元帥閣下の女学生生活はじめましたっ!!   作:のこのこ大王

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第21章 学外授業

 

 

 

 

 その日は、とても良い晴れ空だった。

 空を飛ぶ鳥の姿も良く見える。

 

「今日も良い天気ね」

 

「そうですね」

 

 大きな道を進む馬車。

 決して派手ではないものの、細かい装飾が見事な

 その馬車からは、華やかな声が聞こえてくる。

 

「そう言えば、こっちの方面に行くのは初めてだわ」

 

 話しかけてきているのは、フラン。

 リシアの隣に座り、外の景色を楽しんでいる。

 

「私は何度か訪れたことがあるわね」

 

「あら、そうなの?」

 

「ええ。

 何度かこちらに用事があったものですから」

 

 流石に『戦争するために通った道』などと言える訳がない。

 

 なのでそう答えると、それで満足したのか

 フランは、また外を眺め始める。

 

「・・・はぁ」

 

 思わずため息を吐きながら

 私も反対側から外を眺める。

 

 何気なく外を眺めていると

 護衛で馬車についてきている騎乗した騎士の1人と目が合う。

 

 流石につまらなそうな顔を向けるのも躊躇われ

 貴族の娘らしく、軽く微笑みかけてみる。

 

 すると少しだけ驚く表情をした後

 軽く会釈をして、少しだけ馬の速度を落としたようで

 馬車の窓の見える範囲から外れてしまう。

 

 思いっきり照れたようなニヤけた表情で

 そのまま視界から離れられると、それはそれで微妙な気分になるが

 そんな気分は、正面から聞こえ続ける声にかき消されてしまう。

 

「ホント、ど~してアンタと一緒なのかしら」

 

「そんなこと今更言っても仕方がないでしょ?

 そんなことも解らないなんて野良犬の方が、まだ利口ってことかしら?」

 

「口を開けば嫌味しか言えない猫よりマシじゃない?」

 

「ワンワンと吠えられても困るわ。

 せめて人間の言葉で話して貰わないと」

 

「あら、ヴァルフォード家のお嬢様は

 言葉も通じないのかしら?

 

 それは、とっても残念ね~」

 

「ええ、残念だわ。

 バルズウェルト家の娘が

 これほど残念な頭の持ち主で」

 

「・・・ふふふっ」

「・・・ふふふっ」

 

 互いに不敵な笑みを浮かべながら馬車の中で、にらみ合っている。

 その殺伐とした雰囲気にリシアとフランは

 完全に無視することに決めていた。

 

 関わるだけこちらが損でしかない。

 ならばいっそ徹底して関わらないのが一番だ。

 

「(それにしても、よく飽きないものだな)」

 

 彼女達は、学園を出たあたりから

 ずっと似たようなやり取りを続けている。

 

 まだ1日ぐらいなら理解もしよう。

 だが、それが今日で3日目ともなれば

 もはや賞賛出来るレベルだ。

 

「・・・はぁ」

 

 もう何度目になるか解らないため息を吐きながら

 極力何も聞かないことにして、視線を外に向ける。

 

 

 

 

 

第21章 学外授業

 

 

 

 

 

 そもそもの事の始まりは、学外授業というものだ。

 

 騎士としての経験を積むために

 実際に街の警備隊を指揮するという形で

 騎士の仕事を体験するというもの。

 

 そのため学園から外に出て

 数人から数十人単位で、様々な都市へと移動することになる。

 

 流石に貴族の令嬢を預かるだけあって

 王国の中でも比較的治安が良い場所が選ばれ

 受け入れてくれる貴族なども実力者が多い。

 

 正直、私からすれば

 ただの遊びとしか思えない話だが

 そういったものが、あの女学園の価値を高める1つでもある訳で。

 

 それに我が領土でも、彼女らを積極的に受け入れている。

 今回も学園生徒の約7割ほどは、我が領土である東側の各都市に

 来ることになっている。

 

 これは単純に良い人材が、こちらにそのまま来てくれればという

 単純な思惑と、我が領土以外では

 あまり受け入れに積極的でないというのもある。

 

