TALES OF THE ABYSS ~ Along With the Nargacuga ~   作:SUN_RISE

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どうも、SUN_RISEです。

気付いたら、艦これをつけている毎日……これでモンハンクロスが来たら、一気に時間が無くなりそうで怖いです。
でも楽しいんだからしょうがない……よね?

と、そんな与太話はさておき。
本編、始めていきましょう。どうぞお楽しみ下さい。



第9迅:風迅竜ナルガクルガ

 

「……ん……」

(……ぐっ……)

 

背中越しに(()()()()())二人分の……いや、一人と一体分の声が聞こえてきた。

ようやくお目覚めか……大体一時間ぐらいは待ったか?

 

小柄なアリエッタはともかく、図体でかいライガですらちょっと吸っただけでこれか……やっぱり瘴気って恐ろしいな。

……というか、これ見てると魔界(クリフォト)行ってモロ高濃度の瘴気吸ってもピンピンしてるって、おかしくないか?

 

「……!! あなたは、あの時の……」

(ああ、また会ったな)

 

……まあ、今はいいか。

アリエッタに向き直りつつ、言葉をかける。まだ目の焦点がイマイチ合っていない様子だが、ナルガ()を認識したって事は意識はちゃんとあるな。とりあえずは、一安心といったところか。

 

……ただし。

 

(お前は……!!)

 

本調子じゃない癖に、敵意を剥き出しにしてる馬鹿一匹がいるんじゃ、オチオチ背を向けてもおれん。

あー、面倒くさい。だから起きるのはアリエッタだけでよかったのに。

 

(はぁ……足ふらつかせて、目も虚ろな状態で牙剥き出しにしても、大して怖くないからやめとけ)

(……くっ、ふらついてなど……!!)

(強がってもバレバレだ。アリエッタの心配すらできないほど余裕が無いなら、おとなしく寝てろ)

(寝てなど、いられるか……!!)

 

……話が進まん。いっその事、もう一度昏倒させてやろうか……いや、そんな事したらアリエッタがどう思うか。

その肝心のアリエッタも、まだボーッとしてるし。

 

(バサ……バサ……)

 

うーん、困ったな……ん?

この大きな羽ばたき音は、もしかして……。

 

(あら。久し振りね、黒い魔物さん)

 

あー、やっぱりか。

頭上から聞こえるこの声。割りと高い声だから、すぐ分かる。

 

(フレスベルグか……遅かったな)

(ちょっとね。……アリエッタは大丈夫なの?)

(一応な。瘴気にやられて昏倒してたが、今しがた目が覚めた所だ)

(そう……アリエッタ、平気? 立てる?)

「……うん、大丈夫……」

 

……これが普通の、本来の対応だよな。フレスベルグが、まだ話の分かる相手でよかったよ。

 

……よろよろと、アリエッタが立ち上がっていく。足元が生まれたての小鹿よろしく覚束ない様子だが……おっと。

 

(無理したらダメよ、アリエッタ)

「う……ごめんなさい」

 

危うく、膝をしこたま地面に打ち付ける所だったな……。

まあ、急ぐ事もあるまい。アリエッタが回復するまで、暫くは待機だな……。

 

 

 

(迅竜待機中……)

 

 

 

「うん、今度は大丈夫」

(頭が痛いとか、息が苦しいとかは無いか?)

「平気、です。心配かけてごめんなさい」

 

アリエッタの顔色も良くなったみたいだし、とりあえずは大丈夫そうだな。……これで何かあったら、本気で後悔する所だったよ。

 

……ところでそのアリエッタだが、さっきからナルガ()の方を心配そうな顔でじっと見つめている。……もしかして。

 

(……うん、何だアリエッタ? 何か気になる事でもあるのか?)

「ずっと、気になってたの。……脚、どうしたの?」

 

……バレてたのか。

極力挙動がおかしくならないようにしてた……つもりだったんだが、不自然だったか?

それとも、顔に出てたか?

