ハイスクールD×D√喰種   作:ビギナー

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燃え尽きた……



第21話 決戦

突如現れた、カネキの参戦により、場は静粛に包まれる。

 

「か、ねき、せん、ぱい……」

 

小猫は、目の前に現れた、変わり果てた姿をしたカネキを見る。

小猫を抱き締める手は、爪が赤黒く変色しており、手首には鎖が壊された手錠がされていた。

フリードの話を聞いていなかったとしても、何が起こったのか、何をされたのかが

想像がついてしまう程悲惨で、足も同様に、爪が変色していて、手錠がされており、

服はボロボロで、至る所に固まった血がこびりついていて、目を背けたくなる。

 

極めつけは、自分と同じ、白い髪。しかし、小猫の髪色は生まれついてのものだ。

だがカネキは本来、日本人特有の黒髪で、髪を染めでもしなければ、この様に

変わることはないだろう、一つのことを除いて。

 

それは、ストレスによる白髪化である。多大なストレスによりメラニン色素がなくなり

色彩が薄れることにより、白くなることがある。

しかし、それでも全体的に白くなることなど、滅多にないだろう。

だってそこまでの、ストレスを味わうということ、それは、精神の崩壊を意味する。

精神が壊れてしまった者は、生きながらの死を得たのも同然であり、仮に、己が意識を

保てたとしても、何かしら異常が出るのは当然のことである。

 

つまり、今ここにいるカネキ ケンは、もう以前と完全に同じ、ということはないのだ。

だから、そんな状態になってでも、自分との約束を覚えていてくれたことに、

小猫は、嬉しかったが、とても悲しかった。

 

「き、さまぁ……一体、何者だ?」

 

どくどく、と、血の溢れる失った右腕を抑えながら、問いかけるのはコカビエルだ。

 

その問いに、微笑みを浮かべていたカネキは、スッ、と目を細め、今まで小猫が見た

ことのない、凍りついた表情で、コカビエルを視界に納める。

 

次いで、コカビエルの後ろで怪我を負っているリアス達を視界に納め、そちらへ、

そのまま歩いていく。もちろん、そんなことをすれば、コカビエルの前を通ることになるのだが、

カネキはそのまま、コカビエルを素通りして、リアス達の元へ辿り着く。

コカビエルが何かしてくるかと、思われたが、不思議な事にコカビエルは、ただ、カネキを

視界に納めたまま、身動き一つ取らなかった。

 

「け、ん……あな、た」

 

「部長……遅くなって、すいません」

 

リアスがカネキを見て、様々な質問が頭の中を渦巻くなか、目の前に来たカネキは、謝罪を一つし

 

「それと……小猫ちゃんを、お願いします」

 

「え?ええ、わかったわ……」

 

と、言い小猫を受け渡す。リアスは、頭の中の整理がつかないまま、半ば反射で、返事を返す。

リアスに小猫を受け渡すと、カネキはこちらに背を向け、コカビエルの方へと歩み始める。

それをみて、カネキが何をしようとしているのか、理解したリアスは声を荒らげる。

 

「ケンッ!あなた、まさか、一人でコカビエルと戦うつもりなのっ!?」

 

リアスの言葉を聞き、固まっていたイッセー達が、静止の声を上げる。

 

「カネキッ!お前ッ!」

 

「無茶ですわ、私達全員でも勝てるかどうか」

 

「朱乃さんの言う通り、だよ。ここは、みんなで」

 

「私も同感だ。あれは、一人で勝てる相手ではない」

 

「か、ねき、先輩……」

 

「カネキさんっ!」

 

全員の呼び掛けに反応したのか、カネキが歩みを止め、こちらを振り向く。

その表情は悲しみに溢れていた。

 

「みんな、ボロボロだ……」

 

その言葉は、確かに正しいが、この場で一番ボロボロなのは、カネキ自身だ。

それは、この場に居合わせたもの、全員が思っていることだ。

 

「それはっ!お前の方こ「一誠」ッ……!」

 

そのことを指摘しようとした、イッセーの言葉を遮り、カネキは続ける。

 

