「結局は三島由紀夫が自殺したことで、事態は終息、工作は成功したと
そのときに出動していた特殊部隊の創設は1949年で、創設以来一度も廃止されていない特殊部隊としては、世界最古となっていましてな。
目的は、帝国陸軍が中国戦線で経験したゲリラ戦対処の戦術研究とそれの実践、さらには市街地等の近距離間制圧戦闘の研究でありました。
それがベトナム戦争で、その方針に間違いはないというのが確認されて、対テロそして敵ゲリラコマンド部隊の対処を行ってきました。
陸軍の指定緊急展開部隊である第6空挺旅団隷下の特殊作戦群、第4水陸機動旅団隷下の特殊武装偵察大隊、海軍の特殊作戦部隊群隷下の海軍第一陸戦大隊、海軍第二陸戦大隊、特別偵察中隊、
現在ではこの特殊部隊は、陸海空軍将兵混合の常設統合部隊で、この部隊の最小単位である12名編成のアルファ作戦分遣隊、特にOperation Detachment Alfa、略してODAもしくは日本語でAチームと呼ばれていたりもしますが、ここでは単純に小隊としておきます。
この小隊の規定の内訳は、陸海空軍問わない日本皇国軍大尉の階級にある指揮官1名、同じく皇国軍少尉または准尉たる兵曹長の階級にある副官1名、皇国軍兵曹長の階級にあるチーム/作戦下士官1名、皇国軍兵曹の階級にある情報/作戦補佐下士官1名、皇国軍兵曹と軍曹の階級にある兵器専門家2名、皇国軍兵曹と軍曹の階級にある工兵専門家2名、皇国軍兵曹と軍曹の階級にある通信専門家2名、皇国軍兵曹と軍曹の階級にある医療衛生専門家2名となっています」
ちなみに、准尉たる兵曹長というのは、准尉と言う階級のない日本皇国軍において、准尉相当官として先任の兵曹長を昇任させるというシステムである。
自衛隊でいうところの幕僚長たる将という大将に相当する階級と同じシステムではあるが、准尉たる兵曹長には階級章が存在しない。
あくまで、便宜上の措置である。
「この小隊を6個集め、これに中隊本部の役割を果たす11名編成のブラヴォー作戦分遣隊、同じようにOperation Detachment Bravoを略してODBもしくはBチームを併せて1個中隊が作られます。
特殊部隊中隊の本部として編成される規定の内訳は、皇国軍少佐の階級にある中隊長1名、皇国軍大尉の階級にある中隊副官1名、皇国軍准尉たる兵曹長の階級にある中隊付き最上位下士官1名、皇国軍兵曹長の階級にある中隊付き先任曹長1名、皇国軍兵曹長の階級にあるチーム/作戦下士官1名、皇国軍兵曹の階級にある情報/作戦補佐下士官1名、皇国軍兵曹と軍曹の階級にある通信専門家2名、皇国軍兵曹の階級にある医療衛生専門家1名、皇国軍軍曹の階級にある補給下士官1名、皇国軍軍曹の階級にある
これを3個、第一・第二・第三の3個中隊とそこに大隊本部の役割を果たす37名編成のチャーリー作戦分遣隊、これまた同じようにOperation Detachment Charlieを略してODCもしくはCチームと97名編成の大隊支援中隊を併せると1個大隊が編成されます。
特殊部隊大隊の本部として機能し、人員構成は、日本皇国軍大佐もしくは中佐の階級にある大隊長、皇国軍少佐の階級にある大隊副官、皇国軍准尉たる兵曹長の階級にある大隊付き最上位下士官、皇国軍兵曹長の階級にある大隊付き先任曹長を中心とし、情報、作戦、兵站、通信、工兵、医療衛生、民事等多様なスタッフが揃っていて、以上の部隊、大隊長以下383名を以て対テロ特殊作戦部隊は編成を完結しております。
1970年のよど号事件や瀬戸内シージャック事件の際も、1977年のダッカでの事件の際も、彼らが警察側からの要請を受けて、突入作戦を実施し、犯人全員を射殺、人質全員を救出しました。
あさま山荘事件のときも出動していたら、犯人の命と引き換えに優秀な警察官の命が散ることはなかったでしょう。
警察曰く、赤軍派を生きて逮捕することで、殉教者とか受難者というのに仕立てあげられないようにとか言う理由でしたか。
そんなものクソ喰らえだとも思っています。
テロリストには、死あるのみ。
奴らが生きようが、死のうが、テロは起こるのだ」
前田大将の言いたいことはこうだ。
テロリストが死んでしまったら、殉教者だ弔いだと燃え上がってしまうが、逆に生きて捕らえても、解放を要求する人質事件が起こってしまう。
ならば、さっさと殺してしまうに限る。
この考えは、長年テロリズムに対処してきたイギリス陸軍
「えげつない考えですな。
まあ、同意見ですが。
それにしても、三島事件ですか?
