IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第35話 二度あることは三度ある

「いらっしゃいませ」

 

 俺とシャルロットは買い物のため、近くの大型ショッピングモール、『レゾナンス』にやって来たのだが、ちょうどいい時間だったので昼食を先に取ることにした。というわけでレゾナンス内にあったファミレスに入ったのだ。

 

「それでは、ご注文が決まりましたらお呼びください」

 

 店員女性の営業スマイルを尻目に俺たちはメニューを開く。

 

「やっぱりこういう店はメニューの幅が広いね。迷っちゃうよ」

 

 メニューに目を向けながら笑顔で言うシャルロット。

 休日ということもあってかどこのお店も混んでいた。初めは以前来た時に行ったパスタのお店に行くつもりだったのだが、ものすごい並んでた。結果、一番空いていたこの店にやって来たのだ。一番空いているとはいってもほぼ満席状態だったが。

 

「颯太は何にするか決まった?」

 

「ん?そうだな……俺はこの『デミグラスソースオムライスのハンバーグのせ』にしようかな。シャルロットは?」

 

「うん、僕は『具だくさんカレー』にするよ」

 

 二人共注文も決まったので店員を呼び、二人分の注文をする。

 注文を聞いた店員が去って行くのを尻目に見つつ、俺はお冷に口を付ける。

 

「そう言えば、打ち合わせは上手く行ったのか?」

 

「うん。撮影は夏休みくらいになりそう」

 

「ふ~ん、夏休みか……。じゃあ結構先なんだな」

 

 夏休みか……ちょっとは実家にも帰ろうかな。まだどうなるかわからんけど。

 

「……で?やっぱり流木野サキは………」

 

「うん。すごくきれいで、オーラもすごかったよ」

 

「だよな~!!あ~、俺も会いたかったな~!!!」

 

 俺は机に突っ伏す。マジで会いたかった。自分、大ファンですから。

 

「アハハハ。あんまりにもオーラがすごかったから、緊張しちゃったよ。僕なんかがあの人と一緒にCM出ていいのかな」

 

「大丈夫大丈夫。シャルロットはその……十分可愛いって。並のアイドルなんて目じゃないって」

 

「そ、そうかな?う、ウソついてない?」

 

「お、おうよ。ウソなんて言ってないから、信じろよ」

 

「う、うん。その……あ、ありがとう」

 

 嬉しそうに微笑むシャルロットにドキッとしつつ、俺は変に熱く感じる顔を冷ますためにお冷を飲む。女子に面と向かって可愛いなんて言ったことないから緊張する。

 てか前から思ってたけどIS学園の生徒ってみんなレベル高くない?かわいい子多くない?その中でも特に専用機持ちの子とか並じゃないよね。某アイドルプロデューサーの手でISS(インフィニット・ストラトス・スクール)48とか結成できるんじゃね?

 

「……そうなったら神7は専用機持ちメンバーと篠ノ之…いやのほほんさんあたりの可能性も……大穴で山田先生が………」

 

「どうしたの、颯太?」

 

「いや!何でもないぞ!」

 

 よく考えたら専用機持ってるやつの大半(一夏スキーな人たち)がアイドルとかムリじゃん。アイドルって恋愛禁止じゃん。結成したら超儲かると思ったけど、儚い夢だったね。

 

「そう言えば、前から気になってたんだけどさ……」

 

「ん?何?」

 

「なんで一人称『僕』のままなんだ?」

 

「え!?なんでって……」

 

「ほら、もう男のフリしなくてもいいだろ?男子の仕草や言葉遣いとかは抜けた気がするけど一人称だけは『僕』のままだなーって思って」

 

「その……僕も――私もそう思うんだけど、学園に来る前に徹底されたからどうしても抜けきらなくて。………そういうのって、女の子っぽくないかな?」

 

 落ち着かない様子で目を泳がせながらシャルロットが遠慮がちに訊く。

 

「ん~……別にいいんじゃないか?なんか理由があるならって思ったけど、それが悪いわけじゃないし。別に女の子っぽくないわけでもないし。俺の親戚には一人称『俺』の女の子とかいるし」

 

「そ、そうかな?」

 

「おう。その……シャルロットは今のままで十分女の子らしいから、安心しろって」

 