「大丈夫、僕は、大丈夫だから……」

 

「な、にいって……」

 

「だから、みんなはここに居て……あとは……」

 

カネキは、あの、悲しい微笑みを浮かべて、

 

「僕が終わらせるから」

 

そう言い放ち、いつの間にか手に持っていた、眼帯型のマスクを顔に持っていく。

 

「ク、ククク、茶番は終わったか」

 

今までのやり取りを見ていたコカビエルは、挑発するようにそう言う。

 

「……そんな茶番を、何もせず、見ていてくれるなんて、貴方は意外と、いい人なのかも

しれませんね」

 

「な、んだと……?」

 

「だけど、あなたは、僕の大切な人たちを傷つけた……だから、僕はあなたを許すつもりは

ないし、生きて返すつもりも、ない」

 

カネキはそう返し、曲げた人差し指を親指で押し込み、パキッ、と鳴らす。

挑発を挑発で返されたコカビエルは、怒りの表情を見せるも、ふっ、と鼻で笑い、

さらに挑発的行為をする。

 

「ずいぶんと、余裕があるのだな、この私を前にして。初めて会った時は、恐怖で

身動きが取れなくなっていた、ただの人間が……不意打ちで、俺の腕を奪ったことが、

そんなに嬉しいか?そんなに誇らしいか?卑しい人間め、すぐに終わらせてやる」

 

コカビエルは10枚の黒き翼を広げ、悪魔の天敵となる、光の槍を創りだす。

 

「終わるのは、アンタだ……堕天使、コカビエル」

 

カネキの左目は赤く染まり、四本の赤い爪が皮膚を突き破り、外に現れる。

 

こうして、戦いの幕が再び上がる。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

カネキ対コカビエルは、誰も予期していない程、壮絶な戦いとなった。

 

まず手始めにと、コカビエルが創り出した光の槍を投擲するが、カネキは

意図も容易く躱しながら、コカビエルへ接近する。

しかし、コカビエルはカネキを近づけまいと、創り出した光の槍を次々と、

カネキ目掛け投擲する。

投擲と言っても、握って投げている訳ではなく、手をかざし、振り下ろす、それだけで、

槍は目も止まらぬ程の速度で、飛んでいき、カネキに躱され、大地に大きなクレーターを作る。

 

「チッ、ちょこまかと、目障りな」

 

しかし、攻撃が当たらず、苛立ちを隠せないコカビエル。対して、カネキは走り、時には赫子で、

槍を防ぐ。

確かに、カネキの回避能力は優秀ではあるが躱しているだけでは、決着は着かないし、

いずれじり貧で、攻撃を食らってしまうのはカネキになる。

ならば、カネキからも攻撃を仕掛ければ良いだけのことではあるが、コカビエルは

己が持つ10枚の翼を用いて、天高く舞い上がっている。対して、カネキは次々投擲される槍を

大地に足を着け避けるだけで、攻撃を仕掛けることが出来ない。

 

「くっ、あの野郎、空飛びやがって……卑怯だぞッ!」

 

自分も翼、羽を持っているが、うまく扱うことが出来ず、空を飛べないイッセーは、

非難の声をあげるが、その声が聞こえていたのか

 

「ククク、己が能力を使って何が、卑怯なのだ、赤龍帝よ」

 

「なんだとッ!」

 

「ククク、それにこれは殺し合い!ならば、生き残るために、最善を尽くすことの

何が悪いっ!クハハハハッ!」

 

「く、くそっ!オレは、何も……出来ない、のか……?」

 

正論で返され、何も言い返すことが出来ない。

そして、イッセーは考える。今自分が出来ること、カネキにしてやれること、

少し倍加したくらいじゃ、カネキと共に戦っても足手まといになるだけだ。

なら、オレが、今できることは……

 

「く、そッ!カネキッ!そんな奴ッ!ぶっ飛ばしちまえッ!!」

 

それは、少しでもBoostしながら、カネキを応援するくらいだった。

 

「一誠……」

 

その声援を聞き、カネキは少し振り返る。

 

「イッセー君……カネキ君ッ!頑張ってくれっ!」

 

「木場君……」

 

「カネキさんっ!頑張ってくださいっ!」

 

「アーシアちゃん……」

 

「うふふ、頑張ってください。カネキくんっ」

 

「朱乃さん……」

 

「もう、ケンっ……やるからには勝ちなさいっ!」

 

「部長……」

 

「がんばって、ください、カネキ先輩っ……!」

 

「小猫ちゃん……」

 

「ふむ、ここで私だけ何も言わないのは、空気を読めていない、な。頑張れっ!

