そんなわけで照日和第二話はじまるよー
七月、蝉の求愛行動にそろそろ叫びたくもなるこの日、事件は起きた。
切っ掛けは照との登校中の事だった。
「──でさ、母さんがまたやらかしてさ。って照、聞いてるか?」
「………」
「返事がないただのしかばねのようだ」
「………」
いや、ギャグに笑ってくれないとちょっと精神的にくるものがあるんですが?
まぁ照がボケに反応が薄いのはいつもの事だけど、それでも今日はおかしい。薄い以前に反応が無いのだ。
「そーいえば、今日ちょっとお金持ってきてるから帰りに駄菓子屋に行こうぜ。照の大好きなお菓子買っていいからさ」
「…!……」
な、んだ、と!?まさかお菓子の話にも興味を示すだけなんて!?
照と出会い四ヶ月。こいつの中でお菓子がいったいどれだけの重要ポジションを確立しているのか、俺はよく知っている。
自体の強大さに、気づけば俺は照の肩を掴み揺らしていた。
「おい照!本当に何があったんだ!大丈夫か?お腹が痛いのか?」
そうすればようやく顔を上げる。だがその目は虚でどこを見ているのかすらわからないものだった
「あ、夕…ごめん。気づかなかった」
そう言い再びトボトボと歩き出す。
その日、彼女の声を聞くことはなかった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
翌日、俺は二つ下の学年の教室へとやってきていた。
理由は一つ、照の妹に会うためだ。
あれ以降照との会話は無い。
話しかけても心ここに在らず、返事を返しても「うん…」で終わってしまう始末だ。
そこで俺は照の妹がいるというクラスに来たわけだ。家でもあの調子なら余程のことがあるのだろう。
そう思い此処まで足を運んだのだが…
「入りづらいよなぁ…」
自分は上級生、いくら下級生のクラスとはいえ入るには中々度胸がいる。けど、これも照の為!男を見せろ阿櫻夕時‼︎
ガラガラとドアを開ければ中にいた生徒の目はがこちらへ向く。そしてヒソヒソと話し出す。やっぱ居心地悪い、早めに用件を済ませてしまおう。
「ごめんちょっと良いかな?」
「なんですか?」
俺は近くに居た金髪の少年に声をかける。昔はみんな黒髪だったらしいけど今時金髪なんて珍しくない。
「ちょっと宮永咲さんを呼んでもらえないかな?ちょっと用事があるんだ」
「………分かりました」
宮永咲の名前を出した途端、こちらを見る目が厳しくなったが、それでも少年は了承してくれた。
ほどなくして少年は宮永咲さんと思われる少女を連れてきた。というより彼女が少年に隠れてついてきたといったほうが正しいかもしれない。
「連れてきました。コイツが宮永咲です」
「え…えっと、宮永咲です……」
改めて少女を見る。あー、なんとなく照と同じ雰囲気がする。特に頭の角とか。
少し見すぎていたのか、「ヒッ」と声をあげて少年の後ろに隠れてしまった。そんな所も照に似ているな。
ともあれ悪い事をした。それに少年からの敵対の視線も強い。空気を和ませなくてわ
「ごめんごめん。俺は6年の阿櫻夕時って言うんだ。よろしく」
優しい声音でコワクナイヨーアピールをすれば、少女はハッとした表情になり顔を上げた。
「も、もしかして!お姉ちゃんと同じクラスの夕さんですか?」
「ん?知ってるの?」
「は、はい。お姉ちゃんがいつも話してくれるから…新しい友達ができてとっても優しいって」
んん、自分の知らないところでそんな評価をされていたとは…なんだかこそばゆいな…
ともあれ相手が自分を知っているなら話は早い。早速本題に入ろう。
「実は今日はそのお姉ちゃんのことで来たんだ」
「え、お姉ちゃんの?」
「うん。なんだか最近元気が無いみたいでさ、妹ならなんだか知ってるんじゃ無いかと思って」
「そ、うなんですか…」
元気が無いと聞いた咲ちゃんは表情に陰を落とし視線を下に向ける。どうやらなにか知ってるみたいだな。
とは言え無理には聞き出すことなんて出来ないしな…
「まぁ、もしかしたら俺の勘違いかもしれないから。それじゃ「待ってください!」ん?」
「あ、あの…ここだと話にくいので…中庭に行きませんか?」
俺の袖を掴み訴える咲ちゃん。どうやら話してくれるらしい。咲ちゃんの顔は真剣その物だ。
「分かった行こう」
中庭には昼休みでも比較的生徒の数が少ない。俺はそこにあるテラスの様な場所に座る。向かいには咲ちゃんが座りその横には金髪の少年、京太郎が座った。
