アンシェリアの騎士   作:光坂 叶

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前回の投稿から期間が経ちすぎていたことと直したいところが多く存在していたので大幅に変更して改めて書き直しました。

よろしくお願いします。


改訂版
召喚の儀


とある城の最奥にある広間でその儀式は行われる。

 

集いたるはこの国を治める十二の領主、各々が家に伝わりし魔法を重ねあわすことで初めて禁術は顕現する。

 

禁術の名はオルフェリア、ある存在を召喚するための魔法である。

 

完成した魔方陣の中央に一つの名を刻み込む。

 

【ヴィンフリート・オルフェウス・クラインシュミット】

 

この名は此処に集いし者、そしてこの国の民が求める存在たる最優とされる異世界の騎士のものである。

 

異世界の騎士―――盟約の騎士オルフェウスと呼ばれる存在は複数人存在する。

彼らは国の危機に唐突に現れ無類の強さを以って民を守護する伝説の騎士とされているが、市井では子供の頃から聞かされた御伽噺に過ぎないと思われている。

しかし一部の聖職者と権力者にのみ、彼らが召喚魔法によって呼び出される実在する騎士であるということが、秘すべき真実として伝わっている。

 

とはいえ、此処に集うものたちもその真実については半信半疑であった。

なぜならば最後にオルフェウスの騎士が召喚された記録があるのは今からおよそ四百年前と云うのだから仕方が無いものだ。

だが、そんな確証の持てないような存在に頼らねば成らぬほど、この国は窮地に陥っていた。

急速に成長した二つの大国に挟まれる形となり徐々に国土を狭めていたからだ。

臣民共に疲弊する中、心労により老齢であった国王が崩御しなりふり構って要られなくなったのだ。

 

 

十二の領主は魔方陣の周囲を囲み召喚をするための詠唱を始める。

 

「我等、盟約を交わせし初源の民なり。」

「我等、汝を求める者なり。

 

「我等、同胞を守護する者なり。」

「我等、新たなる盟約を望む者なり。」

 

「汝、召喚の儀に応えよ!」

 

最後の文言が紡がれた瞬間、広間の上部に設置されたステンドグラスから射す光が強まり領主らは思わず眼を瞑ってしまう。

そして光が収まった後、建城当時からあるとされる広間の壁沿いに備えられた用途不明な開くことのないはずの大扉が音をたてて開きだす。

皆が驚愕を顔に浮かべる中、開いた扉から一人の男が出てきた。

 

派手さは無いが実用性に富んでいそうな軽鎧とその上に纏う一目で上質とわかる外套。そこから垣間見える均整の取れた身体、鳶色の少し癖のある髪、一見優男のようでその顔から覗き見える鋭い瑠璃色の眼光を携える精悍な顔にその場に居た者は魅入られた。

双方が見つめあう沈黙の中、先に動いたのは領主の中の一人だった。

 

 

 

動いた人影を男は見やる。

人影は前に歩み出ると片膝を付き、男の顔を見上げなら声を発す。

 

「召喚の儀にお応え頂きありがとうございます、オルフェウスの騎士よ。私はアンシェリア十三統治区ピロス領主のファイーナと申します。」

 

 

 

名乗りながらファイーナは頭の中で考えを巡らせる。

(まさか本当にオルフェウスの騎士が実在したとは・・・。話半分で聴いていた御伽噺の存在と出逢う事になるとは思ってなかったですわ。・・・・・・それにしても、私も領主として様々な男性とお逢いしてきたというのにこの方のお顔は他の誰にも引けを取りませんわね。)

 

考えが横に逸れてきてしまい慌てて集中しようとしたそのとき、さきほどまで数歩離れた位置で見上げていたはずの男の顔が目の前にあり、自分の顔を覗き込んでいることに気付きファイーナの頭は真っ白になった。

 

 

 

 

 

男は戸惑っていた。

自分は戦場に居たはずである。幾多もの戦場を戦い抜いてきた友や部下と共に長きに渡る戦の終止符を打つために隣国の本拠地に攻め込んでいたのだ。後一歩で都を落とすことができるというところで急に目の前がまばゆい光に包まれ思わず目を瞑ってしまった。光が収まったかと思えば何故か自分は暗闇の中にいた。光が漏れ出る方へ歩いていくとどこかの建物の中にいるではないか。その上何かの祭儀でもしていたのだろうか、儀礼服を着た者たちが此方を驚いた表情を顔に浮かべ向けていた。

