IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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どうもお久しぶりです。

ここの所忙しく、久々の投稿になりました。
しかも内容が数日遅れのクリスマス。
遅くなってしまい本当に申し訳ありません。


番外編 ChristmasEve

「さて、今日は楽しい楽しいクリスマスイブなわけだが――」

 

 俺は片手にコーラの注がれたコップを持ち、口を開く。

 ここはIS学園の食堂。目の前には少し大きめの円卓。机の上には様々な豪華な料理。そんな机を囲むように俺を含めて全部で九人の人間、俺・一夏・篠ノ之・セシリア・鈴・ラウラ・シャルロット・簪・楯無師匠が(俺は立っているが)座っている。

 みな、俺と同じくそれぞれ好みのジュースの注がれたコップを持っている。

 

「なんでみんな制服なの?まあ俺もだが……。しかし、よくもまあ揃ったもんだな。穢れのないのがぞろぞろと……」

 

 ドン!

 

「舐めてんじゃねえぞ!」

 

 俺は空いた手で机を叩きながら叫ぶ。

 

「聖なる夜、クリスマスイブに相方のいないのが集まって何やってんだお前らは!いいのか!?それでいいのか!?ぜんっぜんよくねえっての!!何か言え、一夏!」

 

「………いやまぁ…みんなでパーティーした方が楽しいし」

 

「でったよ、このセリフ~!『ミンナデぱーてぃーシタ方ガ楽シイシ』、何その敗北宣言!!貴様ら自分で何しでかしたのか考えたことあんのか!?わかったら恋人作れ!この犯罪者どもぉぉ!!!」

 

 俺は最後に一段と大きく叫び、肩で息をする。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……あぁんんっ!……さて――じゃあ乾杯!!」

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

「やっぱりお前が乾杯の音頭を取るのはやめろ!」

 

 俺が持っていたコップを高々と掲げたところで鈴とラウラが異議申し立てる。

 

「なんだよ、せっかくお前らのテンション上げてやったのに」

 

「下がりましたわ!」

 

「お前ではだめだ!一夏だ!一夏が乾杯の音頭を取れ!」

 

 セシリア、篠ノ之の言葉に渋々腰を下ろし、逆に一夏がコップ片手に立ちあがる。

 

「え~っと……じゃあ颯太に代わって、俺が。――えー、学園も冬休みに入り、今年も残すところあと少し。今日はクリスマスパーティー兼忘年会ということで羽目を外しすぎない程度に存分に楽しもうぜ!乾杯!!」

 

『乾杯!!!』

 

一夏の言葉の後にみな揃って言いながらコップを掲げる。

 コップ同士をぶつけ合うコツコツという音が響き渡った。

 

 

 

 さて、先に一夏が述べた通り、俺たちは現在学食の一角を借り、クリスマスパーティー兼忘年会をしている。

 今日の午前中には終業式が行われ、晴れて冬休みに突入したIS学園。世間ではクリスマスイブということもあり、みんなで楽しめるようにとパーティーを企画したのだ。

 料理の一部は食堂のおばちゃんたちにお願いし、またその他は材料をみんなで出し合ったお金で購入し、料理の腕前のうまい人たち(一夏、篠ノ之、鈴、シャルロット、楯無師匠)の手によって華麗に調理されたものだ。俺を含めたほかのメンバーは役割分担として食堂内のクリスマス風の飾りつけを行った。この飾りつけにはパーティーとは関係ない学園生徒のみんなにも好評であった。

 ちなみに、こうやってパーティーしているのは俺たちだけではないようだが、食堂を使って行っているのは俺たちだけだ。他に迷惑のかからないように食堂の使用時間から少しずれた時間帯に使っているのだ。なのでどれだけ騒いでも他に迷惑をかけることはないだろう。また、一番迷惑をかけそうな食堂のおばちゃんたちも先ほど料理のおすそ分けをしたところ、気にせず楽しんでくれて構わないとのことだった。

 さらにちなみに先にも言った通り他でも仲のいいメンバーでパーティーをしている人は多いようで、そんなグループからたびたび一夏が誘われているのを見かけた。

ただ、こちらが先に予定として決めていたのでことごとく一夏は断っていたが。

 え?俺?あっはっはっは~、のほほんさんくらいしか誘ってくれなかったよちきしょう!

