IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第63話 ゲーム

 

「――で、改めまして、こいつらが俺の友達の」

 

「山本卓也!」

 

「大下信久!」

 

「加山智一!」

 

「「「四人合わせて!」」」

 

「「「リ京Tト都Tル四Sバ天Nス王ター団ズ!!!」」」

 

「いや、合わせろよ」

 

 三人同時に別々に言うもんだから何言ってんのか全く聞き取れなかった。

 

「おいおい、前から言ってんだろ!俺たちは京都四天王だろ!?」

 

「何言ってんだ!俺こと智一のT、卓也のT、颯太のS、信久のNでTTSN団だろ!?」

 

「あの時みんなで行ったじゃないか!『バンドをやろう!バンド名はリトルバスターズだ!』って!」

 

「「「言ってねぇよ!」」」

 

 最後の卓也のセリフに三人でツッコミをいれる。

 

「そもそも別に俺らってグループ名とかなかっただろ」

 

「そこはほれ、ノリだよノリ」

 

 俺の問いに智一が答え、残り二人もうんうんと頷く。

 

「まあこんな感じのノリで毎日を送っていた俺の学友たちでございます」

 

 笑顔で立っていた三人に紹介する。

 

「初めまして。颯太君のISの師匠でIS学園生徒会長の更識楯無です」

 

「颯太のオタ友で…楯無の妹の…更識簪です……」

 

「颯太のクラスメイトで同僚のシャルロット・デュノアです」

 

 三人が笑顔で挨拶するのを見ながら俺に視線を向ける友人たち。

 

「「「で?どの人が彼女?」」」

 

「だから彼女じゃねぇって!」

 

 三人の声を揃えての質問にうんざりしながら答える。

 

「会う人会う人彼女彼女彼女!なんでみんなそう思うのかね!?」

 

「そりゃ、お前あれだよ。わざわざ実家まで連れて来てるんだから両親にご挨拶的な――」

 

「三人とも勝手について来たんだよ!」

 

「そうだよね……僕らがついて来たのはやっぱりめいわk――」

 

「それはいいって!」

 

 よよよ、と泣き崩れるように言うシャルロットの言葉に返しながら友人たちに向き直る。

 

「と言うわけで、残念ながらご期待には答えられません!」

 

「え~」

 

「でもさ~」

 

「何もないってことはないでしょ~」

 

「はぁ?」

 

 卓也たちはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて言う。

 

「だってさ~…周りは女生徒ばっかりのハーレム校だよ?」

 

「ラノベの主人公的立ち位置だよ?」

 

「ラノベのようなキャッキャウフフな展開があってもいいじゃん」

 

「なんだよキャッキャウフフな展開って?」

 

「ん~……女の子と同室になって一緒に寝起きしたり……?」

 

「メイド服や裸エプロンの女の子が出迎えたり……?」

 

「風呂に入ったらたまたま先に入っていた女の子の裸と遭遇したり?」

 

「……………」

 

 三人の例え話に俺はスススッと顔を逸らす。

 

「……え?何?身に覚えあるの?」

 

「え?どれどれ!?女の子との同居生活?メイド服?裸エプロン?風呂場で遭遇?」

 

「吐け!吐いて楽になれ!」

 

「黙秘する!」

 

「じゃあいいよ!他に訊くから!」

 

「てなわけで楯無さん簪さんシャルロットさん!」

 

「何か心当たりは!?」

 

「おい!そっちに訊くのひきょ――むぐっ!」

 

「こっちは任せろ!」

 

 俺の言葉も虚しく信久に後ろから取り押さえられる。

 

「で!?どうなんですか!?」

 

「「「……………ポッ」」」

 

「ぷはっ!――『ポッ』じゃねえよ!」

 

 卓也の言葉に声を揃えて両手を頬に添えて言う三人になんとか信久の拘束から逃れた俺は叫ぶ。

 

「ちきしょうやっぱりあったんじゃねえか!」

 

「しかもこの感じ三人ともなんかあるんじゃん!」

 

「羨ましいなこんちくしょう!」

 

 師匠たちの反応に崩れ去る卓也たち。

 

「こうなったら!」

 

「颯太!」

 

「俺たちと勝負だ!」

 

「………はぁ!?」

 

 突然の展開に俺は素っ頓狂な声を出してしまう。

 

「俺たちが勝ったら俺たちにもおいしい思いをさせろ!」

 

「具体的に言えば可愛い子を紹介するとか!」

 

「なんか俺たちの気が晴れそうなものを寄越せ!」

 

「気が晴れそうなものって……あ!」

 

 三人の言葉に苦笑いしながらも考えた俺はふと一つの物を思い出す。

 

「え?なんかあんの!?」

 

 卓也の問いに答える意味で頷き口を開く。

 

「いいだろう、やってやる。俺が勝ったらお前ら三人で俺と師匠、簪、シャルロットにジュース奢れ。お前らのうち誰か一人でも勝ったら……」

 

