春子に会った翌日。俺たちスリーピング・ナイツの面々は27層のフロアボスを倒すため、ボス部屋へと向かっていた。ボス部屋の場所は春子からもらったデータで把握済みだ。だが当然、ボス部屋へ行くまでにはモンスターがポップしてくる。いかにモンスターと戦わず、ボス部屋まで体力を温存していくのか。それを考えていた・・・のだが・・・
「やぁっ!」
ユウキが剣をふるうと、モンスターが一撃で倒れる。
「おりゃあっ!」
「せいっ!」
ジュンとノリも余裕でモンスターを倒していく。おいおい・・・
「・・・あいつら余裕だな」
「あの3人は血の気が多いというか、戦いたくてうずうずしてるタイプだからなぁ」
テッチが苦笑しながら言う。
「やれやれ、何であんなに楽しそうなんだか・・・」
タルケンは呆れているようだ。
「・・・テッチ、タル、ジュンとノリと交代してくれ」
「分かった!」
「了解!」
元気よく前に出るテッチとタル。お前らも十分うずうずしてんじゃねーか。
「しっかしまぁ・・・強いなみんな」
ジュンとノリと交代したテッチとタルも、軽々とモンスターを蹴散らしていく。
「私たちは色々なゲームをしてきてるから、戦闘の経験だけは豊富なのよ」
シウネーは楽しそうに笑っている。なるほど、戦闘経験が豊富なのか。確かに一般プレーヤーに比べるとかなり強いな。特にユウキはずば抜けてる。俺たち元攻略組四天王クラスの強さだ。
と、ジュンとノリが後ろに下がってくる。
「おいアイズ!俺たちもっと戦いたいよ!」
「そうだそうだ!戦わせろ!」
「十分戦っただろうが。っていうかメインはボス戦だぞ?こんな所で体力を浪費すんな」
「ユウキはずっと戦ってるじゃないか!」
「アイツはいいよもう。こいつら相手じゃウォーミングアップにもなってないし」
一応一般プレーヤーが苦戦するだけの力はあるモンスターなんだけどな。それを余裕で倒せるコイツらは相当強い。ユウキに関してはもうバカみたいに強い。
「あ!ボス部屋ってアレじゃない!?」
先頭を進んでいたユウキが前方を指差す。そこには大きな黒い扉があった。
「あぁ、あれがボス部屋だな」
「やっぱり!ボクが一番乗りだもんね!」
「あっ!ずるいぞユウキ!」
「負けてたまるかぁっ!」
ユウキ、ノリ、ジュンが扉へと走っていく。やれやれ・・・あいつら気付いてないな。
「ユウキ!ノリ!ジュン!止まれ!」
俺が叫ぶと、三人ともピタッと止まる。お預けをくらった犬みたいな顔をしてるが。
「なんだよぉ、アイズぅ・・・」
悲しそうな顔でこっちを見るユウキの頭をポンと叩くと、俺は扉の方を向く。
「・・・その扉の前でハイドしてる三人。大人しく姿を見せろ」
俺のドスのきいた声に緊張の面持ちになるユウキたち。すると扉の前の何もなかった空間から、三人のプレーヤーが突如現れた。
・・・やっぱりか。隠蔽呪文で隠れてやがった。
「・・・まさか見破られるとはな。どんだけ索敵スキルが高いんだアンタ」
三人のうちの一人が驚いたように声をかけてくる。
「ハイドして待ち伏せとは穏やかじゃねぇな。プレーヤー狩りか?」
俺がデュランダルを抜くと、三人とも慌てる。
「ま、待て!俺たちはプレーヤー狩りじゃないし、戦うつもりもない!」
「じゃあ何で扉の前でハイドしてた?」
「待ち合わせしてるんだ!待ってる間にモンスターに見つかると面倒だから隠れてた!」
・・・最もらしい言い訳だな。だが隠蔽呪文中は恐ろしい勢いでマナが減るため、使用中は高価なポーションを数十秒ごとに飲まないといけない。フロアの最奥部までたどり着ける力があるなら、わざわざそんなマネをしなくても良いはずだ。
・・・怪しいな。
「・・・俺たち、ボスに挑戦しにきたんだ。通してもらえるか?」
「お、おぉ。もちろんだ」
相手側も、こちらに戦う意思がないと分かって安心したようだ。すぐに扉の前から退き、俺たちに道をゆずってくれる。
「頑張れよ」
「あぁ、ありがとう」
相手側は俺たちを通すと、すぐに隠蔽呪文でハイドしてしまった。俺たちが扉を開けて中に入ると、扉はすぐに閉まってしまった。
「すごいなアイズ!ハイドしてるやつらを見抜くなんて!」
ノリが感心したように言う。
「まぁ索敵スキルを上げてるからな。・・・あ、ユウキ!」
「んー?どうしたのー?」
こちらを振り返るユウキに顔を近付ける。
「ふぇっ!?ちょ、アイズ!?」
ユウキが顔を真っ赤にしている。他のメンバーも顔を真っ赤にしてこちらを見ている。そして何故か目を瞑るユウキ。俺はそんなユウキにさらに近づくと・・・
頭に手を伸ばし、トカゲのような生物を捕まえる。やっぱり・・・
「・・・え?」
ユウキは訳が分からないようだ。トカゲを剣でぶった切って消してから説明する。
「ピーピングだ。相手プレーヤーに使い魔をくっつけて、視界を盗み見る魔法。恐らくさっきのやつらが、ボスの情報を得るためにユウキにくっつけたんだろうな」