 本日二度目……いや、指南の時にも一回可愛いって言ってるから三度目か。本日三度目の恥ずかしいセリフ。キャラじゃないんだよな。こういうのは一夏とかの専売特許だろ。

 

「あ、ありがとう」

 

「おう……」

 

「「………………」」

 

 なんとも言えない沈黙。その沈黙を破ったのは――

 

「……ぷっ」

 

 シャルロットがなぜか吹き出した。

 

「な、なんだよ?」

 

「いや……だって、顔真っ赤だよ」

 

「しょ、しょうがないだろ!キャラじゃないんだって!」

 

 顔が赤いのは自覚している。だって冷房効いてるはずなのに顔だけ暑いし。

 

「あーもう、こういうのは一夏に任せときたいのに!絶対もうこういうことは言わない!」

 

「アハハハ、ごめんごめん」

 

「フンだ!せっかく人がキャラじゃないことまで言って元気付けようとしたってのに」

 

 そんなことを言ってるうちにいつの間にかそれなりに時間が経っていたらしく、俺たちの注文したメニューたちが運ばれてきた。

 それを受け取り、食べ始める。

 

「もう、ごめんってば。そんなムスッとした顔しないでよ」

 

「………別に怒ってないよ」

 

 俺はふっと息を吐きながら意識して作っていた表情を崩す。

 

「うましうまし」

 

 やっぱ仏頂面じゃ美味い飯も美味くないな。

 

「………ねえ、颯太って、ああいうこと他の人にも言ってるの?例えば……楯無会長とか更識さんとか」

 

「ああいうこと?」

 

「その……可愛い、とか………」

 

「………はぁ、言う訳ないだろ。言っただろ、キャラじゃないって。思ってても言えないよ」

 

「そっか……僕にだけ、か……」

 

「???」

 

 シャルロットが何か呟いたが、あまり聞き取れなかった。

 

「ごめん、よく聞こえなかった。『僕だけ』がなんだって?」

 

「う、ううん!なんでもない!それよりもはやく食べよ!」

 

「お、おう」

 

 なぜか焦ったようにまくし立てるシャルロットに首を傾げつつ俺たちは食事を再開したのだった。

 

 

 ○

 

 

 一方その頃、颯太&シャルロットの席の近くでは。

 

 グサッグサッ!

 

「何よ!思ってるなら私にも言いなさいよ!」

 

 グサッグサッ!

 

「私だって……!颯太に、可愛いとか言われたい……!」

 

 ふたりの少女が虚ろな目つきで自身の目の前の料理にフォークを突き立てていた。

 

 

 ○

 

 

 食事も終わり、レストランを出た俺たちはレゾナンス内の店を散策しつつ、水着などの販売スペースへと移動した。

 

「って、あれ?女性用ばっかり?なぜ?」

 

「どうやら女性用と男性用では売り場が分かれてるみたいだね」

 

「ホントだ。男性用はあっちか」

 

 よく見ると離れたところに男性用のスペースがあった。広さが全然違うが今の世ならそれも仕方がないだろう。

 

「じゃあ、いったんここで別れて、三十分後くらいにまたここに集合ってことでいっか」

 

「え?……う、うん。そうだね」

 

 俺の提案になぜか妙に心残りでもありそうな表情をしながらもシャルロットが頷く。

 

「それじゃあまたあとで」

 

「うん、あとでね」

 

 シャルロットと別れ、男性用水着のスペースに向かう。

 と言っても特にこだわりのない俺は無難な黒の膝上くらいまである水着を購入。十分とかからずに終わった。

 とりあえず集合場所に向かおうと店を出た俺は数歩進んだ先で変わった光景に出会った。

 そこには――

 

「ねえねえ、お嬢ちゃん可愛いね。いくついくつ?」

 

「もしかして中学生くらい?俺らと遊ばない?」

 

「あ、あの……」

 

 いまどき珍しいナンパである。まだああいうことする人って実際にいたんだ。下手すれば痴漢とかで訴えられかねないのに。

 女尊男卑の世に生きる俺たち男はなかなかに生きずらい。そんなものにも例外はある。顔がいい奴は優遇されるのだ。俗に言う「ただしイケメンに限る」が現実味を帯びているわけだ。

