IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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苦手な戦闘描写。
変な場面があったらごめんなさい。


第8話 VS一夏

「よお、待たせたな」

 

 アリーナに出て来た俺は先に来ていた人物――一夏に声をかける。

 俺も一夏もISを展開した状態だ。一夏のISは白。まるで翼を広げたような背中のスラスター翼がかっこいい。俺の専用機もこんなのがいいな。

 

「なかなかかっこいいISだな」

 

「ありがとよ」

 

 俺の言葉に一夏が嬉しそうにニッと笑う。

 

「よお、聞いたぜ。セシリアと引き分けたんだってな?」

 

「まあな。いい師匠に巡り合えたからな。お前の方は負けたんだって?いいとこまではいったとは聞いたけど」

 

「ははは。まあな」

 

 一夏が苦笑いを浮かべる。

 

「――さて、おしゃべりはこの辺にするか」

 

「――おう」

 

 俺の言葉に一夏が顔を引き締める。

 

「「行くぜ!!」」

 

 お互いに近接ブレードを展開。いっきに距離を詰める。

 

「はあああああ!!」

 

「やあああああ!!」

 

 気合いとともにお互いの近接ブレードがぶつかり合う。

 キンッキンッキンッ!

 近接ブレード同士がぶつかり合い、甲高い金属音がアリーナに何度も響く。ブレードとブレードがぶつかり合うたびに一瞬の火花が散る。

 数秒の鍔迫り合いの後、俺たちはいったん距離を置く。

 

「すげえなお前。剣道とかやってたのか?」

 

「小学生のころにな。中学ではやってなかったけど、俺のコーチがISのこと教えずに剣道ばかりさせてたからな。最近はずっと剣道ばっかりやっていた」

 

「へえ、道理で」

 

「お前だってすごいじゃないか。お前も剣道とかしてたのか?」

 

「ははっ、まさか。素人の我流だよ。強いて言えば、飛天御剣流だ」

 

「マンガじゃねえか」

 

 一夏の呆れ顔に俺が笑う。

 

「マンガの知識をバカにすんなよ?マンガ読んでたら人体の急所とか武術の動きだって覚えられるぜ?」

 

 おかげで広く浅く変なところに詳しく色々な知識を蓄えた。

 

「………しっ!」

 

 短く息を吐き出しながらいっきに距離を詰めて下から斬り上げる。

 

「くっ!」

 

 キンッ!

 俺の近接ブレードを一夏は受け止める。が、勢いを殺しきれなかったらしく上に逃げる一夏。

 

「まだまだ!!」

 

 一夏の上速度より早く、最初から最高速度で上昇。ブレードを担ぎ上げるような状態で一夏より上で停止。そこからさらに落下の勢いに逆らわずに振りかぶったブレードを振り下ろす。

 

「だりゃああああ!!!」

 

「ぐぅぅ!!」

 

 俺の上段からの一閃を受け、一夏が地面に落下し数メートル転がる。

 

「ふぅー」

 

 大きく肺の中の空気を吐き出しながら地面に着地。一夏の方も起きあがる。

 

「まったく、今の技のどこが素人だよ」

 

 一夏が苦笑いを浮かべている。

 

「素人だよ。その証拠に今のは見よう見まねの龍槌閃だ」

 

「やっぱマンガか」

 

「マンガだぜ。でもかっこいいだろ?剣心」

 

「ふっ、まあな」

 

 一夏がニッと笑い、俺も笑う。

 

「で?お前はいつまで近接ブレードだけで戦うんだ?専用機なんだから他にもなんか武器があるんだろ?俺が訓練機だからって遠慮すんなよ?」

 

「………だけだよ」

 

「は?なんて?」

 

「これだけだよ!近接ブレード一本!以上!俺の武器はこれだけ!」

 

「……はあ!?なんだそのふざけた専用機は。欠陥機か?」

 

「欠陥機とかいうなよ!」

 

「ごめん!!」

 

「いいよ!!」

 

 なんだこのやりとり。漫才か!てか近接一本ってどんな専用機だよ。そんな逆境まじでラノベやアニメの主人公みたいじゃん。

 

「せっかく教えてくれたんだ。俺も教えてやる。俺も近接ブレードしかない!」

 

「そっか。じゃあお互い真正面からのぶつかり合いだな」

 

「とか言って、こういう場合なんかすっごい技とか奥の手があるんだろ?」

 

「お前エスパーか!?」

 

「マジであるんかい!!」

 

 確定だ。こいつアホだ!そんなの素直に言うなよ。警戒されるに決まってるだろ。

 

「じゃあ、ばれちまったわけだし奥の手行かせてもらうぜ!」

 

 そう言うやいなや一夏が一気に俺へと距離を詰めてくる。もしかしたら打鉄の最大速度よりも速いかもしれない。そのスピードのまま一夏が近接ブレードを振りかぶる。と、一夏のブレードに変化が起こる。

