翌日、俺はエギルが経営しているダイシー・カフェに向かっていた。キリトに連絡した結果、待ち合わせ場所として指定されたのだ。到着し、ドアを開ける。
「ようアイズ。いらっしゃい。今日は貸切だぜ」
「マジかエギル。コーヒー一杯」
「あいよ」
注文してから店内を見渡す。奥のテーブルにキリトがいる。というか、アスナ、リーファ、リズ、シリカ、シノン、クラインまでいる。
おいおい、勢ぞろいかよ・・・
「・・・何で全員いるんだ?」
「・・・すまん。アスナに今日アイズと会うことを話したら、全員呼んじゃって・・・」
キリトが謝る。
「・・・相変わらず口が軽いな、バーサクヒーラー」
「そ、その呼び方やめてよ!不本意なんだから!」
アスナが抗議してくる。ピッタリだ、という心の声が全員から聞こえた気がした。
「っていうか、リーファとシノンは学校のハズだろ?クラインも仕事はどうしたよ?」
「私はもうスポーツ推薦で進学する高校も決まってるし、中学なんてサボっても問題ないのだっ!」
「・・・キリト、妹がこんなこと言ってるぞ」
「・・・兄として面目ない」
うなだれるキリト。お前も大変だな。
「私の学校は・・・ホラ、今日は創立記念日で休みなのよ」
「おっ、奇遇だなシノンっち!俺も今日会社が創立記念日で休みなんだよ!」
「・・・で?」
「スイマセン、嘘つきました」
「本当はサボりました」
俺の絶対零度の視線に、あっさり白状するシノンとクライン。
「ま、まぁまぁ!サボっちゃったものは仕方ないよ!ねっ?」
「そうだな。お前が言いふらさなきゃ、三人ともサボらなかっただろうな」
「スミマセンでした」
速攻で頭を下げるアスナ。ったく・・・
「まぁまぁアイズ。みんなお前を心配して来てくれたんだから、な?」
エギルがコーヒーを持ってきながら言う。
「そうよ、アンタがここ一週間くらい思いつめてるから心配してたのよ?」
「みんなアイズのことを気にかけてたんだよ?」
リズとシリカもそう言う。
「アイズは何も話してくれないし・・・仲間として、頼ってもらえないのはやっぱり淋しいよ・・・」
「アスナ・・・」
・・・そういえばユウキたちのことでいっぱいで、みんなに事情とかちゃんと説明してなかったな。悪いことをしたな・・・
「・・・ゴメン、ちゃんと説明するべきだったな。実は・・・」
俺は打ち上げ後にあったことを、全てみんなに全てを話した。みんな驚愕していた。
「あいつらが全員・・・末期患者・・・?」
「余命半年だなんて・・・」
クラインとシノンが呻く。まぁ、普通そういう反応するよな。
「・・・やっぱりか」
キリトがつぶやく。
「・・・キリト、やっぱり何か知ってるんだな?」
「ユウキに関していえば、そうじゃないかとは思ってたよ」
「・・・どういうこと?」
アスナが尋ねる。
「ユウキと戦った時、フルダイブ環境の申し子みたいなやつだと思ったんだ。バーチャル・ワールドに慣れすぎているというか・・・」
「それは私も思った。私たちSAO生還者並みに慣れてるんじゃないかって・・・」
リズが思い出したように言う。確かに、あの動きは尋常じゃなかったもんな。
「可能性があるとすれば一つ・・・メディキュボイドの被験者だ」
「メディキュボイド?」
何だそれ?みんなも分からないようだ。キリトが説明してくれる。
「医療用のフルダイブ機器だ。ターミナル・ケア、終末期医療のために用いられる。つまり末期患者のためにある機械だ」
「・・・なるほど。それでユウキが末期患者じゃないかって?」
「あぁ、そう推測した。メディキュボイドの被験者なら、バーチャル・ワールドにかなり長い時間ダイブしてるはずだから、相当慣れてるだろうしな」
「なるほどな・・・あの時の、先入観を持たせたくないって言葉はそういう意味か」
「あぁ。末期患者の可能性がある相手なら、同情とか哀れみの目で見てほしくないだろうなって思ったんだ」
コイツなりの配慮だったんだな・・・やっぱり優しすぎるなお前。
「・・・アイズ。俺の予測が本当だとして、それでもユウキに会いたいか?」
真剣な目で俺を見るキリト。
「あぁ、会いたい。で・・・」
「で・・・?」
「とりあえず殴る」
『ええええええええええ!?』
驚愕する一同。
「何を一方的に消えてくれてんだこのバカユウキ!って一発殴るな、うん」
「うん、じゃねぇよ!何やらかそうとしてんだ!」
お、流石クライン。ツッコミ上手。ま、冗談はさておき・・・
「俺はアイツともう一度話がしたい。あんな一方的な別れ、納得できない」
「・・・そっか。良いんじゃない?アイズらしくてさ」
シリカが笑顔でそう言ってくれる。
「でも、メディキュボイドってそもそもどこにあるの?病院?」
リズが疑問を口にする。
「日本が開発した、世界初の医療用フルダイブ機器だからな。まだ一台しかないんだ。恐らくどこかの病院にあると思うけど、それがどこなのかまでは俺にも分からない」
申し訳なさそうに言うキリト。手詰まりか・・・何か情報は・・・情報?
