IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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GW中に進められるようならできるだけ進めたいと思います。
無い物の方も一度は更新できればと思っています。
とりあえず最新話どうぞ!!






第226話 じゃじゃ馬

 

「な、何故だ!?持ち込めていなかったはず、君のISを!?」

 

「それはお前が勝手にそう思ってただけだろ?俺は一言もそんなこと言ってないぞ」

 

「し、しかし!現に君は使っていなかった、君自身のISを!ISの反応は隠せなかったんだろ、さすがの天才篠ノ之束の制作でも!」

 

『アハハハハッ!もう~、これ以上笑わせないでよ。笑い死にさせる気かい?』

 

 と、先ほどまでずっと黙っていた束が笑いながら言う。

 

「あんたさっきからしゃべらないと思ったら通信切って爆笑してたろ」

 

『あ、バレた?』

 

「やっぱり。俺だって今にも笑ちゃいそうだったの全力で我慢してたんだからな」

 

『笑ってやればよかったじゃん』

 

「いやいや、あんなどや顔で推理披露してるのに水差せな……ブフッ」

 

「っ!?いい加減にしろ、人おちょくるのは!サンジェルマン、君たちも早く使うんだ、君たちのISを!」

 

「いえ、局長。お言葉ですがもうこれは我々三人でこの場を脱出するのは……」

 

「クッ!ならばっ――!」

 

 と、悔しそうに言うサンジェルマンの言葉に苦々しく顔をゆがめたアダムは銃を握った手を颯太から海斗へと――

 

「させねぇよ」

 

 が、アダムが狙いを定めるよりも早くアダムの握っていた銃が宙を舞う、握っていたアダムの左手ごと。

 

「あぁぁ!?」

 

「うるせぇよ」

 

 状況が飲み来ず叫ぶアダムを颯太が回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「き、貴様ぁ!!」

 

「叫ぶな鬱陶しい。別に痛くもないんだろ?」

 

 左腕を抑え、床に片膝をつきながら颯太を睨むアダムだったが、その視線を受けながら颯太はため息をつきながら床に転がっているアダムの左手を拾い上げる。

 

「なるほど。噂通りだったみたいだな」

 

「そ、颯太……お前いきなり……」

 

「大丈夫だよ。よく見ろ、そいつの腕。血が出てねぇだろ?」

 

「えっ?――あ……」

 

 一夏が驚く中、颯太は冷静に言う。

 

「その男、アダム・ヴァイスハウプトは見た目通りのまともな人間じゃねぇ。そいつの身体は8割が機械なんだよ」

 

『っ!?』

 

「貴様っ!どこで知った、そのことを!?」

 

 颯太の言葉にその場の全員が驚愕の表情で固まり、アダムは憎々しげに颯太を睨む。

 

「こっち情報収集能力舐めんな」

 

『お前が誇るな。調べたのは私だ』

 

「細けぇことはいいんだよ」

 

 ドヤッと身体を反らせる颯太に束がツッコむ。

 

「あんたは紛争の影響で瀕死の重傷を負った。その治療と実験のために身体の8割を機械に置き換えられ、以降はいいようにつかわれてたんだろ?」

 

「……っ!」

 

「あんたがテロリストになったのも自分を機械人形にしたやつらを、ひいてはこの世界そのものへの復讐をするため、だろう?」

 

「……人形だと?」

 

 颯太の言葉にアダムが怒りに満ちた視線で睨む。

 

「人形だとぉぉぉぉぉ!!!」

 

 アダムは怒りで絶叫しながら立ち上がりポケットから右手で何かを取り出し、その何かのスイッチを押す。

 

「てめぇ、何をした?」

 

「おっと、動かない方がいい」

 

 詰め寄ろうとしたハヤテに右手に握ったそれを向けながらニヤリと笑う。

 

「いま、起動したのさ、最後の切り札をね」

 

「切り札?」

 

 颯太はアダムの言葉に警戒をするように身構えながら動きを止める。

 

「そう。悪いが、ここは爆発するのさ、あと5分でね」

 

「っ!?」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「何それどういうことよぉ!?」

 

