アブソリュート・デュオ~万物の意思~   作:Y・MOOT

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第11話・中~「はぁ……、コントじゃあるまいし」~

 そして時間は過ぎ本校と分校の生徒達が夕食の準備を始めた頃――

 

「伊万里、いったい誰がはぐれたの?」

 

 先ほど刃達がいた部屋には朔夜とリーリスの他に、GPSの端末を取りに来た伊万里がいた。

 

「あ……。えっと、みやびよ。今は透流と巴が捜しに出てるわ」

 

「そう。透流らしいわね」

 

 そう言いながらリーリスはくすりと笑う。そして、戻って来たスタッフから端末を受け取り部屋を出ようと扉へ向かおうとした伊万里へ――

 

「伊万里。今はこの部屋を出ないほうがいいわ」

 

 そう言いながらリーリスは、手招きをする。伊万里は「?」と思いつつもリーリスの隣へ並んだ。

 

「そろそろね。あの辺りを見てみなさい」

 

 そしてリーリスは、窓の外の夜空に向けて指をさす。伊万里がその指のさされた方を見ていると――

 

「……! 一体何があったのよ? 状況がわからないわ」

 

 伊万里が、突然地上数百メートルで現れた大量のパラシュートを見て言う。

 

「あれは、HALOよ。ついさっき、ここに招かれざる客が来るってのを聞いてね。だから、迎えが来るまでここにいて頂戴。それと、一つお願いを聞いてもらえないかしら?」

 

「何?」

 

「迎えが来たら、サラも連れて行ってもらえるかしら?」

 

「わかったわ」

 

「ありがとう、伊万里。助かるわ」

 

 では、リーリスが伊万里を呼び止めたあたりの頃の刃達はというと――

 

「そろそろだな。奏、結李嘩、李々嘩、準備はいいかい?」

 

「うん。大丈夫だよ。お兄ちゃん」

 

「ええ、私も大丈夫です」

 

「オッケーだよ」

 

 刃が何かの確認をとり終えると同時に、夜空で大量のパラシュートが開く。そして――

 

「「「《第Ⅰ解放[ファースト・バースト]》」」」

 

 と奏、結李嘩、李々嘩の三人がつぶやく。そして――

 

「よし。作戦開始だ! 李々嘩やるぞ」

 

「オッケー、みんなー落ち着いて聞いてねー――」

 

 李々嘩が大声で今この場にいる生徒たちに手短に説明する。そして――

 

「みんなわかったー? ということでぇー、あそこまで避難してねー」

 

 ここまで30秒ちょっとで説明し生徒たちを分校の入口まで避難させ始める。

 

「結李嘩、頼む」

 

「わかりました。セーフティーゾーンは大丈夫ですよ――《杭光穿槍[ヴァル・ルクス・リーヴェ・ランケア]》!!」

 

 結李嘩が返事をすると同時に、分校の入口の所に今この場にいる生徒全員が余裕で入るほどの結界が出来ると同時にある言葉を言う。すると、はるか上空の分校の真上から少しずれた位置に、突然二本の光の槍が現れると同時にそれぞれの槍が一つずつ何かを貫いていた。一方で、奏はというと――

 

「《重力封柩[ヴィ・ゼド・バウ・アルカージュ]》!!」

 

 奏も結李嘩同様ある言葉を言うと、次々に降下してきた機械的なデザインの戦闘服に身を包んだ侵入者達がアサルトライフルを構え発砲するが、全ての銃弾が1メートルぐらい先で空中に静止する。そして、広範囲にわたり降下しているはずの侵入者達はまるで何かに吸い寄せられるように一箇所に降下していく。

 

「みんな。無駄だよ。その結界は絶対に壊れないからね。じゃあ、うーちゃん。バトンタッチだよ」

 

「おっしゃあ! 久々に実戦で暴れれるぜ! 喰い殺せ――《狂蛇環》!!」

 

