気軽にニンジャ先輩と呼んでくれて構わないよ」

 

 ムラサキが対面のクリスに向かって言う。

 

「でね?今日はねー、手始めに、シュリ=ケンについて教えていくよー?ジャン!まずはコレ!折り紙でシュリ=ケンの作り方を説明するねー?」

 

「あの……」

 

「材料は、折り紙が2枚!普通に文具屋さんで売っているので構わないしー、新聞に入っていたチラシを正方形に切っても、いいんだよ~?」

 

「あの~……?」

 

「チラシで作ると色んな模様があって楽しいし~、コート紙っていう表面がツルツルした紙で作ると、折り紙で作るよりちょっとだけ強いシュリ=ケンが出来たりもするんだよー?」

 

「いや、あの……だから……」

 

「じゃ、折り方を説明していくよー…?」

 

「あのっ!」

 

 と、手元の折り紙を見せながら説明を始めようとしたムラサキの言葉をクリスが大きな声を上げて遮る。

 

「…おやおや?一体どうしたんだい?あ、もしかして君も私のように金色と銀色の折り紙を使いたいのかい?悪いけど、金と銀を使った世にも豪華なシュリ=ケンは、プロ・ニンジャだから許されるんだよー?すまないがまだ素人の君はその普通のピンクと青で我慢してほしいなー…」

 

「いや、色に不満があるんじゃない!…ですっ!」

 

 思わずタメ口で叫んでしまってから慌てて丁寧に「です」を付け足すクリス。

 

「あ、あたしが言いたいのは、ちゃんと仕事を教えてほしいってことで……!」

 

「…そうは言ってもね、いま教えられることって、さっき大体教えちゃったし」

 

「え?でもまだこの建物の話くらいしか聞いてないんすけど……」

 

 ムラサキの言葉にクリスが困惑した様子で言う。

 ちなみに今彼女たちがいるこのビルは四階建てで地下もある計五つのフロアからなる建物だ。

 一階部分は出入り口と階段などの通路、物置になっている。

 二階部分は来客用の応接室や給湯室がある。

 三階部分はオフィス部分であり、仮眠室も備え付けられている。クリスや社員たちが今いるのもここ。

 四階にはこれまでの資料や備品を補完する資料室とハヤテのいる社長室がある。

 地下には銃器など武装を保管する場所、またトレーニング機器を設置した簡易的なジムのような場所、トレーニング後に汗を流せるようにシャワー室も備え付けられている。

 ちなみにエレベーターも備え付けられている。

 

「…うん、いま教えれることってそれくらいだからねー」

 

「え?でも仕事のこととか……さっきもあの社長が各自の仕事をしろって」

 

「あぁ、それはそれぞれの受け持ちの仕事があったら、だよ…今私は受け持ってる仕事は全部済ませてるから…報告書も昨日までに全部提出したし…」

 

「じゃ、じゃあ何すればいいんすか…?」

 

「うん、だからコレ…」

 

 と、ムラサキはクリスの手の中の折り紙を指さす。

 

「……いいんすか?」

 

「何が?」

 

「そんなんでいいんすか!?だってここ、仮にも会社でしょ!?そんなテキトーで……」

 

「いいんだよ~…だってそもそも社長がテキトーな人だからねー…」

 

「……どうしよう、ものすごく納得しちまった……」

 

「なにより、何でも屋業は表向きのものだから…うちのメインは国連とかからくる仕事をすることだから…」

 

「なるほど……」

 

「…それに、手が空いてるのは午前中だけだよ…午後からは新しく依頼しに来る人がいるから…えっと――クリス、依頼人何時ごろに来るんだっけ?」

 

 と、ムラサキは言いながらちょうど近くにやって来た桜子に訊く。

 

「2時ごろだよ。ムラサキが担当するんだよね?」

 

「…まぁねぇ~。ちょうど仕事もひと段落してるし…事前に軽く聞いてる内容的にも新人の彼女でもできるだろうしねー…」

 

 桜子の言葉にムラサキが頷く。

 

「あの…その内容って?」

 

「あぁ、猫探しです」

 

 クリスの問いに桜子が答える。

 

「愛猫家のご婦人がペットの猫が逃げたから探してほしいとのことです。猫探しは比較的新人の方にはやりやすい内容だと思いますよ」

 

