TALES OF THE ABYSS ~ Along With the Nargacuga ~   作:SUN_RISE

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初めての方は初めまして、初めてでない方はどうも、SUN_RISEと申します。

ナルガ狩猟BGMを聞きながらさくっと仕上げた小説です。
のんびり更新していく予定なので、気長にお待ち頂けたらと思います。

小説紹介で既にいろいろ書かせて頂いたので、ここで書く事は特にありません。
早速ですが、本編を始めていきましょう。



0章:始まりの時 ~月夜に蠢く迅き刃~
第1迅:迅竜への転生?


涼しい風が頬を撫でる感触に、ふと目を開けた。

 

目の前に広がるのは、緑色。

よく見ると、それはうっそうと生い茂る木々の、葉っぱの緑だった。

最近また目が悪くなってきたのか、視界がぼやけている。

 

時間は…夜か。満月が空に浮かんでいるからか、うっすらと明るい。

全く、酒を飲むと眠りが浅くなるから困る。まだ(まぶた)が重いし、もう一眠りするか…。

 

 

…ん?

葉っぱ?

空に満月?

 

確か俺は、大学のサークル活動仲間と飲み会に行って、二次会まで行って、ちょっと飲み過ぎて…。家に何とか帰りつき、風呂に入って寝た事までは覚えている。

 

…なんで俺は外に居るんだろう?

追い出された? いや、まさかな。

 

 

重い瞼を何とかこじ開け、頭を少し持ち上げて周りを見渡してみる。

どうやら俺は、木の上に居るみたいだな。遥か下に、地面が見える。

周りに幹の太い木が幾つもあって、そこから伸びるこれまた太い枝が幾つも重なった場所に、ちょうど収まるように俺がいるらしい。

そして丁度真上に葉っぱの無い一角があって、そこから満月の輝く夜空が見える。

 

ん? 俺って高所恐怖症だったはずだが、全く怖くないぞ?

あれって、結構辛いんだよ。俺の場合はスキーとかスノボでゴンドラに乗ると、目を開けていられなくなる。リフトは…まあ、なんとか平気。足がぶらぶらしてて、凄まじく落ち着かないけど。

 

…もっともそれ以前に、なんで俺は木の上に居るんだ?

酔っぱらって調子に乗って木にでも登ったか?

身に覚えが全く無い。猿じゃあるまいし、ありえないな。

 

 

体にも違和感がある。

 

俺は昔から目が悪い。だから、視界がぼやける事に対しての違和感は無い。ただ、周りが薄暗いのにも関わらず葉っぱの色がやけにくっきりと見えるのはなんでだ?

 

それに、やたらと耳がよく聞こえる。おかげで、視界がぼやけててもあまり不便に感じない。今も、何かしらの生物が地面を歩く音が聞こえる。

こんな高性能すぎる耳、とても人間のものとは思えない…。

 

…え?

手だと思ってた所に、なんか銀色に輝く刃みたいなのが付いてるんですけど。

しかも、全体が翼みたいな形してるし。

 

他にも、全身を黒い毛が覆っていて、下に鱗みたいなものが付いてる。

後ろを見ると、やたらと長くて細い、鞭のような尻尾が付いてる。

しかも、まるで自分の手足のように自由に動かせる。

 

試しに、ぶんぶんと振り回してみる。おー、面白いなコレ。

おっ、なんか棘が生えたぞ。なんか飛ばせそうだし、ものは試しだ、えいっ。

 

棘が木に深々と刺さってる、随分貫通力あるんだなぁ。

 

 

…おっと危ない危ない。

色々と理解が追い付かなくて、現実逃避しかけた。

 

えっと、まずは状況の整理をしよう。

俺は、飲み会の後家に帰りついて、風呂に入って、そのまま寝た。

確かに酔っぱらってはいたが、布団に入って寝るまでの記憶はちゃんとある。

そのまま外で、ましてや木に上って寝るなど、状況としてはありえない。

 

自分の名前……あれ?

