IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

53 / 309
第46話 賭け

「作戦完了――と言いたいところだが、お前たちは独自行動により重大な違反を犯した。帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるから、そのつもりでいろ」

 

「……はい」

 

 旅館に揃って帰還し、疲労困憊な俺たちを出迎えたのは織斑先生のつめたーいお言葉でした。

 現在俺たちは大広間に並んで正座させられ、その正面には腕組をして立つ織斑先生。

 

「あ、あの、織斑先生。もうそろそろそのへんで……。け、けが人もいますし、ね?」

 

「ふん……」

 

 怒り心頭の織斑先生に対し、山田先生は一人おろおろとわたわたと救急箱を持ってきたり水分補給パックを持ってきたりと忙しそうにしている。

 

「――で、だ。そろそろはっきりさせようじゃないか」

 

 話を切り替えるように織斑先生が咳払いをし、口を開く。

 

「井口颯太。あれは――お前の単一仕様能力はいったいなんなんだ?」

 

「何って言われても……見たままです」

 

「見たままでわからないから訊いているのだろうが」

 

 織斑先生がため息をつきながら言う。まわりを見るとみんなも興味深そうにこちらを見ている。

 

「……俺も理解しきれてないんで噛み砕いて説明しますけどいいですか?」

 

「かまわん」

 

 織斑先生が頷いたのを確認し、俺は立ち上がる。その場の全員の視線が俺に向く。

 

「皆さんご存知の通り、俺の機体『火焔』は一定以上機体に熱が溜まると熱暴走によって行動不能になります」

 

 俺の言葉にみんなが頷く。

 

「俺や指南の人たちは、これは第三世代相当の装備を二つも同時に使ったことで起きた欠陥だったんじゃないかと思ってました。でも実は、あれはあれで必要なことだったんです」

 

「……ん?どういうことだ?」

 

 一夏が首を傾げながら訊く。

 

「俺の機体は熱暴走を起こす欠陥機だったんじゃなくて、ある一定以上熱エネルギーを溜めて一気に放出する仕様だったみたいなんです。それが俺の単一仕様能力『ハラキリ・ブレード』だったんです」

 

「『ハラキリ・』――」

 

「『ブレード』……」

 

「……まんまね」

 

 ラウラ、篠ノ之、鈴がリレーのように言い、みんなが同意するように頷く。

 

「うん、俺もそう思う。……まあ見てた人はわかると思いますけど、本当に名前のまんまなわけです。

 『ハラキリ・ブレード』は《火人》を使っての技なんで、技発動と同時に自動で《火人》以外の装備が解除されます。それと同時に機体内部に溜まっていた熱エネルギーが目に見える形でオーラのように現れる。それがあの発光現象なわけです。

 あとは簡単。《火人》を自分のお腹に切腹の要領でぶっ刺して引き抜くだけ」

 

「ちょっと待って!」

 

 俺の解説にシャルロットが声をあげる。

 

「ブレードを自分のお腹に刺したのは見てたけど、実際に刺してたら大変なことになるんじゃないの?」

 

「それに、あの時……《火人》は颯太の体を突き抜けてなかった……」

 

 シャルロットと簪の言葉に皆同意するように頷く。

 

「当たり前だろ。あんなでっかいブレードでお腹刺したら死ぬに決まってるじゃないか」

 

「だったら――」

 

「そう。だから、そこにもう一つ仕掛けがある」

 

 俺は右手の人差し指をぴんと伸ばしながら言う。

 

「『ハラキリ・ブレード』発動によって《火人》を自身の装甲に突き刺すと、《火人》の刃は装甲に触れると同時に量子分解されて装甲と一体化する。それによって装甲と一体化した刃は接地面を通して機体に溜め込まれた熱エネルギー、そして必要最低限のエネルギーを残してブレードによる攻撃エネルギーに変換されるわけです」

 

「その結果があの攻撃力なわけか……」

 

 俺の解説に織斑先生が納得したように頷く。

 

「……ちょっと待ってください」

 

 そこで何かに気付いたようにセシリアが挙手をしながら口を開く。

 

