一週間後。俺はスリーピング・ナイツが拠点としている27層の宿屋にいた。俺以外のメンバーは誰も来ていない。黒鉄宮で写真を撮ったあの日から一週間、ユウキはALOにログインしてきていなかった。他のメンバーに聞いても、言葉を濁されるばかりだ。それどころか、他のメンバーも最近ログインしてこない。
一体どうしちまったんだよ・・・ユウキ・・・みんな・・・
「・・・うん、ボクはこれで満足だ。もう思い残すことはない。・・・さよなら、アイズ」
ログアウトする前のユウキの言葉が頭から離れない。
・・・何がさよならだ。あんな形でさよならだなんて、俺は納得しねぇぞユウキ・・・
「・・・やっぱり、来ていたのね」
背後から声がする。振り向くと、シウネーが立っていた。
「・・・シウネー」
「毎日ここに来ているの?」
シウネーの問いに頷く俺。シウネーが瞑目する。
「・・・ユウキのことも、私たちのことも、全て忘れてって言っても、無理に決まってるわよね」
「当たり前だ。お前らを忘れられるわけないだろう」
断言する俺。シウネーはため息をつく。
「・・・こうなるんじゃないかって思ってたわ。アイズは優しいから、きっと私たちのことを忘れてはくれない。だから本当のことを話さないといけない日がくる・・・そんな予感がしていたの」
「・・・本当のこと?」
「私たちスリーピング・ナイツが、年内で解散するっていう話はしたわよね?」
「あぁ、お互い忙しくなってログインできなくなるからって・・・」
「・・・ごめんなさい。その理由は嘘よ。本当の理由は別にあるの。ユウキが突然アイズに別れを告げたのも、それが関係してると思う」
「・・・本当の理由ってなんだ?」
尋ねる俺。シウネーが俺の目をまっすぐ見て言う。
「・・・私たちスリーピング・ナイツのメンバーは、全員が病人なのよ。しかも全員、末期患者なの」
「な・・・!?」
シウネーの言葉に驚愕する俺。末期患者・・・?お前らが・・・?
絶句していると、シウネーが説明を続けてくれる。
「私たちは、医療系ネットワークの中にあるバーチャル・ホスピスという所で出会ったの。末期患者の人たちが、一緒にバーチャル・ワールドで話し合ったり遊んだりして、最期の時を豊かに過ごそうっていう目的で運営されているサーバーよ」
「そうだったのか・・・」
「当時の私は、もう生きる気力を失っていたわ。私の病気は急性リンパ性白血病で、副作用の強い薬を使っていたから、とても辛くてね。もういい、どうせ望みがないのなら、残りの時間を安らかに過ごさせてほしいって、そう思ってたの」
「シウネー・・・」
「でもそんな時にユウキと出会って、怒られちゃったわ。可能性を捨てるな、最後まで頑張れって。私よりも年下の子にそんなこと言われたら、頑張るしかないじゃない?」
シウネーが笑いながら言う。
頑張るしかない、か・・・俺には想像もできないような辛さが伴うはずだ。それでも前を向けるのか・・・
「他のメンバーがどんな病気なのかは、私にも分からない。でもね、余命を宣告されてる子がいることは知ってる。それがユウキよ」
「・・・ッ!?ユウキが・・・!?」
あんな明るくて元気いっぱいなユウキが・・・余命宣告・・・?
「長くてもあと半年だそうよ。私たちのうち、誰か一人でも余命を宣告されたらギルドを解散する。それが私たちの決めたルールなの」
あまりの衝撃に言葉が出ない俺。そうか・・・だから年内でギルドを解散するって・・・
「・・・じゃあ、その前にユウキが俺に別れを告げたのはどうしてだ・・・?」
そう、まだギルドを解散する時期じゃない。なのにどうしてユウキは・・・
「・・・あの子は多分、あなたのことが好きなのよアイズ。友達として、仲間としてもそうだけど、それ以上に・・・異性としてね」
「・・・!・・・ユウキが・・・?」
「確証はないけどね。でも、あんなに楽しそうなあの子を見たのは初めてよ。それに・・・好きでもない相手にキスなんてしないでしょ?」
・ ・・マジかよ・・・じゃあ、あれは・・・
「これ以上一緒にいたら別れが辛くなる、自分の気持ちを抑えきれなくなる。だからユウキは、あなたの前から姿を消したんだと思う」
・・・ユウキ。あのバカ・・・
「・・・シウネー、ユウキと連絡はとれないのか?」
「あの日から連絡がとれないわ。現実世界のユウキについて知ってることもほとんどないの。リアルには干渉しないっていうのが、暗黙の了解だったから・・・」
シウネーが申し訳なさそうに言う。くそ・・・何か手がかりはないのか・・・?俺はあいつと話がしたいんだ・・・
ん?話?そういえばリーファが・・・
「勝負が決まる少し前にお兄ちゃん、絶剣と何か話してたんだよねぇ」
・・・そうだ、そしたらキリトのやつ・・・
「君は完全にこの世界の住人なんだな、って言ったんだ」
「何というか、アイツはフルダイブ環境の申し子みたいなやつだと思ったんだ。そして恐らくそれは間違っていない」
・・・ッ!キリトなら、何かを知っているかもしれない・・・!
「シウネー、話してくれてサンキューな。俺は俺でユウキを探してみるよ」
「・・・何か当てがあるの?」
「まぁな。見つけたら、お前にも連絡するよ。じゃ、またな」
「・・・アイズ!」
そう言って立ち上がる俺を、シウネーが呼び止める。
「ん?」
「・・・私たちが末期患者だって知って、どう思った?」
シウネーが不安そうに聞いてくる。おいおい、お前な・・・
俺は呆れつつ、シウネーの頭にポンと手を置く。
「・・・?アイズ?」
「俺がお前らに哀れみの目を向けるんじゃないか、とか思ったか?」
「・・・ギクッ」
明らかに図星の様子のシウネー。やれやれ・・・
「そんなわけねぇだろ。少しは俺を信頼しろっつーの」
「アイズ・・・。うん・・・」
シウネーは照れながら、でも嬉しそうに俺に頭をなでられるのだった。
どうも~、ムッティです。
遂にスリーピング・ナイツの真実が明かされました。
原作で知った時は衝撃を受けましたね・・・
さて、この事実を知ったアイズ。
果たしてユウキに会うことは出来るのか?
第十二話もよろしくお願いします。
以上、ムッティでした!