 それについては、解らなくもない。

 右も左も解らぬお嬢様が

 現場に来たところで邪魔以外の何ものでもないのは

 誰もが思うことだ。

 

「あら、街が見えてきたわね」

 

 フランの声に外を見ると

 微かではあるが、目的地の街が見えてくる。

 

 周囲を巨大な壁と

 川を利用した天然の巨大な堀が覆う城塞都市。

 かつては、最前線として機能していた場所。

 

 全体が薄い青色で統一された街は、別の国に来たとさえ思える。

 

「ようやく到着というところでしょうか」

 

 フランへの返事をしながら

 やっとこの殺伐とした空間から逃げられることに安堵する。

 

 今回、私が自分の領土に行ってもあまり意味がないため

 せっかくだから他の貴族の領地をこっそり視察しようと思い

 わざわざ学園長に話をつけ、別の領地へと行くことにした。

 

 まあ、まさか彼女達と一緒になるとは思っていなかったが・・・。

 

「それにしても、相変わらず青いのね」

 

 青い街を見たシルビアが、つまらなさそうに呟く。

 

「当然でしょう?

 陛下から頂いた色を誇るのは当然のことだし」

 

 それが聞こえたセレナが返事を返す。

 

「・・・そう言えば、アンタ―――」

 

「言葉遣いまで犬になったのかしら?」

 

「アンタなんてアンタで十分よっ!」

 

「あら、そう」

 

 興味ありませんよという感じで、手をひらひらさせるシルビアに

 頬を膨らませて怒るセレナ。

 ある意味いつもの光景だ。

 

「・・・アンタ、どうして赤一色なのよ。

 アンタの所だと白色でしょうに。

 

 というか昔は真っ白だったでしょ?」

 

 ダムル元帥軍は青色の使用を賜っているため

 何かと青色で統一している。

 セレナの髪のリボンが青色なのも、恐らくその辺りからだろう。

 

 セレナの言うようにジェイス元帥軍は白色なので

 彼の本拠地たる街も白色で統一された綺麗な街だそうだ。

 だから普通はシルビアも白色の装飾品などで着飾っているはずである。

 なのに彼女は、出会った時から赤一色だった。

 

 ちなみに私の所は赤色なので、本拠地にしている街は

 赤レンガを中心にした赤色で統一していたりする。

 

「そんなの決まっているでしょう?

 そんなことも解らないのかしら?」

 

「相変わらずムカつく女ね。

 解らないから聞いてるのでしょ?」

 

「はぁ・・・」

 

「何でため息吐くのよ!」

 

「別に」

 

「あ~!

 今、鼻で笑ったわねっ!」

 

 そしてまた始まる下らないやり取り。

 完全に子どもの喧嘩である。

 

「・・・私が赤色で統一してる理由なんて1つしかないじゃない」

 

「だから何なのよ、その理由って」

 

「赤色を陛下より賜ったのは、どこの誰かしら?」

 

「レナード元帥でしょ」

 

「そう、かの英雄と呼ばれる元帥よ。

 なら、その妻となる以上

 彼が賜った赤色で着飾ることに慣れておくのは当然でしょう?」

 

「・・・はぁっ!?」

 

 何言ってんだこいつという顔でセレナがシルビアを見る。

 

「まあ可能性すら無いアナタには、縁の無い話だけれど、ね」

 

 その言葉と共に再開される子供の喧嘩。

 私自身も何故シルビアが白色ではなく赤色を多用するのか

 気になっていただけに、その理由を聞いてどう処理していいのか

 判断に困ってしまう。

 

 色々な意味で華やかな馬車が

 立派で大きな外周の門を抜け、街の入口にある内門前まで来ると

 街の中から元気の良い人々の声が聞こえてくる。

 

 この本拠地の象徴である青い街の名は「城塞都市ガルガン」

 かつて帝国との戦いでは長年最前線であったこともあり

 城壁には無数の戦いの跡が未だに残っている。

 

 しかし何より有名なのは

 バルズウェルト家が誕生したとされる地だということ。

 つまりバルズウェルト大侯爵家の本拠地ということだろうか。

 