「溜め込まれた熱エネルギーと必要最低限のエネルギーを残して攻撃能力に転換って……あの時の戦いでは颯太さんの機体はそれなりにエネルギーを消費していたはずですわ。その状態であの威力ということは……」

 

「そう。実質あれは『火焔』のフルパワーの『ハラキリ・ブレード』じゃない」

 

『っ!』

 

 俺の言葉に他のみんなもその意味に気付いたらしく、息を呑む。

 

「まあでも、『火焔』に効率よく熱エネルギーを溜めようと思ったらある程度装備を使わないといけない。装備を使えばエネルギーを消費する。だから、フルパワーをすべて『ハラキリ・ブレード』に回すってのは難しいと思う」

 

 厳密にはできなくもないかもしれないけど、そんなことしようものならこちらは熱エネルギーが溜まるまで攻撃のしようがないわけだ。

 

「あと、考えたくないけど、『ハラキリ』が相手に当たらなかった場合だよ。必要最低限のエネルギーしか残さないってことは……」

 

「そうか!それ以降『火焔』は戦闘不能になる」

 

「それどころか、機体を維持するエネルギーすら残らないみたいなんだよな」

 

「あっ!だからあの時『火焔』は勝手に展開解除されたんだ」

 

「どうやらそうらしい」

 

 シャルロットの言葉に俺は頷く。

 

「使うエネルギーを調整すればいいじゃないですか?」

 

「できたらそうしてますよ。できたら……ね」

 

 山田先生の言葉に俺はため息をつく。

 

「たく、あいつはそういう大事なことはちゃんと教えといてくれればいいのによ……」

 

 俺は右手の赤いリングを撫でながら呟く。

 

「そう言えばあの戦闘の時から気になっていたんだけどさ」

 

 俺の呟きを聞いていたらしい鈴が口を開く。

 

「たまにアンタが言うその〝あいつ〟って誰のことなの?あの『ハラキリ・ブレード』のこともその人から聞いたみたいに言ってたじゃない。少なくともあの戦闘が始まる前にはアンタは『ハラキリ・ブレード』の発動方法なんか知らなかったんでしょ?」

 

「………やっぱそこ気になる?」

 

 俺の言葉にみんなが頷く。ですよね~。

 

「言いたくないんだよな~。言っても絶対信じないもん」

 

 俺は頬を掻いてからため息をつく。

 

「………『火焔』だよ」

 

「は?」

 

「だから、『ハラキリ』のこと教えてくれたのは『火焔』だよ。……まあ教えてくれたって言っても、666溜まったらすごいことが起きるよ、くらいしか教えてくれなかったけどな。あいつ絶対説明不足で慌ててた俺を楽しんでやがったな」

 

『……………』

 

 俺の言葉を受けたみんなは呆然としていたが、そのうちに織斑先生と山田先生を除く女子メンバーが顔を見合わせ、代表したようにシャルロットが俺の方に歩み寄って来て俺の額に手を当てる。

 

「熱なんてねぇよ!」

 

「じゃあ墜落したときに頭ぶつけたの?」

 

「どこもおかしくない!俺は正常だ!」

 

 俺の言葉にみんながかわいそうなものを見るような目で曖昧に頷く。

 

「だぁー!もう、だから言いたくなかったんだよ!絶対こうなると思った!」

 

 俺は頭を掻きむしりながらその場にしゃがみ込む。

 

「………なあ、颯太」

 

 そんな俺に一夏が寄ってくる。

 

「……なんだよ、笑いたきゃ笑えよ。どうせ俺の頭がおかしくなったんですよぉだ」

 

 俺は不貞腐れて投げやりに言う。

 

「……俺も会った」

 

「は?」

 

「たぶん、俺も『白式』に会ってる」

 

「……まっじで!?」

 

 一夏の言葉に俺はガバッと体を起こし、一夏に詰め寄る。

 

「いや、俺もよくわかってなかったんだけど、颯太の話を聞いたらなんか納得したんだよな。……あれ、たぶん『白式』だったんだ」

 

『…………』

 

 一夏の言葉に本日何度目かの唖然とした顔になるみんな。しかし俺にはどうだっていい。

 

「だよなだよな?俺間違ってないよな?会えるよなISって」

 

