【習作】一般人×転生×転生=魔王   作:清流

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前話の流れから書いたら、思いきりアンチ&説教になってしまいました……。
あれー、当初はもっと軽めにいくつもりだったのですが、どうしてこうなったorz
色々考えましたが、この流れだと護堂とエリカの立場がまずすぎるので、前話から作り直すことにしました。長らくお待たせした上、このようなことになり申し訳ありません。
せめてものお詫びと言うわけではありませんが、一応途中まで書いた没話を晒します。
ただ、自分でもかなりきついと思ったので、護堂やエリカが好きな人は読まないほうがいいです。
でも、原作1巻の所業が許されたのって、護堂が日本唯一のカンピオーネだからだと思うんですよ。正直、日本側からしたら、エリカと護堂の行いは噴飯ものですし……。
まあ、そんなこと考えてたから、こんな風になっちゃったんでしょうけどorz


#07.子供の論理

 アテナとの激戦の翌日、八人目のカンピオーネ草薙護堂は帰国したという六人目のカンピオーネに呼び出された。それは要請という形ではあったが、アテナを呼び寄せた負い目がある護堂にとって、それは実質的には強制であり拒否権などなかった。エリカは自身の最愛の魔王が軽んじられているようで面白くなったかったが、日本国内では針の筵同然の彼女にはどうすることもできない。それどころか、自身も同道するように言われ、戦々恐々としていた。

 

 護堂はいつも強気で明るい相棒が、恐怖を抑えきれないのを見て、どうにか元気づけてやろうと思い、口を開こうとしたのだが……。

 

 「どうぞ、こちらです」

 

 案内人、正史編纂委員会のエージェント甘粕冬馬の声がそれを遮る。わざとではないのだろうが、タイミングの悪さにどうにも裏を読みたくなってしまう。くたびれた背広をだらしなく着崩した地味な男だが、護堂はこの男が油断ならない相手であることをすでに理解しているからだ。アテナ襲来時に王である護堂に真っ向から意見したのは記憶に新しい。道化じみた話しぶりだが、その実剃刀の如き切れ味を隠している男なのだ。

 

 「草薙さん、エリカさん、大丈夫ですよ。かの王は護国に熱心な方であるとは聞いておりますが、いきなり無体なことをなされるような無慈悲な方ではないと聞いていますから」

 

 二人に気遣ってそんなことを言ったのは、自ら付き添いを申し出た武蔵野の媛巫女万里谷祐里である。聞く所によると、実は六人目の発見のきっかけとなったのは彼女だったらしく、その縁で今回の付き添いが許されたそうである。

 

 「祐里さん、困りますよ」

 

 「すいません。ですが、あまりに見ていられなかったもので……」

 

 冬馬が咎めるように言うが、祐里は謝りながらも意思を曲げる気はないようであった。

 

 「やれやれ、まあいいでしょう。私としてもあんまりどんよりされるのも嫌ですしね。まあ、そこまでビクつかなくても大丈夫ですよ。やる時は徹底的にやる方ですが……!?」

 

 冬馬はそこまで言いかけて弾かれたように振り向いた。その瞬間、エリカと護堂の背後に突如黒髪の巫女が現れる。その手には薙刀が握られているのが見える。護堂はその並外れた直感で、エリカは鍛えぬかれた感覚でそれに反応し、咄嗟に武器を召喚しながら振り返る。

 

 「「!?」」

 

 しかし、両者にできたのはそこまでだった。振り返ったエリカの首には、薙刀が添えられていたからだ。それは否応なくエリカの動きを封じる。護堂も自分ならともかく、相棒の命の危機となってしまっては迂闊に動けない。護堂が何かするよりも早く目の前の巫女がエリカの首を薙ぐことは明白であったからだ。やたら頑丈な自分の身体を盾にすることも考えたが、あの薙刀の前でそれすら無意味な気がして実行に移せない。

 

 「この方を羅刹の君と知っての狼藉ですか!」

 

 その絶体絶命の危機に真っ先に動いたのは、驚いたことに祐里であった。その声は清冽で静かでありながら、確かな迫力を持っていた。だが、襲撃者である巫女は微動だにしない。鋭い視線でエリカと護堂をその場に縫い付けながら、僅かの動揺も見せず答えた。

 

 「勿論、知っていますよ、万里谷祐里。この少年こそ、八人目の王草薙護堂。そして、少女の方が赤銅黒十字のエリカ・ブランデッリで相違ありませんね?」

 

 「!?」

 

 それどころか、そうでないと困ると言いたげに確認すらしてくるのに、祐里は絶句した。とんでもない非礼であり、無礼討ちにされても文句を言えない狼藉だというのに、それを分かってやったというのだから無理もない。

 

 「美雪さん、これはどういうおつもりですか?委員会としても、流石にこれは看過できませんよ」

 