 学園から手配された騎士達は

 内門を警備する街の警備兵にその役割を引き継いで帰っていった。

 少し名残惜しそうに見えたが、気のせいだろう。

 

 そして街の警備隊長である騎士が

 セレナに挨拶をする。

 見るからに古参兵といった風貌の髭を生やした中年騎士だ。

 

「お帰りなさいませ、セレナお嬢様。

 少し見ない間に、また一段とお美しくなられましたな」

 

「久しぶりね。

 元気にしていたかしら?」

 

「ええ、元気だけが取り柄ですからね。

 そちらにいらっしゃるのがお嬢様のご学友の方々ですね?」

 

 そう言ってこちらを見て敬礼をしてくる。

 相手が単なる学生と言えど貴族の令嬢だ。

 しかも元帥の娘も含まれるのだから当然と言えば当然か。

 

「私は、この街の警備隊長をしているナザックと申します。

 期間の間、よろしくお願い致します」

 

「これはご丁寧に。

 私は、リシア=ナリアスと申します。

 勝手が解らず、ご迷惑をおかけすることも多いかと思いますが

 数日の間、よろしくお願い致します」

 

 もはや慣れてきた演技ではあるが

 心情的には、まだまだ微妙である。

 

 私が挨拶を返したことで

 フランとシルビアも続けて挨拶を返す。

 

 シルビアの名を聞いた時に少しだけ驚いた顔をしたのは

 間違いなく彼女が元帥の娘であると理解したからだろう。

 

「皆様、長旅でお疲れでしょう。

 スグに屋敷にご案内いたします」

 

 そう言って数人の護衛騎士と共に

 馬車は街中へと入っていく。

 

 街の中に入ると、より一層活気ある人々の声が聞こえてくる。

 王都より少し離れた位置にあるとはいえ

 流石に歴史ある街だけあって人々の往来も多く

 地方都市とは思えないほど発展した街だ。

 

 それにしても出迎えた街の警備隊長は

 地方都市の警備兵とは思えないほどの丁寧さだった。

 雰囲気も、最前線に居る兵士のような気迫が感じられる。

 恐らく最前線から退いた歴戦の兵といったところだろうか。

 

 そんな様々なことを考えているうちに

 街の中央付近にある大きな屋敷に到着する。

 

 立派な門に描かれた大きな紋章を見て

 この屋敷が誰の所有物かを理解する。

 

「ここも久しぶりだなぁ・・・」

 

 そう呟くセレナ。

 

「感傷に浸る暇があるなら

 さっさと案内して貰えるかしら?」

 

 しかしスグ後ろからシルビアに急かされる。

 

「はいはい、わかってますよ」

 

「一応、アナタが主催者のような立場でしょう?

 その主催者が、客人のもてなしも出来ないのはどうなのかしら?」

 

「うぐっ・・・うるさいわねぇ」

 

 学園の授業として来ては居るが

 ここは、バルズウェルト家の街であり

 目の前の屋敷もバルズウェルト家の屋敷だ。

 

 つまりここでは、バルズウェルト家の人間であるセレナが

 率先して皆をもてなす必要があり

 客人扱いになる我々が不満を口にするようなことは

 貴族としてあってはならない。

 これは貴族としてのプライドの問題だ。

 

 セレナが門の前に立つと

 使用人が、どこからともなく現れて門を開けて出迎える。

 屋敷の前には使用人が整列しており

 格の高さをうかがわせる。

 

 使用人達の挨拶を受けながら屋敷へと歩く。

 

 気持ちを切り替えたのか

 セレナの歩き方も、初めて会った時のような

 いつもより更にお嬢様らしい歩き方に見える。

 

 屋敷に入ると

 正面には立派な階段があり

 天井には大きな絵が描かれていて

 細かい細工が施された照明。

 

 廊下などにも見事な細工の調度品の数々が並んでいる。

 

 私も様々なものを見てきたが

 思わず『さすがはバルズウェルト』と感心してしまう。

 

 フランだけでなくシルビアも

 感心しているような感じで周囲を見渡している。

 

 貴族というのは、とにかく『飾る』ということが重要になってくる。

 

