つづきです!
「さて、これで敦さんの無実が証明できたわけですけど――何か申し開きありますか、木島亮子さん?」
俺はニッコリと笑いながら木島さんに視線を向ける。
警察署につき、駐車場に降りた俺たち。
俺の問いに木島さんは顔を真っ青にし、オロオロとしどろもどろになっている。
「なさそうですね。さて、じゃあこっちからも一個訊きたいことがあるんですけど……」
俺は言いながらできるだけ優しい笑みをうかべて木島さんの顔を覗き込む。
「ぶっちゃけ、誰に頼まれたんですか?」
「ひっ!」
が、比較的優しい声音を心掛けたのだが、なぜか木島さんに怯えられてしまった。
「ほ~ら、コワくないですから、教えてくださいよ~」
「颯太、その生易しい笑顔が逆に怖いよ」
失敬な。と思いながらも俺はコホンと咳払いして表情を戻す。
「で?正直なところ教えてほしいんですよねぇ。ぶっちゃけ大体の見当はついてますけど……」
言いながら俺は赤坂さんに視線を向ける。
「………何かしら?」
「とぼけないでくださいよ。あなたなんでしょう?木島さんに指示してた黒幕って」
俺は肩をすくめながら言う。木島さんも助けを求めるような顔で赤坂さんを見ている。
「あなたが昨日木島さんと接触していたのはわかってるんですから」
「確かに彼女とは会ったわ。でもそれは彼女のご両親と面識があったからよ。それ以上のことはないわ。それでもまだ疑うって言うなら証拠はあるんでしょうね?」
「証拠ですか……」
俺は言いながら腕を組む。
「証拠は……ありません」
俺の言葉に固唾を飲んでいた師匠、シャルロット、簪、そして敦さんと春日巡査も肩透かしを食らったようにずっこける。
「おいぃぃぃ!颯太!」
「貴様、そんなに自信満々に言っておいて証拠がないだと!?」
「ほら、あれは!?今回の件で一番得をしたのはそこの赤坂さん率いる建設グループだっていう……」
「残念ながらそれは偶然と言われればそれ以上証明できない。残念ながら証拠にはなりえない」
シャルロットの言葉に駒形さんが首を振る。
「まあそんなわけで証拠はないんですよ」
「ほら見なさい。だからこれ以上付き合う――」
「――今のところは」
「は?」
俺の言葉に赤坂さんが呆ける。
「確かに今は証拠ないんですけど…もうそろそろ……お?」
と、俺の携帯が鳴る。
急いで出ると
『もしもし、颯太?お、お待たせ』
「あ、どもども、待ちくたびれましたよ――アキラさん」
電話口から聞こえて来たアキラさんの声に安堵しながら俺は携帯をスピーカーにし、周りの会話が聞こえるようにする。
「で、どうでした?許可もらえました?」
『バッチリ』
アキラさんの答えに頷きながら駒形さんに向き直る。
「駒形さん。許可もらえたんでできますよ」
「よし、さっそく始めよう」
頷いた駒形さんは木島さんと赤坂さんに向けて口を開く。
「捜査協力をお願いします。少し携帯電話を貸してくれませんかね?」
「なっ!?」
「どうしてかしら?」
駒形さんの問いに驚く木島さんと眉を顰める赤坂さん。
「本当にあなたたちにつながりがないかどうか調べさせていただきたい。何もやましいことが無ければ出せると思いますが?」
「………わかりました。でも、調べてもあまり意味はないと思いますよ」
頷いた赤坂さんがスマホを取り出し、木島さんも慌ててキーホルダーのジャラジャラついたスマホを取り出す。
「では、お借りします」
受け取った駒形さんは二人のスマホを操作するが
「……メールには事件に関するものはなさそうですね」
「だから言ったでしょう、意味ないって」
「そうですね。では…井口、お願いできるか?」
「はいはい、了解です」
と、赤坂さんの言葉に頷いた駒形さんが俺にスマホを渡す。
「な、ちょっと何するんですか!?」
「ん?何って……」
木島さんの問いに顔を上げる俺。俺は今地面にタオルを敷き、その上にスマホを置いている。
「いまから本当に今回の件を指示するメールがないか調べるんですよ」
「だから、そんなメールはなかったとさっき」
「ええ。でも、メールなんてけせばいいわけですから」
「じゃあ何を……」
俺の言葉に敦さんが訊く。
「今時のスマホって便利ですよね~。知ってます?スマホってメールが来たらそれを自動でクラウドに保存してスマホ機器でデリートしても一定期間はクラウドに保存されたままになるんですよ。だから専門のお店に行くとかハッキングするとす~ぐ復旧できるんですよ」
言いながら俺はスマホの前に立ち、前にて右手を伸ばす。
「知らない人のために解説しておきますと、俺は世界で二人しかいない男性IS操縦者なわけで、専用機があるわけです。で、俺の専用機『火焔』の特殊装備の中にはハッキングが得意な装備がありまして……」
言いながら俺の右腕が発光し、その光が収まると同時に俺の右腕は『火焔』の腕となりその手には紫のロッド状の装備が握られていた。
「こいつは《火遊》。『火焔』に装備された装備の一つで、こいつでハッキング用ナノマシンを注入した機器はハッキング可能なんですが……いかんせん、俺にはハッキング能力はないんで、アキラさんよろしくお願いしますね~」
『はいはい……ま、まったく、本当なら今日は非番だったのに……』
「まあまあ、何かお土産買って帰りますから」
『……甘いものでお願い』
「了解です。それじゃあそろそろ行きましょうかね」
「待って!そんなもので叩いたら携帯が壊れるんじゃ……」
