IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

295 / 309
ifⅠ-11話 海斗の紹介したい人

「ごめんね、兄さん、それに楯無姉さんも、休みの日に来てもらっちゃって」

 

「いいのよ。可愛い弟君の頼みだもん」

 

「ありがとうございます、楯無姉さん」

 

 とある喫茶店、その四人掛けのテーブル俺と刀奈が並んで座り、その対面に海斗が座り、俺たちに向かって海斗が頭を下げる。

 そんな海斗に刀奈は優しく言う。が、その隣で俺は

 

「…………」

 

 難しい顔でパソコンとにらめっこしていた。

 

「……ごめん、兄さん休日に仕事持ち帰るくらい忙しいのに呼び出しちゃって」

 

「あぁ、違う違う。これ仕事じゃないよ」

 

「へ?」

 

 申し訳なさそうに言う海斗に笑いながら刀奈が言う。

 

「颯太君の好きなアイドルがこの間熱愛報道があってね。なんかよくよく調べてたらそのアイドルが男と歩いてるところを見たって言う一般人が写真と一緒にSNSに投稿したらしくて。それをもとに某週刊誌が周辺調査したらものの見事にそのアイドルが男と一緒にマンションに帰っていくところすっぱ抜かれちゃったんだって」

 

「へ、へぇ~……」

 

 笑いながら言う刀奈の言葉に海斗は引き攣った顔で頷く。

 

「そ、それで、兄さんは何やってるんですか?」

 

「なんかそのSNSに投降した人見つけ出してリアル割り出そうとしてるらしいよ」

 

「え、それはさすがに難しいんじゃ……」

 

「手間はかかるけど難しくねぇよ」

 

 と、驚いた顔の海斗にパソコンに顔を向けたまま言う。

 

「こういうSNSに投稿する写真にはできる限り自分の情報が入らないようにする。他人のこと陥れるような奴ならなおさらな。でも、どれだけ情報を排除しても排除しきれない情報ってのはあるもんだ。そう言う情報を拾い集めればいい」

 

 例えばな、と言いながらパソコンの画面を海斗に見せる。

 

「ここにその件の奴のアカウントがある。そいつの投稿の中で…これ、このクリスマスイルミネーションについての投稿がある」

 

 パソコンの画面に某高級ホテルの前に飾られる大きなクリスマスツリーのイルミネーションを撮影した写真が写る。

 

「当然ここにこの投稿をした本人の顔は写ってない。でも、ここをよ~く見てみろ」

 

 言いながら写真の一部を拡大する。そこにはツリーの前で写真を撮っている女子高生が数人写っていた。

 

「この女子高生のカバン、高校の指定のカバンらしく校章が描いてある。これをとあるサイトで検索すれば…ほい、出た」

 

 インターネットで開いたサイトで検索を掛けるとすぐに学校の名前が現れる。

 

「で、この高校の公式サイトに飛んで、部活動の実績のページに飛んで探せば……ほい、いた。これ、この子だね」

 

 バレー部の紹介ページで賞状を持った女生徒とイルミネーションを取っている女子高生を交互に指さす。

 

「ここにこの子の名前が載ってるからこの名前でSNSで何パターンかで検索して……ほいあった」

 

 パソコンを操作した颯太は画面に一人のアカウントを表示させる。それは確かにその女子高生の物だった。

 

「あとはこの子の投稿を遡っていて……あった、クリスマスイルミネーションの投稿。この位置関係ならこの辺に……いたいた。これだ」

 

 写真を拡大して探していった俺はその一部分を指さす。そこには一人の男が携帯を構えているところがうつっている。

 

「これがこのアカウントの持ち主。まずこれで顔は割れた」

 

「…………」

 

「こんな感じで住所とかもどんどん――ってどうした?」

 

 唖然としている海斗に首を傾げる。と――

 

「気ぃ持ち悪ぅぅぅぅっ!!」

 

「へ?何が?」

 

「こえぇよ!兄さんそれは流石に引く」

 

「そうか?やり方さえ覚えれば簡単にできるぞ」

 

「できてもやらねぇよ……」

 

 海斗はため息をつきながら言い

 

「でも、なんというか意外だった」

 

「は?何が?」

 