カネキ ケンっ!神もきっとお守りくださるだろう」

 

「(誰だろう……?)」

 

初対面なのに、応援してくれる、エクソシストの少女に、疑問を抱きながらも、

 

「(みんなが、僕に、声援を送ってくれている……なら、僕はその期待に応えないと

いけない……だから)」

 

「ククク、また茶番か。さすがに飽きて来たぞ。それに、デュランダル使い、神、

神と言ったか……?ククク、ハハハッハハハハッ!!」

 

ゼノヴィアの発言を聞き、笑い出すコカビエル。

 

「神を侮辱するのかっ!?コカビエルっ!」

 

「ククク、お前達人間は、本当に滑稽だな!クク、神など、先の大戦で既に死んで

いると言うのにッ!!」

 

「な、にを言っているっ!そんなはずがある訳ないっ!」

 

コカビエルの発言に少し、同様の色を見せたゼノヴィアであったが、すぐにそんなことは

ありえないと、余裕を取り戻し、神を侮辱するコカビエルに怒りを見せる。

 

「ククク、証拠ならこの場にも存在しているというのにか……?」

 

「なにぃッ!?」

 

「ほら、そこの聖魔剣の小僧が、なによりの証拠だ。バルパーも気が付いておったが、

本来相容れぬ聖と魔の融合、それこそまさに神が死に、聖と魔のバランスが崩壊した

結果だ」

 

そう言い放ち、コカビエルは木場を指さす。

 

「ば、かな、そんなこと、あるわけ……」

 

「ならば、貴様は一度でも、神を見たことがあるか?」

 

「そ、れは、神は忙しく……」

 

「信者共の前に少し、姿を現すことすら出来ない程、忙しいのだと?ふっ」

 

「そんな、神は、神はいないのですかっ……?」

 

「アーシア……」

 

アーシアが、ガクリと、項垂れる。アーシアは悪魔になった今でも、神を信じていた

そんな少女だった、だから、神の不在は、精神に大きなダメージを与えられる。

 

神の不在を知り、カネキは、どこか納得していた。

だって、神と言う者が本当にいるのだとすれば、一誠は、堕天使に殺されることが

なかったかもしれないし、それにカネキは、拷問を受けていた時、神に縋ったこともあった。

しかし、救われることはなかったし、アーシアの様な、神を信じ、信仰していた者ですら、

一度、命を落とし、悪魔に転生することになったのだ。

だから、神が居ないと知って、カネキが真っ先に思ったことは納得だった。

 

「ククク、本当に人間は脆い、頼るべきものがなくなれば、すぐ狼狽える。ククク、

これも、また茶番か?この茶番はなかなか、おもしろかったぞ、人間」

 

「……なら、これがあなたが見る、最後の茶番だ」

 

直後、カネキは赫子をコカビエル目掛け、伸ばす。

 

「ククク、その様な発言。先ほどもしていなかったかっ!チッ」

 

話している最中に攻撃され、コカビエルは不快そうな表情を浮かべ、舌打ちをすると、

赫子を槍で薙ぎ払い、結果として、赫子は霧の様に、散らばってしまった。

 

「ククク、なんだ?案外脆いのだな、貴様の神器は……むっ……?」

 

神器を薙ぎ払い、ご満悦なコカビエルは嘲笑おうと、カネキの方を見ると、

先程居た場所に居らず、辺りを見渡すがどこにも見当たらない。

 

「一体、どこに消えた……」

 

「ここ」

 

突如背後から声が聞こえ、慌てて振り向こうとするが、

 

「がァッ!!」

 

