・・・勝った。
「・・・勝った・・・のか・・・?」
「・・・勝った・・・よな・・・?」
ジュンとテッチが呆然としながらつぶやく。そんな中、呆然とした空気を打ち破ったのは、我らがギルドリーダーの叫びだった。
「勝ったああああああああああ!!!!!」
「おうっ!?」
突進してきて俺に抱きつくユウキ。俺はバランスを崩して後ろに倒れてしまう。そんな様子を見た他のメンバーが、次々に歓声をあげる。
「やったあああああ!勝ったんだ!」
「やった!僕たちやったんだ!」
「勝ったぞ!これで名前が残る!」
「よっしゃあああああ!」
「本当に勝てるなんて・・・!」
ジュンとタルが抱き合って喜び、テッチとノリが笑顔でハイタッチを交わす。シウネーなんて感動のあまり泣いている。
「・・・やった・・・やったよ・・・」
俺の上にのしかかっている状態のユウキも泣いている。そして俺の胸に顔をうずめる。
「・・・ボクたち・・・勝ったんだ・・・」
俺はユウキの頭をなでてやった。
「あぁ、勝った。七人でボスを倒したんだ」
・・・こんな充実感は久しぶりだ。本当に良かった・・・
俺たちが余韻に浸っていると、ボス部屋の扉が開く。そして・・・
「アイズ!」
「大丈夫!?」
キリトとアスナが駆け寄ってくる。リーファ、シリカ、リズ、クライン、エギル、シノンも走ってくる。俺はユウキごと体を起こした。
「よぉ、お前ら。あいつらは倒したのか?」
「当ったり前よ!全員蹴散らしてやったぜ!」
クラインが親指を立てる。そしてニヤリと笑う。
「それにしてもアイズ、人目をはばからずイチャイチャしてんなぁ」
「ふ、ふぇっ!?」
それを聞いたユウキが顔を真っ赤にする。そう、ユウキは俺に抱きついたままだったのだ。慌てて離れようとするが・・・俺はユウキを抱き寄せる。
「ア、アイズ!?」
「・・・疲れてんだろ?寄りかかってろ」
「・・・うん」
恥ずかしがりながらも、抵抗することなく俺に身を委ねるユウキ。
「へぇ、アイズ男前ねぇ」
「何をニヤニヤしてんだ、このぼったくり鍛冶屋」
「な!?何ですって!?」
「ハイハイ、リズ。二人の邪魔しないの」
アスナが苦笑しながらリズを諫める。
「キリト、アスナ、リーファ、シリカ、リズ、クライン、エギル、シノン・・・マジでありがとな。助かった」
心から礼を言う。スリーピング・ナイツの面々も、慌てて頭を下げる。
「お礼なんか要らないわよ。・・・アタシたち、仲間でしょ」
リズがそっぽを向きながら言う。照れてるな。
・・・今度レア素材集めに付き合ってやろう。サンキューな、リズ。
「さて、ボスも倒したことだし・・・打ち上げするしかねぇな」
「おっ!良いね!やろうやろう!みんなも来てよ!」
俺の提案にユウキが賛成し、みんなを誘う。リーファが驚いている。
「え?私たちも行って良いの?」
「もちろんです!皆さんの協力があったから、ボスを倒すことが出来たんですから!」
「あ、シウネーが敬語を使った!腕立て三十回だな」
「アイズには使ってないのに!?鬼!悪魔!」
「何も聞こえない~♪」
「だから何で壊れかけのradio風なの!?」
シウネーと俺のやりとりに、全員大爆笑なのだった。
***
「かんぱーい!」
『乾杯!』
ユウキの音頭と共に、全員グラスを高々と掲げる。俺たちは今、キリトとアスナのプレーヤーホームに来ていた。キリトとアスナが打ち上げ会場として使わせてくれることになったのだ。
・・・何から何まで世話になりっぱなしだな。
「そういえばさぁ、キリトたちが敵ギルドのやつらを全員倒してくれたけど・・・問題になったりしない?大丈夫?」
ユウキが不安そうに聞く。