思い出せない。なんでだ? 自分が大学生だって事も、家がどこにあるかも思い出せるのに、名前だけは思い出そうとしても(もや)がかかったように記憶から引き出せない。

 

…考えてても仕方がないか。

 

 

次は、()()俺の体について。

これは、何度もゲームで見たから分かる。

『迅竜ナルガクルガ』だ。よく『ナルガ』と略して呼ばれる。

 

モンスターハンター(こちらも略して『モンハン』と呼ばれる)というゲームで出てくるモンスターの一匹で、その流線型のかっこいいフォルムと適度な手強さ、あと狩猟時の専用BGMがナルガのイメージにマッチしていて、ハンター(プレイヤー)に大人気のモンスターだ。

 

…ただ、最新作であるMH4Gでは、出なかった。

他の看板モンスター(リオレウス、クシャルダオラ、ティガレックス、ジンオウガ、ブラキディオス)が多く出演を果たす中、出ない理由が無いのに何故か出なかった。ファン(俺含む)涙目である。

まあ、それはともかくとして。

 

そのナルガだが、主に木々の茂る樹海・原生林や、自然豊かな渓流といった場所に好んで生息するモンスターだ。

固い外殻は持たないが、それ故に巨体に見合わず体が非常に軽く『影さえ付いて行く事ができない』とまで言われるほどの俊敏さを発揮する事ができる。

その俊敏さを活かして木々の間を飛び回り、黒い体を活かして闇に溶け込み、翼に付いた刃『刃翼』や伸縮自在のしなやかな尻尾を用いて、一瞬の隙を突いて獲物を仕留める…。

正しく『忍者』と形容するにふさわしい習性を持つモンスターだ。

 

だから、ナルガ()がこうやって木の上に居る事も、高い所が怖くない事も納得はできるのだが…。

 

 

そもそも、どうして()はナルガの体になっているんだ?

 

俗に言う、神様転生というやつだろうか?

しかし、夢でも現実でも神様とかいう存在に会った記憶なんぞ無いし、

よくありがちな『特典』とかいうやつを(たまわ)った覚えも無い。

そもそも、俺まだ死んでないし。…もしかしたら、寝ている間にぽっくり逝ってしまったのかもしれないが。

 

一瞬、この出来事自体が夢かとも思ったが、あまりにもリアリティがありすぎる。

風は少しだけ肌寒く感じるし、木々の間から獣やら鳥やらの声も聞こえるし、目でも(ぼやけてはいるが)確かに緑に色付いた葉っぱを捉えている。

とても、これが夢だとは思えない。

 

 

…では、これが全て現実に起こっている事だと仮定しよう。

 

ここは、どこだ?

ナルガの体になっているからには、ここは当然『モンスターハンター』の世界なのだろう。

 

…そう思っていたのだが、眼下で動き回る小型モンスター(やはりぼやけてよく見えないが)は、

ケルビとかアプトノスといったモンスターとは明らかに形が違う。

他にもモンハンで出てくるモンスターをいろいろと思い浮かべてみるが、姿形が一致するものは無い。

 

 

…とりあえず、下に降りてみるか?

このままここ(木の上)に居ても、何も分からないままだ。なら、行動するしかない。

 

本当に俺がナルガになっているのなら、木から降りるなど造作も無い事のはずだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

…始めに結論から言うと、難なく下に降りる事ができた。

この木に足をかけて、この木に爪をひっかけて…みたいな動作が自然と、本当に無意識のうちにできたんだよね。

まるで、昔から何度も同じことしてるから慣れてます、みたいな感じで全く違和感が無かった。

 

 

とまあ、こんな訳で下に降りたのだが…。

 

…なんだ、このアンモナイトみたいな巻貝生物は。

いや、森に巻貝がいること自体おかしいが、こいつは輪をかけておかしい。なぜか()()()()()()()。翼とか、羽とか、そういった空を飛ぶために使うものがその生物に付いていないのに、だ。

 

そして、やたらに長い触角(触手?)が二本、巻貝の入り口みたいな所から垂れている。さらに、その入り口からは赤く光る眼みたいなものが覗いている。

 

赤く光る眼はナルガも同じなので変だとは言えないが、こいつは一体何者だ?