 それを勘違いし、自分たちは顔がいいから優遇される、と考える人なのだろう、あいつらは。

 大抵ナンパなんてよっぽどの運がよくなければ軽くあしらわれるのだろうが、今回は相手が悪い。明らかに相手の娘は怯えてる。

ナンパ二人組の言葉通り見た目は中学生くらいだろうか。長い赤毛にバンダナを巻き、雑誌にでも載っていそうな涼しげな真っ白なワンピース。手には二つ三つほどの小さめの紙袋を持っていた。

さて、君子危うきに近づかずなんて言葉もある。見て見ぬふりでもするのもひとつの手だ。それにシャルロットとも待ち合わせている。時間がかかっては困る。面倒事に巻き込まれたくない俺は立ち去る――そう、数か月前の俺なら。

 

「いや~、お待たせ」

 

なぜか声をかけてしまった。いや、わかってる。今回はその少女が中学時代に仲良くしていた後輩女子と被り、ついつい男二人を無視して少女に声をかけてしまった。

 

「ごめんね。いろいろ水着があって迷っちゃったよ」

 

 ダウト。ものの数分で買った。

 

「え?え?え?」

 

 俺の存在に混乱した少女の背に手を添え、こっそりと耳に口を近づける。

 

「(切り抜けるの手伝うから話を合わせて。OKなら俺の服を二回引っ張ってくれ)」

 

 俺の言葉の後に腰のあたりに二回ほど引っ張られる感覚を感じる。どうやら俺の意図を理解してくれたようだ。

 

「ちょっとちょっと、お兄さん誰?」

 

「今は俺らが話してるんだけど?」

 

「誰って、この子のツレですよ。ねぇ?」

 

「えっ?……あ、はい!そうです!」

 

 俺の言葉に少女が一瞬の間をおいて頷く。

 

「「へ~………」」

 

 まずい、怪しまれてる。

 

「じゃあさ、その子の名前は?」

 

「は?」

 

「だから、その子の名前だよ。知り合いならわかるでしょ?」

 

 くそっ。めんどくさいこと思いついてくれちゃって。

 

「いやいや、個人情報っすよお兄さん方」

 

「いいじゃん。それに本当に知り合いなら名前くらい言えるでしょ?」

 

 あー、やばい。めんどくさい。しかもこいつら俺が答えないもんだからニヤニヤと意地悪く笑いだした。こいつら確信しつつあるな。さて、ここは適当に答えるか?

 と、思っていると俺の背に隣の少女の手が添えられる。そのまま背中に指で何かを書く少女。えっと――『ご・た・ん・だ・ら・ん』?あ、ゴタンダラン、この子の名前か。

 

「……はあ、わかりましたよ」

 

 俺はいかにも根負けした、といった体でため息をつく。

 

「この子の名前は『ゴタンダラン』ちゃんだよ。はい、これでいいでしょ?それじゃあね」

 

 俺は少女を連れて立ち去ろうとするが

 

「いやいや、よく考えたら名前言われてもそれがあってるか証明できないじゃん」

 

 いや、あんたらが言ったんだろ、と思いながらも回り込んできた男たちにため息をつく。

 

「だいたい仮に君がその子のツレでも、君みたいな冴えないやつと一緒にいるよりその子も俺らと一緒にいる方が楽しいって」

 

「そうそう。ほら、そんなやつほっといて俺らと遊ぼうぜ」

 

 そう言いながら少女の手を掴んで強引に連れて行こうとする男たち。

 やばいな。普通諦めるだろ。マジでどうしようか。――と思っていると

 

「てんめぇ!うちの妹に何してくれとんじゃ!!」

 

「げふっ!?」

 

 叫び声とともに背中に衝撃を受け、床を転がりながら吹き飛ばされる俺。

 何事かと、痛む背中をさすりながら体を起こすと仁王立ちした俺と同世代くらいの赤毛にバンダナを巻いたの少年が立っていた。怒りの形相で。

 

「えっと……なんで俺?」

 

「てめえだろ!?うちの妹に手を出そうとしてたのは!!」

 

 見渡すと先ほどの男二人がそそくさと逃げていく姿が見えた。おいおい、このゴタンダ(兄)の迫力に逃げ出してるよ。てか残された俺にどうしろと?

