IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第57話 帰寮

 

「そいじゃ、お世話になりました」

 

「おう。また来いよ」

 

「ああ。うちにも来いって言いたいところだけど……俺が帰るだけでもいろいろかったるかったからな。それがふたりになるともっとかったるくなりそうだ」

 

「だな……。近々帰省するんだっけ?」

 

「まあな。………手続きがめんどくさかった」

 

 思い返しただけでため息が出てくる。

 

「お、おう……。まあなんだ。久々の実家だし、ゆっくりして来いよ」

 

「ああ。お土産買ってくるから」

 

「ハハ。楽しみにしてるよ。じゃあ気を付けてな」

 

「ああ。それじゃあまたな」

 

 一夏に手を振り、足元に置いていた荷物を背負い、織斑家を後にする。

 

 

 

 昨日の撮影会も無事に終わり、スタッフの皆さんにお礼を言いながらスタジオを後にした俺たち。シャルロットは会社に用事があったらしく、結局織斑家に帰ってきたのは俺と一夏だけだった。

 その後夕食は二人で食べ、織斑先生が遅くなっていることをいいことに夜更かししまくった。

 そして朝、眠い目こすって起きて、お暇するギリギリまでゲームで遊びまくった後、現在に至るわけだ。

 

 

 

「さてと……実家用にお土産買わないと」

 

 

 

 ○

 

 

 その後近場のデパートで軽く買い物をし、実家へのお土産などを買った俺は夕食前に寮へと戻ってきた。

 寮の部屋に荷物を置き、食堂へと向かう。

 ちなみに一夏は実家に残っている。なんでも他にもやることがあるらしい。

 

「あ…颯太、お帰り……」

 

 食堂にやって来た俺を出迎えたのはたまたま夕食を取りに来ていたらしい簪だった。

 

「おう、簪。ただいま」

 

 簪に挨拶を返しながら俺はふと周りを見る。

 

「あれ?一人か?」

 

「ううん。本音と一緒に来たんだけど…携帯忘れたって…部屋に取りに戻っちゃった……だから先に食べててって」

 

「ああなるほど。俺も一緒に食ってもいいか?」

 

「私はいいけど……」

 

「まあのほほんさんがダメって言ったらその時はその時ってことで。先に席とっちゃおうか」

 

「うん」

 

 ふたりで食券を買い、いつものおばちゃんに渡して夕食を受け取り、俺たちは空いている席に座る。

 

「「いただきます」」

 

 戻ってこないのほほんさんを待ちながら一足先に夕食を始める。と――

 

「おまたせ~」

 

 手にトレーを持ったのほほんさんがやって来る。

 

「あ、ぐっちーおひさ~」

 

「おひさ~」

 

 だぼだぼの袖をフリフリと振りながら簪の隣に座るのほほんさん。

 

「そう言えばぐっちーはおりむーのところにお泊りだったんだってねー。どうだった~?」

 

「ん~……一夏が女子力高かった。飯はうまいわ掃除行き届きまくってて綺麗だったわでね」

 

「あー、なんか光景が目に浮かぶね~。……あれ?おりむーは?」

 

「まだ家にいるよ。他にもやることがあるんだとさ」

 

「ふ~ん」

 

 俺の言葉に頷きながらのほほんさんも箸を取る。

 

「そう言えば……ジャジャ~ンこれを見よ!」

 

 俺はふと思い出し、自分の携帯を取り出しとある画像データを表示する。

 

「これは……」

 

「ぐっちーと……女の人?」

 

 そう。その画像は昨日取ったばかりの写真。そこに映っているのは俺と――

 

「これ…もしかして!」

 

「簪にはわかったか。そう、この写真の人物は何を隠そう超人気アイドル流木野サキだぁ!!」

 

「「な、なんだってぇぇ!?」」

 

 俺の言葉に簪とのほほんさんが驚愕の声をあげながら俺の携帯を食い入るように見る。

 

「ほ、ホントだー!」

 

 のほほんさんも気づいたようだ。

 

「な、なんで流木野サキと?」

 

「ふふ~ん。実はな――」

 

 俺は昨日のCM撮影のことをふたりに話した。

 

「――てなわけで、流木野さんと写真を撮っただけでなくサイン入りCD貰った上にCMにも出演してしまったのだ!フハハハハハ!どうだ羨ましかろう!」

 

「す、すごい……」

 

「そのCMっていつテレビほーそー?」

 

「夏休み明けくらいって聞いてる」

 

「楽しみだな~。ね、かんちゃん?」

 

「う、うん……」

 

「いや~、実家に帰った時のいい土産話ができた」

 

 心底羨ましがりそうな友人の心当たりが三人…いや弟も入れたら四人は羨ましがるな。

 

「そう言えばぐっちーはもうすぐ実家に帰るんだっけ?」

 

「そうだぜ」

 

 のほほんさんの言葉に頷く。

 

「二人にもちゃんとお土産買ってくるからな。何がいい?」

 

「お菓子がいいな~」

 

「おけおけ~。簪は?」

 

「えっ?私は……」

 

「あれ?」

 

 簪が考えているときふと何かに気付いたようにのほほんさんが首を傾げる。

 

「ぐっちーの実家って遠いんだよね?」

 

「おう」

 

「警護が付くんだよね?」

 

「おう」

 

「確かその警護って――」

 

「本音…食後のデザートにお菓子がある」

 

「わ~い」

 

 何かを言いかけたのほほんさんの言葉は簪に遮られた。

 

「のほほんさん、今何言いかけたんだ?」

 

「何が?」

 

「いや、今何か……」

 

「颯太もお菓子食べる?」

 

「あ、うん。もらう」

 

 簪の言葉に頷きながら俺の中でなんとなくもうどうでもいいかと結論づけ、それ以上のほほんさんを追求するのはあきらめる。

 

「まあ簪にも何かよさそうなの見繕ってくるよ」

 

「うん…ありがとう」

 

 俺の言葉に笑顔で頷く簪だった。

 




どうも、いまだにお気に入り件数が2000ごえとランキング5位は夢だと思っている大同爽です。
とりあえず2000超えたら書こうと思っていた番外編はまだなんで少々お待ちください。
速ければ明日明後日には……


さて、気付けばこの作品も一周年なわけで、そんな時期にまさかお気に入り件数が2000超えてランキングも5位にまではいるとは。
これもひとえに読んでいただいている皆様のおかげだと思っております。
誠にありがとうございます!
これからもあ応援よろしくお願いします!


あ、次回から新章と言いますかちょっとしたシリーズもどきに突入します。
あえてシリーズに題名を付けるなら……そうですね
『井口颯太の実家帰省編』ですかね。

約半年ぶりに実家に帰省した颯太君。
しかし、楽しい楽しい帰省は思わぬ同行者がいて……

的な感じです。
お楽しみに~

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