 

どちらにせよ、アリエッタの聞き方は確信を持ってのものだったし……隠しても無駄か。

 

(ああ、これか? これでも一昨日(おととい)に比べたら、だいぶ良くなった方なんだがな)

「なんで、ケガしてるの?」

(やたら強い亀と……ケンカしてな。これ(刃翼)がギザギザなのも、そのせいだ)

(ふん、いい気味だ)

 

『殺し合い』と言いそうになったが、マイルドに『ケンカ』という表現にしておいた。……ライガは無視だ無視。

 

「ケンカは、良くないよ」

(あっちがやる気満々だったから、迎撃しただけだ)

「……もしかして、殺したの?」

(まさか。結局、最後まで互角のまま引き分けで終わったよ)

「そう……」

 

……ホッとした様子のアリエッタには悪いが、相手(金剛亀)の頭と甲羅には致命傷一歩手前の深い傷があるからなぁ……。生きてるかどうか、普通に考えれば微妙な所ではある。

 

(まあ、またどこかで会うだろう)

 

……ナルガ()としては何となく生きてるような気はするけどな。地力はあるし、知能もかなり高い。あの亀が、そう簡単にくたばるとは思えない。

 

「……また会ったら、どうするの?」

(相手の出方と状況次第だな。俺だってケガはしたくないし、殺したくて戦った訳でもないしな)

(へえ、貴方にそこまで言わせるほどの相手がここ()にいるのね。しかもケガをしてる、と)

 

……ニヤニヤと悪い顔してるな、フレスベルグ。一体何を考えてんだか(まあ、何となく想像は付くけど)。

 

 

……さて、と。

そろそろ、()()に入るとしようか。

 

(……ところで、この後はどうするつもりなんだ?)

「この後……あ! ママの仇が逃げちゃう!」

 

ま、そりゃそうなるよな。

アリエッタはルーク一行を追ってここまでやって来た訳だし、瘴気イベントからそこそこ時間も経ってるから、余計に焦るわな。

 

……で、詳しくは知らないがアッシュの指示でカイツールの軍港を襲い、死人が多数出る、と。

ここまで、ナルガ()が大きな行動を起こさなかった場合は、ほぼゲーム通りに歴史が動いていた。……なら、このまま放っておくとカイツール軍港襲撃イベントが起きてしまう事になる。

 

できれば、それをなんとかしたい。大量に死人が出る事が分かってて、何も手を打たない訳にはいかないからな。

 

……なら襲撃自体を止めればいいと思うかもしれないが、事はそんなに単純ではない。この軍港イベントは起こらなかったら起こらなかったで『俺』にとって色々と困る点も出てくる、厄介なイベントでもある。

 

「ねえ、あいつらはどこに行ったの!?」

(あいつらなら、今ちょうど国境線の近くにいるわ)

 

例えばここでアリエッタを止めて、カイツール軍港襲撃イベントを阻止したとする。パッと思い付いただけでも、

 

①ルーク一行がコーラル城に立ち寄らなくなる

②ルーク一行のアクゼリュス到着が早まる

③健在のアリエッタが暴走する

 

……と、何とも厄介な問題が幾つも思い浮かぶ。

 

①は言わずもがな。襲撃イベントが起きなければ、壊れる筈だった船は健在なままで残る。それならば、わざわざ軍港に長期間留まる必要も無くなってしまう。

そして、コーラル城で起こるはずだった各種イベントが起こらない事で、歴史の流れが大きく変わる可能性があるのだ。

 

その場合、②が発生する可能性は高いだろう。単純に軍港での足止めが無くなる分、巡り巡ってアクゼリュスへの到着が早まってしまうのだ。

……このアクゼリュスの悲劇は軍港イベント以上に多くの人が死に、起こらなかったら起こらなかったで歴史に大きな影響を与える事が容易に想像できる、最悪のイベントだ。

無論、そちら(アクゼリュス)に関しても放っておくつもりは全く無い……というよりも、コーラル城の件が終わり次第すぐに向かう予定だ。なにせ、準備時間は少しでも長い方が良いからな。

 

そして、最後に③。ある意味、これが最も恐ろしい。

アリエッタは、良く言えば直情型、悪く言えば後先考えずに行動する人間だ。止める人間がいないと、あり得ない行動を平気でとってしまう。

そして、①が起こらないという事はアリエッタが健在だという事にほかならない。

 

……つまり予想だにしない場所で、アリエッタがルーク一行に襲撃をかけてしまうかもしれないのだ。

そして、その戦闘の場にイオンかヴァンのようなストッパーとなる存在がいなければ、ルーク一行とアリエッタはトコトンまで殺りあってしまう。そうなったら最後、どちらかが死ぬ事がほぼ確定してしまう。

 

(先回りしよう。奴らを待ち伏せすれば、こちらが有利に戦える)

 

……なら、どうするか。

答えは簡単、『出来事を起こせばいい』。ただし、そのまま出来事を起こす訳ではなく『なるべくゲーム通りに事を起こして結果を得つつ、その過程だけを変える』事が肝となる……と、『俺』は考えた。

 

つまり、具体的にどうするか。

この襲撃イベントで言えば、『キムラスカ兵と戦う事なく』『船を壊し』、更に『ルーク一行をコーラル城に誘導する』ような方法を、ナルガ()がアリエッタに伝授すればいい。

……その際、注意すべき事が一つ。現時点でアリエッタが、まだアッシュから何も話を聞かされていない可能性がある、という事だ。

その辺は上手く、話をすり替える必要があるな。

 

(……ちょっといいか?)

