三ヵ月後。十二月も終わりに近づき、気付けばクリスマスだ。そんな日に俺は病院に来ていた。横浜港北総合病院である。無論、体調が悪くなったわけではない。
「あら、隼人くん。こんにちは」
廊下を歩いていると、女性看護師さんが笑顔で挨拶してくれる。彼女は大島陽菜さん、俺が初めてユウキに会いに来た時、俺がアイズだと知って対応してくれたあの看護師さんである。
「こんにちは陽菜さん」
「今日もユウキちゃんのお見舞い?ラブラブねぇ」
「クリスマスですからね。一緒に過ごしたいじゃないですか」
「・・・そんなセリフを堂々と言えるなんてっ・・・良いなぁ!私も彼氏が欲しいなぁ!クリスマスを一緒に過ごしたいなぁ!」
嫉妬心全開の陽菜さん。
「・・・陽菜さんだって美人なんですから、彼氏くらいすぐできるでしょうに」
「びっ、美人っ!?」
顔を真っ赤にする陽菜さん。何で俺の周りってこうも純情な女性が多いのかな。
「やだもう、隼人くんったらぁ・・・褒め上手なんだから・・・」
「思ったことを言っただけですよ。・・・まぁルックスが良くて彼氏ができないってことは、よほど性格に問題がある・・・イタッ!」
「・・・はーやーとーくぅん?」
陽菜さんが怖い笑みを浮かべながら俺の頭をひっぱたく。あ、やばいな・・・
「スイマセン!でも、そういう暴力的なところに問題があると思いますよ!それじゃ!」
「あっ!コラッ!待ちなさい!病院の廊下を走らないの!」
慌てて陽菜さんから逃げる俺。
「それと、私は性格も良いんだからねっ!」
「自分で言うことじゃないですよ!」
ツッコミを入れる俺。まったく、怖い怖い。
やがて俺はある病室の前に着く。ノックをすると、中から「どうぞぉ」というのんびりした声が返ってくる。俺はドアを開けた。
「あっ!隼人!メリークリスマス!」
俺を見た瞬間、顔をパアッと輝かせる木綿季。
「メリークリスマス、木綿季」
俺も木綿季に挨拶をする。そして手に持っていたプレゼントを手渡す。
「ハイコレ、クリスマスプレゼントな」
「わぁ!ありがとう!」
喜んでくれる木綿季。しかし、途端にシュンとなる。
「ゴメン隼人・・・ボク、プレゼント用意できなくて・・・」
「入院してるんだから当たり前だろ?気にすんなって」
木綿季の頭をなでてやる。気持ちよさそうにする木綿季。猫かお前は。
と、病室のドアがノックされる。木綿季が応えると、木綿季の両親が入ってきた。
「パパ!ママ!」
「やぁ木綿季。お、隼人くん!メリークリスマス!」
「こんにちは隼人くん。メリークリスマス」
挨拶をしてくれる木綿季のお父さん・誠司さんとお母さん・聖さん。
「こんにちは。メリークリスマス!・・・聖さん、体調はどうですか?」
「すっかり良くなったわ。最近まで入院してたとは思えないほどにね」
聖さんは本当に元気そうだ。
「ホント元気なんだよ。信じられないくらいにね。まったく、おかげで私はあちこち行くのにつき合わされて体力が持たないよ」
嘆く誠司さん。やれやれ・・・
「誠司さん、ホント体力ないですもんね」
「・・・隼人くん、そんなさらっとディスらなくても・・・これでも一応、君の彼女の父親なんだよ?」
「だからですよ。本当のお父さんのように慕っているからこそ、体力をつけて長生きしてもらいたいんですよ」
「・・・ッ!隼人くんっ!君は何て良い子なんだ!良い息子ができて私は幸せだ!」
「まぁ、本当はいじりがいがあるからですけどね」
「私の幸せを返せっ!」
俺と誠司さんのやりとりに笑い出す木綿季と聖さん。幸せだ、本当に。誠司さんも聖さんも本当に良い人たちだ。何より・・・
俺は木綿季を見る。ニッコリ笑う木綿季。・・・大好きな彼女がいて、俺は本当に幸せだ。
***
ヒースクリフは本当に俺たちの想いに応えてくれた。ちゃんと全員の病気を治してくれたのだ。それを知った時は本当に嬉しくて、スリーピング・ナイツ一同で大いに号泣したものだ。検査の結果、木綿季の病気が完全に治ったことを知った倉橋先生は「信じられない」を連呼していた。そりゃあそうだろう。奇跡としか言いようのないことなのだから。しかもヒースクリフは、木綿季のお母さんである聖さんの病気まで治してくれていた。恐らく病院の電子機器に入り込んだんだろう。流石としか言いようがない。
後日、ALOでスリーピング・ナイツの病気回復を祝うパーティーが行われた。キリトたちも参加してくれて、大いに盛り上がった。親交のあるユージーン、サクヤ、アリシャも来てくれたのだが、クラインとユージーンとエギルが酒を飲んで異常なハイテンションとなり、そのまま全員でフロアボスに挑戦しに行った。結果は圧勝。まぁあれだけの面子がいれば余裕だわな。
キリトたちには、事の顛末を全て話した。ヒースクリフのおかげで木綿季たちの病気が治ったいうことで、みんな複雑な顔をしていた。だが、ヒースクリフが俺に対して恩を感じていた話をした時、アスナが懐かしそうに振り返っていたな。
