ハイスクールD×D√喰種 作:ビギナー
予定していた内容とは全然違くなってしまいましたが……
暗い夜道。本来夜を照らすはずの月も灰黒い雲に遮られ、その姿を隠していた。
そんな夜道に不釣り合いな人影が、何かから逃げるかの様に駆けていた。
いや、実際に何かから逃げているのだ。蝙蝠の様な翼を持つ異形の存在から。
「如何して逃げるんだい?綺麗な御嬢さん」
「はぁ……はぁ……」
異形の存在と表現したがその容姿は男ならもげろッ!と嫉妬し、女性なら10人中9人は振り向き
うっとりとその背中が見えなくなるまで見つめる程、整った容姿をしていた。
ただ一つ、おかしい部位があるとすれば背中から生えている蝙蝠の様な翼だ。
「ふふっ、追いかけっこかい?逃がさないよ……」
「はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えに逃げ惑う女性を追いかける容姿の整った男。観衆は誰もいなく、二人だけの時間が
過ぎ去っていく。
だが、そんな時間も終わりを迎えようとしていた。逃げていた女性の足が止まり、両手を壁に付き
動きを止める。
「おやおや、行き止まりの様だね。残念だがお遊びの時間はここまでの様だ」
追いつめられたことを悟ったのか女性が壁から手を離し、くるりと壁から男の方へ体の向きを変え
る。その時、まるで運命であるかのように雲が動き、月明かりが女性の容姿を映し出す。
茶髪のボブカットの髪型は肩に掛かるか掛からないくらいの長さで、薄く施された化粧は彼女の魅
力を最大限引き出していると言えるだろう。
そんな彼女の姿を視界に納めた男は興奮しているのか、荒い息を漏らす。
対称的に女性のほうは、先程まで上げていた荒い息が治まり、今は静かな呼吸をしていた。
そのことに気が付いていないのか、興味がないのか。男は口々に女性の容姿を褒め称える。
「ああッ!!追いつめられても、崩れない凛とした表情ッ!そのさらさらとした髪ッ!長い睫毛に
ぱっちりとしたその瞳ッ!!薄い化粧も、君の魅力を更に輝かせていると言えるだろうッ!んッん
ー!!すっばらしいッ!僕は今までたくさんの女性を見て来たが……君が一番だッ!あぁっ!まさ
しくこの出会いは
べた褒めであるし、イケメンなのだが……とてつもなく変態臭がするためか、女性は眉を顰める。
「おおッ!
眉を顰めても褒められる。そんな状況に恐怖心が和らいだのか、女性が初めてその口を開く。
「悪いけど”僕”は男だし、追いつめられたのはあなたの方だ……」
まるで常日頃から行われているかのように自然な動作で、人差し指を親指で押しパキッ!と鳴ら
す。更に左目は赤く染まり、月明かりが頼りの暗い夜道で怪しく煌めく。
「はっはっは!!ジョークも冴えていて、更に僕っ娘に、オッドアイだなんて……この短時間でど
んどん君に惹かれているのが自分がでも分かるよッ!」
「………………」
女性(仮)は呆れて言葉も出ないのか、どん引いているのか。返事を返す様子が見られない。
そして返事を返すことなく、服を脱ぎ始める。
「なっ!きっ、きみはッ!ま、まさかっ!こんなところでッ!い、いや、君がいいなら、僕は全然
構わないんだ……むしろ、
女性(仮)が服を脱ぎ捨てた所で男は何かに気が付いたのか、一瞬で静かになる。
「ふ、服の中に、服……だとッ……!は、はは……か、髪が落ちたよ……
そう驚くべきことに女性が服を脱ぐと、不自然に背中の腰部分に穴の開いた黒い服が現れ。
さらに己の髪を掴むと引っ張ったのだ。そんなことをすれば、繋がっている頭皮と髪が反発し合う
はずなのに、髪はするりとずり落ち女性(仮)の掌に収まった。
女性は握った髪を……カツラをこれが真実だと言わんばかりに男の前に放り投げた。
「あ、あぁ……」
男はそのカツラに寄り添うと、まるで死んだ恋人を抱き上げるかの様に優しく、抱え上げた。
「――――僕は男だ」
そんな男に止めを刺すかのように女性(仮)……女装少年カネキは無情にも、そう告げた。
「ああぁぁぁぁァァァァァッッ!!!!!!