「「「か、勝ったら……?」

 

「シャルロットのエロボイスを録音した音声データをくれてやる!」

 

「ちょっ!?」

 

「「「「「な、なんだって~!!!?」」」」」

 

 俺の言葉にシャルロットは困惑、残りのメンバーは驚愕の声をあげる。

 

「ちょっと待って!僕そんなの知らないよ!いつ録音したのさ!?」

 

「え?いつって…そりゃ、あれはそう…まだシャルロットがシャルルだった頃……」

 

 

 

 

『ねえ颯太。颯太が前に今度食べるって置いておいたバナナ真っ黒に変色してるよ』

 

『マジで!?うわっホントだ!柔らかくて気持ちワリ!』

 

『ね?ブニュブニュだね』

 

『………今なんて?』

 

『え?ブニュブニュだねって……』

 

『何がどうなってるって?』

 

『バナナがブニュブニュだねって……』

 

『誰の?』

 

『颯太の』

 

『誰の何がどうなってるって?』

 

『颯太のバナナがブニュブニュだねって』

 

『………シャルル。〝颯太〟の部分を〝あなた〟に言い換えて言ってみて』

 

『??? あなたのバナナ、ブニュブニュだね』

 

 

 

 

「ってことがあったから。その時に……」

 

 言いながら俺は自分の携帯をポケットから取り出す。

 

「なんで録音してるの!?」

 

「何かに使えるかな~って」

 

「だからって景品にしなくてもいいじゃない!」

 

「勝ちゃいいんだよ勝ちゃあさ」

 

「負けたらどうするのさ!?」

 

「その時は……諦めてあいつらのお耳を潤してやれ」

 

「ええ~!」

 

「で?勝負内容は俺が決めてもいいの?」

 

「ちょっと!?」

 

 納得のいっていないシャルロットを放っておいて話を進める俺。

 

「諦めなさい、シャルロットちゃん」

 

「旅の恥は掻き捨て……」

 

「もう、二人とも他人事だと思って!」

 

 背後で三人が何か話しているがスルーする方向で。

 

「挑むのは俺たちだ。できる限りどちらかに有利にならない形の勝負ならお前が決めていいぜ」

 

「ふ~ん……」

 

 卓也の言葉に頷きながら俺は周りを見渡す。何か勝負の内容になりそうなものはないかと見渡し、一か所で視線を止める。

 

「じゃあさ……あれは?」

 

『ん?あれ?』

 

 俺の言葉にみんなが俺の指さした方向に向く。

 そこには校門があり、その塀の上に一羽のハトが止まっていた。

 

「あのハトが何秒後に飛び立つかを当てるゲーム。どう?」

 

「なるほど……」

 

「いいんじゃね?」

 

 俺の提案に卓也たちは頷く。

 

「じゃあ公平を期すためにまず何秒かを事前に言い合い、スタートの掛け声から何秒後に飛び立つかを競おう。誰も当たらなかったら一番近かったやつが勝ちってことで。こっちは俺一人、そっちはお前ら三人の誰か一人が勝てば三人とも勝ちってことでいいか?」

 

「「「おう」」」

 

 三人が頷いたのを確認する。

 

「じゃあお前らから言っていっていいよ」

 

「じゃあ俺は……30秒!」

 

「50秒!」

 

「俺は1分で!」

 

「じゃあ俺は……」

 

 言いながら俺は屈みこむ。

 

「3秒で」

 

「え?たったの?それは流石に――」

 

「はい、よーいスタート!」

 

 信久の言葉を遮って掛け声を言うと同時に立ち上がり

 

「ふん!」

 

 屈んだ時に拾ったピンポン玉サイズの石を思い切り投げる。

 俺の投げた石は絶妙なコントロールで飛んでいき鳩の足元の塀に甲高い音ともにぶつかる。

 音と衝撃に驚いたハトはバサバサッと羽ばたいて大空へと飛び去って行った。

 

『……………』

 

 六人が呆然としている中、俺はふぅと額の汗を拭き、

 

「はい、じゃあジュース奢りな」

 

「「「………え~…!」」」

 

 俺の言い放った言葉に三人が不満の声を漏らす。

 

「今のはズルいだろ!?」

 

「ズルくないズルくない。俺別に石投げて追い払っちゃダメなんて言ってないし」

 

「でも……」

 

「はいはい、諦めてジュース買ってきな!俺コーラで」

 

「私ミルクティー」

 

「僕はオレンジジュースで」

 

「リンゴジュース…お願いします…」

 

「「「ちぃーっきしょ~!」」」

 

 俺だけでなく師匠たちも注文したものだから逃げられないと判断した三人は学校前の自販機へと悔し気に叫びながら走るのだった。

 




どうも、こっちは一週間ぶりくらいの投稿ですかね。
ちょっとずつリアルの方も忙しいですが時間があるときに少しづつ書いて余り感を開けすぎないように更新していこうと思いますので次回もお楽しみに。

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