IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。
今年も大同爽と「IS~平凡な俺の非日常~」をどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m





第216話 白熱エアホッケーバトル

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「デェェェェェェェェェス!!!!」

 

 未来、響、調、切歌が叫ぶ。と四人の声に呼応してカンコンカンコンと甲高い音が響く。

 響と未来、調と切歌に分かれ、卓球台ほどの盤で向かい合い、それぞれが手に持つスマッシャーと呼ばれる器具でプラスチックの円盤を相手のゴールめがけて打ち合う。甲高い音の正体はスマッシャーで円盤を打ち合っている音である。

 ――そう、四人が興じているのは「エアホッケー」である。

 日曜日、場所はとあるゲームセンター。

 人数の関係で見学をしている海斗も入れて遊びにやって来た五人は現在エアホッケーに興じている。

 しかし、その様子ははた目から見ると遊びの域を超えている。途切れることなく高速で打ち合われる円盤。目にもとまらぬ速さで打ち合われる円盤だけでも異様であるが、それをしているのが若干高校生と思われる四人ということもあって、現在エアホッケーの盤の周りにはたくさんのギャラリーによるひとだかりができていた。

 

「そこ……!」

 

「甘い!」

 

調が鋭い角度ではじいた円盤は側面の壁に当たり響たちのゴールへと向かうがそれに対応した響がそれを打ち返す。

 

『おぉぉ!!』

 

 誰もがそれに対応できないと思っていたので、響の動きにギャラリーから歓声が上がる。

 しかし、四人はそれを意に介した様子もなくゲームを続ける四人。その様子に海斗が苦笑いを浮かべる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「デェェェェェェェェェス!!!!」

 

 四人がここまでムキになって「エアホッケー」に興じるのには訳がある。

 話は二時間前に遡る。

 

 

 ○

 

 

 

「あれ?」

 

 十時過ぎ、五人で遊びに行こうと出かけた海斗たちは駅の改札を出る。。

 と、海斗は歩きながらふと視界の端に見覚えのある白い髪を見かけた気がして足を止める。

 

「どうしたデスか?」

 

「いや、今……あっ」

 

 海斗の背後にいて立ち止まった海斗を不審に思った切歌が訊く。

 答えようとした海斗は目的の人物を見つける。

 

「ほら、あれってクリス先輩じゃないか?」

 

「え?」

 

「あ、ホントだね」

 

 海斗の言葉に四人が視線を向けると、そこには切符売り場の脇の壁に背中を預けて立つクリスの姿を見つける。

 

「お~い、クリスちゃ――」

 

「待った!」

 

 手を振りながらクリスのもとに駆け寄ろうとする響の手をつかんで止める海斗。

 

「クリス先輩は今日インターンのはずだ。それなのにここにいるってことは、きっと仕事中の用事でここにいるんだよ」

 

「あっ、確かに……」

 

 海斗の言葉に響が納得したように頷く。

 

「仕事の邪魔しちゃいけない。僕らはこのまま――」

 

「それは無理みたいだよ」

 

「ん?」

 

 海斗は四人に言いながら歩きだそうとするが、未来が苦笑いを浮かべる。

 見ると壁に寄り掛かるクリスに駆け寄る人物がいた。その人物が海斗たちの存在に気付いたようでクリスに示しながら海斗たちの方に手を振りながら歩いてくる。

 クリスは少し微妙そうな表情を浮かべつつスーツに特徴的なまだら模様のような黒と白の入り混じる髪の人物、朽葉ハヤテとともにやって来る。

 

「やあ、久しぶりだね」

 

「お久しぶりです。あの一件以来ですね」

 

 にこやかにやって来たハヤテに海斗も微笑み返す。

 

「その様子だと五人でお出かけかな?」

 

「そんなところです」

 

 ハヤテの言葉に返す海斗と比べ、他の四人は若干居心地悪そうにしている。

 

「お二人はこれからお仕事に?クリス先輩のインターン担当は女性の方だって訊いてたと思ったんですけど?」

 

「まあね。彼女の担当にしてるムラサキは今日別件でね。他に手が空いてる人いなかったから僕がつくことになったんだ」

 

「なるほど」

 

 疑問に答えたハヤテの言葉に海斗が納得したように頷く。

 

「駅にいて、いまハヤテさんは切符買ってましたし、どこか出かけるんですか?」

 