「だって、推しの熱愛報道なんて、ファンの中には裏切られたって言う人もいるし、兄さんももしかしたらそう言う反応するんじゃねぇかなぁって……」

 

「フッ、なんだそんなことか。いいか海斗?」

 

 パソコンのキーボードとマウスから手を放し、顔の前で手を組んだ俺は

 

「こちとら泣く子も黙るドルヲタだぞ?俺たちが見たいのは推しの笑顔だ!推しの幸せを邪魔するものは何人たりとも許さねぇ!」

 

 鋭い目つきで言う。

 

「大体彼女たちも偶像(アイドル)である前に人間なんだ。俺たちに幸せをくれる以上、彼女たちも幸せにならなきゃウソだろ」

 

「兄さん……」

 

「だから、俺は俺の推し――ツヴァイウィングの天羽奏を泣かせる奴は地獄に落とす。推しのプライベートを曝す奴はプライベートを曝される恐怖を味わえ。怒り狂ったファンに炎上されることに恐怖しろ」

 

「――ハハハッ、そこまで思ってもらえるのは嬉しいけど、さすがにそれはやめてあげて欲しいな」

 

 と、突然俺たちの後ろから笑い声とともに一人の女性が立ち上がる。

 その人物――野球帽を目深に被った長いボリュームのある赤毛の女性はつかつかと歩いて来て

 

「お邪魔します」

 

 海斗の隣にスッと座る。

 

「えっと、唐突だけど今日呼び出した話に戻るんだけど」

 

「あぁ、紹介したい人がいるって話か。察するにその人か。何?彼女?」

 

「えっと、まあ…はい……」

 

「初めまして、海斗のお兄さんとその奥さん!あたし、海斗の彼女の――」

 

 俺の問いに言い淀む海斗に対し、朗らかに傍らの女性は言いながらゆっくりと野球帽を取り

 

「――天羽奏!アイドルやってます!」

 

「……へ?」

 

「……………」

 

 ニッコリと笑みを浮かべた彼女――天羽奏の言葉に刀奈は呆けた顔をし、俺は思考停止し硬直する。

 

「えぇ!?か、奏ちゃん!?」

 

「や、楯無さん!お久しぶり~」

 

「久しぶり~、じゃなくて!いつから!?」

 

「楯無さんたちが来る20分前くらいかなぁ。早めに来て待ち伏せてたんだ」

 

「そっちじゃないから!」

 

 奏の言葉に楯無がツッコむ。と、そんな中で俺は二度ほど目をこすっては奏の顔を見て

 

「本物だ!本物の天羽奏ちゃんだ!」

 

「え?」

 

 興奮して行った俺に奏ちゃんが一瞬呆け、そんなことは気にせず俺はバッと立ち上がり

 

「井口颯太、23歳、既婚。デビューシングルを聞いた時から、心火を燃やしてフォーリンラブでした!――あ、握手してください」

 

「颯太君!?」

 

「兄さん!?」

 

「ハハハッ!お兄さん面白い人だな!」

 

 驚く刀奈と海斗に対し、奏ちゃんは楽しそうに笑いながら俺が九十度に腰を曲げながら伸ばした手を取る。

 

「これからも応援よろしくお願いします!」

 

「モチのロン!」

 

 奏ちゃんの取った手をぶんぶん振って俺は頷く。

 

「あぁ~……ごめん、話し戻していい?」

 

「すまん、取り乱した。続けて?」

 

 海斗の言葉にコーヒーを一口飲んで気を取り直し、すとんと椅子に座り海斗に話を促す。

 

「えぇ~、でね?改めて紹介すると、俺の彼女の天羽奏さんです」

 

「どうも」

 

 隣に座る人物を手で示しながら海斗が言い、奏ちゃんは笑顔で会釈する。

 

「ん?てことは待って、あの熱愛報道のすっぱ抜かれた写真に写ってる奏ちゃんの隣の男って――」

 

「はい…僕です……」

 

「今回熱愛報道があって、まあ幸いというかなんと言うかあのSNSに投稿した人の写真にも週刊誌の写真にも俺の顔写ってなかったけど、いい機会だし家族には打ち明けとこうと思って。まず手始めに兄さんから」

 

「なるほどね……」

 