「いや、たぶんってだけだからあんまり自信ないんだが……」

 

「いいんだよ!お前のISだろ?お前が『白式』だって感じたんならきっとそうなんだよ!」

 

 俺は一夏の背中をバンバンと叩きながら言う。

 

「あ、ちなみにお前の『白式』はどんなだった?俺のは金髪の見た目同い年くらいの美少女」

 

「俺のは……白いワンピースの女の子だったな」

 

「へぇ~、じゃあISってもしかしてみんな女の子なのかな?」

 

 と、ふたりで盛り上がっている中、隅では女子ズがこそこそとなにごとか相談していたが、何か決まったらしく全員で頷いた後山田先生と織斑先生に向き直る。

 

「先生、私たちは後回しでいいので二人の精密検査をしてやってください。特に頭を重点的に」

 

「「おいっ!」」

 

 代表したように篠ノ之が言った言葉に一夏と揃って声をあげる。

 

「だから!俺らはどこもおかしくないって!」

 

「ホントに会ったんだって!」

 

 俺たちの言葉に女子ズは生暖かい視線でとってつけたような笑みを浮かべる。

 

「ああ。わかってる、わかってるぞ。お前たちはそれぞれのISに会ったんだろう?」

 

「羨ましいですわー。わたくしも『ブルー・ティアーズ』に会いたいですわー」

 

「あたしの『甲龍』はどんなのかしらねー」

 

「そうそうあることじゃないよねー。自分のISと対面するなんてねー」

 

「きっと明日には笑い話になってるだろうな」

 

「さっ……早く検査に……」

 

「「だからっ!」」

 

 六人分の生暖かい視線の中で俺と一夏は頭を抱える。

 

「………なんかもう虚しくなってきたな」

 

「な?ここまで言っても信じてくれないなんて、仲間の言うことくらい信じてくれていいのにな」

 

 一夏と肩を寄せ合ったため息をつく。

 

「はあぁ、俺が気を失ってる間はあんなに俺が戻ってくることを信じてくれてたのにな。シャルロットや簪は諦めかけてたみんなにあんなに力強く言い切ってくれたのに。『颯太が……こんな簡単に死んだりしない!絶対に!』『きっと……大丈夫!』……って」

 

『……へ?』

 

「他のみんなだって俺のこと非凡だの平凡を真っ向から否定してたのに、これじゃあ別の意味で俺が普通じゃないみたいじゃないか」

 

『は?』

 

 俺の言葉に一夏を含めたみんなが驚きの声をあげる。

 

「え!?ちょっと待って!なんで颯太がそのことを知ってるの!?」

 

 シャルロットが疑問の声をあげる。

 

「なんでって……何が?」

 

「だってあのとき颯太は意識なかったんじゃ……もしかして目が覚めてたの!?」

 

「いや……でも……確かにあのとき颯太は……」

 

「うん。意識なかったと思う。その時『火焔』に会ってたし」

 

「だったら!」

 

「なんか『火焔』がISのコアネットワーク経由でみんなのリアルタイム映像見せてくれてたよ。あー、あと師匠と織斑先生の通信を音声だけだけど聞いたり」

 

「何?」

 

 俺の言葉に織斑先生も驚愕の声をあげる。

 

「え?……じゃあ聞いてたの?あの時のこと全部?」

 

「うん。聞いてたし見てた。シャルロットが泣きそうな顔しながら『颯太が……こんな簡単に死んだりしない!絶対に!』って言ってるのも、簪が鼻声で『きっと……大丈夫!』って言ってるのも、みんなが寄ってたかって俺のことを非凡非凡言ってるのも、全部」

 

 俺のモノマネを織り交ぜた言葉に全員がぽかんとした表情を浮かべながら、その中でシャルロットと簪がわなわなと肩を震わせながら俺を睨む。……やばい、地雷ふんだ。

 

「……さてと。精密検査はともかく診断と治療はとっととやってしまいましょう。とりあえず俺と一夏は部屋を出ていた方がいいですね。服とか脱ぐでしょうし。てなわけで――また後で!」

 

 いうと同時に俺はダッシュで逃げる。

 

「あっ!待って颯太!」

 

「話は……終わってない……!」

 