 

 

 

 さてさて、そんなわけで豪勢なごちそうに舌鼓を打ちながら歓談に花を咲かせているわけだが

 

「しっかし、アンタのさっきの乾杯の音頭何なの?」

 

「そうだよ。なんか妙に気持ちの籠った演説になってたけど」

 

 鈴が呆れ顔で、シャルロットが苦笑いで俺に言う。

 

「いやぁ、クリスマスイブなんて恋人と過ごすのが普通じゃん?しかも俺が今いるのはIS学園。俺と一夏以外は全員女子なわけだから入学前には『今年の冬は、寒くない!』とか考えてたのに……結局今年も友達とのクリスマスパーティーになったと思うと……ねぇ」

 

 俺はため息まじりにちびちびとコーラを飲む。

 

「でも……みんなで過ごすのも…悪くないと思うけど……」

 

「そりゃそうなんだけどさ~」

 

 簪の言葉に頷きながら自分の取り皿に料理を取り、ため息をつく。

 

「楽しいよ!友達とワイワイやるクリスマスパーティーは楽しいよ!でもさ、やっぱ恋人と過ごしたいじゃん!――あ、このターキーおいしい」

 

 簪の言葉に力強く返しながら俺は食事を続ける。

ちなみにだがここに並ぶ料理の中で食堂のおばちゃんたちに作ってもらった料理はちゃんと俺たちが材料費出したのであしからず。

 

「アハハハ。愚痴ってるわね、颯太君」

 

 俺の横でジュース片手にごちそうを食べている師匠が笑いながら言う。

 

「愚痴ってほどでもないですよ。ただねぇ、やっぱり彼女と過ごす聖夜は憧れですよ」

 

 師匠に答えながら俺は再度ため息をつく。

 

「まあまあ悩むな若者よ。逆に考えるのよ。美少女に囲まれて美少女の手料理が食べられるクリスマスなんてめったにないわよ」

 

「………まあそうかもしれませんけど……」

 

「そんなわけでこの美少女のお姉さんの料理も食べてね、颯太君。はいこれ」

 

 俺の言葉に笑みを浮かべながら師匠は俺の皿に料理を盛る。

 

「……あれ?これって……」

 

「ん?どうかしたの?」

 

 師匠の持ってくれた料理を見ながら俺はふとその中の一品に視線を止める。

 

「これ……もしかして〝ペリメニ〟ですか?」

 

「あら正解。食べたことあるの?」

 

「いえ、実物は初めて見ました。そっか、これが……やっぱアニメで見たのとは全然違うな。アニメのより小さい。てか、あれが普通じゃなかったのかな?」

 

「何ぶつぶつ言ってるの?」

 

「あ、いえ。何でもないです」

 

 師匠が首を傾げて訊いてきたので俺は思考を中断し皿の上に意識を戻す。

 

「そいじゃま、いただきます」

 

「は~い、めしあがれ~」

 

 皿にのせられた師匠作のペリメニを口に運ぶ。

 

「………うまいっ!」

 

「やった!」

 

 俺の言葉に師匠が嬉しそうに笑う。

 

「すごいですね師匠。料理上手いの知ってましたけどロシアの料理もできるとは。流石はロシアの国家代表」

 

「ふふ~ん、任せなさい」

 

「これは将来いいお嫁さんになりますね」

 

「ふぇ!?」

 

「はい?」

 

 俺の言葉に師匠が呆けたような顔になる。

 

「……どうかしました?」

 

「う、ううん!なんでもないなんでもない!」

 

「???」

 

 首を傾げながら再度机の上に視線を戻し、次の料理を選ぼうとすると一つの皿に視線が止まる。

 

「おっ!すごいな、肉まんがある。これはやっぱり鈴が作ったの?」

 

「え?肉まん?あたし知らないわよ」

 

「え?でもこれ肉まんだろ。どう見ても」

 

「うっ……」

 

 俺の言葉に隣から噛み殺したようなうめき声が聞こえた。

 恐る恐るそちらに視線を向けると視線を逸らすシャルロットの姿が。

 

「……シャルロット?」

 

「な、なにかな?」

 

「これは君が?」

 

「まぁ……うん……」

 

「……料理名は?」

 

「…………ペリメニ」

 

「……でかくね?この大きさはもう肉まんじゃね?」

 

「で、でも、ほら。ちゃんと下にスープ入ってるし」

 

「まぁ……な」

 

 俺は頷きながら大皿からシャルロット作のペニメニに箸を伸ばす。

 いや、だって『食べてほしいなぁ』みたいな目で見られたら……食べないわけにはいかないだろ。

 

「いただきます」

 

「ど、どうぞ」

 

 大きなペリメニを手で持って口に運ぶ。

 