 璃兎が《力ある言葉》を叫ぶと《焔牙》が形を変え剣身の三分の二が直径三メートルほどの環状の刃となり、侵入者達が囚われた見えない結界へ入ると結界の壁を縦横無尽に反射しながら次々と侵入者達を切り裂き、叩き潰していく。その光景を窓から見ていたリーリス達は――

 

「ねぇ、刃達って一体何者なの?」

 

「それは、本人たちから聞いたほうがいいわ。ところで、朔夜……刃達のあの言葉はなんなのかしら?」

 

「《神音語[フィリス・レニ・アーネ]》……刃曰く、《解放[バースト]》後の能力制御用の言霊だそうですわよ」

 

「刃達はとても制御が必要とは思えないのだけど……」

 

「普段は制御では無く、封印をしているらしいですわ。だから、《解放[バースト]》後は制御が必要だそうですわよ」

 

「ホント恐ろしいのが味方についたわね、朔夜……」

 

「えぇ…本当にそのとおりですわ」

 

 このリーリスと朔夜の会話についてこられなかったため、ずっと窓の外を見ていた伊万里が突然驚いた。

 

「うそ……何…アレ」

 

 驚くのも無理はない、伊万里のその視線の先にはゲームなんかに出てくるようなドラゴンが居たのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 分校の入口前にできた結界の前で璃兎が盛大に暴れているのを遠目に見ながら――

 

「うーちゃん、テンションたかいなー」

 

「まぁ、うーちゃんだしねー♪」

 

 刃の呟きに李々嘩が返す。(ちなみに、結李嘩は結界の中で生徒の人数を数えている最中で奏はそれを手伝いながら生徒達の様子を見て回っている)

 

「さて、ではそろそろ次に進みますか――シャヴィ」

 

『お呼びかしら?』

 

 刃がその名を言い、刃の隣に突然現れた金髪ロングの美少女に結界の中にいた生徒達が様々な反応をする。しかし、そんなことお構いなしに刃は話を続ける。

 

「分身使って片方は、輸送機の掃除。もう片方は送迎と回収。ちなみにこっちは、タイプⅡで頼むわ」

 

『わかったわ』

 

 そしてシャヴィが一言返事を返すと、刃から少し離れていった瞬間――

 

 ……「「「「っ!?!?!?!?!?」」」」……

 

 結界内にいた(奏、結李嘩を除く)生徒達の顔が驚きの表情になる。それもそうだろう、謎の金髪ロング美少女が突然二台の車になったのだから。そしてさらにその内の一台は、本校組にとっては見覚えがあるものだったのだ。

 

「《生存闘争》の時の……」

 

 誰かがそう呟く、まさしくその通りだ。しかし、驚きはこれだけではなかったのだ。《生存闘争》の時に見た車から黒い靄の様なものが出てくると、なんと車が変形し始めたのだ。そして、その車だったものはゲームに出てくるようなドラゴンへと姿を変える。その光景に結界内にいた(奏、結李嘩を除く)生徒達は皆開いた口が塞がらないでいた。

 

『じゃあ、行動開始と行きましょうか――《第Ⅰ解放[ファースト・バースト]》』

 

「おう、よろしく。それと、李々嘩はリーリスの所に迎えよろしく」

 

「オッケー♪」

 

 そして、李々嘩が校内へ向かうと同時に飛竜形態(ドラゴンモード)のシャヴィが羽ばたいて分校の屋根ぐらいの高さでホバリングをすると――

 

『《光喰紫焔[ルクス・ガウ・ウィオス・イグノーヴァ]》!!』

 

 その言葉を言うと同時に、禍々しい紫色の炎が口から漏れ出しゆっくりと口を開け終わった次の瞬間――

 

 

 

 

 キィィィィン――ギュルァ―ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 

 

 

 禍々しい紫色の極大レーザーブレスが夜空に浮かぶ光の槍に向けて放たれた。そしてレーザーブレスが放たれ終えた所で――

 