 背後でシャルロットと簪の声を聴きながら俺は速度を緩めず、むしろ全速力で走る。

 

「あ、山田先生!俺の番になったら呼んでください!すぐ来ますんで!」

 

「あっ、はい……わかりました……」

 

 そんな光景に呆然としながらも山田先生がちゃんと頷いたのを確認し、俺は大広間から飛び出していった。

 

 ――そう言えば、検査の時に山田先生に〝あれ〟お願いしてみるか。

 

 俺は走りながらふとそんなことを考えながら、とりあえずあてがわれている自室へと向かうのであった。

 

 

 ○

 

 

 月明かりに照らされる岬の上で、篠ノ之束は柵に腰掛け数枚の空中投影ディスプレイに目を向けながら子供のような笑みを浮かべていた。

 

「うーん、紅椿の稼働率はこんなものかぁ。まあ上々かな~。それにしても白式には驚くなぁ。まさか操縦者の生体再生まで可能だなんて、まるで――」

 

「――まるで、『白騎士』のようだな。コアナンバー〇〇一にして初の実戦投入機、お前が心血を注いだ一番の機体に、な」

 

「……やあ、ちーちゃん」

 

「おう」

 

 森の中から静かに姿を現した千冬。が、そのことに驚いた様子もなく平然と答える束。

 ふたりは互いの方を向くこともない。背中を向けたまま束は先ほどまでと同様に足をぶらつかせ、千冬はその身を木に預ける。

 ふたりの間にある信頼が互いの顔を見ずとも相手がどんな表情なのかを確信させていた。

 

 

ふたりはその後、とある例え話を交わす。それは白い例え話と紅い例え話、そして、ある男子高校生に関する例え話。そして――

 

 

 

「ねえ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」

 

「そこそこにな」

 

「そうなんだ」

 

「――俺は、楽しいけどもうちょっと男に生きやすい世界の方がいいですね」

 

 そんな二人の話に割り込むように現れる颯太。その様は今まで全力疾走した後のように肩で息をしていた。

 

「井口……お前……」

 

「なんだい、凡人。私たちの話に割り込むなんてどういう了見だい?」

 

 先ほどまでの楽しげな笑みを消し、颯太を睨むように束が見つめる。

 

「なんだとは不愛想ですね。せっかく約束を果たしに来たのに」

 

「約束?」

 

 颯太の言葉に束は首を傾げる。

 

「はぁ……」

 

 颯太はため息をつきながらポケットから取り出したものを束に向かって投げる。柵に座ったまま受け取った束は自分の手の中のものに視線を向ける。

 

「これは……」

 

「俺の血液200mlと髪の毛数本です。篠ノ之とは結局あの時は引き分けたんで博士の指定してきた〝些細な〟願いです」

 

「ああ……あれね」

 

 受け取ったものを頷きながらポケットにしまう束。

 

「血液200mlなんてどうやって抜き取ったんだ?」

 

「検査の時に山田先生に頼みました。それで、篠ノ之博士……」

 

「はいはい分かってるよ」

 

 おざなりにパタパタと手を振りながら頷く束。

 

「正直君なんかとの約束果たす義理はないけど、約束したときちーちゃんもいたしね。これで約束反故にしたらちーちゃんが怖いから君の些細な願いも叶えてあげるよ。そのうち暇を見つけて君の機体を見に行ってあげる」

 

 嫌々に言う束の言葉に一瞬笑みを浮かべた颯太はすぐに真顔に戻り首を傾げる。

 

「………はぁ?俺の機体を見る?何の話ですか?」

 

「は?何言ってるんだい?あの時言ったじゃないか、君の専用機はまだ解明されてないことがあるって。それを私に解明させるのが君の些細な願い何でしょう?」

 

「……違いますよ」

 

「へ?」

 

 颯太の言葉に呆然とする束。そんな中何かに気付いたように千冬がハッとする。それを見ていた颯太は笑みを浮かべる。

 

「織斑先生。俺はあの時なんて言ってましたっけ?」

 

「〝些細な〟願いを叶えてくれ、だ」

 

「その願いの内容は?」

 

「……言っていない」

 

「はぁ!?」

 

