IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第42話 出撃そして……

「では、現状を説明する」

 

 旅館にある宴会用の大座敷、風花の間に、一夏達専用機持ち全員と教師陣+俺が集められた。

照明の落とされた薄暗い部屋の中、空中投影ディスプレイが浮かび上がる。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用ISである『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。そして監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

 …………は?………軍用ISの……暴走?正直突然すぎて頭がまだついていけてないけど、ここはちゃんと聞いておかないといけないようだ。その証拠に

 

『………………』

 

 周りはみな真剣な表情で聞いて――あ、一夏もついていけてない。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過する事が分かった。時間にして五十分後だ。学園上層部からの通達によって、我々がこの事態に対処する事になった」

 

 対処……ですか?なんだか嫌な予感が……

 

「教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

 

 やっぱり……。淡々と語る織斑先生の言葉に納得しながらも俺は一層気を引き締める。

 

「それでは作戦会議をはじめる。意見があるものは挙手するように」

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

 

「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」

 

「了解しました」

 

 ディスプレイに表示された情報を元に教員も含めて相談が始まる。俺もディスプレイに目を向ける。

 

「広域殲滅を目的とした――」

 

「攻撃と機動の両方を――」

 

「この特殊武装が――」

 

「しかも、このデータでは格闘性能が――」

 

(ふむふむ。つまり、機動力も攻撃力もあり格闘性能の未知数な曲射特殊武装持ち、アプローチも一度が限界……その一度しかないチャンスで確実に落とせるような、一撃必殺の攻撃力を持ったやつじゃないとダメってことか)

 

 俺はそこまで思考を持って行ったところでそれに該当すると思われる唯一の人物に目を向ける。みな同じ考えだったらしく、一人を除いてその場にいる人物の全員分の視線が集まる。

 

「……えっ!?俺っ!?」

 

『うん』

 

 驚いて訊く一夏に対して全員が頷く。

 

「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」

 

「それしかありませんわね。ですが問題は――」

 

「どうやって一夏をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないといけないから、肝心の移動をどうするか」

 

「しかも目標に追いつける速度が出せるISでなければいけない。超高感度ハイパーセンサーも必要だな」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!お、俺が行くのか!?」

 

『当然』

 

 一夏の言葉に俺を含む専用機持ち組が頷く。

 

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。もし覚悟がないなら、無理強いはしない」

 

 織斑先生の諭すような言葉に一夏が一瞬の間を空けて口を開く。

 

「やります。俺が、やってみせます」

 

「よし。それでは作戦の具体的な内容に入る。現在、この専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ?」

 

 織斑先生の問いに立候補したのはセシリアだった。

 セシリアのIS、ブルー・ティアーズにはちょうどイギリスから強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』と言う換装装備が送られており、それには超高感度ハイパーセンサーも付いているらしい。

 セシリアの超音速下での戦闘訓練も二〇時間。この中で一番の適任だろう。織斑先生もそれで決定を下そうとしたとき

 

「待った待ーった。その作戦はちょっと待ったなんだよ~!」

 

 突如天井から合われたウサミミアリスの天災、篠ノ之束博士が現れた。

 

「……山田先生、室外への強制退去を」

 

「えっ!?は、はいっ。あの、篠ノ之博士、とりあえず降りてきてください……」

 

「とうっ★」

 

 くるりと空中で一回転して着地。全員が唖然としている中で篠ノ之博士が口を開く。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん。もっといい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティングー!」

 

「……出て行け」

 

 頭を抑える織斑先生。織斑先生に篠ノ之博士を室外へ退出させるよう言われた山田先生は実行しようとするが、するりするりと逃げ回る篠ノ之博士。

 

「聞いて聞いて!ここは断・然!紅椿の出番なんだよっ!」

 

「なに?」

 

「紅椿のスペックデータ見て見て!パッケージなんかなくても超高速機動が出来るんだよ!」

 

 篠ノ之博士の言葉に答えるように数枚のディスプレイが出現し、織斑先生を囲む。

 

「紅椿の展開装甲を調整して、ほいほいほいほいっと。ホラね!これでスピードはばっちりだよ!」

 

 展開装甲?初めて聞いたんですけど。俺だけが初耳なのかと思いきや周りのみんなも首を傾げている。

 

「説明しましょ~そうしましょ~。展開装甲というのはだね、この天才の束さんが作った第四世代型ISの装備なんだよー」

 

 あれ?第四?今の最新のISって第三世代じゃなかったっけ?

