ドラゴンクエストⅩ 招かれし光の戦士 オフライン   作:プードル警部

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第四話 睡眠妨害

たき火の薪が小さな音を立てて燃えている。

 

 

「ふむふむ、じゃあ……」

「ふわぁ……。もう明日でいいんじゃ……ないでふか……」

「おいおいまだ21時なのに、もうずいぶんと眠そうじゃないか」

 

 

 

ミドリが用意した魔法の袋に入っていた懐中時計を見ながら呟く。ミドリが自分で作ったもののようで、フタにデフォルメされた妖精らしきものが刻まれている。無駄に上手いのがなんか悔しい。

 

 

 

「何言ってんです……か、この世界は…………zzz」

「……」

「……すやぁ……んぅ……」

 

 

「寝ちゃったか。仕方ない。それにしても本からイビキが聞こえるってなんだか不思議だな」

 

 

 

ミドリが見事な寝付きっぷりを披露したが、確かにこの世界では夜の闇とともにベッドに入り、日の出を目安に起床するといった生活が、健全で普通の生活なのだろう。電気なぞ通っておらず、ランプといった明かりも有限だ。しかし、現代社会で生活していた身としては、こんな早い時間から、しかも草の上に立てたテントの床で就寝などなかなかできようはずもない。

 

まだまだ話したいこと、聞きたいことは山ほどあったが、起こすのはさすがに可哀想かとタスクはミドリが宿っている本、冒険の書にジャージのポケットから出したハンカチをかけてやる。そう、実はタスク家の中からこれまでずっとジャージだった。ジャージ姿でサイクロプスから逃げ回っていた。はたから見たらなかなかな絵づらである。そして暇つぶしの手段がなにか入っていないかと袋の中をあさりながら、先ほどまで話し合っていたことを思い返す。

 

 

 

 

 

 

まずミドリは自身の命名を終えてすぐ、せっかくだからとタスクの名前を改名させようとした。しかしこの二人が結局適当な名前を思いつくわけもなく、下の名前の読みそのままタスクで通すことを決めた。

その後二人が確認したのは、所持品である。タスクが持ち込めた唯一の物は、防災用の非常袋であった。中身は水、非常食、救急セット、手回し懐中電灯、タオルとなっている。水、食料はいずれも多いとはいえない量だ。

 

一方ミドリが持ち込んだ袋には、武器や服である弓、マントなどの他にもテント、毛布、火打石、ナイフ、ランタン、調理器具全般、と素人の頭で考えるキャンプの必需品はあらかた詰まっていた。米や肉などの食料はほとんどなかったが、なぜか充実したお菓子類もあった。

そしてアストルティアの通貨であるゴールドをいくらか、それに大陸鉄道のパスと、ミドリが取り憑いている冒険の書に世界の地図といったラインナップになっている。(ちゃんと鯖缶もあります)

 

 

 

 

 

「ぐごごごごごごごご……zzz」

 

 

 

 

 

予想以上に用意のいいミドリに感心しつつ、なんとかやっていけると一安心したタスク。ミドリから手渡された(本の状態で突っ込んできた。ハリケーンミキサーのような猛烈な体当たりで)冒険の書には、その名の通り、駆け出し冒険者が気をつけるべきことや、魔物の生態、世界各地の解説が記されていた。どれも簡易的で浅い内容しか書かれていなかったが、それでもありがたいことである。

 

そんな役に立つ品物の中でも一番目を引いたのはやはり世界地図であった。大陸全土を詳細にかつ見やすく描いている。

 

 

 

(現在地がわかったのはでかいよな。あのサイクロプスが特定の鍵だったってのは皮肉だけど)

 

 

 

ゲーム内では、サイクロプスの生息範囲は多くなかった。まあ、あんなヤツがうじゃうじゃポコポコいるゲームだったら、ガンジーもディスクにドロップキックをぶちかますであろう。

だがタスクにとって既にリアルであるこの世界で、モンスターの生息域まで同じなのかは定かではなかった。ゲームと同じだと考えると痛い目を見るかもしれない。それでも今は圧倒的に情報がないのも確かなことだ。あえてゲームのでの知識を用い、1匹だけいたサイクロプスと周りの風景そして世界地図から現在の場所を類推すると……

 

 

 

(やっぱりキリカ草原だよな。勿論100%ってわけじゃないが)

 

 

 

「ゴギャギャギャギャ…………zzz……」

 

 

 

 

キリカ草原から近い町というと、アズランの町とツスクルの村の2択になる。タスクは人の多さ、繁栄の具合を考慮してアズランに向かうことに決め、それについて意見がないか尋ねようとしたところで、ミドリは寝てしまった。

 

 

 

(他にもまだまだ知りたいこともあるのだが……)

 

 

 

毛布をごろごろと転がりながら明日の予定を考えていく。そもそもあまりの非現実差に我を忘れていて、闇を倒せというアバウトな約束を大喜びでしていたが、具体的に何をどうすればいいのか。時間や、方法といった制約も何も知らされていない。

 

 

 

(もしルビス様の依頼に時間の余裕があるのなら各地を観光でもしたいとこr……)

「ズドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………zzz」

 

 

 

「だーーーーーーーーーーーーーーうっせえよ!!!!!!!」

 

 

 

年頃の少女が出しちゃいけないイビキにさすがのタスクもキレる。本を平手で殴る殴る。残念ながら完全に頭悪い人にしか見えない。

 

 

 

「…………ヌゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……zzz……ワレハ…カワイイ……ヨウセイナリ……zzz」

