ハイスクールD×D√喰種   作:ビギナー

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もう……終わってもいい……


第19話 喰種

翌日から行われた、聖剣に関係のあると思われるフリード捜索作戦、および、カネキ捜索は、

フリードの発見に伴い、大きく前進することになる。

 

それは、最近エクソシストの消息が掴めなくなっていると、いう聖剣破壊任務を受けた

ゼノヴィア・クァルタ、紫藤 イリナよりもたらされた情報、および、その犯人が、

異端者フリード・セルゼンの可能性があるという事と、フリードが聖剣を持っていたと、

いう情報を元に考えられたのが、エクソシストの格好をしてフリードを誘き出す、

という、作戦なのだが、まったく成果が出ず、今日は諦めようとしていた時のことだった

突如現れたのが、本作戦の目的のフリードであった。

 

「あれれ?これって罠だったり?しなかったり?」

 

「本当に来たよ……」

 

「来ましたね……」

 

「す、すごいですっ!」

 

「来ちまったよぉっ!?」

 

「初日で成果を上げれたのは好都合だね。」

 

イッセーは本当に来た、フリードに残念な奴、的な視線を向けながら、別行動の

ゼノヴィア、イリナへと連絡を送る。

 

「くひひっ、やっちまったなぁ」

 

「一つ、質問があります……」

 

「んん?オレッちに?おっと、悪いけどオレ、幼女に興味はないんだ、気持ちだけ

受け取っておいてやんよ。」

 

ブチりっ、そんな音が聞こえた気がしたイッセーは、フリーズし壊れた人形の様に

ギギギッ、と振り向くと下を向いており、表情は見えないが、怒り心頭と、いった

様子のオーラを放つ、ようじょ……ちょうぜつ、ないす、ぼでぃな、塔城 小猫様が

いらっしゃった。

女神はお手てをバキリッ!……ぽわぽわと、鳴らすと、繊細な腕を振り上げ、

フリードを殴りに……哀れな子羊に、制裁……お説教(ぶつり)を行うために、

歩き出す。

 

「あなたは、いってはならないことを、いった……」

 

「お、おう……」

 

さすがのフリードも若干やばさを感じ取ったのか、後ずさる。

 

「ぎるてぃ……」

 

「うへっ!?」

 

振り落とされた拳は大地を、抉り、人にあたったら原形が残らないのでは?と

想う程の威力だった。この場に居合わせたほぼ全員が思ったことがある。

 

「「「「(小猫ちゃんを怒らせたらいけない……!)」」」」

 

「ちっ!相変わらずの馬鹿力っ!そ、そういえばぁー質問あったんじゃなかったぁ?」

 

話を逸らす為に発したフリードの言葉は、効果があったのか、小猫の動きが止まる。

 

「そうでした……カネキ先輩の、居場所を知っていますか……?」

 

「カネキ先輩ィ?誰それぇ?」

 

そう返事を返すフリードの表情は明らかに知っている顔だった。

 

「そう、ですか……なら、力ずくでも、話してもらいますっ……」

 

「きひひっ、いいねぇ、掛かってきなよっ!」

 

小猫が走り出すと、フリードが光輝く剣を取り出す、それは聖剣の名に相応しい

輝きを放つ。

その剣を見た木場は、憎悪に包まれた表情を浮かべ、小猫の後を追う。

 

「フリード・セルゼンッ!その聖剣は、破壊させて貰うよッ!」

 

「くひひひっ、いいねぇ、その憎悪っ!ぞくぞくするねぇっ!」

 

「おいっ!小猫ちゃんっ!木場っ!あーもうっ!」

 

「あー、もうどうとでもなれっ!」

 

「え、えっと……がんばってくださいっ!」

 

序盤は小猫が殴り掛かっていたのだが、聖剣の速さにだんだんとおされ始め、木場が

近距離を担当となり、小猫は木や岩の投擲で援護に周る。

 

木場が作り出した魔剣を振るい、フリードが聖剣で迎え撃つ、しかし、木場の魔剣は

フリードの聖剣と数度打ち合うと、ばらばらに砕けてしまう、そのたびに、木場は魔剣を

作り、フリードは追い打ちを仕掛けようとするが、小猫が木や、岩を投げ、足止めをする、

その間に、イッセーは木場へ赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)による援護を行う、この間に、怪我をした場合、

