アブソリュート・デュオ~万物の意思~   作:Y・MOOT

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第11話・後~「奏にご執心な理由が分かった気がするわ……」~

 ――数分後、透流達の乗った車が森を抜け分校前の広場に出ると、そこでは血の色に染まった巨大な直方体の中で暴れ回る巨大な環状の刃の姿があった。

 

「なんだ、あれは……?」

 

 息を呑む透流。

 

「あれが月見先生の《焔牙》なんだって。ほら、《Ⅳ》で解放できる真の力ってやつ。そして、あの直方体の空間は奏の能力らしいわ」

 

 助手席に乗っていた伊万里が透流達の方を向いて説明する。それを聞いた透流達には思い当たることがあった。

 

「そうか、《生存闘争》の時に使っていたのと同じ様なやつか」

 

 透流の言葉にユリエ、トラ、巴がそれぞれ反応していた。ちなみに、三列目の後部座席では――

 

『はいはい、みやびちゃんには刺激が強すぎるから見ちゃだめよ』

 

「わぷっ!? シャ、シャヴィちゃん!? あわ、あわわわわ」

 

 車が広場に出た瞬間にシャヴィが自分の胸にみやびの顔を押し付けるかのように抱き寄せていた。そして――

 

「はいはーい、皆まだ降りちゃだめだよぉ。今からこのまま突入するからねぇー」

 

「「「「はっ?」」」」

 

 透流、ユリエ、トラ、巴の反応が重なる。ちなみに、伊万里、サラ、シャヴィはこうなる事を知っていたため反応しない。みやびに関しては、そもそも周りの様子がわからないため反応できない。そして、広場の半ばで停まっていた車は透流達を乗せたまま動き出すと分校のとある壁の前で停まり――

 

「それじゃあ、突入ー♪」

 

 李々嘩の緊張感の無い掛け声とともに、車が後退しある程度分校から離れたところで勢いよく分校に向かって走り出したと思った所で――

 

「「「「と、飛んだぁっー!!」」」」

 

 正確にはおもいっきりジャンプした。そしてそのままの勢いで分校の二階のちょうど窓を突き破って――

 李々嘩達が突入する少し前。

 

「さてと、このぐらいでしょうか。では、奏ちゃん後はお願いね」

 

「うん。わかった」

 

「ホント貴女達って、えげつない事するわね……」

 

 とある部屋では、リーリスの援護もとい李々嘩の突入による巻き添え防止対策の為、奏と結李嘩がリーリスと共に居た。

 

「まぁ、作戦を考える参謀は刃君ですし。それに、この作戦はまだ可愛い方ですからね」

 

 そう言いながら結李嘩はリーリスの負った怪我を徐々に直していく。

 

「いやいや、人を三人もその場の空間に固定してそれを車で轢く作戦のどこが可愛いって言うのよまったく……。それと、この結李嘩の能力。もはやチートよね……」

 

 結李嘩の言葉にツッコミながらも、リーリスは怪我の治った部分を見ていく。

 

「それは、褒め言葉として受け取っておきますね」

 

「結李嘩ちゃん。終わったよ」

 

 そんな事を言っていると、作業を終えた奏がこちらに向かって歩いてきた。

 

「ありがとう、奏ちゃんはえらいですね」

 

 そう言いながら結李嘩は奏の頭を優しく撫でると、まるで甘えてくる猫の様に結李嘩にじゃれる奏。それを見たリーリスは――

 

「本校のクラスメイトが奏にご執心な理由が分かった気がするわ……」

 

 小声でそう呟いた瞬間、目の前の結界の向こうで窓を突き破って入ってきた車が固定された三人の侵入者を巻き込み車体と結界の壁で肩から上を潰すという圧殺を披露する。

 

「ホント、容赦ないわね……」

 

 どこか遠くを見るような目でリーリスは言った。

 

 

 

 

 

 二階の窓に向かって飛んだ直後の車内では、透流、ユリエ、巴、トラの四人が何かしら叫んだ直後咄嗟に身構えるが――

 

