色々と至らない点があるとは思いますが、大目に見て下さい。
いやもう、超大目でお願いします。
「・・・ズ!・・・イズ!・・・アイズ!」
ハッと気付くと、皆がこちらを心配そうに見ていた。
ここはアルヴヘイム・オンライン、通称ALOの中だ。アインクラッド22層にあるキリトとアスナのプレーヤーホームに、俺たちは集まっていた。
「やっと気付いた・・・もう、アイズったら名前呼んでも全然反応しないから、心配しちゃったよ」
アスナが心配そうな顔でそう言う。どうやら俺は、呼びかけに全く気付いていなかったようだ。心配させてしまったな。
「・・・悪い。ボーッとしてたわ」
「アンタ最近ボーッとしてること多いわよ?何かあった?」
リズベットが珍しく心配してくれている。いつも人をからかってくるお調子者の彼女にしては、この態度は非常に珍しい。
それほど最近の俺の様子がおかしかったということか。反省しないとな・・・
「リズに心配されるとは・・・俺も末期だな」
「どういう意味よそれ!」
お、流石ツッコミ担当。相変わらずキレキレだな。
「でもアイズ、ホント最近どうしたの?何か思いつめたような顔してるし・・・心配だよ」
リーファがそう聞いてくる。思いつめたような顔、か。そうだな、確かに間違っていないかもしれない。
「悪いな、心配させて。でもサンキューな。リーファみたいな可愛い子に心配してもらえるなんて嬉しいよ」
「かっ、可愛っ!?」
リーファが顔を真っ赤にしてしまう。なんて純情な子なんだろう。こんな可愛い妹がいるなんて羨ましすぎるぞキリト。
ちなみにキリトはログインしていない。何でも菊岡さんから呼び出されたそうだ。また厄介な案件を頼まれていなければいいが・・・
クラインもエギルも忙しいらしくてログインしておらず、仲間内の男性プレーヤーの中で今ログインしているのは俺だけだ。
と、ふいに隣からため息が漏れる。
「・・・まったく。何でそんなさらっと歯の浮くようなセリフを言えるんだか・・・」
クールなお姉さんシノンだった。ん?今のそんな歯の浮くようなセリフだったかな?だって嬉しいじゃん、可愛い子から心配してもらえるなんてさ。あ、もしかして・・・
「シノン、もしかして嫉妬か?安心しろ、シノンだってめっちゃ可愛い・・・ブッ!?」
「そういうセリフを真顔で言わないのっ!」
顔を真っ赤にしたシノンに、クッションで顔面を攻撃された。何故だ。
「・・・で、最近どうしたの?アイズらしくないよ?」
やれやれ、と言いたげな顔でシリカが尋ねてくる。基本的にシリカは皆に対して敬語を使うのだが、俺とリーファに対しては普通にタメ口だ。同い年だしな。まぁそういう俺は、年上のアスナたちに対してもタメ口だけど。
「お、シリカまで俺の心配をしてくれるのか?可愛い女の子たちにここまで心配してもらえるなんて、ホント俺は幸せ者・・・」
そこまで言いかけた俺の喉元に、スッとレイピアが突きつけられる。恐る恐る上を見上げると、アスナが怖~い笑顔でこっちを見下ろしている。
「私、あんまり焦らされるの好きじゃないな~。ねぇアイズ、選んで?話すの?話さないの?」
無論ここで「話さない」などと言えば、アスナのレイピアが火を噴くことになるだろう。いや~、アスナさんマジ怖いわ~。流石は元血盟騎士団・鬼の副長だわ~。キリト、お前とんでもない女と恋人になったな。
「・・・分カリマシタ。全テ話シマス」
「それで良し!」
俺の片言の返事に満足げのアスナさん。今の恐喝だよね?リアルだったら逮捕されてるよね?
