颯太がアリーナをマラソンさせられているころ、生徒会室では――
「で?」
「え、えっと……」
生徒会室の椅子に座らされ、正面から楯無に睨まれるシャルロットは体を縮こませる。
颯太と同じようにマラソンのような何かしらのペナルティをもらうと思っていたシャルロット。が、その予想に反し、生徒会室に残され、正面には楯無、その隣には簪、そして少し離れた位置に虚&本音の姉妹が待機していた。
(ど、どうしよう……。というか、これから僕はどうなるんだろう……)
不安と恐怖とその他よくわからない感情を顔に浮かべたシャルロットは青い顔で震えていた。
「ま、まあまあ、お姉ちゃん。お、落ち着いて……。シャルロットさん、怯えてる……」
背後に般若でも背負っているような様子の楯無を止めたのは楯無の横に座っていた簪だった。シャルロットを真正面から睨む楯無を宥めながら立ち上がり、虚とともにティーセットのもとに行く。
「簪ちゃん、甘いわよ。この子には颯太君とのことで不明瞭なことが多すぎるのよ。そこんとこも詳しくしておかないと。あなただって知りたいでしょ?」
不満げに腕を組みながら簪に視線を向ける楯無。
「そりゃ、私だって知りたいけど……。でも、そんな高圧的な態度はどうかと思うし……。あ、シャルロットさん、お茶どうぞ。虚さんの淹れたお茶はおいしいですよ」
「あ、ありがとう……ございます……」
恐る恐る目の前に置かれたお茶と横に立つ簪に視線を行ったり来たりさせるシャルロット。その様子に気付いた簪はぎこちないながらも笑みを浮かべる。
その笑みにホッと安堵しながら出された紅茶に口を付ける。
(あ、ホントにおいしい。すごく落ち着く……)
「それで――」
シャルロットが二口、三口と口を付けてカップを置いたところで簪が口を開く。
「――実際のところは……どうなの?」
「え………?」
ニコリ、とシャルロットの正面、楯無の隣で笑みを浮かべながら言った簪の言葉に首をひねるシャルロット。
「どうって……それって……あの、もしかして……」
「二人は付き合ってるのかしら?」
「っ――!?」
自分の言葉を引き継ぐように言われた楯無の言葉にシャルロットは息をのむ。
ある程度予測していたとはいえ、こうまで真正面から問い質されるとは思っておらず、一瞬にしてパニックに陥る。
「え、えっと、私と颯太はまだそういう関係じゃない……と言いますか」
「「〝まだ〟!?」」
シャルロットの言葉に間にある机を飛び越えんとする勢いで身を乗り出す楯無と簪にイスに座ったままさらに縮こまる。
「い、いや!〝まだ〟と言いますか……将来的にはそうなればいいなぁという願望はあるけど………つまりは……その、現在、僕と颯太はただの友達なわけで……」
ごにょごにょと俯きながら指をいじるシャルロットの姿を見ながらふたりは安心しながらもひとつ確信する。
((あ、この子もライバルだな))
――と。
『…………………』
三人の間に沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは――
「………あの」
シャルロットであった。
「やっぱりお二人も……その……」
そこから先は少し言いずらそうにしているシャルロットの意図汲み取ったのか、楯無と簪が顔を見合わせて苦笑い気味に頷く。
「うん。言いたいことは分かるわ。そしてその通りよ」
「私たちの気持ちは……あなたと同じ……って言えばわかるよね」
ふたりの言葉にシャルロットは頷く。
「まあ、つまりは私たちはライバルってわけね」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら楯無が言う。
「言っておくけど、お姉さん譲らないからね」
「………僕も負けませんよ」
「……私も……お姉ちゃんにもシャルロットさんにも負けたくない」
三人の間に謎の結束と絆が生まれた瞬間であった。
「さて虚ちゃん、ロールケーキあったはずよね?出してちょうだい」
「はい」
楯無の言葉に虚は頷き準備にかかる。
「あ、ごめんなさいねシャルロットちゃん。まるで尋問みたいに問い詰めちゃって。お茶のおかわりいる?」
「え、あ、はい。お願いします」
「私の分も……」
先ほどまでの張りつめたような雰囲気が消え、和やかなお茶会のような雰囲気に変わる。
「「「ふう……」」」
三人が同時に息を吐く。それが互いにおかしくなり、プッと噴き出した。
「シャルロットちゃん、お互い大変かもだけど、これからよろしくね。困ったことがあったらいつでも相談してね。私、生徒会長だからできる範囲で助けるわ」
「よろしく……」
「こ、こちらこそ」
シャルロットと楯無、簪が握手し、互いに笑い合ったところで虚がロールケーキとお茶のおかわりを運んでくる。
「さ、食べましょ。ここのロールケーキは絶品よ。虚ちゃんのお茶との相性もばっちりよ」
「はい」
「いただきます……」
虚と本音も席に着き、フォークを取る。
和やかなお茶会の始まり――
「ところでさ~――」
と、思いきや
「先月でゅっちーは結局ぐっちーやおりむーと一緒のお風呂に入ったの~?」
本音が投下した爆弾によって生徒会室内の空気が張り詰める。
「………そう言えば……そのことも聞かなきゃいけなかった……」
「他にも颯太君がどうやってシャルロットちゃんの性別に気が付いたとかね」
ゆらり、立ち上がる楯無と簪。俯き加減のせいかその表情はシャルロットの角度からはよく見えないが、なぜか背筋に悪寒が走る。
「え!?いや、あの!ええっ!?」
尋問という名のお茶会はどうやらまだまだ終わらないようだった。
――一方その頃アリーナでは……
「はぁ……ひぃ……ふぇ……ふぇ……。あ、あと、……あれっ!?今って何周走ったっけ!?」
フラフラになりながらマラソンを続ける颯太であった。
先週忙しくて登校できなくてすいません。
今週と来週も忙しくなることが予測されますので来週は更新できないと思います。
やっとできたと思ったら短くてすみません。
次の更新もお楽しみに。