 それに待ったをかけたのは、冬馬だった。知らされていなかったのは同様なようで驚愕はしていたようだが、すぐさま立て直していたのはさすがと言えよう。

 

 「義兄さんの指示よ、甘粕冬馬」

 

 「先輩の!?それはどういう…「子供に分からせるのは実際に痛い目に合わせるのが一番だからな」…!」

 

 突如、割り込んだ声と共に巫女の後ろに一人の男が現れる。その顔を見た冬馬と祐里が凍りついたように動きを止めた。そんな中、男はエリカと護堂の現状を満足気に見つめると口を開いた。

 

 「美雪、ご苦労だった。もういい」

 

 「……」

 

 その言葉に応じ、美雪の手から薙刀が消え、エリカが解放される。

 

 「……!」

 

 すかさず斬りかかろうとして、何かに気づいたエリカは武器を美雪と同じように消して、その場に跪いた。

 

 「え、エリカ!?……そうか、あんたが!」

 

 相棒の予想外の行動に目を白黒させる護堂だったが、すぐに目の前の男の正体に思い当たり、鋭い視線をぶつけた。

 

 「お察しの通りだ、後輩。はじめまして、私が六人目のカンピオーネ神無徹だ。以後よろしく頼むよ、草薙護堂君」

 

 そう言って、何事もなかったように徹は微笑んだのだった。

 六人目の神殺しに対する護堂とエリカの第一印象が最悪だったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 その後、重苦しい中互いの自己紹介を済ませ、徹に連れられてきたのは、アテナとの最後の戦場の舞台となった浜離宮恩賜庭園だった。といっても、庭園の惨状は酷いものである。いくつもの大きなクレーターが穿たれ、最早原型を留めていない。アテナと護堂が暴れた結果であった。

 

 「こんな所まで連れてきて何のつもりだよ?」

 

 最初は同郷で先達、それも目上となれば敬語を使うつもりだったのだが、今や護堂にその気は皆無である。先のエリカに対する仕打ちが、腹に据えかねているのだ。

 

 「うん?随分怒っているようだな。そんなに気に入らなかったか?」

 

 「当然だろ!あんなことされて怒らない奴がどこに…「それがお前達のしたことだ」…何!?」

 

 護堂の剣幕に意外そうに問い返す徹に、怒鳴り散らそうとして言葉を止められる。

 

 「先程の不意討ちと同じことを、お前達は日本国民全てに対して行ったと言ったんだよ」

 

 「なっ、俺達がいつ!?」

 

 「ダメよ、護堂!」

 

 徹の侮蔑したような言い様に食って掛かる護堂だったが、それをエリカが必死に止める。

 

 「なんで止めるんだよ、エリカ。こいつはさっきお前に!」

 

 「……仕方ない。仕方ないのよ護堂。貴方はともかく私にはそれを責める権利はないの」

 

 護堂の怒りに一瞬喜色を現したエリカだったが、すぐに泣きそうな顔で俯いた。

 

 「どうやら、君の愛人は理解したようだな。自分が何をしたのかを」

 

 「どういうことだよ!?」

 

 「やれやれ、まだ分からないのか……。ならば、はっきり言おう。お前達がこの国にアテナを呼び込んだことは、この国の民の首に突然刃を突きつけたようなものなんだよ」

 

 「そ、それは……!」「……」

 

 護堂は言葉に詰まり、エリカは言葉も無く項垂れる。

 

 「倒したからいいとでも言うつもりか?笑わせるな。死者こそ出ていないが、この国の民が受けた傷跡はけして小さくない。経済的損失はそれこそ莫大なものだし、目の前の惨状を見れば分かるように環境にすら膨大なダメージを与えている。だというのに、アテナを見逃したそうだな?」

 

 「何か悪いのかよ?倒したのは俺だ。どうしようが俺の勝手だろう?」

 

 「ああ、そうだ。殺そうが逃がそうがお前の勝手だ。基本的にはな」

 

 「基本的?アテナは例外だとでも言うのかよ」

 

 「そうだ、当たり前だろう?この国で発生したものならばともかく、お前達が勝手に呼び込んだものだ。お前はこの国の民の感情に少しでも報いる為にあの神を殺さねばならなかった」

 

 「喧嘩で殺すなんてやり過ぎだろう!それに実際に戦ったのは俺だ。文句を言われる筋合いはない」

 

 「喧嘩、喧嘩ね。お前はそう思っているわけだ。しかも、文句を言われる筋合いはないと来たか……。なるほど、ガキだな」

 

 護堂の言に徹は深々と溜息をついた。やれやれと言わんばかりの表情だ。

 

 「なっ、なんだよ、そんなのあんたに!?」

 

 思わず言い返そうとした護堂だが、逆に徹に襟首を捕まれ引き寄せられる。

 