 うんうん、と頷き

 

「よし、とりあえず海斗、一発殴らせろ」

 

「なんでさ!?」

 

「お前の軽率な行動で週刊誌にすっぱ抜かれたことへの怒りの鉄槌」

 

「あぁ、いや、あれはあたしの方が軽率だったんだ……」

 

 ニコニコしながらグッとこぶしを握り締める俺に奏ちゃんが頬を掻きながら苦笑いを浮かべる。

 

「あの日、海斗はネットで騒がれてるし軽率なことはしない方がいいって言ってたのに、あたしが無理矢理家に連れ込んだんだ」

 

「……Hey~、時間と場所を弁えなヨ~」

 

 アハハ~と笑う奏ちゃんにエセ外国人のような口調で刀奈が言う。

 

「だからお兄さん、海斗のことは責めないでやってほしいんだ。全部あたしの軽率な行動のせいだし。だからあたしらのことをSNSに投稿した人も見逃してやってほしいんだ」

 

「まあそう言うことなら一応は納得しておこう」

 

「ほっ」

 

 腕を組んで顔を顰めながら言う俺の言葉に海斗が息を吐く。

 

「で?馴れ初めは?何がどうなってそうなった?」

 

 海斗と奏ちゃんを見ながら俺は訊く。

 

「ん~、最初はクリス姉さん経由だよ」

 

「クリス?……あ、そっかあいつが一年の時には」

 

「そ。奏さんIS学園の三年生だったんだよ。しかも二年生には翼さんもいるし」

 

 海斗の言葉に腑に落ちた俺。

 

 

 

 

 

 クリスというのは俺の義妹、海斗の義姉だ。

 六年前、あの女性権利団体への監査から少し経った頃、IS学園にバルベルデ共和国への難民救済への支援と護衛の依頼が来た。

 なんとなくそれが気にかかり参加した俺はその地でたまたま立ち寄った無人の豪邸の地下で監禁されていた少女に出会った。それがクリスだった。

 三日間飲まず食わずで鎖につながれていた彼女を見つけた時、何故か俺は涙を流していた。何故かはわからないけど、彼女が生きていることがものすごく嬉しかった。生き別れた家族に再会した気分だった。

 その後彼女を保護し、彼女の身元を調べたところ三年前にバルベルデでNPO法人主導で行われていたボランティアに参加していたとある日本人ヴァイオリン奏者とその奥さんのソプラノ奏者がテロにより死亡し、それ以降行方不明となっていた一人娘その人ということが分かった。

 天涯孤独の彼女をどうするかというとき、何故か俺は彼女を引き取りたいと申し出ていた。

まあ流石に未成年の学生である俺には無理なので、俺の親父が身元引受人となって、井口家に養子になるという流れになった。

 そして、その話を彼女にすると、彼女は少し考えこみ、その後俺の申し出を受け入れた。

 そんなこんなで、彼女――雪音クリスは井口クリスとなり、俺の義妹にして海斗の義姉となった。

 

 

 

 

 

「どう?クリスは最近元気にしてる?あいつ俺にはほとんど連絡よこさないからさ」

 

「元気だよ。特に問題なく……まあ強いて言えば父さんが泣かされたくらい」

 

「……何があったの!?」

 

 海斗の思わぬ言葉に俺は思わず叫んでいた。

 

「あ、別にクリス姉さんがグレたとかDVとかじゃないよ?強いて言うなら父さんのせい」

 

「どういうこと?」

 

「ほら、クリス姉さんって引き取ってもらったって意識があるのか父さんたちには大人しいじゃん?」

 

「その分俺にはアタリ強いけどな」

 

「それはクリス姉さんが兄さんの事を……いや、まあそれはいいや。父さんとしてはもっと思春期の娘を持った一般的なお父さんみたいな悩みが欲しかったんだって」

 

「なんだそりゃ」

 

「ほら、なんて言うの?反抗期の娘ってのを経験したかったんだって。で、父さんが頼み込むもんだからクリス姉さんもじゃあ試しにクラスの友達とかの真似して思春期の娘っぽく振る舞ってみるかってことになって――」

 

 

 

 

 

『じゃあよろしく!いっちょ反抗期の娘風にふるまってみてくれ!』

 

