---目の前に空飛ぶ少女がいる
夢みたいなお話だ、俺もそう思う。しかし実際に目の前にいる。
---かなり幼いな
ふっと、そう考えた。
「母さん...私は...」
金色の髪をツインテールにした女の子はこちらに向き直る。
「母さん...どうして...私は」
彼女は斧らしき物を俺に向ける。
「私はあの子じゃない!!」
俺の視界は黄色で埋め尽くされた。
いつもの潮風に吹かれながら俺、青井 涼は岬に座りこんでいた。少し眼を閉じると潮の匂いと共に昔の記憶が...
「ッ...!!」
背筋が凍る、呼吸が止まる、目がくらんであの頃の思い出が...
「涼~、コーヒー買って来たぞ」
そこで現実に無理やり引き戻された俺は声のした方に向き直った。
「サンキュ、楽」
朝田 楽、俺の小学校以来の友達だ。
「顔色悪いぞ、またアレか」
アレ---昔の記憶は8年経った今でも鮮明に思い出す。一種の病気のような物だ。
「まあな、けど少し休めば問題ない」
そう言うと受け取ったコーヒーの缶を開けて一気に飲み干した。ちょうどよい温度になったコーヒーはほんの少しの苦味と喉を焼くような甘さを舌に残した。
海沿いの道を二人で並んで歩くと突然違和感を感じた。日常のようで全く違うような感覚。
「手分けするか、涼はスーパーの方な。何か判ったら即連絡するぞ」
楽も何か感じた様だ。俺はその提案に乗り彼と別れた。
---そして話は冒頭に戻る。
「あ、目が醒めた!」
隣で女の子の声が聴こえる。痛む身体を起こして目を向けると紛れもなくさっきの少女だった。
「いきなり何をするんだ」
「え...!?」
少女は目を丸くし固まる。さっきとは全然反応が違う?
「何言ってんだい、フェイトはアンタを保護したってんのに」
声の方を向くとグラマーな女性が俺を睨み付けていた。
「いや、さっきそれ振り回してたろ」
俺は少女の手にある黒い斧を指差した。
「まさか私の欠片に会って...!でもそれじゃどうして...それにあの魔力は...まさか...」
欠片?魔力?この子はイタイ方の子なのか...
「えっと、その、用事が有るからこれで!!」
「エエッ!?ちょっと待って...っ」
彼女には悪いが俺にそっち系の趣味はないのでとにかく逃げようとした。
「ッ、バインド!!」
そんな俺を捉えるがごとく黄色の輪が縛りつけた。
「魔法ねぇ」
数分後、俺は色々な説明と共に開放された。何やら俺は魔法の世界に足を突っ込みこの子の偽物に遭遇、あげくのはてに魔法に覚醒しましたと。
魔法とか普通は信じないけど目の前で見せられたからなぁ…取り敢えず信じる事にした。