IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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皆様、新年あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!

さて、以前クリスマスの番外編を書くと言っていたのですが、いろいろ用事などが立て込み、気付けば年を越していました。
今クリスマスの番外編をアップするのは時期的にもおかしいので折を見て投稿します。

というわけで年越しの番外編です。
これはifのお話です。
颯太君が誰とも付き合わずに三人との仲を進展させないまま年の瀬を迎えた世界のお話です。
それを踏まえてごらん下しさい!





if番外編「年越しそば」

 年の暮れ、今年一年もいろいろあったなぁ~、なんて思いながら年末番組の某笑ってはいけないバラエティ番組を見ている俺。見ながら俺は後ろをちらりと振り返ると、そこには――

 

「ささ、お義父様。もう一杯」

 

「ありがとう、楯無ちゃん!あ、次は『魔王』にしちゃおうかな~」

 

 リビングの机では父さんのコップに氷を足し、注文通り芋焼酎のロックを作る師匠。

 

「お義母様、黒豆の味はこんな感じでいいですか?」

 

「どれどれ~……うん!いい具合よ!」

 

 キッチンではシャルロットが母さんとともに明日のおせちを仕込んでいる。

 

「すっげぇ!簪姉ちゃんのデッキ鬼つえぇ!!」

 

「ふふぅん、これは自信作……!コンボとかいろいろ考えに考えたんだ……」

 

 俺の隣では海斗と簪がカードゲームに興じている。

 

「……なんだろうこのデジャヴは?」

 

 そんな光景に俺は一人首を傾げる。

 

「どったの兄さん?」

 

 そんな俺に海斗が訊く。

 

「うん、いやね?確かに8月のお盆に来てた時に年越しも来てもいいとは言ったけど、まさかホントに来るとは……」

 

「だって兄さんいいって言ってたじゃん」

 

「でもなんだかんだで師匠たちも家で年越しすると思ったんだよ。師匠ん家も名のある名家みたいだし」

 

「家での年越しより颯太の護衛が重要って言ったら普通に通ったよ……?」

 

「おいそれでいいのか更識家?当主不在で新年迎えるのか?」

 

 簪の言葉に俺は呆れて言う。

 

「ま、うちとしても希少な男性操縦者に何かあったら困るからね」

 

「ほうほう。で?本音は?」

 

「親戚の集まりって気を遣うし堅苦しいから苦手なのよね」

 

「それでいいのか現更識家当主!?」

 

 師匠の言葉に俺は呆れてツッコみを入れる。

 

「お~い、そろそろ年越しぞば用意しますけど、海老天とかき揚げどっちがいいですか~?」

 

「あ、僕海老天で」

 

「俺はかき揚げかな」

 

「私もかき揚げ~」

 

「お姉ちゃんに同じく」

 

 そんな俺を尻目にやって来たシャルロットの問いに四人が答える。

 

「は~い。颯太は?」

 

「じゃあ……海老天で」

 

「はいは~い」

 

 俺の返事に頷き、シャルロットは母さんの手伝いに戻って行った。

 

 

 

 現在俺たちは俺の実家に来ている。

 年末年始を実家で過ごそうと計画した俺だったが、案の定俺一人で帰れるはずもなく、夏同様に護衛がつくことになった。そしてこれまた案の定俺の護衛となったのは夏同様に師匠&簪&シャルロットの三人だった。

 奇しくも夏に言っていた通り三人も一緒にうちで年末年始を過ごすことになってしまった。

 渋る俺だったが、ことは俺の意思を無視してポンポンと進んでいき、三人が着いて来ることを止めることは出来なかった。しかも実家に帰ってみれば三人は井口家の面々に歓迎される始末。そのころには俺もこの状況を諦め、実家でゆっくりのんびりできるように切り替えることにした。

 したんだが――

 

 

 

 

「おじい様たちにもおそば渡してきました」

 

「おう、ありがとうシャルロットちゃん」

 

「ごめんなさいね、お客さんなのに」

 

「いえ、気にしないでください。泊めていただくんですからこれくらいさせてください」

 

 と、家の奥のじいちゃんとばあちゃんの部屋から戻ってきたシャルロットに父さんと母さんが言い、シャルロットもニコニコと返す。

 俺はそれを見ながらそばを啜る。

 そのまま視線を向ければ父さんと母さん、海斗に加え、師匠も簪も、戻ってきたシャルロットも席に着きみんなでそばを啜っている。

 やっぱりどう考えても違和感しかない。なんでこの三人はいて当然って顔で年越しそば啜ってんだよ。

 

「そう言えば、今年も後わずかだけど、みんなにとっては今年はどんな一年だったかな?」

 

 と、俺が一人心中で首を傾げる中、父さんが周りを見渡して言う。

 

「今年か……なんかあっという間に過ぎていった印象だな」

 