 

 

「はーい、ここで心優しい束さんの解説開始~。いっくんのためにね。へへん、嬉しいかな? まず、第一世代というのは――」

 

 篠ノ之博士の解説を聞きながら俺は唖然としてしまった。

 この天災は各国が莫大な資金と膨大な数の技術者を集めて開発したものを一足飛びに飛び越え、さらにその上のものを作り出したわけだ。世の中にはいるもんだな、凡人がようやくたどり着いた境地にいとも簡単に到達する天才ってのが。

 

「具体的には白式の《雪片弐型》に使用されてま~す。試しに私が突っ込んだ~」

 

『え!?』

 

 専用機持ちのみんなや俺、さらには一夏が驚きの声をあげる。

 つまり、零落白夜発動で開く《雪片弐型》の構想がまさにそれ。言葉通りにとらえるなら、一夏の『白式』は第四世代型相当ということになる。

 

「それで、上手く行ったのでなんとなんと紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありまーす。システム最大稼動時にはスペックデータは更に倍プッシュだよ★」

 

「ちょっ、ちょっと、ちょっと待って下さい。え?全身?全身が、雪片弐型と同じ?それってひょっとして……」

 

「うん、無茶苦茶強いね。一言で言うと最強だね」

 

 きっとこの場に今見ず知らずの第三者が来るといったい何の騒ぎかと思うだろう異様な光景が広がっている。みな一様に唖然としている、俺も含めて。

 

「ちなみに紅椿の展開装甲はより発展したタイプだから、攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。これぞ第四世代型の目標、即時万能対応機ってやつだね。にゃはは、私が早くも作っちゃったよ。ぶいぶぃ」

 

 作っちゃったって……んな簡単に言われても。

 

「はにゃ?あれ?何でみんなお通夜みたいな顔してるの?誰か死んだ?変なの」

 

 いたって普通の反応ではないでしょうか。

 

「……束、言った筈だぞ。やり過ぎるな、と」

 

「そうだっけ?えへへ、ついつい熱中しちゃったんだよ~」

 

 織斑先生の言葉に悪びれた風もなく笑う篠ノ之博士。

 

「あ、でもほら、紅椿はまだ完全体じゃないから、そんな顔しないでよ、いっくん。いっくんが暗いと束さんは思わずイタズラしたくなっちゃうよん」

 

 そう言いながらウインクをする篠ノ之博士。が、一夏はなんとも言えない顔をしている。

 

「まー、あれだね。今の話は紅椿のスペックをフルに引き出したら、って話しだし。でもまあ、今回の作戦をこなすくらいは夕食前だよ!」

 

 夕飯って……まあ朝飯って時間でもないしな……。

 

「それにしてもアレだね~。海で暴走っていうと、十年前の白騎士事件を思い出すねー」

 

 ニコニコと笑顔のまま話し出した博士。その横で織斑先生が『しまった』というような顔をする。

 

 

 

――『白騎士事件』

十年前、篠ノ之束によってISの存在が発表されてから1ヵ月後に起きた事件。

日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射されたが、突如として現れた搭乗者不明のIS「白騎士」がその半数を見事に迎撃。

その後、それを受けて各国は「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと大量の戦闘機や戦闘艦などの軍事兵器を送り込んだが、その大半を無力化。また、白騎士によって撃墜された戦闘機の搭乗者にも死者は0。

結果ISには『対象を生かしたまま無力化する』ことができるほど、絶望的なまでの戦力差があるという証明になってしまった。

 そして、各国がさらに戦力を投入する中、日没とともに白騎士は忽然と姿を消した。まるで現れた時のように忽然と。

 これら一連の事件を総称して『白騎士事件』という。今では教科書に載るほどの大事件である。

 

 

 

「しかし、それにしても~ウフフフ。一体白騎士って誰だったんだろうね~?ね?ね、ちーちゃん?」

 

「知らん」

 

「うむん。私の予想ではバスト八八センチの――」

 

 ごすっ、と鈍い音がした。織斑先生の情報端末アタックが篠ノ之博士の頭に炸裂していた。

 