 

どう声をかけるべきか悩んでいると、集団の中の一人が自分の前に歩み出てきた。

それは猛る炎の色を写し取ったかのような紅い髪をしたやや釣り目の妙齢の美しい女性であった。

自分が見つめている事を確認したのか、女性はその場で片膝を付き自分の顔を見上げ名乗り始めた。

 

「召喚の儀にお応え頂きありがとうございます、オルフェウスの騎士よ。私はアンシェリア十三統治区ピロス領主のファイーナと申します。」

 

男は更なる混乱に襲われた。何故ならば女性の口より出た自分を指したであろう言葉は、明らかに自身とは違う者に対しての呼び名だろうという事が察せたためである。

男は頭の中で考えを巡らせる。

 

(・・・・・・どういうことだ。俺はオルフェウスの騎士とかいうものではないしそんな名前は聞いたこともない・・・。聞いたことも・・・・・・いや、あった。確かその名は幼い頃に何度も聞いたはずだ・・・。そうだ、その名は我が国に古くから伝わる御伽噺にも出てくる実在するという異世界の騎士―――盟約の騎士オルフェウス。)

 

そこまで考えが及んだところで男は、自身の置かれた状況を大方理解した。

つまり自分は騎士オルフェウスを呼ぶ召喚魔法の際に起きた何らかの失敗で召喚されたのだと。

そして其処から察するに自分とは異なる時代であろう此処は、果たして未来なのか過去なのか。男は情報を欲しがった。

 

現状を詳しく知るために目の前の女性に話を聞こうとしたが、どこかぼんやりと此方を見つめたまま反応がない。どうやら女性も何かを考え込んでいるようだ。

他の者に聞いてみても良かったのだが何故か男はこの女性に聞いてみたくなり、近寄って顔を覗き込んだ。

 

(先ほども思ったが綺麗な娘だな。大人びた話し方をしていたから年上かとも思ったがこうしてみると案外自分と変わらないぐらいかもしれない。)

 

そう男が思っていると突然女性が目を瞬かせた。どうやらようやく自分が顔を覗き込んでいることに気がついたようである。

さっそく話を聞こうとした男であったが、何故か女性が再び反応しなくなった。

どうしたものかと考えていると様子を伺っていた集団の中から一人が近寄ってきた。

 

近寄ってきたのはこれまた美しい女性で、ファイーナと名乗った女性と同じぐらいの歳であろうと男は当たりをつける。

どちらも比べがたい美人であったが違う点といえばファイーナと対を成すかの様な穏やかな空色の髪であることと優しげな雰囲気をかもし出す少し垂れた眼であった。

 

女性はファイーナの横に並び、同じように片膝を付くと此方にその優しげな瞳を向けて謝罪してきた。

 

「オルフェウスの騎士様、ファイーナの非礼をどうかご容赦ください。」

 

女性の言葉で、男は未だに自分がオルフェウスで無いことを告げることができてなかったことを思い出した。

男は女性だけでなく集団にも聴こえるように声を出す。

 

「申し訳ないが俺は盟約の騎士オルフェウスではない。」

 

 

 

 




一話に関しては大きく変化はないかと思われますが、恐らく次話以降大幅に設定が変わります。

設定メモ

盟約の騎士オルフェウス
かつて、アンシェリア王国がアーグレリアという名の国であった時代に幾度かあった国の危機を救うために召喚魔法によって呼ばれ、戦乱を終焉に導いた異世界の騎士たちの総称。記録によると最後に召喚されたのはおよそ四百年前であり、人々の間では精霊として御伽噺に伝わる中でしか認知されていない。詳細を知っているのは聖職者や一部の権力者の者たちのみであった。今回召喚されるはずであったヴィンフリートはオルフェウスの中でも最も高潔な人物とされていた者の名であり、特定して呼び出すために名を刻んで召喚を行ったはずであった。
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