「まあ颯太君にとってはそうでしょうね」

 

「二月にISを起動させちゃってから颯太にとってはすごく濃い一年だったんじゃないかな」

 

「今年もいろいろあった……」

 

 俺の言葉に三人が言う。

 

「まあいろいろあったで言えば現在進行形だけどな。去年の大晦日にはまさか一年後にはこんな年越しをするなんて予想もつかなかったろうからね」

 

「私たちもまさか次の年越しをこんな風に過ごすなんて夢にも思ってなかったわよ」

 

「僕なんか違う国来てるし」

 

「そう考えたら、私たちにとっても今年は濃い一年だったのかも……」

 

 三人は感慨深そうに言う。

 

「兄さんとしてはどうなのこの一年は?あんまりいい一年じゃなかった?」

 

 と、海斗が首を傾げながら訊く。

 

「そうさねぇ~……まあ怒涛の年ではあったけど、トータルで考えると終わり良ければすべて良しってわけじゃないけどそこまで悪くはなかったかな。かけがえのない人との出会いとかあったし」

 

「「「え……?」」」

 

 考えながら、うんと頷いて言う俺に三人が目を輝かせる。

 

「そ、それって……」

 

「もしかして……」

 

「わt――」

 

「いやぁ~ホント、流木野さんに会えるなんて夢みたいだったなぁ~」

 

「「「……は?」」」

 

 俺はうっとりしながら財布から流木野さんから頂いたライブの――後から楽屋挨拶をしに行ったときにサインしてもらった――プレミアムアムチケットを破れたり汚れたりしないようにラミネート加工したものを取り出す。

 

「あの時はもう俺死ぬんじゃねぇかって思ったね。ホント、あれがあったおかげで男女比2:30の教室も、なんなら学内に俺と一夏しか男のいない環境も、地獄の鬼軍曹のような織斑先生の指導も、すべてはあの幸せを得るための代償だったと思えば、むしろ軽いくらいの――いったぁ!!?」

 

 幸せを噛みしめながら呟く俺は突如感じた右足の指の痛みに仰け反る。

 そのまま座っていたベンチ状の椅子から転げ落ちる。

 

「誰っすか今の!!?」

 

「あぁごめんなさい。体勢変えようと思って踏み込んだら颯太君の足ふんじゃったみたいね」

 

 叫ぶ俺にしれっと謝る師匠。

 

「いやいやいやいやいや!!わざとですよね!!?明らかにたまたまふんじゃったって感じじゃなかったっすよ!!まるで憎しみ込めて親の仇でも踏み付けるようでしたからね!!?」

 

「もう、ちゃんと謝ってるんだからその辺で許してあげれば(モグモグ)?」

 

「お姉ちゃんも、悪気は無かったって言ってるんだから……(モグモグ)」

 

「………おい待てシャルロット&簪よ。お前らなんで海老天食ってる?お前らのはかき揚げだったろ?それと俺のそばの上にあったはずの海老天が二尾消えてるんだけど?」

 

「あぁ、残ってるからいらないのかと思って」

 

「もったいないから……」

 

「お前らふざけんなよ!!?残してんじゃなくて後の楽しみに取っておいたんだよ!!俺は海老天は衣がつゆ吸ってグズグズになってから食べるのが好きなんだよ!!」

 

「あ、ごめん」

 

「でももう食べちゃったし……」

 

「まだ半分残ってるだろ!!それを返せ!!」

 

「ちょっと、颯太。さすがにそれは僕らも困るよ……」

 

「そんな……お義父様たちが見てる前で間接キスさせろなんて……」

 

「言ってねぇ~!!!!!」

 

 叫びながら俺は助けを求めて母さんたちに視線を向ける。が――

 

「颯太!母さんそんな風に育てた覚えはないわ!」

 

「女の子とのキスはもっと時間と場所と雰囲気を大事にしなきゃだよ、兄さん」

 

「だから言ってねぇんだよ!!!」

 

 母さんと海斗の言葉にツッコむ。と、そんな俺に父さんはうんうんと頷きながら

 

「息子よ。女性はロマンチックな雰囲気を求めるものだ。海老天で間接キスなんて、ロマンスも何も無いだろう?」

 

「結婚前に某有名ラブソングにあやかって母さんにブレーキランプ五回点滅して『あ・い・し・て・る』のサインにしようとしたら、直後に交差点曲がるために六回目のブレーキ踏んじゃって『あ・い・し・て・な・い』のサインにしちゃった人がロマンスを語るなよ」

 

「違う!あれは『あ・い・し・て・る・よ』のサインだ!!」

 

「知るか!!そもそも母さんそれ見てなかったんだからどっちにしろロマンスの欠片もねぇだろ!!」

 

 と、父さんの叫びに俺も叫び返す。

 