「猫は結構たまり場とか猫の好みそうな特定の場所がいくつかあるからねぇ~…これまでに受けた猫探しの依頼もそれで問題なく済んだから…」

 

「なるほど……」

 

 二人の言葉に納得したようにクリスが頷く。

 

「あの、ここの皆さんはこの会社に入って長いんすか?」

 

「まあねー…」

 

 クリスの問いに二人が頷く。

 

「私とムラサキ、レナさんとトーカさん、ハルトさんはこの会社が設立されたときに配属されましたから。もともと私たちは日本政府所属だったのを国連所属に変更された直後にこの会社に配属されました」

 

「三年位前だったよね…」

 

「だね。マキさんやグミさんはここ最近ですね。もともと別のところで働いていたのを事情があってうちの預かりになりました」

 

「へー……」

 

 二人の言葉に頷くクリス。

 

「ちょうどいいので私からもひとつ訊いてもいいですか?」

 

「え?あ、はい……どうぞ」

 

 突然のことにクリスは一瞬驚いたものの桜子に続きを促す。

 

「もしかしてクリスさんって、社長と以前からの知り合いなんじゃないですか?」

 

「それは……」

 

「もっというと、社長が今のようになる前からの知り合いなんじゃないですか?」

 

「っ!?」

 

 桜子の問いにクリスが息をのむ。

 

「あ、あんたら、あいつのこと知って……」

 

「ええ、まあ」

 

「一緒に働いてるしね…簡単には聞いてるよ…詳しい話は知らないけどね…」

 

「私たちが知ってるのは社長の正体くらいで、何故国連所属として働いてるか、などの深いところは知りません。ハルトさんは知ってそうですが……」

 

 クリスの問いにムラサキと桜子が頷く。

 

「話は分かったけど、なんでそんなことを?」

 

「少し気になったもので、様子からあなたがシャルロットさんと面識があるのはわかります。何よりシャルロットさん本人が前に言ってましたから、自分には私に会うより先に〝クリス〟って名前の知り合いがいるって」

 

「でも、それでなんであいつとも面識があるって話になるんだ?」

 

 クリスの問いに桜子が微笑む。

 

「私、この会社の中で〝クリス〟って呼ばれてます」

 

「さっき聞いたっすね。そのせいであたしが〝キネクリ〟になったし……」

 

「あはは……その節はすみません」

 

 クリスの言葉に桜子が苦笑いを浮かべる。

 

「あの時はうちの会社では〝クリス〟と言えば私、という話でしたが……気付いてますか?実は私のことを〝クリス〟と呼んでない人がいるんですよ」

 

「え?それって……」

 

「一人はシャルロットさん。そして、もう一人は社長です」

 

「っ!」

 

 桜子の言葉にクリスが息をのむ。

 

「通信で〝桜子〟が呼びずらいって私のことを〝クリス〟って呼び始めても二人だけは変わらず桜子って呼び続けてましたね」

 

「知り合いに〝クリス〟がいるからってねー…」

 

 桜子の言葉に続いてムラサキが言う。

 

「…私たちにとって〝クリス〟って言えば彼女のことだって言うのと同じで、シャルロットさんと社長にとって〝クリス〟はきみのことだったんだね…」

 

「…………」

 

 ムラサキの言葉にクリスは黙っている。

 

「まあシャルロットさんはともかく、社長は絶対口には出さないだろうけどね」

 

「だね~。社長なら嬉々として〝クリキチ〟って呼ぶだろうね~」

 

「…………」

 

 二人の言葉にクリスが眉をしかめ、あり得る、といった表情を浮かべる。

 

「まあそれで何だってわけじゃないけど、なんとなく気になっちゃって……ごめんなさい、変なこと訊いて」

 

「い、いや……別に……」

 

「同じクリス同士、これからよろしくね」

 

「は、はい。よろしく…お願いします」

 

 にこやかに手を差し出す桜子の手を取り握手を交わす。

 じゃあ私も仕事があるから、と、去って行く桜子の背中を見送りながら

 

「どうだい?上手くやっていけそうかい?」

 

「いえ…まだわからね――ないです……」

 

「だよね~…まあゆっくり慣れていけばいいよ…」

 

 そう微笑みながらムラサキが言う。

 

「さて、そうこうしてるうちにシュリ=ケンはできたかな?」

 

「え?あ、いや……まだ、です…けど……」

 