…なんか見覚えがある気もするが、どうにも思い出せない。

 

 

ん?

なんかこっちに近付いて来たな…。でも遅い、遅すぎる。

 

 

あ、触角を振り上げて…。

ベシッ…と頭を叩かれた。

 

…全く痛くない。むしろかゆい。

でも、なんか腹が立ったのでとりあえず張り倒す事にした。

 

どうする?

せっかくだし、ここは一つナルガの必殺技でも試してみるか。

 

 

バックステップで少し距離を取る。

バカの一つ覚えみたいに、にじり寄ってくる巻貝を確認すると四肢に力を込め、吠える。

尻尾を高く上げ、棘を出す。

そのまま軽く跳び上がり体を180度反転させながら、四肢に溜めた力を全て尻尾へと伝える。

高く上げた尻尾を思い切り地面に叩き付けて…。

 

ビターン!! …と凄まじい音と共に、地面が割れた。

 

全身全霊を込めた尻尾攻撃を喰らい、巻貝はペシャンコ…を通り越してバラバラに砕けていた。

 

 

ナルガが放つ必殺の『尻尾叩き付け攻撃』、通称『ビターン』を試しに使ってみたが、やはり凄まじい威力だな。

百戦錬磨のハンターを一撃でピヨらせる(最近の作品では、ハンターも強靭になったのか一撃でピヨらなくなったが)威力は伊達ではないらしい。

 

…『ビターン』を自ら放ち、実際に敵(蟻ほどの脅威も感じなかったが)を倒した、という事実に少しだけ気分が高揚した。

ただそれと同時に、『自分がナルガクルガになって見知らぬ世界にいる』という事が更に現実味を帯びてしまったが…。

 

 

…なんか、吹っ切れた。

実際にこの手で巻貝みたいな生物を殺したからか、これを現実だと認めざるを得なくなってきているからか、どちらかは分からないが。

 

夢にせよ現実にせよ、この体で、この世界で、生きていかなければならない。

死ねば、終わり。それは、どの世界でも変わらない。

 

だから、ここがどこの世界であろうと生きて、生きて、生き抜いてやる。

地べた這いずり回って泥水すすろうが、生きて動く事さえできれば何かを成せるのだから、簡単に死んでやるつもりはない。

 

 

…ならば、生きていく為に何が必要か。

生活の基本的な三要素といえば、『衣食住』が有名だろうな。

 

もっとも、ナルガの体になった俺に『衣』は要らない。

『住』に関しても、ナルガにとって森はホームグラウンドだ。寝る場所には事欠かないだろう。

 

なら、今一番必要なのは『食』か。

そういえば、ちょうど巻貝みたいな奴を叩き潰した所だし、試しに頂いてみるか…。

 

 

(迅竜食事中…)

 

 

…美味くはない。まずい訳でも無いが。

意外と触角が柔らかくて美味だったが、それ以外の所は固くてイマイチな味だった。

例えるなら、エビの身の部分を少なくして殻の体積を増やしたようなモノを食べた、って感じか?

 

ただ、それなりに固かったのにバリバリと噛み砕けた。流石肉食竜、歯とか顎の丈夫さは人間の比じゃないな。

まあ、味の方も慣れれば問題無いレベルだったし、気にしたら負けか。

 

…それにしても、量が少ないなぁ。

比較的小柄なナルガ(体長の3割近くを長い尻尾が占めているから、実際の大きさは他のモンスターに比べるとそれほどでもない)でも、流石にこれでは食事量が足りない。

 

しょうがない、狩りをするか。

幸い、ナルガ()の体を動かすのに違和感は無かったし、不思議と調理していない謎の生物をそのまま食べる事にも抵抗感は無かったし。

結構いろんな方向から音がするから、獲物に困る事も無いだろう。

 

一番近いのは…向こうの方か。行ってみるか…

 

 

(迅竜狩猟中…)

 

 