「い、いつの間に・・・?」
ユウキは呆然としてしまっている。
「もしかして、25層と26層のボスに挑戦して負けた後、すぐに大きいギルドに攻略されちまったんじゃないか?」
「ど、どうしてそれを!?」
シウネーが驚きながら尋ねてくる。
「恐らくその時も、ボス部屋の前でさっきみたいなやつらがハイドしてたんだろうさ。さっきのやつらは恐らく、ボス攻略専門ギルドの斥候隊だ。スリーピング・ナイツのような小規模ギルドがボスに挑戦するのを待ち伏せし、使い魔をくっつけてボスの情報を得る。その情報を元に自分たちがボスを攻略するのさ」
「じゃ、じゃあ俺たちが負けてすぐボスが攻略されてたのは、偶然じゃなかったのか!?」
ジュンが驚愕している。
「そういうことだ。汚いマネしてくれるぜアイツら・・・」
やっぱりさっき三人ともぶった切っておくべきだったな。
「まんまと利用されたってことかよ、チクショウ・・・」
テッチが悔しそうにつぶやく。
「ま、気落ちしてても仕方ないさ。終わってしまったことは仕方ない。それより、今は目の前のボス攻略に専念するぞ」
「そうだね。今回はアイズが使い魔を消してくれたから、仮に負けてもあいつらに情報が流れることはないもんね」
おっ、良いぞタル。ポジティブにいこうぜ。
「・・・ボクはてっきり・・・されるかと思って、ちょっと期待したのにな・・・」
「ん?どうしたユウキ?」
「な、何でもないっ!さぁ、ボスを倒そう!」
何かつぶやいてたような気がしたけど・・・まぁ良いか。
「よし、作戦は前もって説明した通りだ!気合い入れていくぞ!」
『おーっ!』
全員の気合いが入ったところで、部屋の中央に前進する。すると周りのたいまつに火が灯り、部屋を明るく照らす。そして前方では、ボスが出現しようとしていた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」
ボスが雄たけびをあげる。身長が4メートル以上はある黒い巨人だ。頭が二つ、腕は四本あり、それぞれの手に凶器を持っている。
「・・・こんなやつに、たった七人で勝てるの・・・?」
シウネーが震える声でつぶやく。他のやつらも圧倒されて言葉が出ないようだ。
「落ち着けシウネー。お前らもだ。今回は負けてもすぐに他のギルドが挑戦したりしないだろう。何せ情報がないからな。だから一度負けても、また挑戦できる。ただ・・・」
俺はニヤリと笑ってユウキを見る。
「負けるつもりなんてないだろう?ユウキ」
するとユウキもニヤリと笑って俺を見る。
「もっちろん!勝つよ!」
俺たちの言葉を聞いて、他のメンバーもニヤリと笑った。その意気だ。
「行くぞッ!」
俺は掛け声をかけると、勢いよく地面を蹴ってボスに向かっていくのだった。
***
「だぁーっ!負けたーっ!」
ノリが悔しそうに叫ぶ。そう、俺たちはボスに負けてセーブポイントに戻ってきたのだった。ないわー、アイツ強いわー。
「すごく良いところまでいったのになぁ・・・」
がっくりとうなだれるユウキ。実際ホントに良いところまでいったのだが、あえなく撃沈してしまった。データにあったボスの弱点がSAOとは変わっていて、弱点を見出せなかったのだ。
「ごめんな、肝心な情報が役に立たなくて・・・」
「そんなことないわよ。弱点は違ったけど、攻撃パターンとかは合ってたじゃない。あらかじめ攻撃パターンが分かっていたのはかなりのアドバンテージだったわ」
シウネーが慰めてくれる。・・・弱点を見つけられなかったのは痛いな。よし・・・
「やっぱりバックアップがシウネー一人じゃヒールが間に合わないな・・・タル、悪いけど次はバックアップに回ってくれ」
「分かった」
「タルが抜けたミドルレンジにはジュン、入ってもらえるか?」
「良いけど、それだとフォワードがアイズとユウキの二人だけになるぞ?」
「問題ない。ユウキが頑張ってくれるから」
「え!?ボクに丸投げ!?」
「当たり前だ。リーダーなんだから」
「何でこういう時だけリーダー扱いするの!?」
「便利だからな」
「本音が出たーっ!最低だよこの人!」
俺とユウキのボケとツッコミに爆笑するみんな。
「よし、整理しよう。フォワードは俺とユウキ、ミドルレンジにノリとテッチとジュン、バックアップにタルとシウネーだ。とりあえずもう一度挑戦して、弱点を見つけよう」
『了解!』
「よし、もういっちょいくぞ!」
『おーっ!』
こうして俺たちは、再びボス部屋を目指すのだった。
どうも~、ムッティです。
スリーピング・ナイツ、強いですww
だがしかし、ボスはそれ以上に強かったようですww
果たして、ボスを倒すことは出来るのでしょうか?
そしてキリトたちに出番はやってくるのでしょうかww
第九話もよろしくお願いします。
以上、ムッティでした!