「それで?何を考えてたの?」
アスナを始め、リズ、リーファ、シノン、シリカも興味津々でこっちを見ている。それと同時に、瞳には心配の色が混じっていた。
(・・・ホントに心配してくれてるんだな)
ありがたい話だ。皆に感謝しつつ、きちんと話さなければいけないなと思う。俺が何を考えていたのかを、何を悩んでいたのかを・・・
***
「最近、俺はどう生きていくべきなのかなって考えててさ・・・」
「進路について悩んでるの?」
アスナが尋ねてくる。
「いや、進路っていうか生き方だな」
そう、俺が悩んでいるのは「どの道に進むのか」ではなく、「どのように生きるのか」だ。
「アンタねえ・・・何哲学みたいなことで悩んでんのよ?」
リズベットが呆れたように言う。
「あたしたちまだ未成年だよ?生き方なんて難しく考えないで、どんな仕事に就きたいのかとかさ・・・」
「・・・SAO生還者」
その言葉を口にした瞬間、アスナ、リズベット、シリカの表情が曇る。
「俺たちは一般の人たちとは事情が違うんだよ」
ソードアート・オンライン。通称SAO。
天才科学者・茅場晶彦によって作られたバーチャルワールド。俺たちはその世界に2年もの間閉じ込められていた。HPが0になれば、現実世界でもナーヴギアに脳を焼かれて死ぬ。そんな恐怖に耐えながら、現実世界に戻るため、必死でゲームクリアを目指した。
最終的にはキリトが血盟騎士団団長・ヒースクリフが茅場であることを見抜いて倒し、SAOはクリアされた。
こうして閉じ込められた約1万人のうち、7割近いプレーヤーたちが現実世界への帰還を果たしたのだ。そう、2年後の現実世界へと。
「俺がSAOに囚われたのは小6の時、ちょうど卒業式が終わって春休みに入った頃だった。シリカもそうだろ?」
俺が尋ねると、シリカが複雑そうな表情を浮かべながら頷いた。恐らく、当時のことを思い出しているのだろう。
「そして現実世界に帰還したのが2年後。リハビリやら何やらで、気付けば半年も経ってる。今同級生たちは中3、高校受験を控えている頃だ。リーファがそうだろう?対して俺の時間は小6で止まったまま。これからを憂いたくもなるよ」
「でっ、でも!それは仕方ないよ!だってそうなったのはアイズのせいじゃないじゃない!」
リーファが懸命にフォローしてくれる。優しいやつだなホント。
「こうなったのが誰のせい、なんて言ってても始まらない。どんな事情があろうと、俺は今この現実を歩まないといけないんだからな」
そう、茅場を恨んだって仕方ない。無論許すつもりなど毛頭ないが、この現実を受け入れなければならないのだ。それに・・・
「それにな、俺は俺自身とも向き合っていかないといけないんだ」
「どういうこと?」
シノンが尋ねてくる。
「・・・俺は・・・SAOで3人のプレーヤーを殺してるんだ」
「・・・ッ!」
驚愕する5人。やがてアスナがハッと気付く。
「・・・アイズ、もしかしてラフコフ討伐作戦の時のこと・・・?」
「あぁ」
レッドギルド「ラフィン・コフィン」。
プレーヤーを殺すことを目的とし、その為なら手段を選ばない殺人ギルドだ。俺たち攻略組はラフコフのアジトを突き止め、急襲する作戦を立てた。といっても殺すのではなく、生け捕りにして監獄エリアに閉じ込める作戦だった。
しかし、その作戦はどこかからラフコフに漏れていた。アジトについた俺たち攻略組は、逆にラフコフメンバーたちに待ち伏せされ、奇襲を受けたのだ。戦いは混乱を極め、最早ラフコフと攻略組の殺し合いと化した。
結果として攻略組は11人が死亡。ラフコフは倍近い21人が死んだ。その21人のうち3人を殺したのは他でもない、この俺だ。
「・・・俺は自分が人を殺したことを忘れてたよ。GGOにザザが現れるまでな」
「・・・」
シノンが震えながら自分の肩を抱いている。無理もない。シノンは殺されかけたのだから。
ガンゲイル・オンライン、通称GGOにキリトは一時コンバートしていた。菊岡さんから死銃というプレーヤーを調べてほしいという依頼を受けたからだが、その死銃の正体こそ、ラフコフの元幹部・赤眼のザザだったのだ。ザザは現実世界に帰還してからもプレーヤー殺しに執着し、何人ものプレーヤーの命を現実世界で奪った。
シノンもターゲットにされ殺されそうになったが、GGOで知り合ったキリトに救われて今に至る。
「GGOの中継でザザを見た時、俺は思い出したよ。アイツらの恐怖を。そして自分が人殺しだということを。俺も所詮、アイツらと一緒だ・・・」
「それは違うわ」
シノンがハッキリと言う。