『うわっ、ウッザ……』

 

『あ、あれ?もう入ってるの?』

 

『あのさ、今日から脱いだ服はどっか別の場所に置いといてくれねぇ?』

 

『え、な、なんで?』

 

『そんなの臭いからに決まってるじゃねぇか。一緒に洗濯しないでほしいから、絶対に』

 

『………』

 

『あとお風呂に入ったら洗ってお湯を張り直しといて。お父さんの残り湯とかあり得ねぇから。マジであり得ねぇから。なに浮いてるかわからないし』

 

『もうやめて!パパのライフはもうゼロだから!』

 

 

 

 

 

 

「――って感じで、いい年こいたおっさんが号泣してた、泣きながら『いつもの天使みたいなクリスちゃんに戻って~!』って」

 

「うん、それは親父が100%悪いわ」

 

 海斗の説明に俺は頷く。

 

「で、話はそれたけど、俺が入学したときにそのクリス姉さんの一個上の翼先輩を姉さんから紹介されて、そのままOGの奏さんも紹介されたってのが馴れ初めかな」

 

「あたしもまさか卒業してからあの生徒会長井口颯太の弟を紹介されるとは思わなかったな。しかもIS学園の後輩だし」

 

「あぁ、そういや奏ちゃんは俺と二年重なってたんだったか。翼ちゃんも一個下だから重なってたんだな。IS学園にいた頃は面識なかったけど」

 

 さて、この話で察したと思うが、俺が卒業した後の年からIS学園は共学化した。ISを整備開発する人員には男もいるんだからIS学園にも技術課という枠で入学者を募った方がいいんじゃないかということになった。

 海斗はそんなIS学園の共学技術課の二期生だ。ちなみにクリスは海斗の一個上なので現在IS学園の三年生だ。

 

「まああたしの方は先輩のこと知ってましたよ。先輩いろいろ有名だったし」

 

「おや、そいつは嬉しい。推しに認知されてるなんてファン冥利に尽きる」

 

 奏ちゃんの言葉に俺は笑う。

 

「で、紹介したい人って言うのは分かったけど、相談ってなんなの?」

 

「うん、実はさ、先に兄さんたちに紹介したのは頼みたいことがあるからなんだけど」

 

「なんだ?父さんたちに紹介するときに一緒にいてくれって言うんだったら嫌だぞ」

 

「…………」

 

冗談めかして言った俺の言葉に海斗が押し黙る。

 

「え?まさか……?」

 

「お願いします!父さんと母さん――というか特に母さんが暴走して根掘り葉掘り聞かないように緩衝材になってほしい!」

 

 刀奈の視線を受けて海斗がバッと頭を下げる。

 

「あたしはいいって言ったんだけど、海斗がどうしてもってなぁ」

 

「奏さんは知らないんだ。うちの両親がどんだけ悪乗りするか」

 

「まあ俺も楯無さんと婚約した報告した時マシンガントークであれこれ訊かれたしな――特に母さんから」

 

「でしょ?だから何卒奏さんを紹介する場に二人も、二人ともが無理ならせめてどちらかが同席していただけないかと――」

 

「断る!」

 

「なんでさ!!?」

 

 間髪入れずに言う俺に海斗が叫ぶ。

 

「言ったろ、俺も根掘り葉掘り訊かれたって」

 

「うん、だからこそ母さんたちの追及のしつこさは知ってるでしょ!?」

 

「うん、だから俺だけ追及されるのは腹立たしいからお前も追及されとけ」

 

「何それ!?」

 

「それによく考えてみろ。俺たちが父さんたちへの紹介の場に同席してみ?追及する人間が四人になるぞ」

 

「兄さんたちも追及に参加する気かよ!?」

 

「いや、するだろ。楯無さんとかそう言う話超好きよ?」

 

「めっちゃ大好物です!」

 

 俺の言葉にいい笑顔でサムズアップする刀奈に絶望的な顔をする海斗。

 

「ま、諦めて追及されようぜ。息子に彼女出来て、それがアイドルだってなればそりゃ親としては気になるだろうよ」

 

「でも奏さん……」

 

「まあ、いいじゃん。いくらとっつぁんたちでもお前らどこまでヤッたの?とかは訊かないだろうし」

 