 千冬の言葉に束が驚きの声をあげる。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!あの時私はちゃんと確認したよ!君の専用機を解析すればいいのか、って!」

 

「でも、俺返事しましたっけ?」

 

「え?………あっ!ま、まさか……?」

 

「そう。俺はあの時にっこりと笑っただけ。否定も肯定もしていない。それを勝手に肯定と解釈したのはあなただ、篠ノ之博士。この賭けの罠は俺が勝っても引き分けてもあなたが負うリスクは同じだったということですよ」

 

「で、でも、こんなのは詐欺だよ!」

 

 憤慨した様子の束に対し、颯太は冷静に意地悪い笑みを浮かべる。

 

「どこが?俺はすべて合意の上で設定したルールにのっとっていますよ?それで了承したのはあなただ。確認しなかったあなたが悪い」

 

「くっ」

 

 颯太の言葉に反論できないのか悔しげな表情になる。

 

「まあさすがに織斑先生が証人ですし、〝些細〟の範疇をあまりに逸脱した願いは言いませんよ。――でも、それ以上にあなたはこのことの意味を理解しているでしょう?あなたはしてやられたわけだ。自分よりも下だと見下していた凡人に一本取られた気持ちはいかがですか、篠ノ之博士?」

 

「くっ!こ、こんな約束――」

 

「反故にしますか?それこそ俺にしてやられたことを、そんな屈辱的な事実を認めることになりますよ。しかもあなたはさっき言いましたよね?俺の願いを叶えると。ここで反故にすればそれこそ織斑先生のお怒りを買うんではないでしょうか?」

 

 そう言いながら千冬の方に視線を向ける颯太。束も助けを求めるように視線を向けるが

 

「諦めろ束。お前の負けだ」

 

「そんな~!」

 

 千冬の言葉に呆然とする束。そんな束の顔を心底楽しそうな笑みを浮かべた颯太が口を開く。

 

「さあ、篠ノ之博士。お約束を果たしてもらいましょうか。俺の、〝些細な〟願いを、きいてもらいますよ」

 

「くっ!わかったよ!何をすればいいの!?」

 

 もはや半ばヤケクソのように束が叫ぶ。

 

「やることは簡単ですよ。あなたにはある物を作ってほしいんです」

 

「ある物?」

 

「そう――俺の専用装備です」

 

「……は?」

 

「だから、俺の装備です。篠ノ之束の篠ノ之束による井口颯太のための専用装備。……お分かり?」

 

「それはわかってるよ!なんで大天才の私が君みたいな凡人の装備なんか作らなきゃいけないんだよ!」

 

「……あなたを一生俺の奴隷にする、なんて願いよりはよっぽど〝些細〟ではないですか?」

 

 颯太の言葉に束は言い返せないように口をつぐむ。

 

「くくっ、ハハハハハ!してやられたな、束。諦めてこいつの装備を作ってやれ」

 

「ちょっとちーちゃん!?」

 

 笑いながら言う千冬の言葉に束が不満げに叫ぶ。

 

「………わかったよ。作ってあげるよ!作ればいいんでしょ!?」

 

「ありがとうございます、篠ノ之博士」

 

 やけっぱち気味に叫ぶ束の言葉に笑顔で恭しく礼をする颯太。

 

「なんとなく感じてたけど、今はっきりと理解したよ。――おい凡人!」

 

「……なんですか?」

 

「私は……お前が嫌いだ」

 

 憎々しげに言う束の言葉に颯太は口元に笑みを浮かべる。

 

「奇遇ですね。俺も――」

 

 颯太が言いかけたところで突如岬に吹き上げる風が強くうなりを上げる。

 舞い上がる砂に顔をそむけた颯太が再び顔を上げた時、そこにはすでに束の姿はなくなっていた。

 

「――俺もあなたのことは嫌いですよ、篠ノ之博士」

 




どうも、前回からそれほど期間をあけずにの投稿です。
さて、この話では『ハラキリ・ブレード』の設定を解説しました。
VVVのままでは再現しずらかったので自己解釈を交えました。

あと、賭けの結果もここで回収です。
さて、束さんはいったいどんな装備を作ってくれるんでしょうね~(^ω^)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。