「……? どうしたの?」

(待ち伏せするのにも、準備時間は多い方が良いだろう?)

(確かにそうね。……何か策でもあるの? 私達、どうにもそういうのはさっぱりで……)

 

あー、やっぱりそうなのか。

魔物だからな、その辺は仕方がない……

 

……ん?

 

(ライガは? そういうの得意じゃないのか?)

(ふん、回りくどい方法は好かないものでな)

(……そうなのか?)

 

……もしかして。

チーグルの森のアレ、こちらを試すようなライガの言動は、偶然か……?

あるいは……直感、というかなんというか、なんかそれっぽいものかね。

 

まあいい、本人(ライガ)が言うならそれを信じよう。

それならそれで、『俺』としても好都合だしな。

 

(まあいい、話を続けよう。そいつらの最終目的地は、バチカルなのだろう?)

(ああ、そうだと聞いている。それがどうした?)

(ローテルロー橋が落ちた今、カイツール軍港から船に乗らなければバチカルに辿り着けない)

(ええ、そうよ)

(だったら、軍港を襲撃して船を損傷させておけば、足止めできるんじゃないか?)

(へえ。なるほど、良いアイデアね)

 

……ツッコまれなくて良かった。何でルーク一行の行き先を知ってるのか、とか。一応『盗み聞きした』とかそれっぽい理由は考えてたが……。

それでも、この前提をしっかりしておかないと『船()()を攻撃する方法』に言及できないからなぁ。

 

まあ、とりあえずこれで第一段階はクリアだな。

次は、いかにキムラスカ兵との衝突を避けつつ船を壊すか、についてだ。

 

(ただ、カイツールの軍港にはキムラスカ兵が沢山いる。船を壊そうとすれば、確実にそれを阻止してくるだろう)

(その程度、俺が蹴散らしてやれば済む話だ)

(おいおい、キムラスカからすればあそこ(カイツール軍港)は軍事的重要拠点だぞ? 万は居る兵力相手に、無傷でどうにかなるとでも思ってるのか?)

(………)

(そいつらと事を構える前に、無駄に消耗する訳にもいかないだろう? こういう時は真正面から馬鹿正直にぶつかるんじゃなくて、搦め手を使えば良い)

(具体的には?)

(夜襲だ。夜闇に紛れて、一気に接近する……()()()()

(……空から?)

(人間は空を飛べないから、空中戦には脆い。夜目も、魔物に比べれば利かない。それを突けば、こちらの被害を最小限度に抑えられる)

 

……もっとも、成功するかどうかはアリエッタの配下の魔物と、ナルガ()次第だが。

 

(……アリエッタの友達に、空を飛べて夜目の利く子はいるか?)

「……よ、め?」

(あー……夜でも、目が見える子はいるか?)

「あ、うん。それなら大丈夫」

(なら、ライガを空から船まで運ぶ事はできそうか?)

「できるよ」

 

ゲームでも、アリエッタ配下の鳥型魔物(多分グリフォン?)があの熊みたいな体格のラルゴを軽々運んでいた。

ならライガも運べるだろうとふんで聞いてみたが……どうやら大丈夫そうだな。

 

(で、船に到着したらとにかく壊しまくれ。全ての船を満遍なく、な)

(……兵が来たら、どうするのだ?)

(来させないのさ)

(……え?)

 

で、最後はナルガ()の出番だ。

今度ばかりは、ただ黙って見ているつもりは無い。ここまで関わるんなら、自ら動かさせてもらう。

 

(俺が、入り口側から拠点を攻撃して兵を(おび)き寄せるつもりだ)

 

船は、軍港の奥にある。なら、兵達に入り口方向へ意識を向けさせれば、船の監視は手薄になる。

本調子ではないが、最悪脚が潰れたままでも何とかしよう。

……それに、ナルガ()には無駄に派手で、無駄に強力な『飛び道具』があるからな。

 

「そんな、危ない事……」

(むしろ一番楽だと思うが? 適当に攻撃して、兵の目を外に向けさせればいいだけだし)

(どうやって目を引くつもりだ?)