「そうか・・・情報といえばアイツしかいないじゃん」
「へ?アイツ?」
アスナは訳がわからないようだ。
「ちょっと待ってくれ、電話してみる」
全員キョトンとする中、俺はあの人物に電話をかけるのだった。
***
一時間後。その人物は店にやって来た。
「お待たせ、ダーリン♪」
「うるさいアバズレ女」
「ちょ、誰がアバズレ女よ!っていうか呼び出したの隼人でしょうが!」
「正確にはお前の持っている情報を、だけどな」
「酷っ!」
オーバーリアクションする春子。そう、俺が電話した相手は春子だった。
「えーっと・・・アイズ?そちらの女性は一体・・・?」
キリトがおずおずと尋ねてくる。
「えっ!?私が分からないの!?あの時はあんなに激しく私を求めてくれたっていうのに!私とは遊びだったの!?」
「ハァッ!?」
「・・・キーリートーくぅん?」
「ご、誤解だアスナ!俺はこんな女性知らない!本当だ!」
キリトが慌てて否定する。・・・面白いな。
「キリト、お前マジでコイツのこと覚えてないのか?あんなに親密だったのに」
「な・・・!?アイズ!?」
「・・・ふぅん・・・?」
「ち、違うアスナ!マジで知らないんだって!」
「あーあ、アーちゃんという彼女がいながら浮気トハ・・・最低ダナ、キー坊」
「だからしてないって!・・・・・え?」
キリトが何かに気付く。アスナ、リズ、シリカ、クライン、エギルも気付いたようだ。リーファとシノンはキョトンとしているが。
「・・・今の話し方・・・俺とアスナをキー坊とアーちゃんって・・・」
「まさか・・・」
キリト、アスナ、そのまさかだ。俺はそう思いつつ、春子を紹介するのだった。
「えーっと、キリト、アスナ、リズ、シリカ、クライン、エギルは知ってると思うけど、こちら鼠のアルゴこと安西春子だ」
「リアルでは初めましてだケド・・・みんな久しぶりダナ」
***
「マジでアルゴなの・・・?」
「信じられない・・・」
「リズベットもシリカも元気そうダナ」
「あのアルゴかよ・・・」
「驚きだな・・・」
「クラインとエギルも久しぶりダナ」
「あのぉ、会話についていけないんだけど・・・」
シノンが恐る恐る手をあげる。リーファもこくこく頷いていた。
「俺たちと同じSAO生還者さ。春子、シノンとリーファだ。リーファはキリトの妹だ」
「よろしくー!そっかー、キー坊にはこんな可愛い妹がいたんだねー」
「かっ、可愛っ!?」
リーファが顔を真っ赤にしてしまう。うん、なんか今デジャブったな。
「・・・キャラが違いすぎるんだけど、どっちが素なの?」
「あ、今の方が素だよ!SAOじゃ情報屋っぽく変わった話し方してたんだよねー。一人称もオイラだったし」
アスナの疑問に笑顔で答える春子。お前の中の情報屋はどんなイメージなんだ・・・
「そうだキー坊、隼人から聞いたけど・・・SAOをクリアしてくれてありがとう。キー坊のおかげで、こうして現実世界に戻ってくることができたわ」
春子が頭を下げる。
「よせよ礼なんて。俺一人の力でクリアできたわけじゃないし、お前の情報がなかったらあそこまで行けなかったさ」
キリトがそう言う。
「そうだ春子、例の件は分かったか?」
「バッチリよ。メディキュボイドは横浜港北総合病院にあるわ」
「マジか!案外近いな」
そこならすぐ行けるぞ。
「・・・っていうか、どうやって調べたの?」
アスナの疑問にニヤリと笑う春子。そしてこう答えるのだった。
「オイラを誰だと思ってるんダ?SAO一の情報屋、鼠のアルゴだゾ?」
どうも~、ムッティです。
ユウキがメディキュボイドの被験者であるという推測・・・
流石ですキリトさん。
そして相変わらずの情報通アルゴさん。
どうやって情報を手に入れたんだ・・・
さて、ユウキのいそうな場所を突き止めたアイズ。
果たしてユウキはいるのか?
第十三話もよろしくお願いします。
以上、ムッティでした!