振り向く事すら叶わず、代わりにやってきたのは、背中から腹部にかけての激痛だった。

 

「な、ぜ……きさ、まがァ、ここに、いるッ!?」

 

「あなたが、校舎の近くを飛んでいてくれて、助かりました」

 

「な、にを……まさ、か、貴様ッ!」

 

コカビエルの疑問はもっともだ。地上でしか、駆けることが出来ない人間が、自分と同じ

空にいるのだ。しかし、起こったことは、単純だった。

 

「校舎を駆けのぼって、ここまで来たと、言うのかッ!?」

 

そう、コカビエルの言う通り、しかし、普通に校舎を駆けのぼったところで、背後は

取れない。つまり、最初の赫子による攻撃は、ブラフ、ただの陽動だったということ。

赫子で視界を塞ぎ、その間に校舎へ移動し、コカビエルが槍を振るうのと同時に、

神器を停止させることにより、神器は消え、赤い霧状になって散らばる。

これにより、赤い霧が数秒視界を塞ぎ、その間に校舎を駆けのぼり、屋上に着いたら

あとは、コカビエル目掛け校舎を蹴り、頭上から落下している最中に神器を発動させ、

貫いた、という訳だ。

 

そして、現在赫子はコカビエルの背中から腹部を貫き、カネキはコカビエルの

背に立っている、という状況だ。

 

「僕は、前にも堕天使と戦ったことがあるんですけど……空を飛びまわる相手を、

地上でしか戦えない僕が倒すには、どうしたらいいと思います……?」

 

そんな状況で、カネキは問いかけをするが、コカビエルも黙って、何もしない訳もなく、

 

「な、にを言っている……いい加減に、そこをどけぇッ!!」

 

と、残った左手に魔力を灯し、裏拳を叩き込むが、あっさりと、カネキに掴まれ、

バキッ!と、骨が折られる。

 

「グゥ、あァッ!!」

 

堪らず、悲鳴を上げるコカビエルであるが、カネキは特に気にした様子もなく、

話を続ける。

 

「正解は、飛行に必要な……邪魔な翼を”摘めば”いいんですよ。こんな風に」

 

「あ……?」

 

ブチッ、と黒い翼が捥がれ、ぼとり、と大地に落下する。

コカビエルは、何が起こったのか、分からず。ただ、落下していく自分の翼だった

物を眺める、が、理解した時、襲ってきた痛みに

 

「いギャァァッ!?」

 

悲鳴を上げた。通常の声量で行われた会話は、イッセー達に聞こえることはなく、

ただ、痛みに悲鳴を上げる、コカビエルの姿が映っていた。

 

「ぎぃ、さまァァッ!!」

 

「次、行きますね」

 

「ガァァッッ!!」

 

恨み辛みの籠ったコカビエルの声を聴いても、カネキは手を休めることなく、

翼を毟り取る。

 

「あがァァッッ!!」

 

「あなたが、さっきいいましたよね?これは殺し合いなんだって……生き残る為に

最善を尽くすことの、何が悪い、と………」

 

ブツリ、ブチり、と肉が裂け、何かが引き千切られる音と、コカビエルの悲鳴が響く。

 

「だから、僕が、生き残るために、みんなを守るために……あなたの様な危険分子を”摘む”

ことも、悪くないんですよね」

 

「ギィィサァァマァァッ!!」

 

そして、残り2本となった翼を両手で掴むと、

 

「堕ちろ……堕天使」

 

と、ぼそっ、と呟き、背中に蹴りを落とす。

蹴りの威力と、引っ張る力が作用して、翼が引き千切れる。

 

「嗚呼ァァァァァッッ!!!」

 

悲鳴を上げ、落下しながら、コカビエルは己を突き落とした人間を見上げ、思考する。

 

(なぜだ、なぜ、俺が、この様な目に……なぜ、計画は完璧だった。なぜだ、なぜ、

本来見下されるべき、人間が、この、この俺を……見下している……)

 

己が疑問は解けることなく、堕天使コカビエルは大地へと、堕ちる。

 

ドカンッ!、と大きな音を立て、大地に堕ち、土煙を上げる。

 