アーシアが治療を行うという、ループが起こっていた。

 

痺れを切らしたのか、フリードが一度距離を取り、拳銃から弾幕をばら撒く。

そして、ニタァと、嫌らしい笑みを浮かべ、ある物を取り出す。

 

「きひひひ、お前ら、ウザすぎィ、だから、オレッちのコレクション上げるから

諦めてくんないかなァ?」

 

「なに言ってやがるっ!」

 

「ふっ、聖剣とカネキ君を渡してくれるなら、考えてみないこともないけどね。」

 

「カネキ先輩の居場所、吐いてもらいます……」

 

「きひひっ、聖剣はぁ、だめだけどぉー、その、カネキ君ってのはぁーあげちゃうっ!」

 

そうして、フリードは取り出した、”それ”を彼らの前にばら撒く。

 

「い、一体な、に……を……」

 

イッセーは攻撃かと思い、身構えるが、何も起こらず、あたりに散らばっている”それ”を

みて、”それ”が一体何なのか理解する。

 

「これ……って、ひ、との……ゆび……」

 

そう、それは、ばらばらに切り裂かれた人の手足の指だった。数は一人の人間が持つ、指の

本数ぴったりで、手足合わせて20本。

 

「う、ぐぅ、おぇ……」

 

あまりにも非人道的な行為が行われたことが、予測されるそれを、みて余りの気持ち悪さに

吐き気を我慢できず、吐き出してしまう匙。

はぐれ悪魔などで、多少慣れがある、木場や小猫すらも眉をしかめる程だ。

イッセーはそんな中でも、心優しいアーシアの視界に入らない様に片手で視界を塞ぐ。

だが、どうしても人の血肉の匂いというものは、遮れず、視界を塞がれたアーシアは

ただ、ただ困惑するしかない。

 

「どう?どう?それ、君達の言ってるカ ネ キ せ ん ぱ い なんだけどぉ?」

 

「は……?」

 

吐き気に耐えながら、アーシアの視界を塞ぐイッセーは言われたことが理解できず、

唖然とする。

 

「な、にを……」

 

木場も小猫も、カネキと交流の少ない匙すらも唖然とし、フリードの言葉を聞くしかない。

 

「んん?だぁかぁらぁ、それっ、カネキ ケンの」

 

「う、うそ、です、そんな、こと、あるわけ……」

 

「いやいや、これが本当なんだよなぁ、だって……」

 

否定して欲しい、そんな思いで口から零れた言葉は

 

「これ、やったの……オレだからァ!!」

 

その表情を見るために持ってきたのだとばかりに、最低で最悪で最高な笑顔に

否定される。

フリードは、まるで英雄談を語る子供の様に嬉々としてカネキにしたことを語る。

曰く、あいつは最高だと、何度壊しても、刻んでも、甚振っても、嬲っても、

何度でも、何度でも元通りになるのだと。

曰く、最近では数字を呟きだし、聖剣で切り刻んでも、ペンチで捻じ切っても、

数字を呟くのをやめないのがおもしろいなど。

曰く、目覚めに指を捩じ切ると、叫ぶ悲鳴が最高に心地良いなどと。

 

長々と、語られるそれは、とても詳細で、だんだんと、本当にやったことなのだと、

分からさせられる。

そうして、イッセーはそんなことあるわけないと、受け入れられず。

アーシアは、涙を流し、匙は、数度会話したことのある同級生を悔やみ、吐き続ける、

木場は、またしても聖剣により傷つけられた友を想い、聖剣への恨み、フリードへの

恨みを募らせる。そして、塔城 小猫は冷静に、まだカネキは生きているのだと

自分に言い聞かせ、助けてみせる、と静かに、怒りと想いを胸に抱く。

 

そして未だに、語っているフリードに痺れを切らしたのか、フリードの背後から

現れる者がいた。

 

「フリード、さすがに時間をかけ過ぎだ、そろそろ行くぞ。」

 

「んん?もうそんな時間?いっけね、オレッちのカネキ君への愛を語っていたら

こんなことに、んじゃあ、いきますか、バルパーのおっさん。」

 