(ん? ああそうか、そういえば三人にはまだ見せてなかったな)

「……?」

 

……『風迅』は、切り札としてギリギリまで隠しておこう。

その代わりと言っては何だが……まさか覚えたての技(迅竜砲)に、早速役立つ場面が来ようとはな。

 

まあせっかくの機会だし、棘に風の音素(フォニム)を纏わせて試し撃ちしてみるか。……狙いは、地面から突き出てるあの岩がちょうど良いな。

高さ2メートル、幅は1メートルくらい、か。

 

(あそこの、突き出た岩をよく見ていてくれ)

(あれね、分かったわ)

「……何を、するつもりなの?」

(まあ、見てれば分かる。行くぞ……ふっ!)

(ヒュッ!!)

 

棘を一つ、風の音素(フォニム)を纏わせた状態で飛ばす。

……おっ、綺麗に真っ直ぐ行ったな―――

 

(ゴォォォォォォ!! ドガァァァァン!!)

 

(………)

(………)

「………」

 

おー、ど真ん中に命中したなー。やはりナルガ()の棘は百発百中だなー。

……イカンイカン、あまりの威力に現実逃避しかけてしまった。隣の三人は三人で、見事に直立不動で固まってるし。

 

とりあえず結論。

岩は木っ端微塵、跡形も無く吹き飛びました。影も形も残っていません。

……もしかしてこの『棘迅竜砲』、単純な破壊力だけなら『風迅』以上じゃないか? まあその分無駄な破壊が多くて、現に岩に当たっただけで棘が爆発四散したし。

あ、ついでに命中精度は抜群でした。

 

これ、さっき撃たなくて良かったよ。

人にこれを向けるのは、最終手段にしよう。うん、そうしよう。

 

(まあ、これだけ派手に音を立てれば誘き寄せれるだろう?)

(……もうこれで直接あいつらを狙った方が早いんじゃない?)

(それができたらいいんだが、これ威力が高過ぎて連射できないんだよ。しかも、見ての通り貫通力は低いから敵が多いと不利になる)

(なるほど、ね……)

 

……本当は、遠距離からの狙い撃ちとか上空からの撃ち下ろしとか、やりようはいくらでもあるんだが、あえて言う必要もあるまい。

 

さてと、最後の仕上げだ。

アリエッタがカイツール軍港を襲うのは、『アッシュの指示でルークをコーラル城に誘き寄せる』為でもあるからな。そこの辺りもフォローしておかないと。

 

(それで、だ。……おーい、聞いてるかそっちの二人?)

「……え? う、うん、聞いてるよ。だよね、ライガ?」

(………)

 

若干一名、聞いていないのもいるが放っておこう。

……そういえば、アリエッタがライガを名前呼びしてる所を初めて聞いたな。ゲームではずっと『友達』とか何とか言ってたから、普段どう呼んでるのかずっと気になってたんだが……些細な疑問が一つ、解消されたな。

 

(話を進めるぞ。船を破壊すれば、船を修理する職人が出てくるはずだ。その中でも、周りの職人に指示を出している奴を(さら)う)

(なんでまた、そんな事を?)

(そのまま放っておいたら、船を直されてしまう。あいつらを誘き出すにも、うってつけの餌だと思うが?)

(確かに、そうね)

 

……技師長さんだったか?

餌呼ばわりしてすまん。

 

だが、アクゼリュスの悲劇を少しでも遅らせるために、どうしても必要な事なのだ。怖いだろうが、恐らく死にはしないだろうからそれで許してくれ。

 

(夜の内に拐うのがベストだが、最悪夜が明けてからでもいい。……できるか?)

「……大丈夫、きっとやれる」

(そうか、なら大丈夫だな。……これで、作戦は以上だ)

(へぇ、なかなかやるわね)

 

とりあえず、お褒めの言葉は頂けたか。後は、アリエッタの確認だけだな。

 

(……どうだ? 俺の案、採用してくれるか?)

「……うん、その通りにする」

 

……よし、確認も取れたし、これで作戦の決行は決まった。

後は作戦が上手くいってくれる事と、ナルガ()の傷が早く治ってくれる事を祈るだけだな。

 

……ん?

アリエッタが、何やら言いたげにナルガ()を見てるな……。

 

「ねえ」

(ん、どうした?)

