「お前・・・どうしてここに・・・?」
「アイズの知り合い?」
シウネーが尋ねてくる。
「茅場晶彦・・・SAOの開発者だよ」
「ッ!?この人が!?」
みんな驚愕している。一方の茅場・・・ヒースクリフは穏やかに微笑んでいるだけだ。
「そう固くならないでくれたまえ。悪さをするつもりなどないよ」
「・・・その言葉を信じられるほど、お前に信頼があるとでも?」
「ないのは重々承知してるよ。何せ私は君をあんな目に遭わせたのだからね」
「そうだッ!」
ユウキがヒースクリフを睨み付ける。
「お前さえいなければッ!アイズがプレーヤーを手にかけることはなかった!あんなに苦しむこともなかった!お前はアイズがどれほど苦しんできたか知ってるのか!?」
「ユウキ・・・」
驚く俺。あのユウキが激昂している。ユウキが本気で怒ったところなんて初めて見た。ましてや怒鳴るところなど見たことがない。他のみんなもヒースクリフを睨んでいた。
「あんなことをしておいて、よくもアイズに顔向けできたもんだね!」
「お前の顔を見たアイズがどんな思いをするか考えたのか!?」
「人を侮辱するのもいい加減にしろ!」
「何でアイズの前に姿を現した!?」
「答えなさい!茅場晶彦!」
ノリ、タル、テッチ、ジュン、シウネー・・・
「・・・アイズくん、君は幸せ者だねぇ。君のことをこんなに思って、こんなに怒ってくれる仲間がいるなんて」
「最高の仲間たちだろう?SAOから生還できて本当に良かったよ。お前を倒してくれたキリトに感謝しないとな」
「そうだな。ちゃんと感謝したまえよ」
「・・・お前は謝らないのな」
「私の信念に基づいてやったことだからね。謝らないよ」
その言葉にユウキたちが再び怒りを露わにするが、手で制する俺。
「はた迷惑な信念もあったもんだ。・・・で、何で俺の前に現れた?まさか昔話をしにきたわけじゃないだろう?現れるのはキリトの前のみかと思っていたが」
「ハハハ。確かにキリトくんとは何かと縁があるな。彼にはゲームをクリアしてもらったり、ザ・シードを広めてもらったりした恩もある。ただ私も、アスナくんを生かしたり、須郷伸之との勝負に力を貸したりしてるからな。プラマイゼロだろう」
「・・・SAOに巻き込んだことを考えればマイナスだろうが」
「何度も言うが、あれは私の信念に基づいてやったことだからね」
「・・・何千人もの命を犠牲にしてまでやる必要があったとは思えないが」
「何を犠牲にしてでも何かを成し遂げたい。研究者とはそういうものだよ」
・・・ダメだ。やっぱりコイツとは意見が合わない。
「御託はいい。俺の前に現れた理由はなんだ?」
「では単刀直入に聞こう。お仲間の病気を治してほしくはないか?」
・・・ッ!コイツ、全部知ってるのか・・・?
「・・・治してほしいに決まってんだろ。お前に聞かれるまでもなくな」
「そうか。ではその願い、私が叶えてあげようじゃないか」
「・・・ハッ?」
呆然とする俺。みんなも唖然としている。コイツ、何を言ってるんだ?
「お前は医者じゃねぇだろうが。俺たちをおちょくってんのか?」
「確かに私は医者ではないが、おちょくっているわけでもない」
ヒースクリフはチッチッチッと指をふる。
「良いかい?知っていると思うが、私は今電脳世界で生きているんだ。現実世界の身体は死んでしまったが、魂は電脳世界で生きているんだよ」
「・・・つまり今のお前は、電脳世界で生きる幽霊みたいなもんか?」
「ま、有り体に言えばそうかな」
ヒースクリフは説明を続ける。
「私は電脳世界を自由に行き来できる。それこそ、君たちが被っているであろうアミュスフィアの中にも入れるわけさ」
「・・・すると何か?ナーヴギアの電磁波で脳を焼き切って殺す、なんてマネが今のお前ならアミュスフィアでも自由にできると?」
「いや、それは無理だね。アミュスフィアはナーヴギアとは違って、高出力の電磁波が出せないようになってるから。あの事件をよく教訓にしたものだ」
ヒースクリフは感心しているようだ。いや、あの事件を起こしたのお前だからね?