「バルパー・ガリレイッ!」

 

「逃がさないわよっ!」

 

次いで、現れたのはイッセー達とは別行動をしていた、ゼノヴィア、イリナの二人組

だった。

 

「バルパー……ガリレイ……」

 

聖剣への恨みを募らせていた、木場は突如現れた、聖剣計画の首謀者の登場に

顔をあげ、二人組と共に、フリード達のあとを追う。

 

イッセー達も、遅れながらあとを追おうと、するも、突如浮かび上がった魔法陣に

足を止めることを余儀なくされる。

 

そして、魔法陣から現れた者たちは

 

「これは、一体どうゆうことかしら……?」

「さ、匙……平気ですか……?」

 

と、それぞれ、疑問を己が眷属に問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

僕は、夢で大男と、現実でフリードに拷問されていくうちに、現実と、夢の区別が

分からなくなっていた。それは、現実でも、夢でも、拷問されていくうちに、

現実で拷問されていることを、夢だと、思い込み、夢で拷問されていることを、

夢だと、自分に言い聞かせた結果なのかもしれない。

どれだけ、指が捩じ切られようと、どれだけ、皮膚を爪を剥がれようと、どれだけ、肉体を

斬りつけられようと、全て、夢、なのだと、夢だから、手足は化け物の様に再生するし

だから、自分は人間だと、否定し続けた。

夢から覚めれば、またみんなと、楽しく暮らせると、そう、思い込んだ。

 

だから、僕は、喰らった。大男に差し出された肉を、人の肉を……

だって、夢での出来事だから、食べないと、治らないから、食べないと、もっと

痛めつけられるから、全てのことを受け入れた、夢なのだから、と

いつか夢から覚めることを願って……

 

 

 

 

 

 

 

それは、フリードがどこかへ行ったあとのことだった。

大男は、いつもの様に、ペンチを持って僕の手足を捩じ切ったあと、僕に肉を喰わせると、

何かを取り出し、僕に”それ”を見せつけた。それは、人が嫌悪を感じるほど、巨大なムカデ

だった。たしか、名前をトビズムカデといい、日本最大クラスのムカデで、大きい物は

20cmを超えるという。

なぜ、それを取り出したのか、その理由に気が付いたとき、夢だと、受け入れてきた自分が

拒絶の声を荒らげる。

 

「え、ちょ、と、まって、やめ、て……い、やだ……嫌だッ!おねがいします、そんなの、

無理……無理無理無理、おねがいしますおねがいしますおねがいしますッ!」

 

どれだけ、懇願しても、大男は何も聞こえていないかのように、手に持ったそれを僕の耳へ

 

「おねがいしますぅ、え、え、おえぇえええッ!あああっあっぁぁ!!」

 

ゴソゴソ、と耳の中へ、ムカデが入り込もうとする。

 

「嫌だッ!あ、ああぁぁっ!!」

 

大男は、入り込んだ、ムカデが出てこない様に、布で、僕の目から、耳を覆うように頭の後ろで

結ぶ。

 

ゴソゴソ、ゾゾゾゾゾゾッ!、と、耳の中が蹂躙される。

 

どこからか、笑い声が聞こえる、大男が笑っているのだろうか?

 

そう思ったが、違った……笑っていたのは

 

あはははははは

       はははははは

            ははははははははは

                    ははははははははははは……

 

 

――――僕だった

 

 

殺して……殺してください……誰か……

いや、そんなこと、考えちゃだめだ、これは、夢、これは、夢、これは、夢、これは、夢……

 

 

「およよよよ?ついに逝かれちまったかぁ?まぁ、そろそろ、処分しないといけなかったしぃ

ちょうどいいかなぁ?まぁ、まだ、ころころしちゃだめって言われてるしぃ、カネキ君のぉ

お友達?殺してこよっかなっ!」

 

「はっ……?」

 

自分に、夢だと言い聞かせていると、いつの間にか、戻って来ていたフリードが何かを

言っている。僕は、言われたことが、理解出来ず、唖然とする。

 