 それは「これぐらい用意することが出来る」という

 そういったものに投資出来るだけの財力があると示すことであり

 言うなれば貴族にとっての力を示す行為であるからだ。

 

 例えるのなら財力は、軍の兵糧。

 調度品の数々は、軍の兵力。

 そしてそれらを上手く飾り付けることは

 その人物の武力や知力、外交力といった個人としての力を示す。

 

 なので貴族達にとって『飾る』ことは戦争であり

 それらに金を出せないとなると『その程度なのか』と失笑されることになる。

 

 故に調度品などに金をかけることは

 貴族にとっては当然のことになる。

 まあ、それらを利用して散々金儲けしている私が言うことではないが。

 

 それぞれ使用する部屋が割り当てられて

 それぞれの担当使用人が部屋まで案内してくれる。

 

 今はもうあまり利用していないであろう屋敷に

 これだけの使用人が居るというのだから

 流石は、代々利用してきた屋敷だと言える。

 

 案内された部屋に荷物を置くと

 使用人に言って1人にして貰う。

 

 ベッドに身を投げ出すと

 いくらが気が安らぐ気がする。

 

 普段は馬に乗って移動するため

 長時間馬車に乗るようなことは、あまりない。

 しかも今回は、彼女らの殺伐とした空気の中。

 いつも以上に疲れてしまうのも仕方がないだろう。

 

 ふとミーアを呼び出そうと思って気づく。

 そう言えば彼女は、街に残って貰っていたなと。

 

 今回、例の幽霊王女の件以来

 何も事件が起こらない平和な日々が続いていた。

 『神』とやらの情報を集めるために規模を広げて

 国中に工作部隊を向かわせて

 情報収集をさせているが成果は無い。

 

 学園都市を離れることにも抵抗があったが

 あまり他の学生と違う動きをして目立つ訳にもいかない。

 もうバレても圧力で揉み消すことも出来なくないが

 それも今後を考えるとやりたくない。

 だからこそ、出来る限りバレないようにはしたいのだ。

 

 話はそれたが、街を離れている間に何か起こってしまうと困るので

 ミーアを含めた主要な連中は全員置いてきた。

 1人で良いとも思ったが、いざという時に連絡が取れないのは問題だとして

 3人の伝令役もこなせる人間を密かに連れてきている。

 

 まあ、何もないに越したことはないが。

 

 個人的には、気楽に街の視察ついでに

 このお遊び気分の騎士体験を終わらせたいものだ。

 

 扉を叩く音で考えを中断し、身体を起こして座り直す。

 入ってきた使用人から食事の準備が出来たと伝えられ

 返事を返すと、着替えを手伝おうとした使用人を追い出し

 服を着替えて食堂へと向かうのだった。

 

 

 ・・・・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 

 そして次の日。

 

 さっそく屋敷の前まで迎えに来た警備隊長殿に

 素人お嬢様達が、街の要所や警備ルート・騎士達の詰所などを案内される。

 

 ここまでは普通の光景だが

 そうでないことも多い。

 

「セレナ様~、帰ってこられたのですか~?」

 

「セレナ様、美味しい果物を持って行って下さい!」

 

「セレナ様じゃ。

 お美しくなられましたなぁ」

 

「せれなさまぁ! あそびましょ~!」

 

 とまあ、何処に行ってもセレナ様、セレナ様である。

 市民達から信頼されることは良いことではあるが

 ここまで行くと宗教のようにも見えるほど熱狂的だ。

 

 流石のシルビアも空気を読んでか

 この街に来てからセレナに一切絡んでいない。

 

 このセレナ教とも言うべき歓迎の後

 ようやく訓練場に到着する。

 

 そこでぜひ想力者の戦いを見せて欲しいと頼まれて

 私は、セレナと。

 フランは、シルビアと対峙することになった。

 

 

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 

 いくつもの金属がぶつかる音が訓練場に響く。

 初めは興味だけで見ていた兵士や騎士達も

 次第に激しくなる想力者同士の戦いに目の色が変わる。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 気合のこもった上段からの一撃を放つシルビア。

