ハイスクールD×D√喰種   作:ビギナー

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お待たせしました。


第25話 自覚

夏の日差しが燦々と降り注ぐプールでは、皆が驚愕の表情を顔に貼り付けていた。

なぜなら探してもまともな痕跡すら見つからなかったカネキが突如現れた……からではなく、その

カネキを視界に収めた瞬間に赤い布を見た闘牛の如く、タックルをかました白い猫を見たからだ。

 

「ぐふっ……!」

 

「つかまえました……」

 

もちろんカネキは正面からやってきた攻撃を見逃すほど弱くはないが、相手が小猫であったため大

事にはならないだろうと判断したため避けなかったのだが、思った以上の威力と力に苦悶の表情を

浮かべる。

 

「こ、小猫ちゃん……?」

 

「イッセー先輩、カネキ先輩をつかまえました……」

 

頬を赤らめ興奮した様子で報告する小猫。

 

「うん、見たらわかるけどさ……力入れすぎなんじゃ……」

 

メキメキと骨の軋む音を聞いたイッセーが若干引きながら、カネキを助けるべく助言を言う。

 

「なにをいっているんですか……?離したらまた……いなくなっちゃうかもしれないのに……」

 

「あー……」

 

イッセーの助言を聞いた小猫は顔に影を落としそう言い、顔をカネキの胸に埋める。

イッセーは何と言ったら良いのか分からず言葉に詰まってしまう。

 

暫くの静粛の後、小猫が不安に、恐怖に包まれた言葉を呟き始める。

 

「カネキ先輩はもう、どこにも行ったりしないですよね……?」

 

「ッ!……うん」

 

カネキは少し驚きはしたものの小猫の拘束を優しくほどくと、目の前に座らせ目を見てしっかりと

返事を返す。

 

「もう、いきなりきえたりしないですよね……?」

 

「うん」

 

「もう、誘拐されたりしないですよね……?」

 

「うん」

 

「もう、もう、いなくなったりしない……ですよね……?」

 

「……うん」

 

「……よかった……です」

 

何度も何度も、同じ意味の言葉を言葉を変えて問いかける小猫はそのすべてにカネキがうなずくと

安心した様にいつもの無表情を崩して瞳から涙の雫をこぼし、微笑む。

 

涙の止まらない小猫は顔を伏せ、そのままカネキに身体を預ける。

 

「……ごめんね」

 

居なくなってしまったことについてか、泣かせてしまったことに対してか謝罪の言葉を述べたカネ

キは小猫を優しく抱きしめ、頭を撫でる。

 

「ごめんね……」

 

 

二人のやり取りに周りにいた皆は何も言い出せず、問い詰めるつもりでいたリアスも、優しい眼差

しで二人を見ていた。

 

だからだろうか?カネキが二度謝ったことに誰も疑問を抱かなかったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

時と場所は変わり、カネキは久しぶりに自宅に帰って来ていた。

 

「……ただいま」

 

当然返事は帰ってこないが昔から言い続けているため、癖の様になっていた。

 

久しぶりの我が家は掃除をしていないはずなのにとても清潔感にあふれていた。

 

「誰か掃除してくれたのかな……?」

 

一誠か、小猫ちゃん辺りが掃除をしてくれたのだろうか?

 

「あとでお礼言わないと……」

 

独り言をこぼしながら、軽くシャワーを浴びる。

 

浴室にある鏡には未だに慣れない白い髪がチラつく。カネキは鏡に映る自分の顔を見る。

鏡には自分しか映らないはずなのに、鏡に映る自分は自分ではないかの様に感じられ手を鏡に伸ば

す。手が鏡に触れると突然鏡に映る自分の顔が自分と同じ髪色の男、フリード・セルゼンに移り変

わる。

 

「っ!!」

 

息を呑み咄嗟に手を離すと鏡には罅が入りフリードの姿は無く、鏡は鏡としては価値の無い物にな

ってしまった。

鏡が割れていることに気が付くと、親指から血が流れていることに気が付く。

 

「落ち着け……いつものことだ……ただの幻覚だ……」

 

カネキは血の流れている親指を包む様に拳を握ると、目を瞑り念仏を唱える修行僧の様に自分にぶ

つぶつと言い聞かせる。

目を開けると深呼吸を数回行い拳を解く。流れていた血は既に止まり傷跡すら残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浴室から上がったカネキは身体を拭き、服を着ると濡れた髪をタオルで拭きながらリビングへ移動

する。

 

「ふぅ……」

 

火照る身体を冷ましながらリビングにあるソファに腰を掛けると大きく息を零す。そして、先程の

光景を忘れようとテレビの電源を入れる。あまり面白い番組が無かったため、無難にニュース番組

を見て、暫くすると落ち着いてきたのか、久しく感じていなかった”空腹感”を覚えたため、キッチ

ンに足を運ぶ。

 

「何かあるかな……」

 

そう呟きながら、冷蔵庫を開くと碌な食材が入っていなかった。

 

「そういえば、最後に買い物に行ったのいつだったっけ……?」

 