「壊れないように手加減しますよ!それじゃあ――レリーズ!!」
俺は掛け声とともにスマホの画面をトントンと叩く。と、スマホの画面上で魔法陣のようなものが浮かび、すぐに消える。
「アキラさん?」
『ちょ、ちょっと待って………うん、来てる。どんどんメールが復旧できてるよ。――あ、このメール怪しいかも……』
「お?どないです?」
『どんどん出てくる。大漁』
「なっ!?そんなバカな!」
アキラさんの言葉に赤坂さんが驚愕の表情とともに俺のスマホに食らいつくように言う。
『どんどん出てきますよ。――あ、これだ!』
「そんなまさか!?あのメールは確かに消したはず!?」
「――とった!!」
木島さん言った言葉に俺は思わず叫ぶ。
「「は?」」
俺の言葉に赤坂さんと木島さんが素っ頓狂な声をあげる。
「今…あのメールは確かに消したって、言いましたよね?」
俺はニッコリと笑いながら訊く。
「っ!?」
「そ、それは……」
俺の問いにしどろもどろになるふたり。
「お前らのやった事は、全部まるっとするっとお見通しだ!」
ビシッと二人を指さす。
「……少しお話聞かせていただけますか?」
「い、いや、でも……」
「それは……」
「春日巡査、この方たちをお連れして」
「はっ!了解であります!」
そう言って春日巡査にふたりは連れて行かれそうになりながら……
「おい、確か井口颯太とか言ったか?」
「はい、そうですよ、赤坂めぐみさん。どうかしましたか?」
赤坂さんにギロリと睨まれるが俺は笑顔で頷く。
「このことはよく覚えていろ。本社にしっかりと報告させてもらう。我々を敵に回してタダですむと思うなよ」
「いいですよ~。でもすみません、俺ってば記憶力がないもので。どうでもいいことからどんどん忘れていくんですよ。なので学園への抗議とかは早めにしてもらわないとうっかり忘れちゃいますよ」
「くっ……つくづく憎たらしい奴だな」
「よく言われます。それでは覚えていたらまた会いましょうね」
俺が手を振るとしかめっ面のまま赤坂さんは木島さんとともに春日巡査に連れていかれたのだった。
○
「いや~助かったよ颯太!」
駒形さんに手錠を外してもらった敦さんが笑顔で俺の手を握ってぶんぶんと振る。
「アハハ…でも、うまくいってよかったです」
俺も笑いながら頷く。
「でも、颯太君も無茶するよね」
「というか捜査にハッキング使うのっていいんですか?」
「え?ハッキング?してないよ?」
「「「「………は?」」」」
俺の言葉に師匠たちと敦さんが首を傾げる。
「いや、だって民間人の俺が警察に協力とはいえハッキングってやばいかなぁって思ってふりだけにしたんだよ」
俺はさっきまでの裏話を話す。
「たぶん追い込まれればうっかり口を滑らしてくれると思ったんだけど……案の定だったね」
「お前から作戦を聞いた時はどうなるかと思ったぞ」
駒形さんがため息まじりに言う。
「え?じゃあアキラさんも実際にはハッキングは?」
「してないよ。まあしっぽ出さなかったらその時はお願いしようとは思ってたけど、その必要もなさそうでしたね、アキラさん」
『………え?あ、うん。そうだね……』
「……なんですかその間は?」
俺の言葉にどことなく様子のおかしいアキラさん。
「え?アキラさん……まさか…!」
『い、いやまあ…手持無沙汰だったもんで……つい……あ、安心して!ちゃんと消しといたから!』
「いや、いいんですかそれ!?」
『い、いいじゃん。お、終わりよければすべてよしって……』
俺のスマホからのアキラさんの言葉にその場のみんなが唖然としていたが
「まあ…聞かなかったことにしておこう。俺の管轄ではないしな」
駒形さんの言葉に全員が安堵する。
「ま、まあそれこそ本当に終わりよければすべてよしだよ!」
敦さんの言葉になんとなくこれ以上追及するのもなんだか微妙だったのでこの話はここで終わりにすることにする。
「しかしまあ、颯太、本当にありがとうな。信じてくれてうれしかったぜ」
「いえいえ。俺は敦さんが女子高生のお尻触るなんて痴漢、するわけないって信じてましたから」
「そう言えば颯太って始めからずっとそう言ってたね」
「そんなに…松本さんのこと信頼してるんだね…」
シャルロットと簪が笑いながら言う。
「まあねぇ。だって敦さん――」
俺は頷きながら敦さんを指さす。
「無類のおっぱい星人ですもん。しかも巨乳スキー」
「おいぃぃぃ!待て待て待て待て!!」
俺の言葉に敦さんが驚愕する。
「え?違いました?」
「いや、違わないけど…ってそうじゃねぇよ!」
敦さんが叫ぶ。
「え?何?俺がおっぱい星人だから?だから俺を信じたの?俺が女子高生のお尻触るわけないって?」
「はい」
「うわっ、即答した!」
俺の返事に敦さんが本気で落ち込んだような顔をする。
「なんか信じてもらえてたのは嬉しいけどその理由が釈然としねぇ」
「まあまあ。俺はちゃんと敦さんがそんなことする人じゃないって信じていたんですよ」
「でも俺の性癖も信じた理由なんだろ?」
「はい」
「お前の信頼に今殺意がわいたぞ!」
敦さんの絶叫が響いたが俺は始終笑いっぱなしだった。
ちょっと無理矢理かもしれませんがこれにて解決です。
実家帰省編ももうそろそろ終わりになりそうです。
最近「MORE DEBAN」って看板を持ったセシリアと鈴がなぜか思い浮かんだんでそろそろ本編に出番あげたいですね( ´艸`)