「というかこれに関しては兄さんが悪いと思う」

 

「父もそう思うぞ」

 

「母も同じく」

 

「なんでだよ!?」

 

呆れ顔で言う三人に訳が分からず訊き返す俺だった。が――

 

「あ、ヤバ……年越しまであと――10・9・8」

 

「おい嘘だろそんな――」

 

テレビに視線を向けた海斗の言葉に俺は慌ててテレビに視線を向け

 

 ゴ~ン…ゴ~ン…ゴ~ン…

 

『あけまして、おめでとうございます!今年もよろしくお願いします!』

 

「年明けたぁぁぁぁ!!!」

 

 慌てる俺は遠くから聞こえてくる鐘の音と共に折り目正しく座ったまま御辞儀をする六人の中に入り損ねる。

 

「いやぁ~、めでたいわねぇ~」

 

「何一つめでたくねぇよ!!俺の海老天!!」

 

「まあまあそんなに泣かないで。ほら、しっぽあげるから」

 

「颯太、海老天のしっぽまで食べる派でしょ……?」

 

 師匠の言葉に泣き崩れながらツッコむ俺にシャルロットと簪が優しく慰めるように言う。

 

「お前ら……」

 

「ほら……」

 

「よかったら食べて……」

 

 優しく箸で差し出す二人に

 

「それお前らはしっぽ食わねぇから残しただけだろ」

 

「あ、バレた?」

 

「バレるに決まってんだろ!!食うか!!」

 

「そっか…残念……もったいないから私たちで食べよっか……」

 

「間接キスチャンスだったのにねぇ~」

 

 言いながら簪とシャルロットは対して残念そうな様子も見せずに海老天のしっぽを口に入れ――

 

「あ、そういや知ってる?海老のしっぽって成分的にはゴキブリの羽根と一緒らしいね」

 

「「ぶぅ~!!!?」」

 

 俺の一言に二人が噴き出す。

 

「おいやめろよ汚ねぇな~」

 

「颯太が変なこと言うからでしょ!?」

 

「口に入れるの待ってから言ったでしょ!?」

 

「いや、成分が一緒ってだけで、そのものじゃないからね」

 

 シャルロットと簪が叫ぶが俺は肩を竦めて言う。

 

「まったく、年越してすぐ喧嘩しないの」

 

 と、師匠が間に入って言う。

 

「ほら、二人は食べ終わってるんだから早く片付けて。颯太君はまだそば残ってるんだから食べちゃって」

 

「「「は~い」」」

 

 師匠の言葉に俺たちはしぶしぶ頷き

 

「って、あれ?」

 

 俺は自分の席に座ってどんぶりを見ると、中にはさっきまでなかったはずのかき揚げが半分ほどの大きさが入っていて

 

「ほら、海老天じゃないけどそれ食べて矛収めてね」

 

「…………」

 

 言いながらウィンクする師匠に俺は呆然と見て

 

「ずるいですよ楯無さん!自分も颯太の足ふんだ癖に好感度稼ぎなんて!」

 

「弱みに付け込むなんて!ずるい!やることが汚いよお姉ちゃん!」

 

「好感度稼ぎ?弱みに付け込む?何のことかしらねぇ~?」

 

 叫ぶ二人に涼しい顔で師匠はさっさと自分のどんぶりを片付けていく。

 二人はそんな師匠を追いながら自分のどんぶりを片付ける。

 俺はそんな三人を尻目にそばを啜る。

 

「……………」

 

「……ん?なんだよ?」

 

 と、目の前の海斗から向けられる視線に首を傾げる。

 

「いや、たぶん兄さんたちは当分こんな感じなんだろうなぁって思って」

 

「………えっ、どういうこと?」

 

「わかんないならいいよ」

 

 首を傾げる俺に肩を竦めて海斗は自分のどんぶりと持って去って行く。

 そんな海斗の背中を見送り、よく分からないまま俺はそばとかき揚げを楽しみ、最後委のつゆまで飲み干し

 

「あ、そうだ。師匠!簪!シャルロット!」

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「………?」

 

 そこで振り返って三人を呼ぶ。

 三人はそばの道具や器などを片付ける母さんの手伝いをする手を止めて視線を俺に向ける。そんな三人にニッコリと笑い

 

「あけましておめでとうございます。今年もよろしく!」

 

「「「……………」」」

 

 俺の言葉に三人は顔を見合わせ

 

「「「うん、よろしく!」」」

 

 そう微笑みながら返すのだった。

 




というわけで、改めまして、新年あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
本編は終わっていますが、if√がまだ続きますので、今後ともよろしくお願いします!
今後とも感想などドシドシいただけるとわたくしめっちゃ頑張りますので、よければどんどん感想を書いていただければと思います!
今年一年もよろしくお願いします!

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