その光景を眺めていたイッセー達は唖然とし、カネキはスッ、と着地する。

 

「や、った、のか……?」

 

ぽつり、とイッセーが呟き、他のメンバーも目を凝らし、コカビエルが落ちた場所を

見るが、土煙が酷く、未だ姿が見えない。

だが、少しするとぼんやり、とだが、コカビエルが倒れているのが窺えた。

 

故に、イッセー達の心に安堵が訪れ、その時だった。

突如、土煙の中が発光し、近くにいたカネキが吹き飛ばされる。

 

「ッ……!?」

 

「「カネキッ!(カネキさんっ!、ケンっ!カネキ君ッ!)」」

 

あまりにも、突然のことに、思考が止まるも、すぐに、現状を理解したイッセー達は

悲鳴にも似た声質で、カネキの名前を叫ぶ。

 

「……る……ん……ゆる……ん……許せんッ!」

 

土煙の中から現れたのは倒したか、と思われた、翼を捥がれた堕天使、コカビエルだった。

 

コカビエルは血涙を流し、身体からも血が止めどなく零れていたが、周囲に光の槍を携えて立って

いた。

周囲に浮かぶ光の槍は、数十を超えており、一度も光の槍を喰らわなかったカネキが

当たったのも、至近距離で尚且つあの量だ。当たるのも当然かと、思われた。

 

被弾したカネキは、吹き飛び、転がりながら、空中で体制を立て直し、両足を地面に擦ることで、

身体を止める。しかし、槍が、腹部に刺さったため、

 

「ごふっ……!」

 

と、競りあがってくる、血反吐を吐き出す。

 

「(警戒はしていた、それでも避けることが出来なかった……あの数、やっかいだな)」

 

身体には痛みが走っている筈なのに、カネキは冷静に、状況を判断しながら、

腹部に刺さった槍を引き抜く。

槍が、引き抜かれたことにより、血が溢れ出すかと、思われたが、光の槍は傷を焼き、

想像以上血が出ることはなかった。

 

「ゆゆゆゆゆぅぅるるるるッッせせせせせせぇぇぇぇんんんんん!!!!」

 

コカビエルの叫びと共に、数十を超える槍が、襲いかかってくる。

 

カネキは冷静に、躱すために横へ走り出すが、あることに気が付く。

 

「なっ……!?」

 

驚くべきことに、槍はカネキ目掛け、軌道を変えたのだ。

カネキは、マスクから覗く赤い眼を見開き、驚愕するも、即座に対応する。

再び走る方向を変えると、槍の様子を伺う。すると槍も、方向を変えこちらへ

向かってくる。

 

「(なるほど、方向転換は自由自在と……なら、逃げても無駄だな)」

 

カネキは、逃げることが不可能だと、判断し、赫子を出し、走りながら、

光の槍を叩き落としていく。

 

しかし、だんだんと、槍がまるで、自我でもあるかのように赫子を避け始める。

 

「(まさか、全て操っているのか……?そうだとしたら、本当に)」

 

「やっかい、だなっ!」

 

赫子を避け、カネキの元まで辿り着いてきた槍を、飛び跳ね、躱す。

しかし、完全に躱せる本数がどんどん、減っていくにつれて、身体に傷が出来てくる。

多少の怪我は瞬時に回復を始めるが、最初に受けた腹部への穴などの、大きな傷は、

完全に完治するまで、時間が掛かる。

 

 

 

 

「な、んていう、数……!」

 

堕天使の血を引いている、朱乃には、その光景がどれ程異常なのか、すぐに分かった。

自分は、たしかに、堕天使の血を引いていることを、否定し、拒絶しているが、

仮に、堕天使の力を使ったとしても、あれ程の数を一気に創り出すという、芸当は

無理だと思った。

そもそも、堕天使が手の平に光の槍を創り出すのは、魔力を集めやすいのが掌であること、

さら、槍をイメージするときに、イメージしやすいのが掌であるからだ、

 