突き付けられた現実に男は雄叫びを上げた。カツラを抱き締め、瞳から滝の様な涙を流しながら。
「…………………」
女……カネキはそんな悲劇的な状況を目の当たりにしても、可哀相……などと言ったことを思わせ
る表情になることはなかったし、むしろゴミでも見るかの様な表情をしていた。
そんな表情で見られているのにも関わらず、気が付いていないのか男は泣き喚き、カツラに顔を寄
せると大きく匂いを嗅ぐかの様に、大きな呼吸を繰り返す。
「ああああぁぁぁッ!!!すー……はぁっ……あああああああ!!!!!」
「…………………」
叫びに合わせていれば気が付かれないとでも思っているのだろうか……変態は涙を流し、カツラの
匂いを嗅ぐ。
さすがのカネキもどん引きし過ぎて、本来の目的を果たす気力が出てこない様子だ。
さてさて、突然だがなぜカネキが女装して現在に至るのかというと、それを知るためには時を少
し遡ることになる。
――アザゼルと出会った日――
「さて、カネキ ケン。お前は何を望む」
そう問われたあの日。
「こう見えてもさっき自己紹介した通り、俺はそこそこ偉い立場でな。用意出来るモノならなんで
もいいんだぜ。たとえば、女とか。ふっ、女はいいぞぉ。むっちむちの、ばいんばいんだ。俺も若
い頃は……っと、俺の過去話は今は置いておくとしてだ……どうだ?巨乳から、貧乳、年上から、
年下まで、お前の言った通りの人材を探しだし、提供しよう。どうだ?」
そんなアザゼルの誘惑も耳から流れて、頭には入って来なかった。
「んん?女は嫌か……なら、金はどうだ!一生楽して暮らしていけるだけの大金だ!まぁ、金があ
れば大抵のモノは手に入るからな……そうっ!女とかッ!女はいいぞぉ。最高だ」
なぜなら、答えは最初から決まっていたから。
「んん……金も嫌か?あと他にくれてやれるモノは……」
「アザゼル……さん」
「ん?なんだ、やっぱり女か?」
「欲しいモノは決まっているんだ」
そう、決まっていた。女でも、一生楽に暮らせる程の大金でもない。
女を求めるなら、僕は圧倒的な強者を求めるだろう。でも、僕がしたことによる報酬で貰える人の
強さなんて、そんな報酬で貰えてしまう強さなんて高が知れていた。
何でも買える程の大金を貰ったら、僕は圧倒的な強者を全額払ってでも雇うだろう。
だが、お金とは有限でいつの日か無くなってしまう。それにお金じゃあ友達を、大切な人たちを護
ることは出来ない。
だから、決まっていた。
「僕が……望むものは……僕は、力が欲しい」
僕に笑顔をくれた、大切な友人たち。化け物みたいな僕を受け入れてくれた大切な人たち。
孤独だった僕を、日陰の下で陽の光を浴びることのなかった僕を連れ出し、そんな人たちに出会わ
せてくれた大切な、大切な親友を。欲張りかもしれない、だけど、僕はそんな人たちを全部。
「護ることの出来る力が、圧倒的な強さが欲しい……!」
「……そうか……それがお前の望みか。カネキ ケン」
「はい……!」
アザゼルはジッと、僕の目を見ていた。だから、僕も見つめ返した。目を逸らさず、瞬きせずに。
「ふっ、くくく、ふはははっ!!」
突如笑い出したアザゼルに対し、思わず唖然としてしまう。
「いやはや、人間とはいつの日も欲深い。くくっ、全て護る為の力を寄越せとは……な」
「………………」
「いや、馬鹿にしている訳じゃない。だが、どうする?手っ取り早いのは、お前が人間をやめるこ
とだが?」
そんな、未だに試すかのような質問に対する答えも既に決意していた。
「僕は、みんなを護るためなら悪魔だろうが、堕天使だろうが、化け物にだってなってやる」
「そう……か……なら、今日からお前は、俺の弟子だッ!ビシバシ鍛えてやるからな。今更キャン
セルは出来ねぇぞ」
まだ、完全にアザゼルを信用した訳じゃない。アザゼルも、レイナーレやコカビエルと同じ堕天使
