僕は家でぼんやりと深夜アニメ見たりマンガ読んでます。
「――じゃあ、シャルルの件は後はそちらに任せても大丈夫ですか?」
『ああ、確認をしたがある程度は君の電話で決着がついているようだ。あとはどれだけこちらにとって好条件にするかだ。ここからの交渉は我々に任せてくれればいい』
デュノア社長にブラフの交渉をした次の日、俺は昼休みになると同時に指南コーポレーションのミハエルさんに電話でこれからのことを確認していた。in屋上。
『まあ、交渉ごとは俺の得意分野だし、フランス政府には知人もいる。その知人も昨日電話してからすぐに、つい先ほど到着した。もうすでにこの件は成功したも同然だ。お前もそのシャルルとかいうやつも安心してどっしり構えていればいい』
「ずいぶんな自信ですね」
ミハエルさんの言葉には不思議な自信があり、訊いているだけでそうなりそうな気がしてくる。
『君から電話をもらってからこちらでもできる限りデュノア社については調べた。すると、ボロボロと黒い情報が出てきた。それだけでこちらが主導権を握るには十分だ』
「なるほど。じゃあ――」
『エルエルフゥゥゥゥ!!』
これからのことお願いします、と続けようとした言葉は突然の叫び声に遮られる。あまりの音量に俺は顔をしかめて携帯を耳から離す。
『聞いていないぞエルエルフ!久々にお前が頼ってきたと思ったら、なんだこれは!』
『はぁ……。また連絡する』
「あ、はい。了解です」
ミハエルさんの言葉に頷いたところで電話が切られる。てか、今のがミハエルさんの知り合いか。
そういえば前に聞いたな。ミハエルさんは親しい人からは〝エルエルフ〟って呼ばれてるらしい。理由はミハエルさんのフルネームが〝ミハエル・エルフリード〟らしい。
まあ、それはともかく。ミハエルさんは自信満々だったし、任せても大丈夫だろう。
「さて、昼飯食べに行くか」
俺は屋上を後にしようと扉のところに行くと、自分であける前に扉が開いた。え?あれ?数分前にはこの扉は手動だったよね?この数分の間に何が起きた?と、驚愕していた俺の疑問は、扉の向こうから人が現れたことで納得する。というか、それしかないわな。ただ問題のは――
「い、井口……」
その人物が篠ノ之だったことだ。
「よっ、篠ノ之。一人でどうした?」
少しぎくしゃくしている相手ではあるが、できるだけ平然と聞く。
「す、少し気分転換のようなものだ」
「そうか……」
「う、うむ……」
き、気まずい!セシリアや鈴は俺も友人であるが、篠ノ之はこのふたりと少しが違う。俺と篠ノ之の間には織斑一夏というワンクッションがある。わかりやすく言えば篠ノ之は俺の友達ではなく、俺の友達の一夏の友達、お互い友達の友達なのだ。
しかも先日俺はこいつを怒鳴りつけている。俺としては特訓を共にやっているわけだし、仲良くはしたいのだが。
「………」
「悪い。ここにいたら邪魔だな」
「え?」
首を傾げる篠ノ之に俺は脇に避け、道を開く。
「あ、ああ。すまない」
礼を言いながら俺の前を通る篠ノ之。
「……篠ノ之」
そのまま進んでいく篠ノ之の背中に俺は声をかける。篠ノ之も俺の方に振り返る。
「その……前は怒鳴って悪かったな。でも――」
篠ノ之を真っ直ぐに見据えて俺は言葉を続ける。
「あの時言ったことを俺は間違っていたとは思わない」
「…………」
「それで俺のことを気にくわないって思うんだったら、それは仕方がない。好きにしてくれ。………まあそれだけだ。じゃあな」
それだけ言って俺は篠ノ之に背を向けて屋上を後にした。
篠ノ之がどんな顔で聞いていたかは知らないが、とりあえず言いたいことは言ったし、これで十分だろう。
○
「あっ、おかえり……」
教室に戻ってきた俺を迎えたのは簪だった。一夏やシャルルには野暮用があると言ってあったので先に食堂に行ったのだろう。
「どうした?」
「一緒にお昼どうかな…って」
「おう、いいぜ。俺もまだだったし」
そう簪に頷きながら言ったところで俺はふと気付く。自分のポケットがいつもより軽いことに。
「……………」
ズボンの前のポケットを上からポンポンと叩き、それから手を突っ込む。当然ではあるが空。今度はお尻のポケットを叩いてから手を入れる。もちろん空。上着のポケットを探り、そこから往生際悪く上着の内ポケットも探す。もちろんどちらにもない。
「………んがっ!」
「どうしたの?」
「……財布がない」
朝の記憶を探る。
――確か今朝は昨日の疲れで遅刻ギリギリに起床し、大慌てで着替え、朝食を食べて全力疾走しながら登校したのだ。
ちなみにシャルルに訊いたところ、何度も声をかけてはくれたらしいが、そのたびに定番の「あと五分~」を言っていたらしく、最後にはすぐ起きるという俺の言葉を信じ、誘いに来た一夏とともに登校したらしい。
どうやらその時に財布を持ってくるのを忘れたらしい。そんなどこぞの長寿アニメの主題歌みたいな失敗をするとは。
「は、ははは~。今日は飯抜きかな~。こうなったら、お茶とか飲んでお腹を満たすしかないかな」
もう笑うしかない。そんな俺に簪がどこか照れたように、しかし、しっかりと覚悟を決めたような表情で口を開く。
「な、なら……これ食べる?」
そう言って後ろ手に持っていたカバンから取り出したのは一人分のお弁当だった。水色の巾着に入れられた弁当を差し出す簪。
「え?でもそれ貰ったら簪の分が……」
「大丈夫。颯太にもと思って……その、二人分作ってきたから」
そう言ってカバンからもう一つピンクの巾着を取り出す簪。
「じゃあ……貰ってもいいのか?」
「う、うん」
俺の言葉に嬉しそうに笑った簪から弁当を受け取り、そのまま俺と簪は教室で昼食を取ることにした。
簪は料理が上手いらしく、無茶苦茶美味かった。しかもグレンラガンのキャラ弁だった。
親を除けば人から、しかも異性からもらった手作り弁当なんて初めてだったので、とてもうれしかった。
今回は少し短めでした。
アニメ見てて思ったのが、簪クオリティーのキャラ弁を食べてみたいと思ったのでそんな感じで書いてみました。
ちなみにミハエルさんを〝エルエルフ〟と呼んでいた電話口のミハエルの友人ですが……いったい誰だったんでしょうね(笑)