だが、魔力があり、イメージすることが出来れば、コカビエルの様に、大量に生成することは

可能かもしれない。だから、朱乃が驚いたのは、そのことではない、

コカビエルの射出する槍は、まるで一つ一つが生き物の様に、カネキを追尾し、逃がさないのだ。

それは、とてもありえることではない。

 

槍を大量に創り出し、ただ真っ直ぐ射出するだけなら、可能かもしれない、けれど、

一つ一つ、行き先を、ばらばらに、動かしているのだとすれば、

それは、複数のことを同時に考えている、ということになる。

たしかに、世の中にはマルチタスク、と呼ばれる多数の事を同時に思考出来る人物はいる。

しかし、それは、2つや、3つなど、ごく少数だ。いや、普通の人物からすれば、

それでも多いのだが、コカビエルのそれは、数十を超えている。

それは、明らかに異常で、脳に負担が掛かっていることは、目に見えていた。

 

そう、血涙だ。明らかに、脳が異常を来たし、出血している。さらに、舌の回らない口。

もちろん、こんな状態で、戦闘を続ければ、死ぬことは、必然となるだろう。

だが、コカビエルは、尚も、数十を超える槍を操り、カネキに傷を刻んでいく。

 

「くっ……!」

 

「ゆ、るるる、あさささあさんんぬぅぅぅんんッ!」

 

リアス達も、なんとかして、援護を行いたいところだが、カネキを追跡している槍は

カネキとの距離が近く、カネキに当たる可能性もあるため迂闊に援護できず、

ならば、コカビエル本体に攻撃するべきなのだろうが、コカビエルは、次々と、

身の回りに槍を創り出しているし、もし、攻撃した場合、こちらに狙いを付けられれば、

怪我で、動けない者達もいるのだ、その時点で終いとなる。

 

「っ……!」

 

リアスは知らずうちに唇を噛み締める。

 

 

「(このままじゃ、ジリ貧だな……)」

 

このまま避けることは可能ではあるが、決着が着くことはなく、着いたとしても、

それは自分の負けだ。

 

「(なら、試してみるか……)」

 

カネキは試したいことがあった。それは、追跡系統の攻撃をされた場合、誰でも考えること、

それは、つまり

 

「(コカビエルに近づいて、自滅させるっ)」

 

追跡系の攻撃で攻撃した人物に近づき、自滅をさせる、といった方法を取ったアニメ、映画を

見たことはないだろうか?今回カネキが行った行動はその様な行動だ。

 

方向を転換し、コカビエルの方へ走り出すカネキ、しかし、そんなことをして、

コカビエルが何もしないなんてことは、有り得ない。

 

コカビエルは、自分の周りに存在する光の槍をカネキ目掛け、投射する。

しかし、その行動は、今までの様に一方向を自由に操作していたのとは違い、

脳にさらなる、負荷が掛かり、左目が弾け飛ぶ。

 

「ゆゆゅゅぎょぎぃぃぃぎぃぃッ!!せせぇぇぇせせせぃぃぃぃいッ!!!」

 

最早言語としてすら、聞き取れないコカビエルの叫びと共に、次々と、槍が創り出される。

 

カネキは後ろから追われ、正面からも槍が迫って来ており、完全に挟み撃ちという形に

なってしまったが、カネキは唯一の回避場所である、横には移動せず、そのままコカビエル

目掛け、走る。

 

「か、カネキッ!?」

 

その様子を見ていた、イッセー達は驚愕の声を上げるが、カネキは止まらない。

 

「ぐっ……!」

 

案の定、正面から迫る槍が、頬を掠り、マスクを後方に飛ばす。

それでも、カネキは止まらない。

肩に突き刺さる。なおも、止まらない。

足に刺さる。それでも、速度は落ちず、止まらない。

 

コカビエルは、止まらないカネキを見て、いや、もう見えているのかは分からないが、

正面の槍の数を増やし、射出する。

 

これにて、カネキも終わり、とそう思ったのだろうが、射出するのが、遅すぎた。

カネキは既に大きく距離を詰めており、そのままの勢いで、膝を曲げ、上体を後ろに倒す。

膝は大地に擦れ、膝の皮がずり剥け、血が出るが、上体を倒したことにより、

コカビエルが、創り出した槍は、頭上を通り抜けていく。

 