「あぁ、問題ない。あのギルド、ついさっき解散したから」
『ええええええええええ!?』
キリトのさらりとした発表に驚愕するスリーピング・ナイツ一同。俺を除くがな。
「解散って何で!?何があったの!?」
「斥候隊がユウキにピーピングを仕掛けた瞬間を録画しておいたのさ。それをユージーン、サクヤ、アリシャに送ったんだ」
ユウキの質問にさらりと答える俺。
「サラマンダー、シルフ、ケットシーの代表者じゃない!知り合いなの!?」
シウネーが絶句している。
「まぁな」
「っていうか、ボクがピーピングを仕掛けられたの録画してたの!?」
「まぁな」
ユウキも絶句していた。キリトは苦笑している。
「で、領主会議でギルドの代表者が尋問にかけられた結果、過去に何度も同じ手口でボスの情報を得ていたことが露見してな。その場でギルド解散という処罰が下ったのさ」
「さっきサクヤたちから、そのことを伝える連絡がきたんだ。だからキリトたちがあいつらを倒したことは問題にならない」
キリトと俺の説明に唖然としてしまうユウキたち。
「・・・でも、それだと元ギルドのやつらが逆恨みで襲ってくるんじゃ・・・?」
「それはねぇよ。領主会議後、元ギルドのやつらに領主たちから連絡がいってるからな。俺たちを襲った場合、自らの種族から追放するっていう連絡がな」
エギルが会話に加わってくる。
「全種族の領主にそんなこと言われたら、流石にあいつらも下手なことはできねぇよ。俺たちを襲えば種族を追放され、転生したくても受け入れてくれる種族はない。必然的にALOを辞めるしかなくなるからな」
「・・・そっか。良かったぁ」
ユウキは安心したようだ。すると、シウネーが何かを思い出す。
「あっ・・・!」
「ん?どうしたシウネー」
「私たち、アイズにお礼するって言ったのに何もしてないじゃない!ボスからドロップしたアイテムは売ってお金にして、それで打ち上げの食べ物や飲み物を買っちゃったし!」
『ああああああああああ!?』
いっせいに叫ぶスリーピング・ナイツの面々。つーか礼って・・・
「別に要らねぇよ」
「でっ、でもっ!アイズには何から何まで世話になったしっ!」
「そんなの当たり前だろ。だって俺、スリーピング・ナイツのメンバーだぞ?ギルドメンバーの力になるのは当然だろう」
俺の言葉に何も言えなくなるノリ。
「それに礼ならキリトたちに言ってやってくれ。こいつらが敵ギルドを倒してくれたから、俺たちはボスを倒せたんだからな」
「そうだ・・・みんな本当にありがとう」
ユウキが頭を下げてお礼を言う。他のメンバーも次々と頭を下げる。
「お礼なんて要らないって」
アスナが照れたように言う。
「アイズは私たちにとって、かけがえのない仲間なの。アイズの仲間は私たちの仲間でもあるわ。私たちは、仲間の力になれればそれで良いのよ」
アスナの言葉に、他のメンバーも頷いていた。お前ら・・・
「みんな・・・」
「な?良いやつらだろ?」
ユウキの頭にポンと手を置き、笑いかける。ユウキもまた、笑いかけてくるのだった。
「うんっ!最高の仲間たちだよ!」
***
打ち上げ終了後、俺たちスリーピング・ナイツは第一層の始まりの街に来ていた。黒鉄宮にある剣士の碑を見るためだ。キリトたちも誘ったのだが、ギルドメンバーだけで見た方が良いと断られた。まったくアイツら、気が利きすぎだぜ。
「お、黒鉄宮だ!」
先頭を歩いていたジュンが指差す。着いたか・・・と、珍しく先頭を歩かず俺の隣を歩いているユウキが、俺の手を握ってきた。・・・多分、ちゃんと名前が残っているかどうか不安なんだろうな・・・俺はユウキの手を握り返した。
そして黒鉄宮に入る。目の前には、大きい石碑が立っている。これが剣士の碑だ。そして・・・