記憶の中へダイブするとフリードに攫われた日に買いに行く予定だったことを思い出した。それな

ら食材がないことに納得だ。と自己完結を済ませ、他に食べられるものがないか、辺りを見回すと

カップめんを見つけた為、今日は簡単に済ませてしまおうと、お湯を沸かす。

 

少しするとヤカンが小さな蒸気機関車の様に蒸気を上げながら音を鳴らす。

 

「沸いたかな」

 

お湯が沸騰するまでの間、ニュースの続きを見ていたカネキは席を立つと、ヤカンの火を止めカッ

プめんにお湯を注ぐ。カップめんにはお湯を入れて3分と記載されていたため、テレビの前に行き

テーブルにカップめんを置くと、その上に付属品の液体スープを乗せ、蓋を閉じる。

 

テレビの時間を見ると約3分ぐらい経過したため、蓋をあけ、液体スープと薬味を入れて軽くかき

混ぜる。

 

「いただきます」

 

と手を合わせて呟くと箸で麺を掬い口元へ運ぶ、その時匂いに違和感を感じたものの、そういった

種類のモノだったかなと、特に気にすることなく空腹感をなくすために口の中へ運ぶ。しかし、次

いでやってくるはずのおいしいという味覚はやってこず、突き抜けるのは自分が今まで食べたこと

のない不快で最低なカップめんとはかけ離れた味だった。例えるのならば、無味無臭のミミズが口

の中を這いずりまわり噛み千切れば数が増えて行くかの様な常人ならば発狂し、麺と一緒に舌すら

噛み切ってしまいそうな最悪な食感と味だった。

 

「ッ!うっ、ぐぅ、おえぇ……!」

 

堪らずキッチンに駆け込みシンクに口の中のモノを吐き出す。カップめんは吐き出したものの、口

の中に残る香りと食感はなかなか消えず、水道から出る水を直接口に入れ、何度も吐き出す。

 

「はぁ、はぁ……」

 

フリード達に攫われる前ならば、状況に頭が着いてこず、最悪発狂していただろう。だが、フリー

ドにされた拷問の数々で精神に変化のあったカネキは努めて冷静を取り戻そうとした。何故こんな

味がするのか?カップめんが不良品だった?いや、違う。分かっている筈だ。

 

「だって、僕は、師匠(せんせい)の所に居た時から、普通の食事はおろか、空腹すら感じなかったのだか

ら……」

 

そう、カネキはアザゼルの元で修行していた数週間の間、一切食べ物を取らなかったのだ。なぜな

らば、空腹を感じなかったから。ではなぜ、空腹を感じなかったのか。

 

「食べ物は、食べていない……でも、”食べ物”以外はいっぱい、喰らったから……」

 

カネキはもう理解していた。

 

「僕は、気が付かないふりをしていただけだ……いじめに遭っている人、不良に絡まれている人、

誰かからの救いを待っている人を巻き込まれたくないから、関わりたくないから、目を逸らして知

らないふりをしている人と同じだ。僕は、心のどこかで、頭の片隅で理解していたんだ、でも、逃

げ出した。知らないふりをしていれば誰か別の人が何とかしてくれるって……でも、僕は、当事者

で、もう気が付いたからには認めないといけない……」

 

心が軋み、音を上げ壊れてしまいそうだ。

 

「僕は……もう、悪魔しか喰べれない、天使しか喰べれない、そして、人間しか喰べれない……」

 

だって、そうだろ?あんなに血まみれなモノを直接口で噛み千切っていたんだ、完全に味合わない

方法なんてある訳ない。

 

「最初に感じていた血の鉄臭い不快な香り、口に入れる度に身体が拒絶反応を起こして、吐き出し

そうになっていた胃袋、それがなくなってから、僕は分かっていたんだ。師匠(せんせい)も言っていたこと

だ。これが、神器と一つになって行くってことなんだ」

 

だから、これは、僕が強くなった証。強くなっていく証。これでみんなを護れる。だから嬉しいことのはず。

 

「あぁ、でも、やっぱり、分かっていても辛いなぁ。ははっ……」

 

零れ落ちる涙を隠す様に、両手で眼を覆う。

 

「ごめんね、約束(アイス)守れそうにないや……」

 

人でなくなり、誰かに懺悔する喰種は、覆っていた手を下す。その瞳から零れ落ちるモノはもう無

く。片眼は紅く爛々と輝いていた。そして、喰種は己の空腹と、さらなる強さを求め、夜の街へ駆

けて行った。

 

 




ニーアオートマタ発売されましたね(大分前)A,Bエンディングを見てなんだ、ハッピーエンドじゃん……と、少し意表を突かれましたが、まさかの次回予告で、真のハッピーエンディングを迎えられ流石ニーアだな、と感じました。前作の音楽が流れた時には興奮しましたし、カネキ(中の人)君も大活躍でハッピーエンド(真)を迎えられて素晴らしい作品だなと思いました。個人的には前作やってない人とやってた人で感動する場所があったりなかったりな点もあったと思うので、前作からやることをお勧めします。
最新刊のカネキ君のオールバック?髪型くそかっこよかったです。
そしてウチのカネキ君はここに来て食事制限入りました。また期間が空くかもしれませんが気長に待っていただけたら幸いです。
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