カネキはそのまま滑り、コカビエルの股下を通るときに、両手を広げ、赫子を展開し、

地面に突き刺し、コカビエルの足を掴み、

 

「(これで)終わりだッ……!」

 

その勢いのまま、足を持ち上げ、コカビエルの後頭部に蹴り砕き、地面に刺した赫子を

上へ伸ばし、自分の身体を上空へ持ち上げる。

 

「がげッ!!」

 

意識が一度途切れ、カネキを追跡していた槍は制御を失い、そのまま突き進み、ざくざく、と、

次々、コカビエルに突き刺さる。

 

「ガァァァッッ!!ネェェェェ!!ギィィィィッ!!」

 

断末魔を上げ、コカビエルはゆっくりと、膝を着き倒れる。

 

「ア、ユ、ユ、ユ……ル」

 

譫言の様に、何かを言っているコカビエルの傍に、着地した、カネキは

 

「あなたの赦し何て、必要ない……」

 

と、呟くと、折り曲げた人差し指を親指で押し、パキッ!、と鳴らし、赫子を振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、止めを刺すために突き刺そうとした、時のことだった。

 

突如上空から降ってきた、白き流星をカネキは咄嗟に躱す。

 

「ほう、コカビエルを倒したのは実力だった、ということか」

 

「敵、ですか……?」

 

「ふむ、いきなり殴り掛かってくる、相手に敵かどうかを尋ねるとは、きみは変わって

いるな……君とは戦ってみたいものだな」

 

「敵なら、容赦はしない……」

 

曖昧な返答ではあるが、殴り掛かってきた時点で、敵と判断していいだろう、と思い。

カネキは、パキッ!と、人差し指を親指で押し鳴らし、地面に潜らせておいた赫子を

 

「むっ……!?」

 

白い鎧の男の足元から突き刺す。が、白鎧は、コカビエルを抱えると、上空へ飛んで逃げる。

 

「ほう、その神器、そのような使い方まで、出来るのか。ますます楽しみだ……が、今回の

目的はコカビエルの回収なのでな。闘いはまたの機会にさせてもらうよ」

 

そのまま、背を翻し、飛んで行こうとすると、

 

『無視か、白いの』

 

『起きていたのか』

 

と、どこからともなく会話が聞こえてきた。

 

「ど、ドライグっ、知り合い……?」

 

『白龍皇だ』

 

「ええぇーッ!あいつがッ!?」

 

話を聞くと、どうやら、一誠のもつ赤龍帝と白龍皇は、代々殺し合う運命にあるらしい、

その様な、会話を聞いて、

 

「(なら、いずれ、あの白いのが、一誠を殺しに来るということか……なら)」

 

「全く持って、不本意だな、このような弱い奴が、ライバルだなんて、まだ、

コカビエルを倒した、彼の方がッ!」

 

「ここで、”摘む”」

 

白龍皇が、話をしていると、いつの間にか、上空へ赫子を伸ばし、飛びあがったカネキが

襲いかかっていた。

 

「カネキッ!?」

 

その一撃を受け止めた白龍皇であるが、ぎしぎし、と筋肉が軋み、受け止めたガントレットに

ひびが入る。

 

「まったく…本当に、こっちがライバルであったならっ最高だったろうになッ!」

 

と、鎧の中で、笑みを深める。

 

上空で赤い赫子と、白い鎧がぶつかりあう。だが、カネキは空を飛ぶことは出来ないため

落下が始まる。

落下が始まると、カネキは赫子で白龍皇の翼を捕らえ、引き寄せ、蹴りを叩き込む。

が、その蹴りは”片手で受け止められる”。

 

「ふっ、獲ったぞ」

 

白龍皇は、カネキの脚を掴むと、放さぬように強く握り締める。

 

「……なら、差し上げます」

 

「……?」

 

しかし、カネキは足の拘束が解けることがないのを瞬時に判断すると、脚を捻り、身体を回す。

そんな事をすれば、脚は固定されているため、肉が捻じれ、骨が折れる。しかし、カネキは

その勢いを利用し、反対の脚で蹴りを繰り出す。

 