「およよ?まだ、そんなに壊れてないのかな?じゃあ、じゃあ、オレッちは、お仕事

だからぁ、帰ってきたらぁ、もう少し遊んでやるよっ!」

 

そう言うと、フリードは身体を翻し、この部屋から、出て行こうとする。

 

「ま、まってくれ!一体だれを……」

 

「んん?そんなの、決まってんじゃん……」

 

そういうと、フリードは次々と、名前を述べて行く。

 

「兵藤 一誠」「木場 祐斗」「アーシア・アルジェント」「塔城 小猫」「姫島 朱乃」

「そして、王様のリアス・グレモリ―……は、人質として使うんだっけ?まぁいいや……」

 

「そーだっ!松田と元浜って奴も、ついでにころころ、しちゃおうかなぁ!」

 

「なっ……!」

 

オカルト研究部のみんなだけでなく、ついで、という理由で、松田や、元浜すら殺そうと

いうのか……!

 

「そん……な、こと、させると……!」

 

「君に一体何が出来るって言うんだいィ?」

 

「とめて、見せる……」

 

「どうやってぇっ!」

 

「こ、ろしてでもッ!」

 

「きひひひっ、だぁかぁらぁ、どうやって?神器も使えないッ!そんな君は、ただの人間に

過ぎないっ!」

 

「くっ……!」

 

たしかに、神器が使えていれば、僕はとっくに自力で脱出しているだろう。

 

「そぉれぇにぃ、オレッちが、ずっと、相手してると思うのぉ?」

 

「なっ……!」

 

「悪いけどぉ、オレッち、忙しいのよねぇん、だからぁ!」

 

「えっ……ごふっ……」

 

あまりにも、唐突に、腹部へ剣が突き刺される。突き刺した剣を振り払い、僕から鮮血が

飛び散る。口内に、上がってくる血を吐き出しながら、僕は、フリードの後ろ姿を眺める

しか出来ない。斬られた時、椅子が倒れたのか、地面に這いつくばりながら、

僕は、フリードの後を追う。けれど、意識は、どんどん薄くなっていき、僕はまた、落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

「フリードッ!遅いぞっ!今まで何をしてい「あーすまそ、すまそっ」このッ……チッ、まぁ

良い、見よッ!これが、これこそが合体した聖剣のッ!本来の輝きだッ!」

 

遅れて現れた、フリードに苛立ちを感じたバルパーであったが、そんな些細のことなど

どうでも良くなる程、彼にとっては聖剣が大切なのだ。

 

彼は、聖剣のためだけに生き、どんな非道なことにでも手を出せる程、聖剣という存在に

魅入られた存在である。聖剣にあこがれる者は、たくさんいるだろう、神の存在を信じ、

信仰する、教会関係者、勇者に憧れる子供、そして、憧れる者はみな、聖剣の使い手に

なることを夢見る。そして、バルパーもまた、聖剣の使い手に憧れる存在だった。

 

けれど、バルパーには、聖剣を担う資格が、適正がまったくといって良い程、存在しな

かった。そのことを知ったバルパーは、表面上は担い手になることを諦めていたが、

本心では諦めきれなかった、そして、手を出してしまった……禁断の果実に……

聖剣計画と言われるその研究は、被験者の全滅と言った形で幕を閉じたが、

バルパーは計画を成功させていたし、被験者は全滅していなかった。

その唯一の生き残りが、木場祐斗、現在リアス・グレモリ―の騎士その人である。

 

そんな2人が対峙して、何も起こらないなんてことはありえない。

バルパーは語る、被験者により作られた結晶を用いれば、聖剣の適性を増幅させることが

できるのだと、木場は怒り、恨む、大切な仲間を、聖剣のためだけに道具にされたのだ、

 

かくして、二人は対峙する、が、バルパーは聖剣を持つことが出来ない、故に無関係の

フリードが、木場と相対する、皮肉なことに、バルパーの研究は成功しても、バルパーが

聖剣を持つことは出来ず、木場は、恨みの大元と直接戦うことが出来ない、相手をする

のは、聖剣計画に関係のないフリードだ。しかし、カネキのこともある、木場は、手に

持つ魔剣を力強く握り締める。

 

「きひっ……」

 