「そんなこと訊く親嫌だわ!てかそのジェスチャーやめろ!」

 

 笑顔で左手の人差し指と親指で作った輪に右手の人差し指を立てて抜き差しするジェスチャーをしながら言う俺に頭を抱える海斗。

 

「まああんまり気にしなくても大丈夫だろ。今すぐ結婚するってわけでもないだろ?」

 

「それは……まあそうだけど……」

 

 海斗が言い淀む。

 

「そりゃまあそのうち結婚とかしたいけど、今はまだ俺学生だし……」

 

「あたしとしてはもう海斗以外のやつとの結婚とか考えられないし、どうせなら開き直って婚約発表してもいいかなって思ったんだけど」

 

「いいわけないでしょ!」

 

 笑いながら言う奏ちゃんに海斗がツッコむ。

 

「奏さんはアイドルなんだから婚約発表とかマズいです!イメージって物をもっと意識してください!」

 

「でも本人が望んでんだからいいんじゃない?賛否は分かれるかもだけど、俺は天羽奏の一人のファンとして応援するぞ。推しには幸せになってほしい」

 

「お、いいこと言う!流石はあたしの未来のお兄ちゃんだ!よっ!お兄ちゃんカッコいい!」

 

「ヒンッ!」

 

 奏ちゃんの言葉に俺は顔をクシャッとゆがめ胸を押さえてテーブルに倒れ伏す。

 

「あぁもうほらぁ!前から言ってるでしょ!奏さんはもっとヲタク心理を学んでくださいよ!」

 

「推しから『お兄ちゃん』なんて笑顔で呼ばれて『カッコいい』なんて言われたら幸せの過剰摂取になって尊死する生き物なのよ、ヲタクは!!」

 

「面倒な生き物だな、ヲタクって……」

 

 海斗と刀奈の言葉に奏ちゃんが苦笑いを浮かべる。

 

「とにかく!将来的には結婚も視野に入れてても、今は僕も学生だし、ちゃんと就職して、ちゃんとしたところに就職するなら大学にも行っておきたいし、それまでは結婚は考えられないです!」

 

 海斗が力強く言い、不満そうにそれに奏ちゃんが口を尖らせる。

 そんな二人を見ながら俺は幸せの過剰摂取から立ち直ってきたので顔を上げながら口を開く。

 

「ならお前も奏ちゃんと同じ『S.O.N.G』に就職しちまえばいいじゃん。あそこなら実力あれば学歴とかなくてもいけんだろ。それならあと一年ちょっと我慢すれば晴れて婚約と結婚ができるわけだ」

 

「「…………」」

 

 俺の言葉に海斗と奏ちゃんが目を見張る。

 

「何?何さ?」

 

「兄さん…奏さんの所属知ってるの?」

 

「え?知ってるけど」

 

「なんで!?一応国連直下の秘密組織なのに!?」

 

「あのね、君らの組織と日本政府の橋渡ししてんのうちの嫁さんだよ?それに俺も外務省の人間よ?そのくらい情報入ってるに決まってんじゃん」

 

「でも、いくら外務省に所属してても上の方じゃないとうちの組織の事は知れないはずなのに……」

 

 俺の言葉に驚きを隠せない顔をする奏ちゃん。

 

「……前から気になってたんだけどさ」

 

 俺の顔を見ながら海斗が訝しげな顔をしながら口を開く。

 

「兄さんってよく仕事で海外飛び回ってるし、その割に仕事内容謎だし、今だって奏さんの所属知ってるし――兄さんって外務省のどこ所属なの?」

 

「…………」

 

 海斗の問いに俺は黙り、そのまま右手で頬杖をつきながら

 

「ちょっと言えないとこ」

 

 ニッと笑った。

 

 

 

 その後、結局今後二人がどうするかは父さんたちにちゃんと紹介したうえで決めるということで結論付けたのだった。

 




颯太「ここまで『IS~平凡な俺の非日常~』を読んでいただきありがとうございました。次回から『ドルヲタ、推しが妹になるってよ』が始まりま――」

 せん!始まりませんから!
 今後も「IS~平凡な俺の非日常~」です!よろしくお願いします!



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。