WarLines 日本皇国海軍士官奮闘録   作:佐藤五十六

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閑話 尋問

これは日本皇国軍情報本部情報業務群公安部隊による韓国工作員尋問の記録である。

 

「あー、私は又吉とお呼びくだされば結構です。

後ろにいるのが、綾部、徳井、吉村、大西です。

全て偽名なのは悪しからず。

それでですね。

あなたの氏名、国籍、所属を教えていただきましょうか?

及び、日本に不法に滞在していた理由も」

漁船で見つかった男の身柄は、極秘裏に呉に移された。

「…………私は何も答えることはない」

「そうですか。

我々も時間がないのでねぇ、少々手荒なまねをしなくてはならないようだ。

と言っても、あなたの素性に関しては、大体の予想はついています。

要は、あなたの背後関係を読み取ることにあります」

世に言うえびす顔を浮かべた黒服が言う。

「何がしたい?

ただの下っ端工作員に知っていることなど、何もないぞ」

しれっと嘘を言うが、黒服は気にした様子はない。

「いやはや、謙遜を言わないでもらいたいものですよ。

単なる下っ端ごときに、あの国は潜水艦は出しませんて。

その辺はよく分かってらっしゃると、思っていたんですがねぇ。

いつもの中国ルートはどうしたんですか?

使わなかったようですが。

おや、少し顔色が悪いですね。

軍医でも呼びますか?」

顔の血の気がすぅーと引いていき、冷や汗が顔を伝い、心拍数が上がる。

黒服の代表である又吉には、男の様子が手に取るように分かっていた。

「大丈夫だ」

「そうですか。

でははじめますね。

あなたの名前は、朴永根(ぱくよんぐん)、日本での通名が、桐谷洋二ですよね。

韓国国家情報院の日本における工作活動の最高責任者。

在日2世の一人、小さい頃に日本人に何かしらの恨みを持ち、成人するとそのまま我が国への工作活動に参加。

現在は、対馬、竹島、九州北部、日本海沿岸の防衛態勢の調査に従事。

過去には、要人の暗殺、その辺に燻ってた過激派を刺激しての犯罪幇助、直接のテロ未遂などの犯罪をやってたようだね。

我々は公安警察と連携して、ずっとあなたの影を追っていたんですよ。

さすがに近畿地方(田舎)で撒かれた時には焦りましたけどね。

ここでうたっても、公安警察(チヨダ)に引き渡すので、あなたに未来はありません。

それでも、あなたは喋らなくてはなくなるんですよ。

我々は、何をしても法で裁かれることがない。

あなた娘さんがいらっしゃいましたねぇ。

そう言えば、今年で高校2年生になられるとか?

かわいい盛りですよねぇ。

そんな彼女が裏路地で嬲られr……」

えびす顔の又吉は表情を変えずに言う。

そんな脅しに慣れているようだ。

「そんなことしてみろ。

俺がお前らをぶっ殺す。

お前らはなんて汚いんだ」

「汚いってどの面提げて言えるんだァ。

お前らも同じことを何度もやって来たんだろうが。

俺たちはなァ。

そんな脅迫に怯えて自ら死んだ奴を、何度も何度も見てきたんだ。

今さらお前がそんなこと言える立場か考えやがれ。

今ここでお前を殺しても、真実は闇の中に消える。

俺たちに守るべき法律なんてものはない。

それだけダーティな存在なんだ。

お前がどう叫ぼうと、未来は変わらない。

我々に協力して娘を守るか、それを拒否して娘を見捨てるかの2つに1つなんだ。

分かっているのか?」

又吉は胸倉を掴みながら、まくしたてる。

「そんなの知るか」

「武器つうものはな、使われたときの痛みを知って、はじめて使えるんだ。

それがどれだけの痛みをもたらすかを考えて使うものなんだよ。

さっきも言ったが、俺たちはダーティな存在なんだ。

無駄なあがきはやめて、楽になっちまえよ」

又吉の突き放すような口ぶりを聞いた黒服の一人が近寄ってくる。

「あのプランを実行に移します。

(あくまで形だけですが。)」

「分かった。

証拠は残すなよ」

「部下を信用をしてくださいよ。

全員荒事には慣れてますよ」

えびす顔に戻った又吉は、退出した部下を見送ったあと、男に向きなおる。

「あんたも頑固やね。

やらんでもいいことまでやらにゃあならん。

その意味が分かるか?」

言葉の意図を理解して、男の顔が土気色になる。

数刻の逡巡のあと、男は口を開いた。

「…………俺達に与えられた仕事は、あんたらも知っての通りの調査と、あとは破壊工作員の密入国の幇助だ。

詳しいことは、担当しか知らないが、この国には、既に数百人以上が潜伏しているはずだ」

「それは本当か?」

黒服の顔色が変わる。

軍の情報部門と言えど、国内では大っぴらには動けない。

そのため破壊工作員の監視は、公安警察の仕事のはずなのだ。

1度話し始めると、饒舌になるのが、人の性である。

男は素直に喋り続ける。

「ああ、少なくとも海の警戒は厳しいが、空や降り立ったあとはそうでもないからな」

「協力者は航空会社の中にいるのか?」

「と言うよりも、担当がそのまま就職している。

あんたらが動けば、すぐに分かるはずだ」

「なるほど。

で、何で潜水艦が出てきたんですか?」

「日中開戦とかの時に、日本上空が交戦空域に認定された場合のルートの確立だそうだ。

まあ、結果としてそれは失敗だったが。

海軍以外は、日本海軍を過小評価しているからな、あの国は。

ぶっちゃけると、なるべくしてなったとも言えるが」

「それは同感だわ。

で、最後に1つだけ」

「何だ?」

「あなた、亡命に興味ってあります?」

「敵に情けをかけるのか?」

「情けではありませんよ。

あの国への牽制です。

非公式の外交ルートで、五月蝿いそうですよ。

その原因が何しろ我々軍なもので、あの外務省が何とかしろと上から目線で五月蝿いんですよ。

あの予算分の仕事すらもしない、いやできない無能共め。

次に会ったら、冤罪を着せて頭に風穴を開けてやる。

と言うことで、あなたを亡命させます」

「俺の意思は?」

「そんなのありませんよ。

私がさせると言ったら、それを実行するまでです」

えびす顔の又吉はニヤリと笑った。

「我々はあなたのせいでこれから忙しくなりますよ」

 

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