「私たちは聞いていないワケダ!」

 

「我々に相談もなくそんなものを用意していたというのか!?」

 

 アダムの言葉に颯太は息をのみ、海斗や一夏たちが驚愕の表情を浮かべ、サンジェルマン達も驚きの声を上げる。

 

「本当はなかったのさ、使う気は。一度起動すれば手立てはないのさ、それを止めることは」

 

「だったらそれが爆発する前に――」

 

「おっと、聞いていなかったのかな、俺の話を」

 

 言いながらアダムはニヤリと笑いながら再度颯太に握った右腕を向ける。

 

「これは起動スイッチだ。一度だけなら起動するだけ。だが、すぐに爆発するのさ、もう一度押せばね!」

 

「っ!」

 

「この建物くらい簡単に瓦礫の山さ、爆発すればね。外の彼女たちもタダじゃすまないだろうね、ここにいるメンバーはもちろん」

 

「てめぇ!」

 

 颯太が叫ぶが、にやにやと笑うアダム。

 

「どういうつもりですか!?」

 

「死を選ぶのさ、捕まるくらいならね」

 

「それにあーしたちを巻き込まないでよ!」

 

「どうせなら行こうじゃないか、ともに黄泉へ」

 

「ごめん被るワケダ!」

 

「ふざけんな!お前の自殺に響達まで巻き込む気か!?」

 

「どうでもいいのさ、彼女たちのことなど!死なばもろともさ!」

 

「アダムゥ!!!」

 

 怒りに声を震わせる颯太に視線を戻すアダム。

 

「颯太、撃て!奴がスイッチを押すより先に《火神鳴》で!」

 

「……無理だ」

 

「どうして!?」

 

 箒が叫ぶが颯太は首を振る。

 

「簡単なことだよ、少し考えればね。彼は撃てないのさ、君たちがいるから」

 

「なっ!?どういうことだ!?」

 

「よく見て箒。颯太が今《火神鳴》ないしISの銃火器を使えば、あの男を止めることはできる。でも、威力の強すぎるISの兵装を使えばあの男を貫いた弾丸はそのままその後ろにいる――」

 

「俺たちに当たるってわけか」

 

「っ!」

 

 シャルロット、一夏の言葉に箒は驚き、改めて周りを見る。

 シャルロットたちの言葉通り、颯太と自分たち三人のちょうど間に入るようにアダムが位置しているため、颯太がISでアダムを攻撃すれば恐らく箒たちもただでは済まないだろう。

 

「貴様っ!卑怯だぞ!」

 

「なりふり構っていられないのさ、今の俺には」

 

 箒の言葉にも涼しい顔で答える。

 

「さあ、まずはISを解除するんだ、今すぐ爆破してほしくなければね」

 

「…………」

 

 颯太は少し考えるそぶりを見せ、アダムの要求通り『火焔』を解除する。

 

「次はそれを捨ててもらおうか、その腕の待機状態のISを」

 

「…………」

 

 アダムの言葉に颯太はゆっくりとその右腕から赤いリングを外し放る。

 

「ククッ!クハハハハッ!これで、これで形勢は再び――」

 

「っ!」

 

 アダムの言葉が言い終わる前に颯太は素早くリボルバーを構える。

 

「おっと、いいのかな?その銃ではただでは済まないよ、後ろの彼らがね」

 

「…………」

 

「確実に俺を貫き彼らまで到達するだろうよ、君のその『コンバット・マグナム』ではね!」

 

 銃を構えたまま無言を貫く颯太にアダムはニヤリと笑う。

 

「颯太!構わない、撃て!」

 

「そうだ!私たちのことは気にするな!」

 

「颯太!」

 

「撃てないさ、彼はね!」

 

「グダグダうるせぇな」

 

 と、颯太が言う。お面のせいでその顔は見えないが、その声はドスの効いた怒りのこもった声だった。

 

「こっちは銃まで抜いてるんだぜ?さっさとそのスイッチ押せばいいだろ?何故押さない?それとも、押す勇気はないか?」

 

「何?」

 

「あれだけ啖呵切って、今更怖気づいたんだろ?大人しくそのスイッチ置けよ」

 

「フッ、乗らないよ、その手には。甘いね、俺に押す気がないと思ってるんだろう?悪いがそうはいかないよ!」

 

「だったらグダグダ言ってないで押したらどうだ?」

 

「ああ、限界だ、押すね!!」

 

「っ!」

 

 アダムがスイッチへと指を動かし

 

 バァン!!