 

「おうおう、兄ちゃん。とりあえずうちに来てもらおうか。じーちゃんに殺されないといいな」

 

「は?へ?ちょ、待ってくれない?俺の話も聞いてくれると助かるんだけど?」

 

「うるせえ!問答無用!いくぞ、蘭!」

 

 ゴタンダ(兄)に無理やり引っ張られながら連行されそうな俺。それを止めたのは――

 

「こぉんの、バカ兄が!!!」

 

「げふっ!!」

 

 ゴタンダラン氏の強烈なビンタだった。

 

「な、何すんだよ、蘭!!」

 

「それはこっちのセリフよ!何助けてくれた恩人に蹴りいれてくれてんのよ!」

 

「はぁ!?」

 

 

 ――数分後――

 

 

「ホントすみませんでしたぁぁぁぁ!!!」

 

 俺の目の前には土下座をする五反田弾氏。

先ほど改めて少女、五反田蘭とともに自己紹介を受け、彼女の説明により誤解を解くことに成功した。

 

「まったくお兄は!」

 

 土下座する兄の横で怒りの形相で立つ少女。その後すぐに申し訳なさそうな顔になり

 

「本当にうちバカ兄がご迷惑をおかけしました。せっかく助けていただいたのに」

 

「あ~、いいのいいの。見ず知らずの男が自分の妹と至近距離でいたらそりゃ勘違いするって。しかも少し前にはいなかったんだし」

 

 何でも聞いたところ、この兄妹は二人で買い物にやって来たそうだ。が、兄の方がトイレへ行っている間に一人でいた彼女がナンパに会い、それを助けようとした俺を勘違いした彼が蹴っ飛ばした、ということらしい。

 

「本当になんて言ったらいいか……ほら!お兄もちゃんと謝って!」

 

「すいませんでした!!」

 

 五反田(妹)の言葉にまたもや深々と額を床にこすりつける五反田(兄)。

 

「あの、もう頭あげていいから。ほら、周りも見てるし」

 

 土下座をする五反田(兄)をどうにか立たせる俺。

 

「ホントにもういいから。ね?」

 

「本当にすみません」

 

 深々と頭を下げる少女を尻目にちらりと時計を確認すると思ったよりも時間が経っており

 

「やばっ!人と待ち合わせしてたから俺はこれで!」

 

「あ!待ってください!うち定食屋やってるんでよかったら今度来てください!ちゃんとお礼したいんで!これ住所です!」

 

「いいのに、お礼なんて」

 

「そんなこと言わずに!」

 

 と、少女は無理矢理に俺にメモを握らせる少女。

 

「じゃあ、近くに行くことがあれば寄らせてもらうよ。それじゃ」

 

「あ、最後にお名前だけでも!」

 

「名乗るほどの者でもないよ」

 

「お願いします!」

 

「じゃあ……ジョン・スミス」

 

「え?明らかに偽名じゃ――」

 

「それじゃあね!」

 

 五反田兄妹に手を振りながら俺はシャルロットとの待ち合わせ場所に向かう。

 まだギリギリ約束の三十分は経っていなかったが、そこにはもう既にシャルロットが立っていた。なぜか少し周りをキョロキョロと見渡しながら。

 

「お待たせ!悪い、遅くなって」

 

「う、ううん!僕も今来たところだし!」

 

「あれ?買い物しなかったのか?」

 

 水着を買った俺は店の紙袋を持っているがシャルロットの手には何もなかった。

 

「う、うん。実はいいのがいくつかあって迷っちゃって。だから颯太の意見を聞きたいんだ」

 

「それは構わないけど……」

 

「じゃあこっち!」

 

 俺が頷くと、すぐさまシャルロットに引っ張られ、そのままシャルロットとともになぜか試着室に引っ張り込まれた。

 

「えっと、なぜに俺も一緒に?着替えるなら外で待ってるから……」

 

「だ、ダメ!」

 

 いや、ダメって。

 

「す、すぐ着替えるから」

 

「いやいやいや、いろいろと問題あるから――」

 

 俺の言葉が終わる前に目の前のシャルロットが服に手をかけたので、やむなくすぐさま回れ右する。

 

「な、なあシャルロットさん?なぜに脱ぐんですか?」

 

「だ、だって脱がないと着替えられないし」

 

「そうかもしれないけど!」

 

 そういうことじゃねぇよ!なんで俺の前で脱ぐんだよ!てか、シャルロットの裸に遭遇するのこれで三回目だぞ!多いわ!

