IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第231話 君の奏でる三重奏

「――と、いうのが今日のあらましなんだけど……そんなわけで、海斗にばれちゃいました」

 

「「「そんな……」」」

 

 いや~参った参った、とでも言いたげに苦笑いを浮かべて言ったハヤテの言葉に楯無、簪、シャルロットの三人は驚愕の表情を浮かべる。

 ここはハヤテへとあてがわれていた病室内。ハヤテの目覚めた状況からハヤテのいない間に三人が片付けたようでキレイになっていた。

 現在はベッドに腰掛けるハヤテとそのベッドの回りに三人が座っている。

 

「いや、ね?僕も結構衝撃的でしたよ?」

 

「そうね……衝撃的だわ」

 

「衝撃的で、ショックだね……」

 

「まさか、そんな……」

 

 ハヤテの言葉に頷きながら三人が答え、苦渋の顔で頷き

 

「ええ、まさか……「「まさか、ハヤテ君が昨日のことを一切覚えてないないなんて!!」」」

 

「そっちかよ!?」

 

 が、三人の驚きの無いようにハヤテは呆れ顔で叫ぶ。

 

「あの?現状を理解していないようなんでもう一度言いますけど……海斗にばれたんですよ、『井口颯太=朽葉ハヤテ』だっていうことが」

 

「うん、みたいね」

 

「まあ海斗君は颯太の弟だし」

 

「ハヤテと接点持った時点で…時間の問題だと思ってたから……」

 

「えぇ~……なんか思ってたのと違う……」

 

 予想とは裏腹にあっさりとした反応の三人に呆然とするハヤテ。

 

「あのね、正直そんなことど~~~~~っでもいいの!!」

 

 そんなハヤテに楯無がジト目で言う。

 

「いい?私たちが一世一代の決断をして一服盛ってまでやったのに!」

 

「まさかの〝覚えてない〟だよ!?」

 

「私たちに…あんなことまでしたくせに……!」

 

「知るか!こっちだって初体験の記憶が一切ないとか悲しすぎんだろうが!ていうかあんなことって何!?昨日の僕は何をしたの!?」

 

 興奮した様子の三人に対して頭を抱えるハヤテ。

 

「いい?こっちはいくら三人とも処女とはいえ童貞相手に三対一ならこっちが主導権握れると思ったのよ。そりゃ最初の一回づつはこっちが主導権握ってたわよ」

 

「でも、三人が一回ずつ相手して、さあ一休みしようって、気を抜いた時だよ……」

 

「まるで『準備運動も終わってやっとエンジンが温まってきた』とでも言わんばかりに、私たちに襲い掛かってきて……」

 

「襲い掛かってきて……?」

 

 三人の言葉にハヤテはゴクリとつばを飲み込む。

 

「そこからはも~目くるめく快楽の世界よ」

 

「僕たちが泣いて懇願してもやめないで、むしろ僕らを鳴かせようと執拗に攻めてくるし」

 

「それを延々と一晩中続けるんだもん……」

 

「何それ記憶が無いの超絶悔やまれるんだけど」

 

 三人の恍惚とした表情で語られる言葉にハヤテが何とも言えない表情を浮かべて頭を抱える。

 

「でも、今回のことで私たちはとても重要なことに気付いたの」

 

「っ!」

 

 真剣な表情で何かを語ろうとする楯無にハヤテが息を飲み真剣な表情で頭を切り替える。

 

「いい?ハヤテ君」

 

 その真剣な表情と声色に一体何が語られるのかとハヤテは身構え

 

「セッ〇スって音楽だったの」

 

「なんか言い出したあああああああああああああああっ!!!」

 

 その表情とは裏腹にあんまりな内容の言葉にハヤテは叫ぶ。

 

「今まで私たちはなにをしていたのかしら…!!いえ分かってるわ!!」

 

 そんなハヤテの叫びとは裏腹に楯無は真剣な表情のまま続ける。

 

「サルが鍵盤をテキトーに叩く強弱で激しいとかやさしいとか、和音を出せるやつがいたら上手とか…っ!!今まではそんな次元…っ!!対して昨日の夜のアナタは…」

 

 言いながら楯無はハヤテの顔をバッと見る。

 

「プロのピアニスト!!和音が……和音だけが激しくやさしく流れるように通り抜けてどこまでも昂ぶるの…!!」

 

 興奮した様子で、そしてどこか恍惚とした表情で言う楯無。

 

「どうしよう…ハヤテ君を縛る鎖のつもりだったのに…あんなの…あんなの知っちゃったら…私たちもうアナタ以外で満足できないっっ!!!」

 

「昨日の僕マジで何やってんだああああああああああああっ!!!」

 

 楯無の様子にハヤテはベッドの上に崩れ落ちる。

 

「あんたらホントもう、何やってんだよ?なんで襲った側が逆に調教されてんだよ。だいたい僕は昨日の記憶が完全にないんだから今の理性のある状態で同じ事しろって言われてもできる自信ないですよ」

 

「え………」

 

「何だその顔はああああああああああっっ!!!」

 

絶望したような表情を浮かべる楯無にハヤテが叫ぶ。

 

「いやもうホントにシャルロットと簪も黙ってないで楯無さんになんか言ってやって――」

 

「そん…な……」

 

「ウソ…でしょ……?」

 

「おめぇらもかよおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 振り返った視線の先でシャルロットと簪も楯無と同じくこの世の終わりのような表情を浮かべる二人にハヤテは再び崩れ落ちる。

 

「もうお前らホント何なんだよ!こっちは海斗から無理難題のお願い事を無理矢理押し付けられて三人にも手伝ってもらわないといけないってのに!!」

 

「ん?無理難題?」

 

「それってどんな?」

 

「私たちに手伝ってほしい、って……?」

 

 ハヤテの様子にいったん落ち着きを取り戻した三人は首を傾げる。

 

「ええ、実は――」

 

 そんな三人にハヤテは海斗の残していった無理難題の内容を語り

 

「「「うわぁ~……それは………」」」

 

 その内容に、今度は三人が微妙な表情を浮かべたのだった。

 


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