 振りかぶったの近接ブレードの刀身が光る。それと同時に一夏のブレードの刃渡りや幅が伸びる。なんだろう。すごくヤバイ気がする。

 俺は咄嗟にバックステップで一夏の攻撃を避ける。何とか躱したが、刃渡りが伸びたせいで少しかすってしまった。でも、この程度ならそれほどのダメージは――

 

「って、ウソォ!!?」

 

 俺は自分のシールドエネルギーを見て驚愕する。かすっただけとは思えないほどシールドエネルギーが減っていた。

 

「って、あれ?」

 

 次に一夏のシールドエネルギーを見た俺は首を傾げる。減っているのだ。俺は攻撃を当てていないはずなのに一夏のシールドエネルギーも俺と同じくらい、いやそれ以上に減っていた。

 

「なるほど。こりゃ奥の手だな」

 

 おそらく一夏の奥の手は自身のシールドエネルギーを消費して発動させるタイプのものだ。しかもさっきの感じなら食らったらひとたまりもない。残りのシールドエネルギーを全部持って行かれる。こんなリスキーで一撃必殺な技を使うなんて、とことん主人公タイプの能力だな。

 俺は気を引き締めるよう近接ブレードを握り直す。

 

「確かに厄介だが、絶対に負けないぜ!」

 

「おう!俺だって!」

 

 お互いに近接ブレードを握り直す。

 

「「行くぞ!」」

 

 お互いに一気に距離を詰め、お互いのブレードがぶつかり合う。最初と同じ、でも最初よりも俺が不利な状況でのチャンバラ。一夏は俺と違って一発かすろうがまだまだ余裕がある。だが、俺はかすっただけでエネルギーが吹き飛ぶ。一夏の攻撃を受けずに俺の攻撃を当てるとか…無理ゲーだな。でも――

 

「無理ゲー最高!!!」

 

 叫ぶように言いながら一夏との距離を取る。

 

「一夏!さっきの礼だ!俺の奥の手も見せてやる!」

 

 そう言って俺は大きく身を沈めるように屈みこみ、左腰に近接ブレードを添え、左手でブレードをつまむように掴む。

 

「行くぞ……」

 

 そのままの体勢で背中に意識を持って行く。スラスター翼からエネルギーを放出。それを内部に一度取り込み、圧縮して放出。そう、『瞬時加速』だ。これで一夏のシールドエネルギーを削りきれない、もしくは避けられれば、きっと俺は勝てない。頭の中を空っぽにし、考えることはただ一つ。一夏へと叩き込む一撃のイメージだけ。

 

「っ!!!」

 

 小さな気合いの一息とともに大きく右足からの一歩を踏み出す。その瞬間背中のスラスターからエネルギーを解放。打鉄で出せる最高速度に『瞬時加速』を乗せて今出せる最高速度で一夏へと向かって行く。

 

「!!」

 

 一夏の驚愕の息遣いが聞こえるが、そんなもの気にする間はない。体にかかるものすごい圧力に歯を食いしばりながら一息に一夏の目の前に。そこで一時停止しそれまでの勢いを左足で踏み込み、右手の近接ブレードに乗せる。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 そのまま十字傷の剣士の抜刀術の要領で左足で踏み込み、下から斬り上げる。

 

「ぐっ!!」

 

 一夏が俺の一撃を受け、苦しげな声を漏らす。だが、まだシールドエネルギーが残っているらしい。

 

「もう一つおまけに!」

 

 そこからさらに踏み込んだ左足に力を乗せ、『瞬時加速』の勢いのまま上に跳躍。それと同時斬り上げているブレードの峰を蹴り、足刀の威力をのせる。

 

「これでどうだあああ!!!」

 

 バッと顔を上げると、そこには苦しげに、しかしまだあきらめていない顔の一夏の顔があった。どうやらまだ終われないようだ。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 気合いとともに上に両手で振り上げている一夏の近接ブレードが俺に向かってくる。俺はその軌道を見つめていた。

 体感としては数十秒の、しかし実際には一瞬の出来事だったのだろう。俺の体に一夏の攻撃が叩き込まれる。確認するまでもない。きっとシールドエネルギーがすごい勢いで減少していることだろう。

 一夏の攻撃の後、地面に倒れ伏せている俺が聞いたのは

 

『シールドエネルギー0。勝者、織斑一夏!』

 

 アリーナに響いた放送だった。




というわけでクラス代表決定戦、これにて終了です。
バトルシーンは毎度毎度難産です。
頭の中でイメージできてもそれを言葉にするのが難しいです。

ちなみに最後に颯太君が出した技はるろうに剣心に登場する倭刀術のひとつ、「蹴撃刀勢」のイメージです。
知ってる方はあんな感じだと思ってください。

さらにちなみになぜこんなにるろうに剣心の技を出したかというと、ただ思い浮かんだ出来そうな剣術がそれだっただけです。

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