「ほらほら、はやく折っちゃおう?そして、地下のトレーニングルームに投げに行こう」

 

「いや…あたしは……」

 

「今日は的として、〝ショージ〟と〝フスマー〟を用意したよ…。普段、破いたりモノを刺したらめっちゃ怒られる奴だけど、今日は思いっきり破いたり突き刺していいんだ、ニンジャって楽しいよね?」

 

 クリスの返事を聞かずにムラサキが続ける。

 

「まずは〝フスマー〟を使って、投げたシュリ=ケンが突き刺さる感覚を楽しんでほしい…どこに当たっても構わない、基本のフォームを意識しながら好きに投げればいいよ…ある程度、コントロールに自信がついたら、〝ショージ〟を使ってストラック・アウトに挑戦しよう…」

 

「そりゃ楽しそうだけど……」

 

「でしょう?近所の小学生にも大人気…」

 

「近所の小学生と何やってんすか……」

 

「休日に近所の公園で遊び相手になってるのさ…」

 

 苦笑いのクリスにムラサキが答える。

 

「ちなみに、毎年夏になると全日本ニンジャ協会が主催するシュリ=ケン・シューティング・カップが開催されて、日本中の腕自慢のプロ・ニンジャが集まる大会があるんだ…私、プロ・ニンジャ先輩は、数年前のU-18小学生の部で優勝しているんだ…これが、その時に記念として全日本ニンジャ協会から優勝者に授与された金のクナイだよ…」

 

 と、どや顔で金色のクナイを懐から出す。

 

「コレを手にしたおかげで、私は12歳にしてプロ・ニンジャのライセンスを手にすることが出来たんだよ…ちなみにプロ・ニンジャになると、人口タンパク繊維で編みこまれたニンジャ・マフラーが貰えるよ…」

 

 ファサッと首に巻いたマフラーを颯爽とかき上げる。

 

「…ファサッ…!」

 

 というか実際に口に出していた。

 

「どうだい?格好いいだろう私はこのマフラーに何度も命を助けられたし、もうダメだと諦めかけた時には、このマフラーに何度も勇気をもらったものだよ…」

 

「ホントかよ……?」

 

 疑わしそうな視線でムラサキの言葉に小声でつぶやく。

 

「ちなみにその大会で大人の部を、並み居る強豪を蹴散らして五年連続で優勝し、殿堂入りした猛者もいるんだよ…」

 

「へーそうなんすか」

 

「緒川慎次って人なんだけどね…」

 

「……めっちゃ知ってる名前だった……」

 

 そんなこんなで午前中はムラサキとの雑談や簡単な建物内の案内を受けたクリスだった。

 

 

 

 

 

 そして、インターン一日目を終え、学園に帰ったクリスは

 

 

 

 

 

 

「あ、お帰りなさいデス、クリス先輩!」

 

「インターンどうでした?」

 

「午前中は折り紙で作ったシュリ=ケンを〝フスマー〟や〝ショージ〟を的にして投げてた。午後からは猫追っかけてた」

 

「「「「「はい?」」」」」

 

 後輩たち五人に怪訝そうな顔をされたという。

 




というわけでインターン中のクリスちゃんの様子でした。
シュリ=ケンはみんな作ったことあるんじゃないですかね?
私も好きでよく作っていた記憶がありますね。
まあフスマーやショージには投げませんでしたけど(笑)



さてさて、今回の質問コーナーはThe Susanoさんからいただきました!
「ISと似たような機械を扱う作品に最弱無敗の神装機竜がありますが、ご存知でしょうか。
ご存知ならば、好きな機体は何か教えて下さい。
また、最弱無敗のキャラをこの作品に出す予定はありませんか?
(外国人枠ならワンチャン……。)」
ということでしたが……



この作品は私も放映当時に見ていたきりなのであまり詳細には覚えてないですね(-_-;)
うろ覚えの記憶で言えば「ファフニール」あたりですかね。
機動力に優れてるところとか。
個人的に火力もいいですがスピードで翻弄するタイプとか好きなので。
もしかしたら、こっちの機体の方が速いですよ~、とかあるかもしれませんが、すみません、あまり良く覚えていないもので(;^ω^)
またあまり覚えていないという理由から本編に登場するのも難しいかと……申し訳ないですが(;´∀`)



そんな訳で今回はこの辺で!
次回もお楽しみに!

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