「おりっち、二人とも連れて来たよぉー」

 

「ナイスタイミングだ! 李々嘩。それじゃあ結李嘩、槍の後処理よろしく。それと、シャヴィはこのまま透流の援護に。李々嘩は伊万里とサラを連れてそれに乗ってくれ、その後はシャヴィの指示で動いてくれ」

 

「おっけーおっけー」

 

「わかりました」

 

『えぇ、わかったわ』

 

 刃の指示にすぐに行動を開始するのであった――

 

 

 

 

 

 シャヴィが透流達の援護に向かって少しした頃の森では、透流と巴が《生存闘争》の時に襲ってきた男からみやびを助けだし戦闘をしていた。そして――

 

「……黙るのはお前だと言っただろ」

 

 巴の陽動でできた隙を突き男の懐に飛び込んだ透流が、弓を放つかのように引き絞った拳を解き放った。拳は男の戦闘服を破砕し、吹き飛ばす。

 

「待たせたな、みやび。もう大丈夫だぞ」

 

「遅くなってすまなかったな、みやび」

 

 透流達が駆け寄ったことで、放心していたみやびの瞳が、じわりと潤む。

 

「と、とお、くんっ、ともえ、ちゃ……わたしっ、こわ、かった……も、ダメなんだって、でも、ふたり、来て……それ、で……ごめん、なさい、透流くん、ごめんなさい……」

 

 もはや自分でも何を言っているのかわからないみやびは、ただただ涙を流す。

 

「みやび、謝らなくていい。俺は――」

 

「あ……あ、ああ……」

 

 しかし、言葉途中にみやびの表情が変わっていく。驚愕と恐怖に。青褪めた顔は透流達の後ろへと向けられていて――

 

「ぐるぁああああああああああああああっっ!!」

 

 もはや正気の光を宿さぬ濁った目で、透流達をねめつけていた。振り上げられた手にはナイフが握られ、刃が鈍く光る。

 

「みやびっ!!」

 

 避けられない。そう直感した透流が咄嗟にみやびを庇い抱きしめた刹那――

 

 

 

 

 ビュォオオオオ――ドゴンッ!! メキメキメキッ……

 

 

 

 

 突風が吹いた次の瞬間何かが木に衝突した。

 

「い、一体なにが……」

 

「お、おき――」

 

 ゆっくりと透流と巴が音のしたほうへ顔を向けると――

 

「「っっ!!!!!」」

 

 驚きの光景を目の当たりにし驚愕しながらも二人は掠れた声をだす。

 

「ド、ドラゴンだと……」

 

「あ、ありえ、ない……」

 

 そう透流達の視線の先には、禍々しい黒色のオーラを全身に纏った紅目のドラゴンが、足で掴んだあの男を木にめり込ませる様な形でぶつけていたのだ。そしてゆっくりとドラドンがこちらに振り向くと――

 

『透流君に巴ちゃん。それに、みやびちゃんよね?』

 

 きれいに澄んだ女性の声でドラゴンが喋ったのだが、ドラゴンが喋ったものだと理解できずに透流と巴はあたりを見回す。それを見たドラゴンは――

 

『はぁ……、コントじゃあるまいし、そんな反応されると傷ついちゃうわ……』

 

 そして、そう言われてやっと現実を理解した二人は――

 

「ド、ドラゴンが……」

 

「しゃ、喋っただ……と」

 

 

『はいはい、分かってもらえたかしら? 私の名前は、シャヴィよ。あなた達の知っている刃とは、家族みたいなものよ。そして、一つお願いがあるのだけれどいいかしら?』

 

「あぁ、な、なんだ」

 

『透流君。私がいいって言うまで、みやびちゃんに目隠ししていてくれないかしら?』

 

「?……わ、わかった」

 

 一瞬頭の上に疑問符を浮かべた透流だが、素直にシャヴィの言うことを聞くことにした透流は――

 