そんな二人をフリードは、笑う、木場の怒りを、憎悪を、バルパーの聖剣への愛を、執着を

そうして、手に取る、7つに別れた聖剣、全てではないものの、聖剣の名に相応しい

輝きを放つ、聖剣を。

 

こうして、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

また、この世界だ……こんな所に、居るべきじゃないのに、いる暇なんてないのに、

そう思いながら、僕は、大男を見る。

今度は、何をされるのだろうか……また、ムカデ?それとも、いつも通り、ペンチで……

そんなことを考えていると、大男が、ホッケーマスクをとり、素顔を見せる。

その顔を見たとき、初めて見たのに、僕はなぜか、初めて見た気がしなかった。

大男は、こちらへ近づくと、大きな口を開け、僕に噛み付いた。

 

「ッ……!――――――ッ!!」

 

声にならない悲鳴を上げながら、僕はもがく、暴れて少しでも抵抗することが、僕に

出来る唯一のことだった。

大男は、そのまま、僕の肉を噛み千切り、おいしそうに、僕の目の前で貪り喰った。

そして、噛み千切った分を食べ終えると、また、僕へ喰らい付く。

 

「あぁぁッ!!!」

 

僕は、痛みに耐えながら、夢だと、夢だと、言い聞かせる。

 

そう、こんなことは、夢だ、夢で、喰われようと、起きれば、なんてことはない。

 

だから、フリードが、みんなを殺すのだって夢で、起きれば、みんなが迎えてくれる。

 

そうだ、レーティングゲームで、みんなが怪我をして、負けたのも夢で、

 

僕が、レイナーレを倒したのも夢、そして、アーシアが、攫われたのだって夢、

 

そうみんな夢だ、だから、一誠が一度、死んで、悪魔になったのも夢、

 

そのあと、オカルト部に入ったのも、ゆ、め……?

 

い、や……いや、それは違う、

 

それは、夢じゃない、だって、それが夢だったら、僕は部長や、朱乃さん、木場君、

 

アーシアちゃん、それに小猫ちゃんに、出会うことが、出来なかったのだから。

 

それは、否定したくない……たしかに、一誠が、死んで悲しかった、だけど、

 

一誠が、悪魔になったことが、夢だったなら、僕はオカルト部のみんなに、

 

会えなかったし、一誠は、そのまま死んだままだった……

 

ぐちゅ、ぐちゅと、肉を貪る、大男の姿が視界に入る。

 

僕は、僕はただ、逃げていただけだった、でも、現実は逃げてばかりじゃいられない

 

全てを夢だと、否定し、諦めるのは簡単だ、だけど、だけど、僕は、そんなことで、

 

大切な物を……大切な人たちを、失いたくないんだ……だから、僕は……

 

大男が、僕の左腕を喰い終えた様だ、そして、さらに喰らおうと、近づいてくる。

 

「人じゃなくても、いい……」

 

喰らおうと、近づいてきた、大男の耳を噛み千切る。

 

そして、唖然とした表情の大男を右腕で殴りつける。

殴られた大男は、遠くへ吹き飛び、壁に衝突し、大きな音を立て壁にめり込む。

 

「不味いな、まるで腐りかけの魚の腸みたいだ……」

 

口の周りに付いた、血を右手の甲で拭いながら様子を伺っていると、

ドカンッ!と、壁が爆発が起こったかのように、土煙をあげる。

土煙が多少晴れると、中から現れたのは、自分のとは、形も色も違うが、赫子の様な

物を身に、纏った大男だった。

 

大男は、扉の前に立ち、さながら門番の様に佇んでいる。

その様子を見て、ここから出るには、あの扉から出られそうだな、と判断し、

扉の前に佇む、大男を見て、

 

コロ、コロ、コロ、コロスッ!!