…それから小一時間モンスターを探して回ってみたが、やはりここは『モンスターハンター』の世界ではないらしい。

狼みたいなモンスターが二種類(白い色の奴はビリビリした玉みたいなのを吐いてきたので、ちょっとビクッとした。やはりナルガは電撃が苦手らしい)、斧形の口を持った鳥のようなモンスターと、あとは木みたいな表皮のデカブツを見かけた。もちろん、全てモンハンでは見た事の無いモンスターばかりだ。

 

見かけたモンスターは全て張り倒して食べてみたが、木みたいな奴は歯ごたえがあって意外に美味かった。

あと、白い狼だけは食べたら口が痺れて不快だったので、もう食べない事にした。電気玉を吐く事といいどうも苦手意識が払拭できないので、今後は避ける事にする。

 

 

…それにしても、やっぱりなんか見覚えがあるんだよなぁ。

特に、あの斧みたいな口の鳥。

 

斧、斧…アックス?

ん?なんか聞き覚えが…。

 

 

…アックスビーク?

 

 

…ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!

思い出した!!

 

アックスビークって、テイルズシリーズによく出てくる鳥モンスターじゃねえか!!

よく考えてみれば確かに似てる、というよりゲームのイメージそのまんまじゃねえか!!

何度も見てるのに、何でもっと早く気付かねえんだ俺!!

 

 

…はぁ、はぁ、ちょっと興奮しすぎた。落ち着け、俺、焦ったら負けだ。

…よし、落ち着いてきた。

 

もう一度、落ち着いて状況を整理しよう。

 

…俺は『ナルガの姿』で『テイルズの世界に迷い込んだ』って事?

 

…全く意味が分からん。

何の関係性も見出せないぞ、この二つの世界。

強いて言うなら、転生(もう考えるの面倒だから、転生したって事でいいや)前の俺が両方ともプレイした事があるゲーム、って事ぐらい。

 

モンハンはまだ分かる。MHP2Gの頃はプレイ時間1000時間超えたし、その後の作品も軒並み800時間超える程度にはプレイしたし、そこそこ強い思い入れがある。

 

ただ、正直テイルズにはそこまで強い思い入れがある訳ではない。人気の高いファンタジアやらエターニアやらは最後までプレイしてないし、他のも最後までやったのはあっても、隠し要素まで遊び尽くしたのはTOVぐらいのものだし。

 

なら、ここはTOVの世界なのか? …と思ったのだが、白い狼はTOVには居なかった気がする。ガットゥーゾ(やたら強い序盤ボス)のイメージが強すぎて思い出せないだけかもしれないが。

 

とりあえず、アックスビークがいる以上テイルズ世界のどれかなのはほぼ間違い無い。

まあ、探索して少しだけ現状把握できたし、腹も満たされたから今は良しとするか。

 

…そういえば、ナルガって夜行性なのか?

うっすらと空が白んできたら、だんだんと眠くなってきた。

とりあえず、最初に目が覚めた場所に戻るか…。

 

 

 

木の上に戻ってきた。

葉っぱが丁度いい感じに陽の光を遮ってくれてる。改めて、随分と居心地のいい場所だと思った。

 

暫くはここを拠点に、辺りの探索をする事にしよう。

…ふわぁ、本格的に睡魔が襲ってきた…。

 

 

…おやすみ…。




読んで頂き、ありがとうございます。

ナルガ()について、少しばかり設定の補足を。

・視力について
 ①色の識別能力は人と同等
 ②視力は0.3程度。静体視力はそれほど高くない
 ③反面動体視力は高く、動く物体は正確に感知できる
 ④暗視能力が高く、新月の夜で周囲に明かりが全く無い場合を除き暗闇でも周りを見通す事ができる

・聴力について
 ①聴覚に優れ、人間には聞こえない超音波や、微弱な音も感知できる
 ②ただし、音の発生方向を正確に感知する能力は人間に劣る
 ③感知範囲は500mほど
 ④大音量が間近で発生すると怯んでしまう

以上は概ね、公式の最新ナルガクルガ設定を忠実に再現したものです。
ただ色識別能力はどこにも記述が無かったので人と同等とし、具体的な範囲や数値といったものは猫を参考にしました。

では、次話も気長にお待ち頂けたらと思います。
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