「うん……うまい」

 

「ほ、ホント!?」

 

「肉まん」

 

「……ペリメニだよ!」

 

「アハハハ、冗談冗談。すっげぇおいしい。やっぱシャルロットも料理上手いよな」

 

「そ、そう?」

 

「ああ。シャルロットも将来いいお嫁さんになれるよ」

 

「う、うん。ありがとう」

 

 俺の言葉に照れたように微笑んだシャルロットを見ながら俺は箸を進めた。

 

 

 ○

 

 

 その後あらかた料理を食べたあたりで

 

「そろそろプレゼント交換といきましょ」

 

 師匠の鶴の一声でプレゼント交換となった。

 プレゼントは一人一品金額の上限を決めて持ち寄りランダムに番号を振りくじ引きで決める。

 そんなわけでくじを引くわけだが、ちなみに俺の持ち寄った商品はおすすめのラノベ5選である。それぞれ一巻を購入した。

 

「さてさて、俺のプレゼントは~……」

 

 番号は『7』。ラッキーセブンだ。7番のプレゼントは……お、これか。

 

「さて、みんないきわたったわね。それじゃあ開けちゃいましょうか」

 

 師匠の言葉にみな頷き、それぞれのプレゼントに手をかける。俺も表面のラッピングを外していく。そう言えばこういう包装紙の開け方って性格出るよな。ビリビリに破くタイプと綺麗に開けるタイプと。ちなみに俺は綺麗に開けようとするけどたまにミスって結局ビリビリにしちゃう人です。

 

「おっ!これは!」

 

 中身はなんと

 

「やったー!プラモデルだ!」

 

 ひゃっふ~!ちょうどほしかったんだよね!

 

「あ、颯太に当たったんだ……」

 

「あ、簪。てことはこれ簪が?」

 

「うん」

 

「おいおい、俺に当たったからよかったけど、普段プラモデルとかしない篠ノ之とかに当たってたらどうするんだよ」

 

「うん……でも、プラモデルなら普段やらない人でもやってみたら楽しめるかもって……」

 

「しかもこれ俺が前から欲しかったバルバトスの1/100だし」

 

「そ、それは……颯太に当たればいいなぁ~って……」

 

「ん?なんで俺限定?」

 

「っ!?う、ううん!その……何でもない……」

 

「お、おう」

 

 簪の言葉に首を傾げながらも欲しかったものということでこれ以上の追及は無し。なんでもいいや、嬉しいし。

 

「まあいいや。ありがとうな。ゆっくり楽しみながら作るよ」

 

「う、うん……どういたしまして……」

 

 俺の言葉に嬉しそうに微笑んだ簪だった。

 

 

 ちなみに俺のラノベ5選はラウラが受け取っていた。

 

 

 ○

 

 

 その後時間もいいくらいになり、みんなで手分けして片づけを行った俺たちは各自解散となり、俺も一夏も部屋に戻って来ていた。

 現在一夏はシャワーを浴びているわけだが、そんな時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

 

「誰だろう、こんな時間に……」

 

 俺は首を傾げながら扉を開けるとそこには――

 

「でかっ!」

 

 どでかい箱が置かれていた。箱の見た目はプレゼントとして思い浮かべると10人中9人はこの見た目を思い浮かべると思われる見た目だ。

 

「あ、なんか手紙が……」

 

 箱の上に置かれていた封筒が目にとまり、封筒を開ける。

 

「えっと――『颯太君へ。私からの個人的なクリスマスプレゼント、是非受け取ってね。あなたの師匠より』――楯無師匠から?なんだろう、相当でかいけど。人一人なら余裕で入りそうだな。てかこれってどうやって開けるんだろう。………あ、これフタみたいになってる。とりあえず開けてみるか」

 

 箱に手を添え、上へと引っ張ると――

 

「ドジャ~ン!!」

 

「うおっ!!?」

 

 フタが勢いよく開き中から師匠が飛び出してきた、半裸で。

 

「プレゼントは、わ・た・し!♡」

 

「……………」

 

 あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!師匠からの特大のクリスマスプレゼントを開けようと思って箱に手をかけた途端箱が勢いよく開いたかと思ったら、中から自分の体にリボンを巻いた裸の師匠が飛び出してきたんだ。

 な…何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何が起きたのかわからなかった…。と、とりあえず……

 

「…………」

 

「……………そっと無言で上着をかけるのやめて!何か反応して!」

 

「風邪ひくんでそんな半裸な格好やめておいた方がいいですよ」

 