 

 その時、銃声が響く。

 

「なっ……そんな……本当に撃った…だと……」

 

 スイッチを取り落としながら右肩に銃弾を受けたアダムを膝をつく。

 

「だが、ただじゃすまないはずだ、後ろの彼女たちも。誰かに当たっているはずだ、先ほどの弾丸が!」

 

 言いながらアダムは振り返るが

 

「なっ!?」

 

 背後にいた三人は無傷だった。

 

「何故だ!?間違いなくあの銃の威力なら――!」

 

「弾の威力が強すぎれば適当な物を貫通して弱めればいい」

 

 アダムの疑問に答える颯太。颯太が右手で構えた銃はその銃口から硝煙を上げ、その銃口の前にはダラダラと血の滴る左手があった。

 

「貴様、撃ったというのか、自分の掌を!」

 

「骨の間を撃ったから問題ない。メタルジャケットの弾丸なら吹き飛ぶこともないしな」

 

 言いながら颯太は『火焔』のリングを拾いながらアダムに歩み寄り。

 

「さぁ、爆弾はどこにある?」

 

「言うと思うかい、そんな簡単に?」

 

「思ってない。だからもしものためにこんなものがある」

 

 言いながら颯太はポケットから何かを取り出し

 

「えい」

 

 言いながらアダムの首筋に突き立てる。

 

「何をっ?」

 

「正直になるお薬(束博士特性)だよ。8割機械のアンタにも効くようなやつ」

 

「なんだと!?――っ!」

 

 颯太の言葉に驚愕の表情を浮かべるが、その顔からフッと力が抜ける。

 

「で?爆弾はどこだ?」

 

「………そこの…デスクの脇の…アタッシュケース……」

 

「これか!」

 

 アダムの言葉にサンジェルマンがデスクの脇にあった銀のアタッシュケースを持ってくる。

 

「…………」

 

「警戒しなくても下手なことはしない。私たちだってまだ死にたくはないからな」

 

「慎重に開けないと、もしかしたら一瞬でドカン!なワケダ」

 

「気を付けてよぉ」

 

「わかってる」

 

 サンジェルマンが持ってきたそれを受け取った颯太にプレラーティとカリオストロが言う。

 応えながら颯太はアタッシュケースの周りを見ながら慎重に留め具を外し、ゆっくりと開ける。

 

「っ!」

 

「ど、どうなんだよ兄さん!?」

 

「ヤバイ。もう一分切ってる」

 

『なぁぁ!?』

 

 海斗の問いに答えた颯太の言葉にその場の全員が驚愕の声を上げる。

 

「ちょっと!あと一分じゃ逃げきれないわよ!」

 

「窓から飛ぶか!?」

 

「それでも安全圏まで逃げられるかどうか……」

 

「ど、どうするんだ!?」

 

「颯太!」

 

「兄さん!」

 

「……………」

 

 七人が慌てる中、颯太は

 

「かなりギリギリだけど……これしかないか」

 

 言いながらため息をつき

 

「クリス!聞こえるか!?」

 

 どこかへと呼びかけながらアタッシュケースを閉じ、右手に『火焔』の待機状態のブレスレッドを着ける。

 

『お、おう!爆弾大丈夫なのか!?』

 

「いいか!今から俺が合図したら真上に向けてミサイルを撃て!」

 

『はぁ!?そんな急に――』

 

「いいから行くぞ!もう時間がない!」

 

 通信先のクリスに叫びながら颯太がその身に『火焔』を纏う。

 

「颯太?一体何を?」

 

「それは……こうするんだよ!」

 

 一夏の疑問に答えながら颯太はその両肩の二門の砲門に加え背中の二本のアーム、計四門の荷電粒子砲《火神鳴》を一方の壁へと放つ。

 

