「第一斉射、命中を確認。
敵船に多大な損害と認む」
「
20㎜高性能機関銃には減装弾を装填せよ。
た砲弾換装、
「了解」
「敵船、速度落ちました。
距離、1900」
「栗山上水(上等水兵)、CIBより持ち場に戻れ」
「了解」
佐竹中尉と入れ替わりで栗山上等水兵が退出する。
戦闘配置中だろうが、通常航海配置中でも航海科員だけでなく、第二分隊員の3割が、艦橋に詰めているが、それでもほんの数人でしかない。
「ハープーン、撃っちゃ駄目かな?」
「駄目です。
国防省の立場をどうするつもりですか?」
「しゃあないなぁ。
魚雷にしよう」
「駄目ですって」
往生際の悪い不審船に対し、艦長の怒りは爆発していた。
「じゃあ、捕まえたら、O・HA・NA・SHIしてもいいんだよね」
妥協点を見つけると、そのまま認める
「そこはご自由にどうぞ。
命さえあれば、誰も文句を言わないでしょう」
「敵艦近付いてきます」
「取り敢えず、迎撃するぞ。
小銃準備、距離、300で攻撃開始だ」
趙は怒鳴る。
「30㎜榴弾も距離、300まで待機。
無論、RPGもだ。
一斉に浴びせかけて、蜂の巣にしてやる」
銃を構えた乗員達は、船室の壁にへばりつく。
「距離、1000……」
「本艦は日本軍の警戒線を突破し、日本の領海上にいます」
「ふむ、それで副長。
この辺の担当艦隊はどこになる?」
「呉の第四艦隊だったはずです。
最弱のそしりを受けている」
「それでも、我が海軍の精鋭部隊よりも格上だ。
この意味がわかるかね」
艦長の威圧に、副長はコクコク頷くだけだ。
韓国海軍潜水艦"
それも、ここまでであった。
「前方にソナーの反応あり。
敵駆逐艦です。
音紋照合しました。
ふぶき型駆逐艦の"みゆき"です」
「"みゆき"と言えば、艦長は、山口士門中佐だな。
彼なら、1度、
日本皇国と大韓民国に正式な国交が無くとも、互いの同盟国を通じて軍人間の交流は行われていた。
「狩りの対象と見たら、どんな手を使ってでも追い詰めにかかる狐のように賢い男だ。
米軍内でも、フォックスと呼ばれるほどの人物だよ。
全艦に音響規制を発令する。
深度、80に着けろ。
魚雷戦用意だ」
「全艦に発令する。
艦内ハッチを全て閉鎖せよ」
「魚雷室、1番2番に
「ソナー員は、目標の変化に備えよ」
「機関室、蓄電池の充電状況及び燃料電池の状況を伝えよ」
『こちら機関室、蓄電池の充電は残り79%、燃料電池の調子は良さそうです』
「本艦はこれより命令コード3の2に基づき戦闘状態に入る。
以上」
「前方に音探の反応あり。
潜水艦と思われます」
呉鎮守府艦隊駆逐艦"みゆき"は不審船対処の側面支援のため、日向灘を航行していた。
艦長の山口士門中佐は、対潜の鬼として、海軍内でも有名である。
「戦争てぇのは、勝者を決めて終わるんだ。
その勝利が、どんな手段を以て得られたかは関係ない。
要は勝てば官軍、最後に勝てればそれでよし」が口癖な人であるから、かなりの確率で暴走しかねない。
それをくい止めるのが、副長の鈴木宗幸大尉だった。
しかし、鈴木大尉ですら山口中佐の手のひらの上で転がされるのがオチだった。
「状態は?」
「現在、探知状況不良、時化が音探にがぶってきて、使い物になりません」
「数分後には幾分、天候もおさまるだろう。
その時にやれ」
数分たった。
"みゆき"CIC内は緊迫していた。
全員が、音探員の報告に耳を傾けている。
「探知状況回復、
方位、180、距離、2000、速度、20kt、深度、100、方位、102に向かって航行しています。