「それで?照はどうして元気が無くなったんだ?」
「はい。たぶんお姉ちゃんが元気が無いのは私の所為です…」
咲ちゃんのせいとはどういうことだろうか。
咲ちゃんは言い出そうとするもうまく言葉が見つからないのか口を開いたり閉じたりしている。
「落ち着いて、順を追って話してくれ」
「は、はい…」
それから咲ちゃんは話してくれた。
ある日の放課後の事だ。彼女達姉妹はちょっとした出来事で喧嘩になったらしい。
それこそ最初は些細な喧嘩。よくある姉妹ゲンカだったという。
ただ、この時ばかりは少し違った。咲ちゃんの我慢が少しばかり溢れてしまった。
一度溢れた物はそのままドボトボと流れ落ち気づいた頃には大喧嘩に発展していた。
俯く咲ちゃん。顔は見えずとも泣いているのが分かる。
しかし喧嘩か……照はアレで自分の意思を通そうとすることがある事は俺でも分かる。どちらが悪いなんてことは無くても行違いで衝突することはあるものだ。
そして、喧嘩の最中咲ちゃんが言った言葉がきっかけであんな事になったと…普段から照にはよく妹の話は聞かされていた。「可愛い」「自慢の妹」とは耳にタコが出来るほど聞いた。そんな妹から酷い事を言われれば傷つくことは当然というものだ。
テラスにどんよりとした空気が流れる。咲ちゃんは変わらずうつむき、京太郎も暗い顔をする。
ううむ、少し話を変えないとな。
「ちなみに喧嘩の原因はなんなんだ?」
ここまで二人を悩ませる喧嘩の原因、咲ちゃんの説明では些細な事とあったが、それはなんだろうか。
それを聞かれた咲ちゃんは、バツが悪そうな、恥ずかしいような色々混ざった表情をする。
「言いにくいことは分かってる。だけど教えてくれないか?俺も照が心配なんだ」
「俺もだ咲。お前だってここの所元気なかったじゃないか。ずっと心配だったんだぞ。教えてくれよ」
真剣に咲ちゃんの目を見ていう俺と京太郎。年の近い男子2人に見つめれた咲ちゃんの顔は、すでにオーバーヒートしておりプスプスと音を立てる。
「ま、」
「「ま?」」
「ま、ま、、、、、、麻雀だよ‼︎」
羞恥心に耐えかねた咲ちゃんは顔を隠し蹲る。
麻雀は世界レベルで競われている立派な種目だ。
だがここまで悩んでいる喧嘩の原因が麻雀というゲームであることが恥ずかしかったのだろう。それとも小学が麻雀をやっている事が恥ずかしかったのか、気にしなくても良いと思うんだけど。というか正直、嬉しい誤算だ。
俺はフフフと口元をにやけさせる。突然笑い出した俺を見て2人は顔を引きつらせた。
しかし今はそんな事二の次だ。
「咲ちゃん、照と仲直りしたいよな?」
「は、はい!お姉ちゃんと仲直りしたいです‼︎」
「京太郎、咲ちゃんを助けてやりたいよな?」
「も、勿論だぜ。俺だって咲の友達だ」
うんうん。二人の覚悟は聞いた。ならば…
「それじゃ手伝え。仲直り計画の始まりだ」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「よ、照」
「………どうしたの夕。こんな時間まで待たせるなんて…」
翌日の放課後、皆んなが帰った教室で俺は照と二人っきりだ。勿論告白なんてするつもりは無い。俺はランドセルから一つの箱を取り出した。
「なに?それ」
「まぁ見てみろよ」
ジャーンと効果音を出しながら箱を開けると…中には小さいながらもホールのチョコケーキが入っていた。
「…………‼︎」
照の目線はケーキに釘付けになる。いくら元気が無かろうとも目の前に実物があればコイツは反応する。
お菓子に対する欲を失うはずがない。
「これどうしたの?」
「今朝早起きして作ってきた」
「!? 夕が?」
フッフッフッ、驚いているな照!これでも家族の台所を任されている身。ケーキを作るなど造作もない。
照の心は完全にケーキ一色となっていた。お菓子へと欲が無くなっていないとは思っていたが、ここまでとは思わなかったぞ。照さん女の子がよだれなんてだすんじゃありません。
「食べたいか?」
俺の問いにブンブンと激しく頭を振る照。貴方本当にさっきまで元気無かったんですよねと聞きたくなるほどその目はキラキラと輝いていた。
「へぇー食べたいかぁ…そうかぁ…そうだな一つお願い毎を聞いくれたら食べてm「聞く!なんでも聞く!」そ、そうか…なら食べてもいいぞ」
フォークを渡せば一目散にケーキの元へ。心配していた自分は馬鹿だったんじゃないだろうか?そう錯覚させられてしまう。