「しかしながら、アミュスフィアに入ることが出来れば、そこからその人の神経を通じて病原体ウイルスを除去することは十分に可能だ」
「・・・ッ!?」
驚愕する俺たち。嘘だろ・・・?
「・・・そんなことが本当に出来るのか?」
「出来るさ。電子機器に侵入したウイルスをバスターすることぐらい、今の私なら簡単に出来る。それが例え人の身体であっても、入り込めれば対処することなど容易い」
・・・にわかには信じがたい話だが、恐らくコイツは嘘をついていない。根拠があるわけではないが、俺の知っている茅場晶彦・・・いや、ヒースクリフはそういう男だ。
「・・・それが本当だとして、お前は俺に何をさせたいんだ?まさかとは思うが、無償でやってくれるわけないよな?」
「安心したまえ。何かを求めるつもりなどないよ。君には借りがあるから、それを返させてもらうだけさ」
・・・借り?まったく記憶にないぞ。・・・まぁそんなことはどうでも良い。
「・・・本当にそんなことが出来るなら・・・ユウキの病気を、みんなの病気を治してくれ。頼む・・・」
「アイズ・・・」
頭を下げる俺。みんな悲痛な表情を浮かべている。命の危険にさらされた相手に、自分たちのために頭を下げていることが辛いんだろう。そんな顔するなよみんな。
ヒースクリフはユウキたちの方を見る。
「アイズくんはこう言っているが、君たちの意思はどうなんだ?何しろ私は君たちの仲間を死の危険にさらした人間だ。許せない気持ちは強いだろう?」
「えぇ、アイズを傷つけたアナタを許すことはできない。でも・・・」
そこでシウネーが頭を下げる。
「お願いします。助けてください。私は・・・生きたいっ・・・アイズと・・・みんなと一緒に生きていきたいっ・・・」
「シウネー・・・」
他のメンバーも次々と頭を下げる。
「頼む。助けてくれ・・・」
「アタシたちは生きたいんだ・・・」
「アイズと・・・みんなと一緒にいたいんだ」
「このまま死にたくないんだよ・・・」
「ジュン、ノリ、タル、テッチ・・・」
お前ら・・・ヒースクリフがユウキを見る。
「ユウキくん、君はどうなんだい?」
「・・・お前のことは許せない。ボクの大好きなアイズを死の危険にさらし、深く深く傷つけたことを許すことはできない。・・・でも・・・」
ユウキも頭を下げる。
「ボクは・・・アイズを置いていきたくない・・・一緒にいたいんだ・・・助けてくれ」
「ユウキ・・・」
ユウキの言葉に涙する俺。ヒースクリフは笑みを浮かべる。
「やっぱり君は愛されているね、アイズくん・・・よかろう、全員の病気を治そう」
「・・・!やってくれるのか・・・?」
「あぁ。君たちの想いに応えてみせるさ」
そう言うと、ヒースクリフは瞑目する。その瞬間、ヒースクリフの身体が光に包まれる。
「私が消えてしばらくしたらログアウトしたまえ。全てが終わっているはずだ。それでは諸君、元気でな」
「ヒースクリフ!」
俺はヒースクリフを呼ぶ。一つだけ、聞きたいことがある。
「さっき言ってた借りっていうのは何だ?」
ヒースクリフは笑みを浮かべる。
「君は私とのデュエルに何度も付き合ってくれただろう?そのお礼さ」
「・・・は?」
「あの時の私は実に孤独でね。君とのデュエルが唯一の楽しみだったのさ。あの瞬間だけは心が満たされていた。だからお礼がしたかったんだ・・・では、さらばだアイズ君。お仲間を大事にしたまえよ。特に・・・ユウキくんをな」
やがてヒースクリフは消えていった。・・・最後まで謎の男なのだった。
どうも~、ムッティです。
いやー、ヒースクリフさん・・・
まさかそんなことまで出来るとは・・・
流石ですww
さて、ユウキたちの病気は本当に治ったのか?
第十六話もよろしくお願いします。
以上、ムッティでした。