「なっ……!?」

 

その行動は、さすがの白龍皇も驚きを隠せない。それはそうだろう、普通、傷が治るとしても、

痛みはあるのだ、それにも拘らず、ためらいもなく、瞬時に己の脚を捨てるなど、

常人の考えではない。故に出来た隙は、次いで来る攻撃への対応に後れを見せる。

結果、顔に蹴りを喰らい、掴んでいた脚を手放してしまう。

 

白龍皇は、校舎目掛け跳んでいき、カネキは地上へ落下する。

校舎にぶつかった白龍皇は、瓦礫を振り払うと、再び大空へ飛び出す。

着地したカネキは、ぐにゃり、と捻じ曲がった脚を、またバキッ!、と捩じ曲げ、元に戻す。

そして、再び空へ飛んできた白龍皇目掛け、飛び上がろうとするが、Divideという掛け声と

共に、身体から力が抜け、身体が揺れる。

 

「ふっ、先程の行動には驚いたよ。まさか、あそこまで躊躇いもなく脚を捨てるとは、

そんな人間を見たのは初めてだ……だが、今回はこれで、終わりだ。俺としては、まだまだ、

これから、と言うところだが、急がなければ、”これ”が死体に変わってしまうからな」

 

そう言いながら、コカビエルを少し持ち上げてみせる。

 

「そのまま、行かせると思って……」

 

「今の君にそこまでの力が残っているとは思えないがな」

 

「…………」

 

カネキは、数度拳を握り締め、明らかに、己の力が弱まったことを理解した。

 

「(これが、赤龍帝と対をなす、白龍皇の力……)」

 

赤龍帝が、倍加なら、白龍皇は、敵の力を下げ、奪う能力、半減。

カネキは目を細め、睨み付ける。

 

「赤龍帝、君にはあまり期待していないが、せいぜい頑張ってくれよ、そして、カネキ ケン

きみは良い、だが、まだだ、君はもっと、もっと強くなれるのだろう?今回はお互い、万全とは

いかなかったからな。赤龍帝を殺されたくなければ、俺から守れるくらい強くなって、もっと

俺を楽しませてくれッ!」

 

「…………」

 

そう言い残すと、今度こそ、飛び去っていった。

 

こうして、校庭は静粛に包まれ、未だに、白龍皇の飛び去った方向を向いていた、カネキ

であったが、少しすると、リアス達の方へ顔を向ける。

その顔は、前の様な表情ではなかったが、先程の戦闘時の様な冷酷な表情でもなく、

優しく、けれど、どこか悲しい表情をしていた。

 

だから、だろうか。カネキの顔を見た瞬間、リアスは言葉を掛けるのではなく、

カネキを抱き締めていた。

 

「え、と、あの、部長……?」

 

どこか、困った様な少し前の様に照れることも、ない。

そんな、カネキの変わってしまった有様を見て、リアスは、涙を流しながら、

何か、声を掛けようとする。が、やはり、次々と疑問や、心配ばかり出てきて、

上手く言葉にならない。

そんなリアスが、やっと言葉に出来た言葉は……

 

「ケン、お帰りなさい」

 

「……!……ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




白カネキからの戦闘は、こんな感じで三人称風になります。神の話、思いっきり忘れてて、無理やり捻じ込んだんで、おかしいかもですけど、許してください。
堕天使の攻撃手段が、光の槍しか、わかんねぇ。
コカビエルのあれは、イメージとしては、どこぞの英雄王みたいな感じです。しかし、全て自分の思い通りに操作するという謎のチート。だけど、脳への負荷がやばいことが、欠点。
本来は、両手を失った、槍出せない、周りに出せばいいじゃないか、
「フハハハ、感謝するぞ、貴様のおかげで、私は更なる高みに上った!褒美に殺してやろう!」みたいな展開をやろうと思ってました。
ヴァーリも、もっと手短に終わる予定だったんですけど、半減って触らないと発動出来ないの思い出して、戦闘伸ばしました。

次話は、来月の中間以降になります。
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