「あっ!あった!」
タルが指を差す。そこには・・・
『27層クリア・・・ユウキ、アイズ、シウネー、ノリ、ジュン、テッチ、タルケン』
「あった!本当にあった!やったよアイズ!・・・アイズ?」
ユウキが俺を見て驚いていた。何故なら俺は・・・泣いているからだ。
「・・・良かった・・・本当に良かった・・・」
涙が止まらない。次から次へと溢れてくる。そして、今まで溜め込んでいた想いも・・・
「・・・俺が生きている意味って何なんだろうって、SAOから生還してからずっと考えてた。あれだけの人が亡くなったのに、三人のプレーヤーを殺したのに、何で俺は生きてるんだ、何で俺は生還できたんだって・・・ずっと考えてた・・・」
「アイズ・・・」
俺の独白を聞いたユウキが泣いている。他のメンバーも泣いているようだ。
「・・・俺が生きている意味はなんだろう、俺に何ができるんだろうって、自問自答を繰り返して・・・それでも答えは見つからなくて・・・すごく苦しかった。でも・・・」
俺は泣き笑いでみんなを見る。
「こんな俺にも、大切な仲間がいた。キリト、アスナ、リーファ、シリカ、リズ、クライン、エギル、シノン・・・そして、新しく大切な仲間ができた。ジュン、テッチ、タル、ノリ、シウネー、そしてユウキ・・・何を難しく考えてたんだろうな。俺が生きてる理由、そんなの仲間がいるから、仲間と一緒にいたいからに決まってるじゃないか・・・」
「・・・アイズ」
目を真っ赤に泣きはらしながら、俺に笑いかけるシウネー。
「本当にありがとう。私たちと出会ってくれて、仲間になってくれて、力を貸してくれて、本当にありがとう」
「シウネー・・・」
「アイズ、ホントありがとな」
「アイズに出会えて本当に良かったよ」
「感謝してもしきれない。ありがとうアイズ」
「アイズがいたから、私たちも頑張れたよ」
「ジュン、テッチ、タル、ノリ・・・」
俺が再び涙していると、ユウキが抱きついてくる。
「・・・アイズ、写真を撮ろう?スリーピング・ナイツの成果を思い出に残そう?」
「・・・あぁ、そうだな」
涙を拭い、笑顔を見せる俺。ユウキもまた、笑顔を返してくれる。俺たちは、剣士の碑の前に並んだ。
「よし!撮るぞー!」
ジュンが撮影用クリスタルを起動させる。カウントダウンが始まり、ジュンが急いでこちらに来て左端に並ぶ。左からジュン、テッチ、シウネー、俺、ユウキ、ノリ、タルの順だ。全員でピースする。そしてパシャッ!という音と共にフラッシュが光る。
「おー、良い写真じゃん!」
「良く撮れてるなぁ」
ノリたちは写真を見て盛り上がっている。俺とユウキは改めて、剣士の碑の自分たちの名前を見つめていた。
「・・・ねぇ、アイズ」
ユウキが俺の名を呼ぶ。
「ん?」
俺が隣のユウキの方を向くと・・・ユウキの顔が目の前にあった。
ユウキはそのまま、自分の唇を俺の唇に重ねた。・・・ッ!
「ユ、ユウキ!?」
「・・・うん、ボクはこれで満足だ。もう思い残すことはない。・・・さよなら、アイズ」
そう言うとユウキは素早くシステムウィンドウを操作する。そしてとっさに手を伸ばした俺の前で、ユウキはログアウトしてしまったのだった。
ユ、ユウキいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!
どうも~、ムッティです。
ボスを倒し、剣士の碑に名前も残ったのに・・・
どうしてしまったんだ、ユウキ・・・
ボス攻略までを前半とするなら、ここからは後半ですね。
果たしてどうなっていくのか?
第十一話もよろしくお願いします。
以上、ムッティでした!