その頃は、儂はまだまだ子供で世間とかいうのを、まだよく知らんかったんですな」
その話を聞いた田中大将が言うと、
「それは私もですね。
今も昔も小中学生の世界は、如何せん狭すぎる」
前田大将も同意する。
「私が小中学生の頃と言うと、"あたご"が漁船に衝突した事件ですかね」
と佐竹中尉は言う。
「あれか?
あのときは、第二艦隊に"あたご"は所属してたんだが、そのときの第二艦隊長官が俺だ」
田中大将がサムズアップして言った。
笑顔の中から見える白い歯が何かむかつくと思ったのは、佐竹中尉だけの…いや、この場にいる全員の秘密である。
「所属長だから、強制的な引責辞任で予備役編入になるかと思ったが、そうはならなくて良かったよ」
この事件では、ときの国防大臣と海軍部部長、海軍軍令部総長が引責辞任し、連合艦隊はもちろん沿岸警備部隊のお偉方に至るまで、将校と呼べる階級の全員が全員に懲戒処分が下されている。
だから、田中大将にも減俸と所属長訓告が申し渡されたはずだが、まあ強制的な引責辞任よりはましだろう。
処分を食らった直後の、その様たるや葬式のごとき、陰鬱さだったという。
「海軍と言えば、横浜代理戦争は、ねえ。
外せないくらい有名すぎるでしょ」
「海軍との仁義なき戦いですか?」
河野大将の呟きに、武藤大将が茶々を入れる。
「仁義云々より、率直に海軍が怖い。
周りにはそ知らぬ顔を見せておきながら、裏では全力で、やくざを潰したあとに、マスコミにまで喧嘩を売りやがったからな」
「日本皇国軍が引き起こした不祥事の7割は海軍が関係しているのだからな」
「それはないでしょ」
前田大将の言葉に、河野大将が付け足した。
それを田中大将が否定するが、河野大将、前田大将、武藤大将の突っ込みが入る。
「いやいや、スウェーデンに嫉妬して、ウィスキー・オン・ザ・ロック事件をもう1回引き起こしたのは、お前らだろうが。
冬の津軽海峡で、連合艦隊と沿岸警備部隊、松江と相浦にいた陸戦大隊まで動員して、陸海で包囲しやがって」
スウェーデン王国のカールスクルーナという世界遺産に認定されている軍港がある町のそばで、起こったその事件は、
それに嫉妬したというよりも、国防予算が削られて、ほとほと困り果てた海軍関係者が思いきって行ってしまった金策が、他国から集ろうだった。
その絶好の鴨が、ウィスキー・オン・ザ・ロックを起こしたソ連海軍であり、日本の場合は太平洋艦隊だったわけだ。
冬の津軽海峡という厳しい気象条件のなかで、訓練の名目で展開していた第六艦隊と当時の大湊鎮守府艦隊に、的確に追い回されたウィスキー級潜水艦は、暗礁に乗り上げた。
そこに間髪入れず、陸上では北方転地演習の名目で動員された陸戦大隊が、海上および海中を大湊鎮守府艦隊が包囲し、補給を絶たれた乗員たちの数日の抵抗もむなしく、最終的には船体は拿捕され乗員たちは抑留された。
艦内弾薬庫からは核弾頭魚雷すらも発見されたから、事態は大きく混乱した。
この事態は強硬姿勢を崩さない日本皇国海軍とソ連海軍、両者の意地の張り合いだった。
「それは違う。
当時の大蔵省の役人が、国防予算をけちったらしくてな。
我々は行動したわけだ。」
佐竹中尉には、副音声が聞こえてきたが、その気持ちがよく分かる。
「だから、ソ連に集ったわけだ。
んで、結局は数十億ドルの賠償金を貰って、手打ちにしたがね」
とは、海軍の利益代表の田中大将の言葉だ。