「ああ。前回はうちの事務所に来た依頼だったから、こっちから出向く依頼も体験してもらおうと思ってね」

 

 未来の問いにハヤテが答える。

 

「漫画とかアニメだと探偵が依頼現場に行くと何か事件に巻き込まれるのは定番ですけど大丈夫ですか?」

 

「ははっ、大丈夫だよ」

 

「ですよね」

 

「今までに五、六回くらいしか遭遇したことないから」

 

『五、六回はあるんです(デス)か!?』

 

 付け足したハヤテの言葉に五人が驚きの声を上げる。

 

「大丈夫大丈夫。そんなピンポイントで今日遭遇するはずないって」

 

「って、この人は言ってるけど……」

 

「クリス先輩的にはどうなんデスか?」

 

 調と切歌の言葉にため息をついたクリスは

 

「そりゃちょっとは心配になるけど、そんなおびえるほどじゃねえよ。ピンポイントで今日事件に遭遇するなんて宝くじが当たるような確率だろ」

 

「な、なるほど……」

 

「ちなみに今日の依頼ってどんなのなんですか?差し支えなければ教えてもらってもいいですか?」

 

「いいよ~。えっとね――」

 

 海斗の問いにハヤテが頷く。

 

「今日の依頼はね、とある大富豪の老婆に殺人予告の脅迫状が届いてね。その差出人を見つけてくれって言う――」

 

「揺るぎねぇじゃねぇか!」

 

 ――スパーン!!

 

「あいたぁ!?」

 

 クリスが叫びながらハヤテの後頭部を勢いよく叩く。

 

「キネクリ、痛い。急にキレて最近の若者はおっとろしゃーだよ」

 

「急じゃねぇよ!正当ギレだよ!ふざけんな!そんな100%事件が起きるような依頼だなんてあたし聞いてないぞ!!」

 

「あれ?言ってなかった?」

 

「言ってねぇよ!あんたの事件遭遇率から考えてそんな依頼に行ったら巻き込まれるのは目に見えてんじゃねぇか!あたし行かねぇぞ!」

 

「え~?ここまで来て?じゃあキネクリが来ないならその旨をちゃんと評価に反映しないと……」

 

「テメェ!?それは卑怯だろ!!」

 

 ハヤテの言葉にクリスが悔しそうに顔をゆがませる。

 

「正当な評価だ。それが嫌ならちゃんと働こうな。心配しなくても事件なんて起きやしないからさ」

 

 言いながらハヤテは腕時計に視線を向け

 

「おっと、そろそろ行かないと。それじゃあね、少年少女たちよ」

 

「あ、はい。お疲れ様です」

 

 ピッと手を振るハヤテに海斗たちがお辞儀をする。

 

「ほら、キネクリ。ダダこねてないで行くよ」

 

「な、なあ、ホントに事件とか起きないよな!?なぁ!?」

 

「起きないって――あ、そうだ」

 

 と、ハヤテが足を止め踵を返して戻ってくる。

 

「ちょうどいいや。これ、君らにあげるよ」

 

「へ?これは?」

 

 ハヤテがスーツの内ポケットから取り出した封筒を響が受け取る。

 

「前に知り合いからもらった遊園地のタダ券。残念ながら三人分しかないけど、よかったら使ってくれ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「それじゃ」

 

 お礼を言う五人に手を振りながらハヤテは半ば引き鶴形でクリスを連れて改札を通りその姿が人ごみに消えていくのだった。

 五人はその姿を見送りながら

 

「で?どうしましょう?」

 

「これ、三人分だと二人行けないね」

 

「どうしようね?」

 

「じゃんけんとかデスか?」

 

「…………」

 

 と、四人が言う中、海斗だけは姿の消えたハヤテの方向をじっと見たまま黙っている。

 

「ん?どうしたんデスか、先輩?」

 

「ん~……いや、ちょっと気になることが――とっ!」

 

「おっと、すまないね」

 

 言いかけた海斗の言葉が遮られる。

 海斗に誰かがぶつかったようで、ぶつかった人物が申し訳なさそうに謝る。

 海斗にぶつかったのは長身の白いスーツを着こなす長髪のイケメンだった。

 

「いえ、こちらこそボーッとしてしまって」

 

 海斗も謝りながらぶつかった拍子に落としたらしい男の白い中折れ帽を拾って渡す。

 

「申し訳ない。このあたりには慣れていなくてね、ついさっき来たばかりで」

 