だ。でも、あの怪物を……一瞬で倒した実力。あれ程の力があれば、みんなを護ることが出来るん
じゃないか、そう思ったんだ。だから……
「よろしく……お願いします……!」
「おうッ!いい返事だ。今日から俺の事は師匠と呼ぶように」
「し、師匠……」
「がははっ、冗談だ。アザゼルで良い。だが、条件って訳じゃねぇが、お前の神器。少し調べさせ
て貰うぜ。まぁ、修行を施す上で必要な事でもあるからな(個人的にも興味があるけどな)」
「分かりました」
「んじゃ、さっそく俺の研究室で……あー……こいつらのこと忘れてた……」
そう言ってアザゼルが視線を落としたのは、両腕が切断されたものの、傷が完治しているフリード
だった。
「あの……フリードは……」
「あん?こいつか。こいつは情報を全て聞き出した後、
「そう……ですか……」
「あー……俺は一応、今回の件について調べ上げた。だから、こいつがお前に拷問を行ったという
ことは知っているが、その内容までは知らねぇ。だが、こいつに恨みがあって、仕返しがやりたい
って言うなら、悪いがこいつの両手だけで勘弁してくれねぇか?正直こいつからはまだ聞きたい事
があるし、色々組織の面子ってのがあるんだ」
「……わかりました」
「わりぃな。んじゃあ、行くか。って言っても、俺はすぐにお前の相手をしてやれない。だが、お
前はすぐにでも強くなりてぇんだろ?」
「……はい」
「ふむ、なら俺が相手してやれない間は、はぐれ悪魔の討伐依頼でもやってみるか?やっぱ、強く
なるには実践が一番だからな。どうだ?」
「……やります、やらせてください」
「わかった。依頼の方は俺の方から丁度良さそうなの選んで部下に送らせるから。今日は家帰って
休め」
「今日からは出来ないんですか……?」
「おいおい、早く強くなりたいのは分かるが休むことも効率を上げるために必要なことなんだぜ」
そう言われ、僕はしぶしぶ引き下がるしかなかった。もし機嫌を損ね、修行を付けてくれる話がな
かったことにでもなったら、悔やんでも悔やみきれない。
「……わかり……ました」
「よし、じゃあ使いを送るからそれまで休んでおくんだぞ」
「……はい」
それがカネキが初めてアザゼルと出会い、弟子になった日の話だ。
――それから少し経ち――
あの日の次の日、アザゼルの部下を名乗る人物から目撃された地域と顔写真付きの資料を手渡され
説明を受けてから数度依頼を完了したあと、アザゼルに呼び出され神器を調べられた。
「こいつは……いや、あまり詳しくは俺にも分からなかった。だが、今までのお前の行動と調べて
みて、お前は魔力を持つ物を喰らうことにより、己の力に変換しているようだ。魔力を持つものっ
ていうのは、お前が喰らってきたもので例えるなら、悪魔や、堕天使、そして人間だ」
その話を聞いて、僕がどうして他者を喰らってきた、真の意味が分かった。あの夢の中で、人肉を
喰らい、肉体を修復した。現実に戻った時、あの時は未だに、現実と夢の差異に完全に気が付いて
いなかった。だけど、みんなを助けに行くために力が必要だった。だから、喰らった。
本能のままに。そして、コカビエル、フリード。その他に、依頼で討伐したはぐれ悪魔達も。
「お前は本能のままに、神器の呼び声に答えて、今まで喰らってきていたみたいだが……その行為
は神器とお前の結び付きを強めている。つまり、お前と神器が一体化してきている……ということ
だ。通常神器を取られれば、神器所有者は死ぬ。だが、悪魔の駒などによる蘇生は可能だ。だが、
お前の場合は違う。神器を取られれば、お前は神器と共に、神器の中に取り込まれ、二度と出てく
ることは出来ないだろう。もし仮に、神器が破壊されれば、お前の存在も破壊され、お前は輪廻の
輪からも外れて、別の存在に転生することも出来なくなる。たとえ、強くなるためとはいえ、俺は
お前に強要することは出来ないが……本当にいいんだな?後戻りはできねぇぞ」