 そんな思考を遮るように俺の背後で小さな、しかし存在感のある音が聞こえた。

 

 ぱさり

 

 そう。それはまるで軽い布のようなものが置かれた音。

 

(ま、まさか、下着!?下着っすかシャルロットさん!?)

 

 マジでシャルロットが何考えてるのかわかりません!

 

 

 ○

 

 

 そんな颯太の疑問の答えは簡単。シャルロットは気付いたのだ。自分たちを尾行する存在に。

 

(な、なんで楯無会長と更識さんがいるんだろう。――ってそれよりあの二人がいるのはマズい!確実にマズいよ!)

 

 颯太への思いに自覚すると同時に二人の思いにも気付いたシャルロット。

 大きなライバルである彼女たちが近くにいるということへの焦りから自分でも思わぬ行動をとらせていた。

 

(で、でも、流石に同じ試着室に入るのはやりすぎだったかな……)

 

 今更ながらに自分の行動を恥ずかしく思いながら背中越しに颯太を見る。

 

(ううっ……。へ、変な子だって思われてないよね?………ええい、もうどうにでもなれ!)

 

 羞恥で顔を赤く染めながら、しかし、一度脱ぎ始めてしまった手前引き返すこともできずに最後まで着替えることを決意する。

 脱いだ下着を服の上に置き、水着を纏う。

 

「そ、颯太。も、もういいよ」

 

「オ、オウ……」

 

 裏返った声で返事をしながら颯太がゆっくりとした動きで振り返る。と、颯太の目が見開かれる。

 

「ど、どうかな……?」

 

 恥ずかしさから視線を自分の足元に下げる。

 

「い、いい!うん!いいと思うぞ!似合ってる!」

 

「そ、そうかな?」

 

「あ、ああ」

 

 照れたように頬を掻きながら視線を泳がせる颯太に、お世辞ではないことを悟るシャルロット。

 

「じゃ、じゃあこれにしようかな」

 

「おう。じゃあ俺は先に出てるから――」

 

 そう言いながら試着室のカーテンに手を伸ばす颯太。が、それよりも先に勢いよくカーテンが開かれる。そこに立っていたのは――

 

「み~つっけたっ♪」

 

「………………」

 

 恐ろしいほどの満面の笑みを浮かべた更識楯無と、能面のような無表情の更識簪だった。

 

「生徒会長として、これはちょ~っと見逃せないかしらね~」

 

 背筋が凍るほどの笑みを浮かべて言う楯無に対して颯太の口から出たことばは

 

「ちゃ、ちゃうねん……」

 

 エセ関西弁だった。

 

 

 ○

 

 

 なぜその言葉が出たのかは俺にもわからない。でも、なぜか師匠の恐ろしいまでの笑みと簪の一ミリの表情の読めない無表情によって、俺の言葉を突いて出た言葉は

 

「ちゃ、ちゃうねん……」

 

 関西人のはずなのにエセっぽくなってしまった。

 

「うんうん。わかってる。わかってるわよ?」

 

 俺の言葉に笑顔のまま頷く師匠。

 

「し、師匠……」

 

「続きは帰ってから生徒会室で訊くわ」

 

 優しげな声ではあったが、俺には師匠の言葉が死刑宣告に聞こえた。

 

「とりあえずシャルロットちゃんはお会計してきてね。もちろんあなたも一緒に生徒会室ね?」

 

 俺の背後でもシャルロットが青い顔していた。

 

 

 

 その後、学園に戻った俺たちは床に正座させられ二時間近く説教をいただき、その後、延々と第一アリーナ内を百周ほど走らされた。俺が持久力ないの知っててやらせたんだろうなぁ、師匠は。

そう言えば走ってたのはなぜか俺一人だったな。シャルロットは何させられてたんだろうか。

 




この間見たらお気に入り件数が1111でしたよ。
ポッキーの日ですね。

お気に入り件数1000いったらまた番外編でも書こうと思ってましたが、流石にスパンが短いんで1200いったらにします。

ではではまた次回!
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