 長身の色男はそう言ってにっこりと微笑む。

 

「なんにしてもよかった、お互いにケガが無くて」

 

「ええ、本当に」

 

「お~い!アダム~!はやく~!!」

 

「ああ、ティキ。待っていてくれ、今行くから」

 

 少し離れたところにいた小柄な少女が手を振りながら叫び、それに海斗の目の前の色男が答える。

 

「それじゃあ、急がないとね、お互い連れがいるようだし」

 

「ええ。本当にすみませんでした」

 

「こちらのセリフだよ、それは。それじゃあ、これで失礼するよ、〝井口海斗君〟」

 

 そう言ってアダムと呼ばれた色男は帽子をかぶり直しブンブント音がしそうなほど手を振っている少女のもとへとゆっくりと歩いて行き、混雑する人ごみに消えていった。

 

「海斗~行くよ~」

 

「あ、おう!」

 

 色男を見送った海斗は先ほどの男を読んでいた少女のように自分を呼ぶ友人たちの方に歩きだし、ふと疑問が浮かぶ。

 

「――あれ?僕さっきの人に名乗ったっけ?」

 

 

 

 ○

 

 

 その後、ゲームセンターにやって来た五人はハヤテに貰った遊園地のタダ券獲得をかけてゲームに興じることになったのだが、一戦目で券を手に入れたのは海斗だった。

 その後、残りの二枚を賭けて四人が白熱した勝負をしているのだが

 

「……これ、残りの二人の料金を五人で割り勘にして全員で行けばいいんじゃないのかな?」

 

 途中で気付いた海斗は四人に聞こえるか聞こえないかの音量で呟くが、勝負に熱中する四人には聞こえていないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、会社の一室にて――

 

「…あれ、キネクリ、ずいぶんとお疲れだね…」

 

「あぁ~……ムラサキさん、お帰りなさい……」

 

「…どうしたんだい?机に突っ伏して…」

 

「今日、ムラサキさんの代わりにあいつ――社長についてもらって仕事に行ったんだけど……」

 

「…そう言えば外の依頼に行ったんだったね。どうだった…?」

 

「……巻き込まれました」

 

「…?何にだい…?」

 

「……案の定事件に巻き込まれました!」

 

「…あぁ~…」

 

「あんの野郎!何が絶対大丈夫だ!!案の定事件起きやがったじゃねぇか!!依頼内容からしてやばい雰囲気しかなかったじゃねぇか!!」

 

「…へぇ~、ちなみに今回はどんな事件だったんだい…?」

 

「殺人事件ですよ!!ホントふざけんじゃねぇよ!!あんなもんドラマかアニメの世界の話だろうが!!」

 

「…あらら~、そいつは散々だったね~…ほら、今日は私がおごってあげるから…一緒にご飯でも行こうや…愚痴くらい聞いてあげるから…」

 

 こうして、疲れとイラつきでカリカリするクリスを連れ、ムラサキは会社を後にしたのだった。

 




というわけで、改めまして、新年あけましておめでとうございます
新年と言うことでお正月ネタの番外編でも書こうかな?とか思いましたが、前回も番外編でしたし、思ったより新年一発目の更新が遅れたので本編を進めることにしました。

さてさて、順調にインターンをこなすクリスちゃんと、両手どころか四人も美少女を連れている海斗君。
そして、わかる人にはわかるなのぞの人物の登場!

それはさておき、前回の番外編でやらなかった質問コーナーでございます。
今回の質問はGoetia.D08/72さんからいただきました!内容的に二つに分けて質問にお答えします!
今回の質問は「最近シンフォギアのキャラが段々出張ってますが、このまま行くと第一部で颯太が接触してた三人娘(?)、と残り一名(脱ぐ人)が舞台を三段飛ばしする日もそう遠くはない…?」
ということですが

そのお答えは今回のお話を読んでいただければ察しが付くかと思われます。
前回の番外編で質問コーナーを設けなかったのはこの質問をこのお話にあわせるつもりだったのもあります。
さてさて、Goetia.D08/72さんの言う三人娘(?)や残りの一名がどんな動きを見せるのか!?
そもそも動くのか!?
それはこれからのお話をお楽しみに!

そんな訳で今回はこの辺で!
クリスとハヤテの遭遇した事件については、また番外編とかで描きたいと思っているのでそちらもお楽しみに!
今年もよろしくお願いいたします!m(__)m

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