「……うん、”邪魔”だな」

 

パキッ!と、曲げた人差し指を、親指で押して鳴らしながら、呟く。

そんな僕の瞳は、片方だけ赤く染まり、”四本”の赫子が背後から覗いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決着が着くまで、思ったより時間はかからなかった。

大男の攻撃はまるで、暴走しているかのように、荒々しく単調で、

避けることは容易くはあったが、近づき過ぎれば当たる可能性もあった

だから、あの赫子の様な物を、剥がすことにした。こちらの赫子で突き刺し、壁に

大男を引き摺ることにより、少し剥がすと、あとは手で引き千切った。

そのあとは、相手が再生し始めたため、喰らうことにした。

大男が、僕を喰らおうとしたのは、再生能力の高い僕を殺す、ためだったと思ったから。

だから、再生を始める大男を僕は、喰らった

 

「不味いな」「まずい」「吐きそう……」「最低の味だ」

 

ぐちゃり、ぐちょりと、音を立てながら喰らう。

 

「あなたが、いけないんですよ……僕を喰らおうとするから……だから、僕があなたを

喰らっても、問題ないですよね……」

 

「あ”あぁぁ”……」

 

声になっていない、そんな音を発する大男に、背を向け、扉を開く。

視線だけ振り向くと、大男が、こちらに向かい走ってくる。

しぶといなぁ、と思いこれ以上は戦闘する意味がないため、扉の先へ歩みを進める。

 

「僕は、あなた達のように、快楽で命を奪うような奴にはならない……」

 

そう呟きながら、扉が閉まるのを待つ。

 

そして、扉が閉まったのだが、目が覚めることはなく、ならば、先へ進もうかと

思ったときのことだった。

 

「ガァァネェェェギィィィィッ!!」

 

閉まったはずの扉が開き、大男の顔が覗く。

 

「本当に、しぶといな……」

 

名前を呼ばれたことに多少驚いたが、特に気にすることもなく扉を押さえつける。

大男が、伸ばす腕が首元へ伸びてくるが、そのまま赫子を出し、扉を押す力を込める。

その結果、首を掴まれたが、扉は閉まり、扉に挟まれた大男の腕は捩じ切れた。

顔に付いた血を鬱陶しく思いながらも、未だに、首を掴んだまま離さない手を掴み、

手首の骨を砕く。そうして、やっと離れた腕をぼとり、と落とし、先へ進む。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

気が付けば、椅子に拘束されたまま、倒れている自分の視界に戻った。

喰われた左腕の感覚もある。自分が、現実へ戻ってきたのだと、実感すると、辺りを見渡し、

目的の者を視界に納めると、椅子に拘束されたままの身体を引き摺りながら、近づく。

それは、先日フリードに首を刎ねられたまま、放置されたエクソシストの死体だった。

 

死体に近づいた僕は、死体の前で膝を着く。

 

「ごめんなさい……僕はあなた達を救うことが出来なかった……あなた達が殺されるのを、黙って

見てるしか出来なかった……」

 

「それなのに、僕はあなた達の力を借りなきゃ、ここから出ても、何も出来ない……

何も(約束も)護れない(守れない)

 

「あなた達には、関係のない事かもしれない……だから、許可も、赦しも、いらない」

 

「恨んでもらってもいい、呪ってくれてもいい、だから、ごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

頭を死体に寄せ、口を開き、肉を噛み切り、捕食する。

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゅり、と醜い音を立てながら、僕は死体を……人の肉を貪る。

肉を喰らうたびに、力が湧いてくるのが解る。

赫子を発動し、椅子を壊し拘束を外すが、手錠は手を切断するか、専門の道具を使わないと

外せそうにないので、気にせずそのまま、今度は手も使い肉を喰らう。

 

人を喰らう僕は、人であるはずがない、なら一体何なのだろうか?死体を喰らうから、食屍鬼?

 

人を喰らうなら、食人鬼?だが、僕はライザーを悪魔すらも喰らった。そして、これからも……

 

みんなを守るために必要ならば、僕は悪魔も、堕天使も、天使すら喰らってみせよう。

 

あらゆる種族を喰らう、僕は、喰らった人の瞼を閉じながら呟く。

 

「僕は――喰種(グール)だ」

 

自分の存在を、化け物としての自分を受け入れた僕は、人肉を喰らい終えると、地下から、

地上への階段を上る。

 

 

 

 




re最新刊読みました。滝沢……
ビッグマダム思っていた以上に強かったですね、さすがSSレート

はい、というわけでここから続きは書いてません。
続き出来上がるのは来月かなーと、次回は、コカビエル戦かな。




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