「真面目にまっとうなこと言うのやめて!!」

 

 師匠が叫ぶのをため息をつきながら聞いていた俺は

 

「とりあえず中入ってください。あったかいものでも出しますよ」

 

「…………」

 

「鳥肌立ってますよ。その恰好相当寒いでしょ。着替えはありますか?」

 

「一応、この箱の中に」

 

 そう言いながら箱の中からカバンを取り出す。

 

「中で着替えてください」

 

「は~い」

 

 渋々頷いた師匠が箱から出て箱を取りたたんでいるのを見ながら俺はふと廊下に視線を送ると――

 

「あっ……」

 

「あっ……」

 

 シャルロットが立っていた。

 

「どうしたの――あっ……」

 

師匠も顔を上げ、シャルロットに気が付く。

シャルロットの手には折りたたまれた師匠が使っていたような箱を持ち、服装は膝頭あたりまである白いコートを羽織っていた。コートの下に何を着てるのかわからないがコートの裾から何かが垂れ下がっていた。それはピンク色の幅の広いリボンだった。

 

「…………お前もかよっ!!?」

 

 

 

 ○

 

 

 その後、二人分のココアを淹れ、それを飲んだ二人をさっさと部屋に返した俺は、状況の飲み込めていない一夏を適当にあしらってそれぞれのベッドに入り就寝した――わけだが

 

「う~、さむさむっ……」

 

 深夜、トイレに行きたくなった俺はベッドから抜け出し、用をたした。パーティーでジュース飲みすぎたらしい。

 

「ふぅ~。さて、とっとと寝よう」

 

 手を洗って、水の冷たさに震えながらトイレのドアに手をかけて洗面所から出ると――

 

「あっ………」

 

「……………」

 

 人がいた。もちろん一夏ではない。

 黒く長い髪。狼のように鋭い相貌。女性にしては高い身長。スタイルのいい体を赤と白を基調としたズボンスタイルの服に包み、頭の上には三角の先に白いボンボンのついた帽子が乗っている。

 そう。俺の目の前にはいわゆるサンタと言われて思い浮かべられる服装に身を包み背中には大きく膨らんだ白い袋を背負った織斑先生が立っていた。

 

「………………」

 

「………………」

 

 数秒の間見つめ合っていた俺と千冬サンタ。先に動いたのは

 

「っ!」

 

 俺だった。

 開けていた洗面所の扉をすぐさま閉め、鍵までしっかりとかけ、ドアに背中を付ける。と、同時にノブがガチャガチャと音を立てる。

 

「おい、井口。いい子だからここを開けろ」

 

「やです!」

 

「今日はクリスマスだ。いい子にしていないとサンタからプレゼントはもらえんぞ」

 

「俺って普段から先生に迷惑とかかけまくってるんでいい子じゃないです!なので始めっからプレゼントは期待してないです!」

 

「そういうな。今開ければ私から特別にプレゼントをやろう」

 

「それはいったい何をくれるっていうんですか?」

 

「……………」

 

「何か言ってください!」

 

「さあいい子だからここを開けるんだ、井口颯太」

 

 さらにドアノブがガチャガチャと音を立てる。ひとしきりなった後、ノブの音が静かになる。諦めたのかな?と思っていると――

 

「――なあ、井口よ」

 

 ドアの向こうから織斑先生の低く冷たい声が聞こえてくる。

 

「な、なんですか?」

 

「お前はなぜサンタの服が赤いか知っているか?」

 

「………コカ・コーラの商業戦略です」

 

「確かにそれが一般的な話だ。だが、不正解だ正解は――」

 

 ズドン!

 

 耳元で大きな音がするゆっくりと横を向くと、そこから赤い服に包まれた腕が生えていた。その腕がゆっくりと短くなっていき、完全になくなると、さっきまで腕の生えていた扉の所には大きな穴が開いていた。その向こうには目元のみ見える織斑先生が

 

「返り血を浴びても目立たないように、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 

 

 聖夜の夜。IS学園の学生寮に一人の男子生徒の絶叫が響き渡ったのだった。

 




はい、というわけでクリスマス回だったわけですが
大遅刻ですね。
作中はイブですけどそれももう三日前。
遅くなってしまって申し訳ないです。

あと、年越しとかで忙しいんでまた少しの間次回を投稿するまで期間があいてしまうことになると思います。
とりあえず読んでくださいました皆さん今年はありがとうございました。
来年はもうちょっとちゃんと期間をあけずに投稿できるように頑張ります。
よいお年を~

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