「なっ!?颯太何を!?」

 

「クリス!いまだ!」

 

 疑問の声を上げるシャルロットを無視して通信先のクリスに叫びながら颯太がたったいま荷電粒子砲で開けた壁の穴へと向かって加速する、その左手に爆弾のアタッシュケースを掴んだまま。

 

「兄さん!」

 

「っ!」

 

 叫ぶ海斗にニッと笑いながら人差し指と中指を立ててピッと振ると、すぐに正面を向き直り

 

「おぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そのまま壁の穴から身を乗り出し飛ぶ。と、同時に真下から飛んできた大きなミサイルにしがみ付く。

 

「颯太!!」

 

「兄さん!!」

 

 追ってきた七人が壁の穴から見上げる中颯太はミサイルに乗ってぐんぐん上昇していく。

 

「くっそ、あいつらよくこんなの乗りこなしてたな。クリスそっくりのじゃじゃ馬だ!」

 

 言いながら颯太はミサイルの側面を左手で掴み、爆弾のアタッシュケースを《火神鳴》のアームで掴み。

 

「せい!」

 

 ミサイルの側面を《火人》で浅く斬りつける。

 その斬りつけてできた溝にアタッシュケースを引っ掛け

 

「っ!」

 

 そのままミサイルから手を放す。

 そのままISを纏ったまま自由落下するように落ちる。と――

 

 ドガァァァァン!!

 

 と、颯太のすぐ近くでミサイルに乗ってぐんぐん上昇していたアタッシュケースが光を放ち爆発する。

 

「クッ!?」

 

 その爆風に吹き飛ばされ爆発の勢いで軽い脳震盪が起きたらしい、一瞬フッと意識が遠のきながら姿勢を戻そうとする颯太。

 しかし、なかなか自由が利かないまますごい勢いで地面が近づき

 

「たく、無茶してんじゃねぇ――よっ!」

 

 地面から飛んできた誰かが颯太を受け止め、落下の勢いを緩め、ゆっくりと着地した。

 

「悪い、助かった。思ったより爆弾の勢いがあったんだわ」

 

 ISを解除しながら颯太は自分を助けた人物――クリスに視線を向ける。

 

「気を付けろよ、あとちょっとタイミング遅れてたら巻き添え食ってたぞ」

 

「爆発の範囲がわからなかったからな。行けるぎりぎりまで持って行っときたかったんだわ。お前のミサイルのおかげで助かったよ。ありがとう」

 

「まあ無事でよかったよ。それはそうと――」

 

 と、お礼を言う颯太の言葉に頷きながらクリスがニッコリと笑い

 

「で?誰がじゃじゃ馬だって?」

 

「………聞いてたの?」

 

 颯太の問いに笑顔のままクリスが頷き

 

「フンッ!」

 

「あだっ!」

 

 ISを纏ったままその拳を颯太の脳天に叩きこんだのだった。

 




とりあえず無事解決です!
でも、まだ事後処理とかもろもろがあるわけで……



さてさて、それでは久しぶりの質問コーナーです。
今回は針金はやてさんからいただきました
「Goetia.D08/72さんのコメント見て思い出したけど原作2巻(オーバーラップの方)で最後に出てきた束さんは「一人ヘンゼルとグレーテル」の格好をしていたんですよ。

そしてその後はあの有名な「一人不思議の国のアリス」の格好で登場しているのですが・・・

・平凡の方の束さんは「一人ヘンゼルとグレーテル」の格好はしましたか?もししたのなら服はどこに収納しているのですか?

お願いします(*´∀`)  」
と言うことですが


束「したよ~。ただ単に今の服が気にいてるからよく着てるだけでそれ以外の服もちょくちょく着てるよ~」

どこに収納してるのって質問きてるけど

束「まあ隠れ家にそれぞれテキトーに?あとは気に入ってる服なんかは量子変換してISの領域に」

と言うことです!
そんな訳で今回はこの辺で!
また次回もお楽しみに!

――あ、アンケートは引き続き受け付けていますのでご協力をお願いします。
まあGW期間中くらいできり上げると思いますが

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