「ご馳走様でした」
「速くない!?」
フキフキとハンカチで口元を拭く照の前には、屑ひとつすら残っていない皿が…嘘だろ、一ホール丸々あったんだぞ?それを数秒足らずで…
「美味しかった」
「そ、そりゃどうも……」
なんと言うか恐怖が止まらない。こいつは本当に人間だろうか。と、そんなことは今はどうでもいい。照はケーキを食べ終えた。こっからが本題だ。
「よし、ならお願い事の話をしようか」
「うん。何をして欲しいの?」
「別に大したことじゃない。ちょっとゲームするのに人数が足りないから照にも入って欲しいんだ」
「ゲーム?」
ニヤリと口元を尖らせる。照は頭にハテナを浮かばせている。
「そうゲームだよ。ルールは簡単だから気にしなくていい。あぁ、それと他に遊ぶ奴も気にしなくていい。悪い奴らじゃ無いし、それに照も知ってる奴らだ」
ますます照のハテナは増えていく。が、断ることは出来ない。なぜなら照はもうすでに了承しているからだ。
「ケーキ美味しかっただろ?そのケーキに免じて頼むよ!お願い!」
「……うん。わかった。ケーキ美味しかったし…そのくらいなら」
「ありがとう。それじゃ、時間は明日の昼。近くの公園に集合な。そこから俺の家に行くから」
さて、第一フェイズ完了だ
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「── と、まぁそんな訳で照を麻雀卓に着かせた俺はなんやかんやあって咲ちゃんと仲直りさせたという訳だ」
長い話をしたせいで喉が渇いた。そっと手元の缶ジュースを一飲み。うんやっぱいいねドクペ。
さてはて話したは良いものの、他の奴らの反応と言えば、ポカーンと口を開けていた。菫は額に手をやってはぁとため息をつく。
オイオイ人に話させておいてその反応はどうよ。
「いやぁ、流石というかなんというか…小学生の頃からそんなかんじだったんすね。夕時先輩」
「お、大人びた子供だったんですね〜…」
「いや、普通にせこいでしょ。小学生のする事じゃないよ」
亦野と渋谷のオブラートに包んだもの言いをバッサリと切り捨てる淡。
「なにを言う。頭脳的だと言え。だいたい姉妹喧嘩を仲裁したんだぞ?褒めこそされど貶される筋合いは毛頭無い!!」
「うわぁ、言い切ったよこの人…」
「…でも確かにあの時の夕はせこかった。ケーキ美味しかったけど」
「夕時はなんというか、手段を選ばない事があるからな。それが長所な時もあるし短所な時もある。大抵短所だが…」
おい菫。お前は一言余計だ。
だいたい何かを行う時に手段を選ぶ暇があるか?麻雀においてもそうだ。ツモらなきゃ始まらない。リーチを掛けなきゃいけない。捨てなきゃいけない。どんな場面にしろ決断する時は迷ってなんかられねぇんだよ。
「まぁなんにしてもそれでえーと、咲?っていうテルの妹が勝って丸く収まったんだ。ユージーやテルに勝つなん信じられないけど」
両手を広げやれやれと言いたげな淡はそう言うが、おいそれは間違いだぞ。
「はぁ?なに言ってやがる。俺が負ける訳ねぇだろ。もちろん全員トバしたぞ?」
「「「「は?」」」」
照を除いた四人の声がハモる。なんだその目は。
「いやいやいやちょっと待ってください!おかしいでしょ!今のはどう考えても妹が姉を打ち負かすシーンでしょ!」
「知らねぇよそんな事。それにな現実はそんなに甘くないんだよ。まぁ俺も最初はそう思ってたんだけどな。二人がドンドンヒートアップしてくのに耐えられなくて、ついな」
「つ、ついって…」
「お前はなにをしているんだ」
「まぁ俺を倒すためにコンビ打ちとかしてきたし?結局原因は二人の意地の張り合いみてぇなモンだったからな。結果オーライってやつだ」
「ま、まるで魔王だね…」
「…淡上手い例え。あの時の夕は本当に魔王みたいだった…本当に…」
そう言って体を震わせる照。なにを言う。俺は普通に点数計算して親で役満連発しただけじゃねぇか。俺は悪くねぇ。
「ま、これが俺と照が初めて打った日だな。これを機に姉妹仲は良好になり俺と照、あと咲ちゃんと京太郎を混ぜた四人で良く遊ぶようになったってわけだ」
そう言ってまとめに入る。うんうん。こう考えればなんて感動的なお話であろうか。
「とりあえず、ユージーが無茶苦茶って事が分かった」
淡の言葉に虎姫全員が頷いた。解せぬ。
文才無茶苦茶だなぁ…まぁ時間があれば直します。本当に最近時間が無いのです。あぁ、夢のGWががががが