いやーあはは
この夏頑張りたい!!
これといって何も起きず、もう4日が経っていた。凛は明日帰ってくる。少し心配しすぎていたんじゃないかな、とソファーに横になりながら綾香は思った。でもそのおかげで士郎さんとはデートできたわけだし、と綾香はあの日を思い出すとまた自然に顔がほころんでしまう。何もないということはいいことだ。平和なことはいいことだ。
しかし、依然として左手には違和感がある。色は薄まることなく、綾香の手の甲には令呪が刻まれている。綾香は包帯を外し、令呪を見つめる。どうやったらとれるのだろう?結局何も起こらないということは、これは消えるとは思うが、しっかり皮膚に張り付いている紋章は意地でもとれないようにしているように思える。綾香が指で令呪をカリカリと軽くこすっていると、エプロンをつけた桜が居間に入ってきた。
「綾香さん、そうやってもとれることはありませんよ。明日凛さんともどってきますし、そしたらすぐとれて学校に通えますよ」
「なんだかんだ5日間ってあっという間だったなー。凛さん明日帰ってくるもんね」
「何も起こらなそうでよかったです。凛さんは明日士郎さんが迎えに行ってくれます。この数日、綾香さんと過ごせて楽しかったです」
そう言って桜は笑顔を綾香に送る。綾香も桜に笑顔を返す。
心配は心配でしかなかった。明日には私の日常が帰ってくる。安心が生まれるとともに、いつもと違う刺激的なこの数日も良かった、と綾香は感じていた。
「それじゃおやすみなさい。綾香さん」
「おやすみ、桜さん」
これが最後の夜だ。この数日は桜さんが家に泊まってくれている。いつも凛が色々な場所を飛び回っていて、1人で生活している綾香にとって、誰かと一緒に生活していることはうれしいことだった。今日、寝たら明日から1人の生活か…、そう考えると少しさびしい気持ちにもなる。ともあれ、もう学校にも行くことになる。5日間とはいえ、授業の遅れをとり戻さなきゃ、と考える綾香だった。遠坂家の1人としても、勉学も常に学校ではトップを保つことを気をつけている。そんなことを考えているうちにまどろんできて、綾香は目をつぶった。
ーいいのかい?君はそれで?
ー忘れていいのかい?
ーこれは終わりじゃないよ、始まりだ
異質な雰囲気を感じ取り、綾香は目を開けた。と、同時に自分の体の違和感に気づいた。
(体が…動かない…)
体は動かないが目だけは動かせる。そこで綾香はあることに気づく。
誰かがいる。闇に慣れた目が次第にその者を掴んでいく。男・・・?フードを頭にかぶり、マントを着た者が立っている。顔を見ようと試みたが無駄だった。その者は仮面をつけていた。無地のひび割れた仮面。割れた隙間からひとつの青い目が綾香を見つめていた。その目はまるで月光のように輝いている。
「だれ?と君は聞きたそうだね。」
男の声は若い青年のような高めの、それでいて老人のような厳かさがある、不思議な音だった。
「今は僕の名を明かすことはできない。だがいつかその日は来るだろう」
(あなた誰!?何が目的なの!?)
綾香は叫ぼうとしたが、目以外動かすことは叶わなかった。
「僕は君に危害を加えるためにここにいるんじゃあないよ。僕は君を救いに来たんだ」
(私を、救いに?)
「そう。」
綾香はこの男が自分の心を読み取れるのだと気づいた。男は言葉を続けた。
「聖杯戦争の話だ。君は聖杯戦争から何とか抜け出そうとしているが、それは限りなく不可能だ。もう6人のマスターは英霊を召喚している。残りは君だけだ。遠坂凛が聖杯戦争を止めようと企てているらしいが、これは失敗に終わる。なぜなら明日遠坂凛が乗る飛行機が墜落するからだ」
(どういうこと!?)
「どういうことも何も僕はこれから起こることを伝えたまでだ。何か君に伝えることがあるとすれば、そうだね。君は戦わなくてはいけない。生きるためには」
(私は戦わない。決して。凛さんも明日帰ってくるわ。あなたの言うようにはならない)
「そうか。まあ、明日になればすべては動き出す。選択するのは君だ。ただね、君は自分の罪を償うことは死ぬことだと考えているなら・・・。あるいは死を選ぶのもいいだろう」
(あなたに何が・・・!!)
いつの間にか綾香の顔に男の手がかざされていた。
「話はここまでだ。いつか、また。おやすみ、眠り姫」
綾香の視界がブラックアウトした。
今回短めですが近いうちにまた投稿します!
動き始めます!!