「な、なんともない……?」

 

「ヤー。なんともないです」

 

「な、なぜ、衝撃がこなかったのだ?」

 

「衝撃だけじゃなく、音すらしないとはどういうことだ?」

 

 ゆっくりと身構えていたのを解きながら四人は透流、ユリエ、巴、トラの順で言った。

 

「細かい事は気にしちゃダメだよぉー。はい、降りて降りてぇー」

 

 そう言いながら李々嘩がさっさと車から降りたため透流達も降りると、そこには奏に結李嘩そしてリーリスが居た。

 

「リーリス、それに奏と結李嘩もどうしてこんなところに居るんだ?」

 

「それは、後で説明するわ。今はとにかくあの奥へ向かってちょうだい。私にはまだやることが残っているのよ」

 

「透流、理事長があの奥へ行ってるの」

 

 車の向こう側に見える扉があったであろう破壊された壁を指し、伊万里が簡単に説明する。

 

「そういうこと。で、《特別》としては情けない話だけど、一人抜かれたってわけ。そして、刃からの連絡でまだ敵の残存兵が増援として向かって来てるそうなのよ。だから、全員でそいつらを相手にしてる暇は無いのよ」

 

 リーリスが伊万里に続いて少し早口に言う。

 

「そうそう、戦闘は多分ねー船の上になると思うからとるっちとーユリっちの《絆双刃》コンビでいってねぇー」

 

 リーリスの言葉に付け足すように李々嘩が言う。

 

「わかった。いくぞユリエ!!」

 

「ヤー。了解しました、トール」

 

 そして、二人は壁にあいた大穴の向こうへと消えていった。そして――

 

「これでいいのかしら?刃」

 

「あぁ、これでいい。流石だなリーリス、完璧な演技だったよ。それに、伊万里とサラもお疲れさん」

 

 リーリスが何処へともなく言うと、車の向こう側から刃が現れこちらに向かいながらそんな事を言う。突然現れた刃に驚くトラと巴だが(みやびはシャヴィによる目隠し継続中)ふとここで疑問に思う。

 

「刃、演技とはどういう事なのだ……?」

 

 巴がそう口にする。

 

「増援っていうのは嘘。そして、リーリスにはわざと一人だけ抜かれる様に戦ってもらった。ということさ」

 

「なぜ、そんな事をする必要がある?」

 

「まあまあ、そう険しい顔をしないでくれよトラ。訳はちゃんと後で話すからさ。それより、結李嘩、あのシャヴィに挟まれてる死体の処理と、巴の怪我の治療頼むわ」

 

 トラを落ち着かせつつ結李嘩へと指示を出す刃。

 

「えぇ、わかりました。シャヴィちゃん、もう戻ってもいいですよ」

 

『わかったわ』

 

 そう言ってもう一人のシャヴィが車から人の姿に戻る。

 

「じゃあ、これはうーちゃんの所に送りましょうか」

 

 結李嘩がそう言った瞬間、シャヴィが人の姿に戻ったために転がった三体の死体が血痕すら残さずにその場から消える。その光景に巴は驚いた。

 

「なっ……!シャヴィが二人だと、それに、さっきの結李嘩のは一体……」

 

 ちなみに、トラは透流達と合流する前に刃達の事についての真実を聞かされたため驚かない。そして、結李嘩は巴の所まで行きリーリスの時と同じように怪我を直す。ここで刃が――

 

「なぁ、シャヴィ。もうみやびに目隠ししなくていいぞ」

 

『あら、もういいの?わかったわ。はい、みやびちゃんお疲れ様』

 

 そう言いながらみやびを目隠しもとい抱き付きから解放する。

 

「ぷはぁ……も、もう!苦しかったんだからね!シャ――」

 

『『あら、どうしたのかしら。みやびちゃん?』』

 

 みやびが何か言いかけたところで目の前にいる二人のシャヴィを見て――

 

「えっ……?え、えと、なっ…ななな、なんでシャヴィちゃんが二人もっ!?」

 