「団長は普段からどこか淋しそうな顔をしてたんだよねー。でも、アイズとのデュエルの時は本当に楽しそうだった。ギルドの本拠地に帰ってからも、私に楽しそうにアイズとのデュエルの話をしてたよ」
ヒースクリフ、アンタも何だかんだ人間だったんだな・・・
俺が思い出していると・・・
「おーい、隼人」
木綿季に呼びかけられた。誠司さんと聖さんは、倉橋先生のところに行っている。
「ん?どうした木綿季?」
俺が木綿季の方を振り向くと・・・木綿季が唇を重ねてきた。
ッ・・・コイツ・・・
「・・・今のがボクからのクリスマスプレゼントってことで」
木綿季は恥ずかしそうにそう言うと、俺の肩に頭をコテンと乗せる。そして手を握ってくる。俺はその手を握り返した。
「来年のクリスマスは、一緒にどこか行きたいね」
「あぁ。イルミネーションとか見に行こうか」
「あ!行きたい!約束だからねっ!」
俺と木綿季は指きりをするのだった。
***
俺は木綿季の病室を後にし、ダイシー・カフェへやってきていた。
「よぉアイズ。いらっしゃい。今日は貸切だぞ」
「エギル・・・いつも貸切のような気がするのは俺だけか?」
「細かいこと気にすんなって。夜はちゃんと営業してるよ」
ホントかよ、と俺はエギルに疑いの視線を向けつつ、店内を見渡す。すると・・・
「メリークリスマス、アイズ」
「よぉ、シウネー。メリークリスマス」
黒髪の女性と挨拶を交わす。彼女は安施恩。シウネーである。病気が治り、無事に退院することができたそうだ。
良かったぜホント。
「ユウキのお見舞いに行ってきたの?」
「あぁ、相変わらず元気だ。聖さん・・・木綿季のお母さんも元気だったよ」
「良かった」
笑みを浮かべるシウネー。
「お前はどうなんだ?その後体調の方は?」
「すっかり元気よ。両親が心配するぐらいね」
「今度は元気すぎて心配してるのな」
「まぁね」
笑い合う俺とシウネー。と・・・
「エギルさん、こんにちはー!」
「おっ、アイズ!シウネー!」
「ヤッホー!」
「メリークリスマス!」
ジュン、テッチ、ノリ、タルだった。みんなリアルだと格好が少し違うが、顔は全然変わらない。
「よぉお前ら。メリークリスマス」
「元気そうで何よりだわ」
挨拶する俺とシウネー。
「お前らホント元気になったなぁ」
俺は感慨に浸るのだった。
***
ジュンの本名は春日純、俺や木綿季と同い年だ。テッチの本名は手島孝道、ノリの本名は武田紀子、タルの本名は樽本謙二で、三人は俺の一つ上だそうだ。そしてシウネーこと安施恩は俺の二つ上である。スリーピング・ナイツは、みんな年の近いギルドだったんだな。しかも、入院していた病院も思いのほか近かった。そのことを知ったときは、みんなビックリしたものだ。まさかみんな近くにいるとは思わなかったぜ。ちなみに分かると思うが、木綿季以外のメンバーはすでに退院している。
「ユウキはまだ入院が必要なのかい?」
ノリが聞いてくる。
「あぁ。エイズで身体が弱っていたのに加えて、メディキュボイドの中で二年半もダイブしてたわけだしな。相当身体が弱っているんだよ」
「俺たちSAO生還者も、身体が弱っててリハビリには苦労したもんな・・・」
エギルがしみじみと言う。あぁ、あのリハビリはきつかったなマジで。
「まぁ倉橋先生が言うには、直に退院できるみたいだぞ?少なくとも、四月からの学校には間に合うだろう」
それを聞いたみんながホッとしたような顔をする。
「本当に?良かった!」
「学校には間に合ってほしいって思ってたんだよ!」
「これでみんな一緒の学校に通えるな!」
タル、ジュン、テッチが嬉しそうに言う。そう、実は木綿季たちも、SAO生還者の学生たちが四月から通う学校に入学する予定なのだ。本来SAO生還者の学生しか対象としていないのだが、木綿季たちは入院期間が長く、中学からろくに通えていない状態のため、他の学校で受け入れることが難しいと判断されたのだ。よって、木綿季、ジュン、ノリ、テッチ、シウネー、タルの六人は、特例として入学を認められた。まぁその学校なら、中学・高校の範囲を全て一からやってくれるし、本人たちにとっても都合が良いだろう。
「あー、四月から学校かぁ。楽しみだなぁ」
目を輝かせるシウネー。よほど嬉しいようだ。
「とりあえず、シウネーのあだ名は未亡人とかになりそうだな」
「結婚もしてないのに!?」
ショックを受けるシウネー。みんな爆笑なのだった。
どうも~、ムッティです!
みんな元気になりましたー!
わーい!
ちなみに今回、ユウキは本名の「木綿季」表記です。
アイズも本名の「隼人」となっております。
この二人は晴れて恋人同士になりました。
・・・リア充め。
ま、良かった良かった。
この物語ももう少し続くので、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
第十七話もよろしくお願いします。
以上、ムッティでした!