 

「よっと」

 

 それを難なく受け止めるフラン。

 

 シルビアは、いつもの想力武装だが

 フランは、槍の先に斧が付いた槍斧と呼ばれる武器を使っている。

 

 槍斧は、槍の刃の根本に斧頭と斧頭の反対側に突起のついた武器で

 槍の部分では突く・斬る。

 斧の部分では斬る・叩く・薙ぐ。

 突起の部分では叩く・引っかけるなどが出来る。

 

 普通の槍や斧よりも圧倒的に選択肢が多いのだ。

 

 普通に槍に柄の長い大斧の頭を足した形であり

 更に突起の部分で敵の鎧をひっかけて無理やり破壊したり

 馬上の敵を引きずり下ろすことも可能。

 

 だが長い武器の先端に鉄の塊が集中するため

 非常に重いのと、多芸であるため使いこなすのが非常に難しいという点がある。

 

 だがそれら欠点を感じさせることなくフランは槍斧を難なく振り回す。

 

 実は、彼女との戦いの後

 彼女から稽古を付けて欲しいと頼まれ

 色々と相談して彼女の対外的な想力を『身体能力強化』と偽ることにした。

 

 これにより彼女は、人外の動きをしたとしても想力だと言い張ることが出来る。

 そしてその人外能力を活かす武器を持つべきだという話から、この槍斧を使うことになった。

 

 予想外だったのが、彼女が意外と真剣に訓練に取り組んだ点と

 才能があったのか、驚くほどの速さで強くなったということだ。

 

 流石に我が軍の戦闘狂(一部の副軍団長達)には勝てないが

 赤竜隊の部隊長クラスになら良い勝負が出来そうなほどになっている。

 

 おかげで―――

 

 ひと際大きな金属音と共に

 シルビアの剣が彼女の手元を離れて地面に突き刺さる。

 

「・・・強いわね、アナタ」

 

「アナタも強かったわよ?」

 

 フランの槍斧がシルビアの目の前に突きつけられている。

 勝負ありということだ。

 

 シルビアは、肩で息をしているにも関わらず

 フランは平然としている。

 

 シルビアの使う氷の想力による矢雨のような攻撃を

 全て人間を超える速度で回避し、剣による攻撃も

 全て力で押し返した試合。

 双方の実力差は、明白だった。

 

 それを感じたのか、シルビアはため息を吐くと

 面白くないといった感じで休憩のために日陰に移動する。

 

「・・・随分と、余裕そうね」

 

「そうでもありませんよ?」

 

「いやいや・・・はぁ、はぁ・・・全然、余裕そうじゃないの・・・」

 

 視線を正面に戻すと

 目の前では肩で息をする、明らかに疲労したセレナ。

 

 槍による連続攻撃は全て剣で穂先を変えられて回避され

 炎による想力攻撃も、想力の壁によって全て防がれる。

 

 それでも貴族としての意地なのか

 諦めることなく挑み続けている。

 

 そういう行動を見ていると

 良い勝負で終わらせるよりも、今後の彼女のためにも

 負けることを知るべきだろうと思い

 手は抜いているものの、負けるつもりはない。

 

 これでも武官出身で数々の激戦を戦い抜いてきたのだ。

 わざとでなければ、お嬢様相手に負けるどころか

 服に槍が触れることすら不可能だろう。

 

「こうなったらっ!!」

 

 セレナが手をかざすと巨大な炎の塊が出現する。

 相変わらず規格外の炎の量だ。

 

 それをリシアに向かって投げつける。

 リシアは、落ち着いて想力壁を展開し炎を受け止める。

 

 炎がぶつかり周囲にまで炎があふれ出す。

 もう何度目かになる攻撃にも関わらず、見ている兵士や騎士達からは

 驚きの声があがる。

 

 炎が消え、黒い煙が周囲に拡散して攻撃が終わった瞬間だった。

 

「いっけぇぇぇっ!!」

 

 突然リシアの後ろからセレナの声と共に彼女が身体ごと

 一本の槍になったかのように槍を構えて突進してくる。

 

 炎に紛れて後ろに回り込んだのだ。

 