「死銃は人を殺すことを楽しんでた。でもアイズは違う。アイズもキリトも、誰かを守るために戦った。アイツとは違うわ」
「でも殺したことは事実だ。どんな理由があれ、殺人は正当化されない。だからこそ苦しい。シノン、お前なら分かるだろ?」
「それは・・・」
シノンが言葉に詰まる。彼女は幼い時、母親を守るために強盗を殺している。その苦しみをずっと抱えながら生きてきた人間だ。俺の気持ちが分かるからこそ、どう言葉をかけたら良いのか分からないんだろう。見れば、アスナもリーファもリズもシリカも暗い顔をしている。やっちまったな・・・
「・・・悪い。暗い雰囲気にするつもりはなかったんだ。とにかく俺は、自分がしてしまったこととも向き合って生きていかないといけない。その上でどう生きていくのか。ここ最近それを考えていた。半年後には学校も始まるしな」
そう、半年後の4月からSAO生還者の学生たちが通う学校が始まる。俺やアスナ、リズやシリカ、それにキリトも通うことになる。
本来アスナとリズが新高3、キリトが新高2、俺とシリカが新高1となるのだが、どうやら全員一緒の学年となるらしい。その学校で3年間学べば高卒認定資格を得られるため、大学へも進学できるとのことだ。
ただ、中学・高校の範囲を6年ではなく3年でやるため、勉強面はだいぶハードなことになりそうだ。リズ曰く「アタシ死ぬかもしれない・・・」とのことだ。
「・・・俺のこの汚れきった手で、一体何が出来るんだろうな」
自分の手を見つめる。するとその手を、白く綺麗な手が包み込んでくれる。見ればアスナだった。
「・・・私もあの作戦に参加していた1人として、アイズの気持ちが分かる。私には、アイズは正しかったなんてそんな軽々しく言えない。だってアイズはこんなにも悩んでるんだもの。でもね・・・」
アスナが俺の目を真っ直ぐに見て言う。
「アイズは1人じゃない。私はいつだってアイズの味方だし仲間、親友だと思ってる。それはこれからもずっと変わらない。だから1人で抱え込まないで?いつだって頼ってくれて良いんだからね?」
「アスナ・・・」
するともう片方の手を、リーファの手が包み込んでくれる。
「私はSAO生還者じゃないから、軽々しく何かを言ったりできないけど、アスナさんと同じ気持ちだよ。アイズは1人じゃない。アイズがSAOから帰ってきてくれたから、私はアイズと出会えたし友達になれた。帰ってきてくれてありがとう、アイズ」
「リーファ・・・」
今度は両肩に手が置かれる。シリカとシノンだった。
「私は攻略組じゃなかったけど、アイズたちがラフコフを止めてくれたおかげでこうして現実世界に戻ってこられたと思ってるし、すごく感謝してる。だからそれでアイズが悩んでるなら同じSAO生還者として、友達としてその悩みを共有したいんだよ」
「私も人の命を奪ってしまったけど、キリトに言われたんだ。君が守った人の気持ちを知る権利があるって。今シリカも言ってたけど、ラフコフを止めたことでアイズに感謝してる人はたくさんいると思う。アイズが人の命を奪ったことが事実なら、その人たちを守ったことも事実でしょ?その事実とも向き合う権利がアイズにはあるんじゃないかな?」
「シリカ・・・シノン・・・」
俺が泣きそうになっていると、突然頭をグシャグシャとなでられた。リズベットだった。
「おまっ・・・やめろって!」
「へっへーん!雰囲気暗くした罰だよー!」
「てめ・・・この・・・」
すると突然、リズが後ろから抱きしめてきた。
「リ、リズ・・・?」
「・・・何もかも1人で背負ってんじゃないわよバカ。あたしたちがいるでしょ。少しは頼りなさいよね。あたしたちだって、アイズの力になりたいんだから」
「リズ・・・」
そうだ。俺は何を1人で悩んでたんだろう。俺には仲間がいるじゃないか。アスナ、リーファ、リズ、シリカ、シノン、エギル、クライン、それにキリト。かけがえのない仲間たちがいるじゃないか・・・
「・・・ありがとうみんな」
胸がいっぱいになった俺にはその一言しか言えなかったが、みんな「分かってるよ」というように微笑んでいるのだった。
初めまして、ムッティです!
初投稿でございます!
いやー、初投稿なんで色々と勝手が分からず・・・
何かとお見苦しい点があるかもしれませんが・・・
寛大な心で読んでいただけると幸いでございます。
感想もお待ちしております。
それはもう、首を長~くして!
某ゴム人間ばりに伸びて待っております!
これからもよろしくお願いします!
以上、ムッティでした!