「それに味をしめて、対馬海峡で戦略原潜のデルタ級潜水艦を、津軽海峡で今度はこれまた戦略原潜のタイフーン級を、しかも沿岸警備部隊単独で捕獲しやがって。
割り食わされた陸空軍が事態解決のために、どれだけの労力をかけたと思ってるんだ?」
「おかげで、予算にゆとりがあるんだろうが」
河野大将のぼやきに、田中大将の反論が入る。
日本の歴史、特に冷戦期において、日本皇国がソ連に攻撃される可能性は、大いにあった。
特にその危険度が高まった時が、十数回ほどあり、軍艦鹵獲が2回、潜水艦鹵獲が4回、軍艦への攻撃が1回、潜水艦への攻撃が2回、航空機の亡命が1回、ソ連軍コマンド部隊や国境警備隊との交戦が数回、特に最後の場合は、互いが互いの領域に測量部隊を送り込んだのが原因だ。
衛星による地図データが手に入るようになったとはいえ、実際の地形はそこに進まなければ分からない。
だから、日本皇国軍とソ連軍は互いに部隊を送り込んだのだ。
とは言うものの、回数的には圧倒的に海軍が多い。
「俺個人としては、陸軍と大して変わらないと思うが?」
「いや全然違うわ」
田中大将の呟きに、前田大将がツッコミを入れる。
「
良かった」
陸海軍のトップの言い合いの最中に、武藤大将は自分の身を心配していた。
余計な火の粉が飛んでくることを、誰も望まないからだ。
「高みの見物と行きましょうか?」
武藤大将は傍らの佐竹中尉を見ながら、言った。
「はい」
と答えた佐竹中尉の目の前では、陸海空軍トップと陸軍のトップとそれと睨み合う形で海軍のトップが幼稚な言い合いを続けていた。
終いには、お前の母ちゃん出べそとか言い出しそうだ。
「
ウィスキーの入ったコップを片手に、佐竹中尉が言った。
「ああ、そうだな」
佐竹中尉の呟きに、武藤大将は答える。
2人のその目は、どこか遠いところを見ていた。
「必要なら憲兵を呼びましょうか?」
「無理だな。
憲兵は来れないよ」
天皇陛下への暗殺予告によって、首都近辺の憲兵は根刮ぎ、その捜査の応援に回されており、市ヶ谷の国防監察本部憲兵事務所に駐在する中央機動憲兵隊や立川憲兵隊、練馬憲兵隊、習志野憲兵隊、大宮憲兵隊、横須賀憲兵隊、相馬原憲兵隊、百里憲兵隊、朝霞憲兵隊、入間憲兵隊、今挙げた憲兵隊は、近隣の駐屯地や基地に派遣していた分遣隊にまで、動員をかけて首都圏に派遣していた。
「統合参謀本部長、統合参謀本部長。
河野大将!?」
田中大将と言い合っている河野大将に、必死に呼び掛けているのは、国防省大臣官房内に設置された統合広報室の室員だった。
「今は熱くなってるから、無駄だと思うが」
唯一、冷静な武藤大将が、室員に声をかける。
「武藤大将、ちょうど良かった。
今回の件について、マスコミが公式発表を欲しがってます」
「
武藤大将の問いかけのなかにあった I 事案とは、皇室関連事案、つまりは皇室を意味する Imperial の頭文字 I を付与された、略号である。
武藤大将の問いかけの内容に、室員は頷いた。
それを見た武藤大将は考え込む。
「ふむ。
憲兵隊が露骨に動きすぎたかな?」
頭のなかで構図が組み上がったのか、武藤大将は呟いた。
「そのようです」
室員はそう答えた。
「非常事態発生につき、対策本部を設置する。
本部長代理として、命じる。
すぐに、マスコミに対する
武藤大将が指示を出すと、
「佐竹中尉、君に I 事案対策本部付きを命ずる。
取り急ぎ、会議室に向かうんだ」