「あなたは、なんで私を助けてくれるの?」

 

『なんで助けてくれるの』、か。また唐突な質問だな。

……普段の自信無さげな表情が、鳴りを潜めている。どうやら、結構本気の質問みたいだな。これは、適当に答える訳にはいかないな……。

 

うーん、今後ナルガ()にとって有益になるだろう、という打算的な理由ももちろんあるが……よくよく考えてみれば、どうもそれだけじゃないように思う。

 

こうして実物大のアリエッタと話した事で『俺』が『何か』を感じたのか?

……その『何か』が漠然とし過ぎていて、言葉にするのがどうにも難しい。

 

………。

………。

 

……だめだ、心の底から納得できるような答えが考え付かない。今は、直感で一番近いと感じた答えを返しておくか。

 

(……さあな。前も言ったが深い理由は無い……ただ)

「……ただ?」

(そうだな……危なっかしくて見ていられない、って所だな。感情に任せて見境無く突っ込んでいきそうだからな、アリエッタは)

「そ、そんな事ないもん……」

 

……おいおい、どもってるぞ。自覚があるなら、頼むから少しは落ち着いて行動してくれ……って、アリエッタにそれを求めるのは酷か……。

でも『俺』の本音としては、できればアリエッタにその悪い癖を直してもらって、最後まで生き残って欲しいと思っている。

いつも不幸そうな顔をしてて、実際に他の六神将の誰よりも真っ先に死ぬからな……ゲームの歴史を知っている『俺』としては、どうしても不憫(ふびん)に感じてしまう。

……仮に、彼女の死が避けられない運命だったとしても、な。

 

(まあ仇討ちもいいが、命だけは大切にしろよ?)

「……どうして?」

(アリエッタにとって一番大切な人(イオン)を思い浮かべてみれば分かる。……あんたが死んだら、その人はどう思う?)

「……!!」

(……まあ、そういう事だ)

 

余計なお世話かもしれないが、これで少しは危なっかしい行動が減ってくれる事を願おう。

 

……さて、そろそろ時間か。

 

(さてと、話は終わりだ。あんたらは先に、カイツールの軍港まで向かってくれ)

(……? あなたはどうするの?)

(今の内に、少しやりたい事があってな)

(……何か、考えがあるのね?)

 

察しが良いな、フレスベルグ。

 

まあ、せっかく立てた作戦なのだから成功させたいのは当然だ。最初から失敗前提で作戦を立てる奴などいない……うん、いないはずだ。

そしてこれは、作戦成功に向けた予行演習と布石打ちだ。

 

(ああ、ちょっとそこまで大砲を撃ちに行ってくる)

 

その為に、『棘迅竜砲』の試し撃ちを重ねておく。この技の正確な射程距離と命中精度次第で、採るべき行動が変わってくるからだ。

あまり時間と体力に余裕は無いが、できる限りの準備はしておこう。

 

(じゃあな、また後でな)

「うん、また後で……あ、そうだ」

 

別れようとした所で、アリエッタが赤い半透明の物二つを持って走り寄ってきた。

ん? もしかして、これは……

 

(……アップルグミ、か?)

「うん。……ケガ、早く治るといいね」

 

……優しいな。

ベクトルが極端に魔物やイオンに向いているだけで、アリエッタが他者に向ける好意は人一倍大きなものがあるんだよな。……まあ、嫌悪する対象に向ける苛烈な攻撃性が、それを覆い隠してしまっている感は否めないのだが……。

 

(ああ、助かる。……作戦成功の為に、お互い頑張ろう)

「……うん」

 

アップルグミを地面に置き、背を向けて足早に離れていく。

 

ライガの背に乗り、一度こちらを向いて手を振ってきた。……流石に刃翼は振れないので、尻尾を振っておこう……!?

 

 

 

 

一瞬、アリエッタが笑ったような……?

 

 

 

 

……確認する間もなく、ライガに乗ったアリエッタは走り去ってしまった。

 

 

見間違い……じゃないよな……?





読んで頂き、ありがとうございます。

……考えてみれば、この後は厄介なイベントが続きますね。
カイツール軍港襲撃があり、コーラル城での一悶着があり、アクゼリュスの崩壊があり……。

その中で、ナルガ()をどう立ち回らせていくか……。
まあ、基本的には自分の身を守る事を優先しつつ、なるべく死人が少なくなるような行動をとり続けるのですが。
それでも、主人公には時折無茶させたくなるんですよね~。

それに、彼の精神世界に潜む『黒い影』も、いつまでも黙ってはいませんし、ね。

では、次話もお楽しみに。
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