「ひ、ひどい、ちーちゃん。束さんの脳は左右に割れたよ!?」

 

「そうか、よかったな。これからは左右で交代に考え事が出来るぞ」

 

「おお!そっかぁ!ちーちゃん、頭良い~!」

 

 馬鹿と天才は紙一重とは言うが、こういうことか。

 しかし、ISの開発者たる篠ノ之博士なら白騎士の正体も知っているのではないだろうか。

 

「それはそうとさぁ、あの事件では凄い活躍だったね、ちーちゃん!」

 

「そうだな。白騎士が、活躍したな」

 

 ……まあ……そういうことなんだろうな。

 

「話を戻すぞ。……束、紅椿の調整にはどれくらいの時間がかかる?」

 

「お、織斑先生!?」

 

 織斑先生の言葉にセシリアが声をあげる。

 

「わ、わたくしとブルー・ティアーズなら必ず成功して見せますわ!」

 

「そのパッケージは量子変換してあるのか?」

 

「そ、それは……まだですが……」

 

 痛いところを突かれたらしくセシリアが口ごもる。それに入れ替わるように篠ノ之博士が前に出る。

 

「ちなみに紅椿の調整時間は七分あれば余裕だね★」

 

「よし。では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は三〇分後。各員、ただちに準備にかかれ」

 

 

 

 ○

 

 

準備開始から三〇分後。

予定通りすべての準備を終え、先ほどの会議で使われた大座敷、風花の間には一夏と篠ノ之以外のメンバーがそろっていた。

 俺たちの見つめる先、投影ディスプレイには浜辺に立つ白と紅の装甲の二基のIS、白式と紅椿を纏った一夏と篠ノ之が映っていた。

 

「織斑、篠ノ之、聞こえるか?」

 

 織斑先生が目の前のメインディスプレイに映る映像を見ながらオープンチャネルを通して呼びかける。

 

「今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心がけろ」

 

『了解』

 

『織斑先生、私は状況に応じて一夏のサポートをすればよろしいですか?』

 

「そうだな。だが、無理はするな。お前はその専用機を使い始めてからの実戦経験は皆無だ。突然、何かしらの問題が出るとも限らない」

 

『分かりました。出来る範囲で支援します』

 

 篠ノ之の声はいたって冷静、しかし、俺は何か違和感を感じていた。なんというか、普段の篠ノ之らしくないというか、浮ついているように感じるというか

 

「――織斑」

 

『は、はい』

 

 俺がそんなことを考えていたところで織斑先生がプライベートチャネルで一夏に通信を繋ぐ。

 

「どうも篠ノ之は浮かれている。あんな状態ではなにかを仕損じるやもしれん。いざと言う時はサポートしてやれ」

 

『分かりました。ちゃんと意識しておきます』

 

「頼むぞ」

 

 そう言って通信を切る織斑先生。どうやら篠ノ之の雰囲気に違和感を感じていたのは俺だけではなかったようだ。

 再びオープンチャネルに繋いだ織斑先生は口を開く。

 

 

「では、はじめ!」

 

 作戦開始。

 目標の『銀の福音』に向かって飛び立つ二基のIS。その後ろ姿は頼もしく見えたが、俺はなぜかすごく不安に感じた。

 この不安感を早く払拭してほしくて、しかし俺はそのことを顔に出さないように画面を見つめていた。

 

 

 

 ――が、俺のそんな祈りは届かなかったようだ。

 作戦の結果は惨敗。福音に大したダメージを与えることもできず、対するこちら側の被害は一夏の負傷、昏睡というものだった。

 

 

 

 ○

 

 

 

「で?どうする?」

 

 作戦後、一夏は治療され、いまだ目覚めていない。それに付き添う篠ノ之。織斑先生を含む教師陣は作戦室に籠っている。俺たちを含む生徒は部屋で待機を言い渡されている。

 そんな中俺たち専用機組は一室に集まり、会議をしていた。え?自室待機じゃないのかって?いや、部屋で待機とは言われたけど、どこの部屋に誰とって言われてないから。

 

「どうって……」

 

 俺の言葉にシャルロットが口ごもる。

 

「織斑先生は今福音を補足するのに作戦室にこもりっきりだろうから、何か行動を起こすなら今だ。そして、ここに集まったってことはみんな同じ考えなんだろ?」

 