音紋照合、結果、韓国海軍タイプ214型潜水艦"安重根"である可能性87%」
「日本の元勲、伊藤博文を撃ち殺したテロリストの艦か。
となると、上には腹を括ってもらわにゃあならん。
戦闘部署発動、対潜戦闘用意」
CIC要員も救命胴衣を含む戦闘服装に着替える。
「んで、副長、今、韓国軍が対馬や竹島に襲来したら、我々は対応できるのか?」
「現地の部隊だけでも、充分に対応できるようです」
現在、対馬や竹島に駐屯する陸海空軍兵士の数は、両方を合わせて、3000人にもなる。
その編制には、幾つもの陸軍の地対艦ミサイル中隊や、野戦砲兵大隊が含まれている。
「紛争だけなら韓国海軍主力は動かないわけね。
だけども、全面戦争となったら、我が主力艦隊が動くから、結局動けないわけだ
つまり、韓国海軍ご自慢のイージス艦も、
日本海方面は
しかも、その後詰めには、
こりゃあ、韓国海軍は詰んだね」
一頻り笑った後で、山口艦長は命じた。
「対潜制圧行動用意。
その上で、敵を確実に捕捉したい。
SH60準備出来次第、発進させよ。
無論、魚雷の搭載も許可する」
「発光信号弾準備」
「艦内各区画、人員の有無を確認し、ハッチを封鎖せよ」
「CICより航空機格納庫及び
SH60を準備出来次第、発進させよ。
必要と思われる全ての装備品の装備を認める」
「特設臨検部隊を編成せよ」
CICが緊迫のなかに動き始める。
「副長、"安重根"の艦長のチェ中佐は1度、会ったことがある。
韓国軍士官にしては、珍しく冷静だったか。
自分のすべきことを、充分に理解し、その目的のためなら、命すら投げ出せる。
自分には真似のできない男だ」
「と言うことは……」
副長の言いたいことを、山口艦長は言い切る。
「ああ、間違いない。
奴は、この海の下で、てぐすねひいて待ち構えている」
「敵潜に攻撃の兆候あり。
敵潜より、発射管口開閉音を確認。
現在の距離、1900、方位、180、速度、15kt、深度、80」
「総員、魚雷の命中に備えよ」
「制圧射撃忘れるな。
こっちが蜂の巣にされるぞ。
突入するまでに、敵の無力化を行え」
「今日の昼飯?
んなもん、そのままに決まってるだろうが。
昼になったら配布するから、それまで待ちやがれ」
そのままとは、海軍用語で、戦闘糧食Ⅰ型つまり、缶詰をそのまま配布すると言うことであり、何ら一切の手が加えられていない。
言ってしまえば、冷たい飯を配るので、士気は上がらない。
「距離、1000を切ります。
指示を」
「20㎜高性能機銃、ブローニング12.7㎜機銃を敵船に照準せよ。
そのまま指示あるまで、待機せよ」
右舷側の20㎜機銃と12.7㎜機銃は敵船に向かって指向する。
いつでも撃てると、言わんばかりにである。
「火器管制室へ。
射撃モードを水上に切り替えよ。
射撃モードは、水上に切り替えてない?
すぐに切り替えろ。
無理?
弱音は吐くな。
それでも、お前は軍人か?
なんのために、給料もらってんだ?
この××が、何度でも言ってやろう。
この腐れポンチの××が」
こう罵る佐竹中尉の手には、ハートマン軍曹のアメリカ海兵隊式罵倒術という本があった。
昔のラノベにも、こんなのが出てた気がする。
「言われたくなければ、結果を示せ。
信頼は実力で勝ち取るものだ。
もう一度言おう、この腐れポンチの××」
『サー・イエスサァー』
「健闘を祈る」
このあと、後部の20㎜機銃座にて射撃モードの切り替えに挑んだ馬鹿者がいたとか、いなかったとか。
「距離、600」
「
まだまだ遠い。
距離、300で攻撃開始だ」