「なぁ、みやび。ちょっと苦しいかもしれないがいいか?」

 

「ふぇっ!? う、うん」

 

 色々と混乱していたみやびが突然透流に声を掛けられたため少しびっくりするが直ぐに頷いた。(ちなみに、みやびは透流に庇われるように抱かれたためドラゴンの姿は直視していない)

 

(ど、どど、どうしよう。わ、わたしっ、透流君にぎゅってされて……ふにゃ~)

 

 どうやら、みやびも平常運転に戻ったらしい。

 

『ふふっ、素直な人は好きよ。だから、教えてあげるわ。透流君が疑問に思ったことの答え。簡単に言うと、みやびちゃんには刺激が強すぎるからよ』

 

 透流の疑問に対し、そう言って答えたシャヴィは一呼吸置くと足で掴んでいた男へ向き直り――

 

『さてと、貴方には地獄へ堕ちる資格すらないわ。だから、大人しくこの世で永遠にもがき苦しみなさい――《縛魂悪喰[リガーレ・アニマーティス・マズローム・ガウ]》』

 

 先ほどの声の主とは思えないほどの低く底冷えのする声に、透流と巴は一瞬にして背筋が凍る。そして、目の前のドラゴンがグシャッと男を足で握り潰しながら肩から上を噛み砕いた瞬間、男の肩から下の体が禍々しい漆黒の炎に包まれ消滅した。そして――

 

 『さてと、これで私の仕事はおわりね。透流君ももういいわよ。それと、そろそろ迎えが来るわ』

 

 と、普段どおりのきれいに澄んだ声で言うと透流も巴も先ほどの背筋が凍る様な感覚が消えていることに気付く。

 

「お、おう。わかった」

 

「確かに、さっきの光景をみやびに見せる訳にはいかないな」

 

 二人がそれぞれの反応をしたところで――

 

 

 

 ヴォォオオオオオオ――ヴォンヴォン―ドッドッドッドッ……

 

 

 

 突然森の中から現れた車が、透流達とシャヴィの目の前に停まると降りて来たのは――

 

「李々嘩!それにユリエに伊万里も…ってトラにサラまで!!一体どうしたんだよ」

 

『それは移動しながらよ。ねぇ、李々嘩?』

 

「さすが、しーちゃん。わかってるねぇー」

 

 ここで、みやびが一体誰が李々嘩と会話をしたのかと声のしたほうを向いた瞬間――

 

「ぴゃぁぁあああああああああああああ!?!?!?」

 

 うん、まあ、わかってた。([一同・みやびを除く]ですよねー)

 

『みやびちゃん……そこまで驚かれると、さすがに傷つくわ……』

 

 そう言いながら、シャヴィは人の姿に戻ると――

 

「えっ……えと、えっと……ご、ごご、ごめんなさい?」

 

 何が何だかわからず軽く混乱するみやび。

 

『ふふっ、謝らなくてもいいわ。それに、いきなりあんなものを見てびっくりしちゃったのよね。でも大丈夫よ、私は刃達と同じ貴女達の味方だからね。さぁ、時間もあまりないし車に乗りましょうか』

 

 シャヴィはゆっくりとみやびに近づき正面から優しく抱き寄せると、まるで子供を落ち着かせる母の様な優しい声でそう言った。

 

「……う、うん。ありがとう。ねぇ一つ教えてもらってもいいかな?」

 

『何かしら?』

 

「貴女の名前」

 

『私の名前は、シャヴィよ。好きに呼んでいいわ』

 

「うん、わかった。ありがとうね、シャヴィちゃん」

 

『ふふっ、ありがとうと言うのは私の方だわ。みやびちゃん』

 

 そして、ゆっくりとシャヴィはみやびから一歩下がるように離れる。

 

「それじゃー、皆この車に乗ってねぇー」

 

 李々嘩のその言葉に全員が頷いて返すと次々と乗っていくのであった。

 






後編へ続く
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