 俺は言いながら周りを見渡す。みな一様に神妙な顔をしている。

 

「………あたしは行くわよ」

 

 鈴が俺の顔をしっかりと見据えて言う。

 

「一夏をあんなにされて黙ってられない」

 

「同意見だな」

 

 鈴の言葉に頷いたのはラウラだった。

 

「私の嫁に怪我をさせてタダで済ますつもりはない。私も行く」

 

「わたくしも行きますわ」

 

「僕も覚悟はできてる」

 

 ラウラに続いてセシリア、シャルロットも頷く。そんな中

 

「私は……」

 

 簪だけは渋い顔をしていた。

 

「無理強いはしない。参加したくなければいいんだぞ」

 

 簪に俺は言うが、簪は渋い顔のまま首を振る。

 

「違うの……。私も参加したい……。でも……私の『打鉄弐式』は………」

 

 簪の口から悔しげに絞り出された言葉に俺は気付く。簪の専用機『打鉄弐式』はいまだ完成していないのだ。

 

「……簪。『打鉄弐式』の完成までどのくらいかかる?」

 

「今日中には無理……」

 

「そうか………。機能はどのくらい使える?」

 

「展開する以外なら……ある程度は……」

 

 簪の答えに俺は少し考える。

 

「………本当に簪が参加してくれるなら……後方支援頼めるか?あと、福音の捕捉も。これは簪にしかできないことだと思う」

 

「………わかった……」

 

 簪が頷いたのを確認し、俺はみんなを見渡す。みな、覚悟を決めた真剣な表情を浮かべていた。

 

「……よし。それじゃあここからは時間が惜しい。役割分担と各自準備に取り掛かろう。まず福音の捕捉だけど……簪、任せるぞ」

 

 俺の言葉に簪が頷く。

 

「私が補佐しよう」

 

 ラウラが名乗りを上げる。

 

「軍で使っている衛星がある。それを経由すれば見つけるのはたやすい」

 

「よし。じゃあ福音捜索は簪とラウラ。セシリア、鈴、シャルロットは追加のパッケージをインストールするなり各自準備を進めてくれ。特にセシリアは高機動パッケージのインストールを進めてくれ」

 

 俺の言葉にみんなが頷く。

 

「それじゃあ、みんなは準備を始めてくれ」

 

 俺は立ち上がり、襖に手をかける。

 

「颯太はどうするの?」

 

 襖を開けたところでシャルロットが訊く。

 

「俺の追加装備は《火遊》だけだ。他にインストールできる装備もない。だから――」

 

 部屋から出ながら俺は室内のみんなを振り返りながら口を開く。

 

「俺はふてくされて燻ってるやつのところに行ってくるよ」

 

 

 

 ○

 

 

 

 とある一室の襖を開けた俺は部屋に入室する。

 部屋の真ん中には布団がひかれ、そこには体中に包帯の巻かれた一夏が横たわっていた。まわりにはいくつかの医療機器が設置され、常時一夏の心拍などのデータをその画面に表示していた。

 横たわる一夏の瞼は閉じられ、はたから見れば寝ているだけのように見える。

 そんな一夏の傍らには一人の少女が寄り添うように座り、俯いていた。俺の入室には気づいているようだが、こちらには見向きもしない。

 

「よお。どうだ、一夏の調子は?」

 

 俺はそんな少女、篠ノ之箒の傍らに腰を下ろし、訊くが篠ノ之は返答をしない。

 

「………無視ですか……」

 

 俺は肩をすくめながら呟く。

 

「………初めての作戦で大敗を期したご感想は?いかにも落ち込んでますって感じだけど?」

 

 俺の言葉に一瞬体を震わせたものの、篠ノ之は何も答えない。

 

「自信満々に出撃して、一夏を負傷させ、こんなところで燻ってる。そのことについて何か言いたいことはあるか?」

 

 俺の言葉の後に篠ノ之は少し間を空け、口を開く。

 

「…………私は……わ、私……は、もうISは使わない………」

 

「…………そうか」

 

 俺は頷きながら立ち上がる。

 

「……正直失望したよ、篠ノ之箒。それと同時に納得もした」

 

 俺の言葉に篠ノ之は少しだけ顔を上げる。

 