「僕は、まだまだ弱い……だから、力が、力が必要なんです。そのためなら、どんなことだって
やってみせます」
「……分かった。このままはぐれ悪魔の依頼を続けながら、俺との実践の組手を行う」
「……お願いします」
この日から、アザゼルとの組手が始まった。
「遅い」
決められたルールは、神器の使用禁止。それだけだ。つまり、多少身体能力は上がっているだけの
人間としての僕が戦う訳で、初日は一撃も与えることが出来なかった。僕は、赫子という力に頼り
きっていたのだと、その日理解した。
その日から僕は様々な格闘書物を読み漁り、人間としての力、技術を学び始めた。
そんな日々の合間に行っていたはぐれ悪魔狩り。その日はいつもとは違い、アザゼルの部下の他に
女性(男)がいた。
「きゃー、かぁわぁうぃい(はぁと)」
「あ、あの……こ、この人?は……」
「かれ「あんッ?」……か、彼女は今回の依頼に必要な人材だ」
そう言われ、手渡された資料には、人間名 裏山 翔 本名インク・キュバスと書かれ顔立ちの
整った男の写真が載っていた。
「これと、この人と何の関係が……」
「ここ」
指さされた場所に記載された情報には女性を誑かし、強姦すると記載されていた。
「……つまり、女装でもして誘き出すための囮となれ……ということですか?」
「ええ」
「……ちなみ、誰の案ですか?」
「アザ……崇高なる指令の命です」
「……はぁ、分かりました……やるしかないんでしょう」
「ご理解が早くて助かります。では、お願いします」
「まかせて頂戴っ!!高ぶるわぁ~」
「……この人の他にいなかったんですか……」
「……ご想像にお任せします」
「うっふん」
――現在――
かくして現在に至る訳である。カネキは女装し、脱ぎ。標的は号泣して、カツラの匂いを嗅いでい
る。混沌である。
「すぅー……はぁ、たまには男もいいかもしれなびぃッ!?」
「ッ!!?」
あまりの変態度に思考停止していたカネキが防衛本能か、言葉を遮るように顔面に蹴りを放つ。
顔面にもろに蹴りを食らった男は数度縦に転がると、ピクリとも動かなくなる。
「は……?弱い……」
まさかの一発KOに唖然とするカネキ。
「これを、喰らわないといけないのか……」
そして、あまりの弱さと変態度から喰らってもデメリットしか浮かばず項垂れるカネキであった。
ちなみに、迷いに迷ったカネキはアザゼルに連絡をしたところ、このはぐれ悪魔は捕獲が目的で
有ったことを知りほっ、と息を吐くと目標を引き摺って運んだとのことだ。
このはぐれ悪魔は主と恋仲であったにも関わらず浮気をし、駆け落ちしてはぐれとなったらしい
のだが、駆け落ち相手とは浮気が理由で別れたらしい。そのことをストーキングで知った主が、
討伐依頼ならぬ捕獲依頼を出していたとのことだがどういう訳か、討伐依頼に混じっており、
今回、こういう結果になったのだ。
「僕は、強くなれているのだろうか」
空を見上げ、カネキはそう零す。
今回取り上げた話は、薄暗い日陰の中で起こった、少しユニークな話題を上げたに過ぎない。
今までの依頼の中では、子供を人質に取る者。自分の身の上を語り、命乞いをする者。
狂っていて、襲いかかってきた者。様々なはぐれ悪魔と戦い、勝ち、喰らってきた。
そんなカネキは、確実に力を身に付けて行っていた。
「月……見えないな」
まるで、カネキの心情を表しているかの様に月は再び雲に隠れ、カネキを闇が包み込む。
こんなギャグ?な感じになるとは思っていなかった。
女装入れて欲しいという案があったので、相手は変態→僕のだぞッ!→はっ(閃き)
となりました。最初は、シリアスな感じで女装カネキ追いつめられる、赫子で服破きながら強姦魔を粛清した後喰らって、アザゼルの時の回想となる予定でした……
最後シリアスに無理やり持って行ったから大丈夫。ちなみに名前は適当です。
今年最後の更新になるかもですが、引き続き頑張ります。