 「おいクソガキ、よく聞け!お前は何も分かっちゃいない。今回の被害は全てお前達がアテナをこの国に呼び込んだことが原因なんだよ。つまり、れっきとした人災だ。

 お前達のせいでこの国にどれ程の被害がでたか分かっているか?死者こそ出ていないが、多くの被害者が存在することを理解しているか?お前一人の感情が、被害者達全ての感情よりも優先されるとでも言うのか?」

 

 「……」

 

 今度こそ、護堂は沈黙せざるをえなかった。凄まじい被害が出たことは理解していたが、どこか実感がなかったし、元凶たるアテナを倒したことで責任をとったつもりになっていた。しかし、こうして真っ向から叩きつけられてしまうと、最早逃げ場はない。自身はこれっぽちも責任などとっていなかったのだ。目の前の先達から言わせれば、アテナを滅ぼすまでやるのが当然であり、最低条件だったという。だというのに、己はそれすら自身の感情を優先したのだ。あの時は祐里とエリカの殺害提案を蹴っただけのつもりだったが、実際には被害者達の感情すらも無視していたのだと理解させられた。つまり、護堂は被害者のことなどはなから頭になかったのである。

 

 「そんなこと、考えもしなかったって面だな。だからガキなんだよ、お前は」

 

 愕然とする護堂を、徹はつまらないものを見るかのように手を放す。護堂が尻餅をつくが、最早徹は見向きもしない。

 

 「エリカ・ブランデッリ、お前がいかに愚かしいことをしたか、その小賢しい頭で理解したか?」

 

 「……はい。ですが、王よ。此度のことは全て私めの謀にございます。どうか、我が君にはご寛恕を!」

 

 徹の問に悄然としながら答えながらも、毅然と顔を上げ護堂を擁護するエリカ。我が身に変えても、護堂を護らんという意思がその目には宿っていた。

 

 「ほう、見事な覚悟だ……といいたいところだが、お前の命なんぞもらっても、一文の得にもならんし、そもそもガキを殺す趣味はない。安心しろ、最初から殺すつもりなど毛頭ない」

 

 「ありがとうございます!」

 

 この場で殺されても文句がいえない立場だっただけに胸を撫で下ろすエリカだったが、次の瞬間蒼白になる。

 

 「大体、お前ごときが責任をとれるものか。子の不始末は親に責任を取らせるべきだろう。赤銅黒十字にはたっぷり賠償金を請求させてもらう。今回のことに賛同した他の結社も含めてな」

 

 「お待ちください!そ、それは……!」

 

 此度の被害額がけして軽いものではないことを理解しているだけに、その衝撃は大きい。他の結社と分担したとしても、赤銅黒十字の財政に大きな負担となることは想像に難くないのだから。

 

 「安心しろ、何も全額請求しようと言うわけじゃない。不本意ながら、このクソガキはうちの人間だ。お前の色香に迷ったとはいえ、アテナを招き入れた責任の半分はこいつにある。うちのガキの不始末なんだ。半額はこっちでもつさ」

 

 全額負担から、一気に半額へのダンピング。それは救いの手のように見えて、その実絶縁状に等しい。徹は草薙護堂が日本の王であると宣言するとともに、エリカ達に手を出すなと要求しているのだ。

 

 「いえ、それには及びません。我が君の責は我が身の責なれば」

 

 護堂との断絶など、エリカには絶対に受け入れられなかった。独断もいいところであったが、そのありがたい申し出をエリカははっきりと拒絶した。赤銅黒十字から追放される可能性すらあったが、エリカはそれでも迷わなかった。

 

 「そうか……。では、イタリアの結社には地獄を――――――なんてーな」

 

 「えっ?」

 

 「安心しろ。すでに半額で話はついている。お前の叔父に感謝することだな。あれは武人としても、一人の男としても尊敬できる男だ。全ての責任は自分にあると言ってきたよ」

 

 そう、実のところすでに話はついているのだ。すなわち、この場は交渉の場などではない。決定事項の通達の場でしかないのだ。大体、いかにエリカが『紅き悪魔(ディアヴォロ・ロッソ)』の称号を受けていたとしても、赤銅黒十字の結社としての行動を左右する権限などないのだから。

 

 「叔父様……」

 

 「あの男に免じて今回は大目に見てやろう。お前がこれ迄通りクソガキに侍るのも自由だし、どうこういうつもりもない。

 だがな、次があると思うな。次、同じことがあれば、俺はイタリアを焦土に変える。赤銅黒十字などその歴史と存在ごと灰にしてくれよう。それを忘れるな!」

 

 徹の昂った激情に反応して、炎が吹き荒れる。それは何も焼くことはなかったが、その威をエリカにまざまざと見せつけた。その威と苛烈な眼光が、王の宣言が嘘でもなんでもないことを何よりも雄弁に語っていた。エリカはミラノが灰燼と帰すのを幻視し、身震いするのであった。

 


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