 リシアが振り向こうとするが

 それより早くセレナがリシアに迫る。

 

 だが―――

 

 それは一瞬だった。

 

 彼女の突き出した槍に剣を当てたリシアが

 振り向きながら剣の腹を槍に押し当て

 そのままの勢いでセレナに突っ込む。

 

 金属が擦れる音と共に

 剣が槍の上を滑るように迫ってくる。 

 

 槍を押さえつけられる形なため

 槍を横に薙ぐことも出来なければ引き戻す時間も無い。

 しかも抑えられているために体勢を維持するのが精いっぱいで

 動くことも出来ない。

 

 槍を手放せば動くことも出来るだろうが

 武器を捨てた時点で次の攻撃を防ぐことは出来ないだろう。

 いくら炎を操った所でリシアの想力壁がある限り

 どうしようもないのだ。

 

 セレナが手詰まりだと気づいた時

 既に彼女の喉元には、リシアの剣があった。

 

 それを確認するとセレナは、ため息を吐いてから

 その場に座り込んだ。

 

「あ~、勝てないなぁ~」

 

「良い動きをされていましたよ。

 少なくとも、アリスさん以上ではあるかと」

 

「それこそ、あの娘に負けたら立ち直れないわよ」

 

 苦笑する彼女に手を貸して立ち上がらせる。

 

 すると周囲の兵士達から歓声があがる。

 

「いや、見事な勝負でした。

 想力者同士の戦いを見たのは初めてですが

 4人とも、素晴らしい実力ですな」

 

 ナザックが皆を代表するように感想を述べる。

 

「いえいえ、そんなことは―――」

 

 いつも通り謙虚な貴族の娘としての返答をしようとした瞬間だった。

 

「たっ、大変ですっ!!!」

 

 一人の兵士が大慌てで叫びながら走ってくる。

 

「何事だっ!?」

 

 ナザックが緊急事態だと察して厳しい表情になる。

 

「ぶ、武装した集団が大山から街に―――」

 

 そこで兵士は咳き込む。

 

 大山とは、この街の北側にある帝国との間にあるとても険しい山で

 行軍どころか、人がその山を越えること自体が非常に厳しいと言われるほど

 とても大きく険しい山であり

 この山があるおかげで、帝国が直接ここを攻めることが出来ないというほど

 重要な天然の城壁のことである。

 

 山を大きく迂回しないと行軍は不可能であり

 そのためにこの土地の隣の領地が主戦場になっていたのだ。

 

「良いから落ち着いて話せ!」

 

 ナザックは、大急ぎで水を持って来させて兵士に飲ませる。

 水を飲んで何度か深呼吸をした後、兵士は口を開く。

 

「武装した集団が、大山のある森から

 こちらに向かってきていると猟師から報告がありました!

 

 それを元に兵士を派遣して調査させると

 突然、相手に襲われたと!

 

 何とか逃げ延びた兵士の話では

 数は、1000を超えるとのことで―――」

 

 そこで一旦言葉を区切った兵士は

 もう一度大きく深呼吸をする。

 そして。

 

「―――帝国軍の装備をしていたとのことですっ!!」

 

 兵士の叫び声にも近い報告に、周囲のざわめきが一層大きくなるのだった。

 

 

 

 

 

第21章 学外授業 ~完~

 

 

 

 

 

 

 




まずは、ここまで読んで頂きありがとうございます。

そして度重なる投稿延期については
本当に申し訳ありません。

休日出勤に度重なる残業で、小説を書く時間が
全然取れなかったのもありますが
今回の第21章に関して最後まで
登場キャラクターについて悩んでいたというのもあります。

最終的に誰を出すべきなのか?
新キャラは必要か?
など「より面白くするにはどうすればいいか」を
悩みながらの製作だったため話が二転三転して
なかなか進まなかったというのもあります。

実はまだ登場予定で出てないキャラなど
多数おり「本当に収集つくのか?」と作者自身が思うほど
壮大な物語になってきました。

何とか完成を目指したいと思ってますので
暇つぶしの相棒として、読んで頂けると幸いです。
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