 見事に驚いていた。みやびが驚き終えた後、刃は巴とみやびの為にもう一度この場で自分たちの事についての真実をはなす。刃が話している間、巴とみやびは驚きっぱなしだった。ちなみに、巴の怪我の治療は刃が話している間に結李嘩がすませた。

 

「それじゃあ、そろそろ透流とユリエを迎えに行きますか。シャヴィ――」

 

『はいはい、わかってるわ。この人数だと、軍用ヘリかしら』

 

 そう言ってシャヴィが先程車で突入したときに空けた穴の方へ向かって歩き出したところで――

 

「いやー、ひと暴れ出来てスカッとしたぜ。おーい、刃ーそっちはどうなt――って、おめーらもいたのか」

 

『お一人様追加ね』

 

 璃兎が姿を現したのだった。

 

 

 

 

「さて、そろそろ見えてくるはず……おっ!いたいた。李々嘩そっちの準備は?」

 

「オッケーだよぉー。いつでもいけるー」

 

 シャヴィが変身したオ○プ○イの機内で、操縦席に座りながら刃は探していた透流とユリエを見つけて李々嘩に確認する。(ちなみに、機内には刃達4人にリーリス、巴、みやび、トラ、璃兎がいる)

 

「わかった。そしたら合図したら行動開始してくれ……って、《K》がいやがるな。すまんがリーリスとうーちゃん、李々嘩の隣から《K》に見えるように顔だしといてくれ」

 

「へいへい。了解っと」

 

「わかったわ」

 

 一方、透流達はというと潜水艦とともに姿を消した《K》の方を見ながら――

 

「やれやれ……。厄介な奴と縁を持っちまったみたいだな」

 

「そうですね。しかし、次に会うまでにもっと強くなっていれば、問題の無い話です」

 

 そんな事を言っていると、上空で待機していたヘリから李々嘩が降りてくる。

 

「やっほー。おまたせー」

 

「いや、むしろいいタイミングだった。所で……ユリエ。いつの間に船酔いを克服したんだ?」

 

「…………。忘れていました」

 

ユリエの顔色がみるみる変わっていく。

 

「ユ、ユリっち!! 大丈夫!? 待ってて、今すぐ引きあげるから!!」

 

 そう言いながらも、素早くユリエにハーネスを取り付けると――

 

「とるっち、ゴメン。先にユリっちだけ引き上げるから。待ってて」

 

「あぁ、わかった」

 

 李々嘩はそう言いながらユリエを抱かかえる様な体勢になり手で合図をするとヘリへと引き上げられていった。そしてこの後、透流は引き上げられている途中でラッキースケベもとい李々嘩の孔明の罠により李々嘩の胸を触った事を機内では璃兎に弄られ、リーリス、ユリエ、巴、みやびからは終始ジト目でみられトラからは呆れられていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 臨海学校の終了から三日後、理事長室には朔夜に三國と璃兎それに加えて刃達五人の姿があった――

 

「――と、まぁこんな感じの予定だ。そして、ついさっき《装鋼の技師》がみやびに接触したところだ」

 

「本当に、刃の言った通りに事が進みますわね……。わかりましたわ、こちらもその様に動いていきますわ」

 

「おう、わかった。さてと、これからが楽しみだな」

 

「お兄ちゃん。顔がニヤニヤしてるよ」

 

「あー、絶対何か企んでるでしょ」

 

「ふふふ、刃君らしいですね」

 

『事後処理が面倒にならない様にしなさいよ』

 

「なんか、刃に振り回されそうな気がしてきましたわ」

 

 そう言いながら頭をおさえる朔夜なのであった。

 






 皆さんお久しぶりです。意外と大学生活に慣れるのが大変で、なかなか書くのが進まず……というような状況でした。面目ないです……。今回は、三巻終了まで一気に進みました。流石に、一話にまとめるには長いと思い前・中・後に分けました。

 一応これからも頑張れる範囲でやっていこうと思うので気長に待っていただけると嬉しい限りです。では、また次回も不定期更新ですがよろしくお願いします。
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