「お前は強くなりたくて『紅椿』を手にしたんだろうけど、お前はそれだけだったんだよ、篠ノ之箒。そいつを持つ責任も、覚悟も、そいつを持つことで生じるなにもかもをお前は見ていなかったんだよ。そして――」

 

 俺はそこでいったん言葉をきり、ため息を吐く。

 

「その力を求めた理由が一番気にくわない」

 

「何……?」

 

 俺の言葉に初めて篠ノ之が反応らしい反応を示す。

 

「お前はただ強くなりたかったんじゃない。お前は不安だったんだ。こいつ――一夏の周りに強い奴がたくさん現れて、一夏本人も強くなっていって、それに比べて自分は弱いままで。このままだと自分は一夏の隣に立てない、そう思ったんだろ?」

 

 俺の言葉に苦い顔をして篠ノ之が俯く。その表情が図星であることを物語っていた。

 

「その結果がこれだ。どうだ?満足か?ちっぽけな虚栄心は満たされたか?」

 

「――っ!」

 

 篠ノ之が俺に掴みかかってくる。

 

「お前に……!お前に何が分かる!?」

 

「………」

 

 俺を怒りの形相で睨む篠ノ之に対して、逆に俺は冷静だった。真っ直ぐに篠ノ之を見つめ、口を開く。

 

「わかるわけねえだろ。わかりたくもない。そこまでして守りたかった居場所を壊されそうになって、その相手に立ち向かおうともせずにふてくされてるお前の気持ちなんてな」

 

「っ!」

 

 俺の言葉に篠ノ之が手を放し、その場にへたり込む。俺はそんな篠ノ之を見下ろしながら言葉を続ける。

 

「結局お前の思いなんてその程度だったんだよ」

 

 へたりこむ篠ノ之に背を向け、俺は扉へと歩を進める。

 

「お前はずっとそこでそうしてろ。俺は――俺たちは俺たちにできることをする」

 

「――だったら……」

 

 襖に手をかけ、開いたところで背後から声がかかる。俺は足を止める。

 

「だったらどうしろと言うんだ!もう敵の居場所も分からない!戦えるなら、私だって戦う!」

 

「……………本当だな?」

 

 俺は振り返り、篠ノ之を見据える。

 

「自分の言葉には責任を持てよ。専用機持ちとしての覚悟はできてるんだろうな?」

 

「ああ!」

 

 俺の問いに力強く頷く篠ノ之を見つめ

 

「………その言葉が聞きたかったんだ」

 

 俺はニッと笑い、ずんずん進んで篠ノ之の手を掴む。

 

「な、何を!?」

 

「いいから行くぞ。みんな準備を進めてる」

 

 篠ノ之の手を掴んだまま部屋を出たところで

 

「颯太!」

 

 簪とラウラと鈴がやってくる。

 

「おう。もしかして……?」

 

「うん……」

 

「見つけたぞ」

 

 簪とラウラが頷く。

 

「ここから三〇キロ離れた沖合上空に……目標を確認した……。ステルスモードに入っていたけど……どうも光学迷彩は持っていないみたい……。衛星による目視で発見したよ……」

 

「流石だ、簪、ラウラ。鈴の方は?」

 

「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済みよ」

 

「シャルロットとセシリアは?」

 

「それなら――」

 

 簪が答えようと口を開いたところで件のシャルロットとセシリアがやってくる。

 

「たった今、高機動パッケージのインストールは完了しましたわ」

 

「準備オッケーだよ。いつでもいける」

 

「よし、あとは――」

 

 俺は言いながら篠ノ之を振り返る。みんなも篠ノ之に視線を向ける。

 

「私……私は――」

 

 先ほどまでの暗い雰囲気は消え、その瞳には決意の色をうかべた篠ノ之。

 

「戦う……戦って、勝つ!今度こそ、負けはしない!」

 

「よし!これで全員揃ったな!」

 

 篠ノ之の返答に俺は頷き、全員に視線を向ける。

 

「行くぜ、みんな!命令違反とか関係ない!行って福音倒してみんなで揃って怒られようぜ!」

 

『おお!!』

 




前回戦闘描写が終わったと思ったら次回もまた戦闘描写。
苦手ながらに頑張ります!

もう一個の方とどっちを先に更新するかわかりませんが次回もお楽しみに。
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