「なんだコイツ!すげえ図々しい寝言!!そして起きねぇ!!」

 

 

 

本とミドリの触覚は連動していないのだろうか?少なくとも声は聞こえているはずなのに怒鳴り声を聞いても普通に寝続ける妖精本。諦めて本をタオルでぐるぐる巻きにして端に投げ捨てる。考えることを諦めたタスクは両目を強く閉じて、眠る努力をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでアズランに向かうってことで決定ね。異論は認めない」

「いいですけども、なんで機嫌悪いんですか?」

「自分の胸に聞いてみなよ」

「今の体は、本ですけどね」

「やかましいわ」

 

 

 

誰かのせいで完全な寝不足であり機嫌が悪いタスクは、朝食代わりにクッキーをほお張りつつ、出立の用意をする。テントをたたみ、火の始末をして、ジャージを脱ぎ捨て綿でできた服を着てマントを羽織る。最後に弓を背負って準備は完了した。ちなみにちゃんと綿でできた下着も入っていた。よかった、ノーパンではないから安心だね!

 

 

 

「おおー見た目は完全に、一端の旅人ですね」

「まあ確かにそれっぽくはなったかな」

「それじゃ早速行きましょうか」

「そうだな。って待って、まさか本の姿で浮きながら旅する気か?」

「ええ、そうですけど」

「いやいや明らかにおかしいでしょそれは!」

「大丈夫ですよ。この世界おかしなことなんてありふれてますから。本の精ですとかいっとけば余裕です」

「いいのか……いや助かるんだけどさ……」

 

 

 

とりあえず歩き出す一行。地図上では10kmと少しで、アズランとの中間地点である木かげの集落という場所があるのでそこを本日の目的地としている。

 

 

 

「んで聞きたいんだけどさ」

「なんですかー」

「なんでこんな草原にほっぽりだされたの?」

「ああ本当は予めどこの町の近くに出たいか、タスクの希望で決めようとしていたのに、悲しい事件が起きたからできなかったんですよね」

「悲しい事件って……まあいいや、僕の希望でスタート地点を決めるってことは、まず何をすればいいかとかルビス様に聞かされてないってことか?」

「ええ、あくまで最終目標は闇の化身の撃破ですが、それに至るまでの経緯は決められていませんからね。ご自分を鍛え上げて単身挑んで討ち取っても、人を雇って数の暴力で攻めるもご自由にってことです。」

「なるほど……それは自由度高くて結構なことだけど、ゲームじゃなくて実際に自分が動くとなると……マニュアル通りの仕事って楽だったんだなぁ……」

「もう元の世界が恋しくなってどうするんですか」

 

 

 

そうはいわれても、どうにもこれから何をするか定まらないというのは、想像以上に居心地が悪い。町に行くという目標が今のところはある。だが実際町について活動するとなるときに何をすればいいのか。

 

 

 

「私の個人的な意見だと、やっぱ王道的に勇者のPTに入って補佐するーとかがいいんじゃないですか?」

「うーんそれなんだが……実は勇者がどこの誰だか知らないんだよね」

「えっ!?ど、どういうことですか?あなたはこの世界の知識を持っているはずじゃ?」

「実は僕がやっていたころには勇者がまだでてきていなかったんだ」

「?……ゲームの主人公が勇者じゃないんですか?」

「それが違うんだよね、勇者は別に存在していて、そして確かその勇者の助けになりなさいーみたいなこと言われてたような気がする……」

「なんとも曖昧な情報ですねえ」

「仕方ないだろう?なんせ最近は全く手を出していなかったんだ。一年半か下手したらもっと前の記憶だぞ。なんか今更ながら少し不安になってきたな……」

「うーん、まあルビス様が選別したのですから、その程度の記憶でも問題ないと判断されたのでしょう」

 

 

 

そのルビス様は割と適当なノリで、『コイツとーコイツとーコイツっ!それじゃ最後の選抜は妖精のやつに任せよ~っと!』っとポテチを食いながら決めたことを二人は知らない。

 

 

 

「命の危険のときは助けてくれるって言ってたけど、ルビス様に連絡を取ることは出来ないのか?」

「あの方はお忙しいですからねー。直属の私でさえも知らないくらい、色んなことをされているみたいで」

「そっかー、それならしょうがないか」

 

 

 

ルビス様は現在ソファーで睡眠されています。時の流れがない場所なので矛盾するようだが、体感時間にして3週間ほど。

 

 

 

「あれ?そういえば勇者について驚いてたけどミドリはこの世界について知らないのか?」

「あ、はい。任務を受けてすぐタスクの世界を観察し、候補者選びに時間をかけていたので、この世界のことはほとんど知りません。あなたの知識頼りになりますね」

「うへーますます困る、やっぱこの世界の主人公に会うのがいいのかな」

「私もそれがいいと思いますよ。主人公と一緒にいればそのうち勇者にも会えるでしょうし」

「よし、決まりましたね!その主人公のいるところまで行きましょう!」

「うーん…………」

「どうしたんですか?方針としては間違ってないと思いますけど」

「まずこの世界に送られた時間が、ゲームのシナリオの途中とかだったらとても難しい。各地を旅しているはずだし」

「それはないです。場所の設定は要望によって変わるため、私に変更の権限がありましたが、時間指定はルビス様がされました。恐らく時間的余裕は多めに持たされているはずです。それも年単位で」

「となると主人公はまだ誰だかわからない。選ぶ種族によって始まりの村も容姿も違ってくるし……」

「もしかしたら、主人公が複数いるパターンもありますよね」

「あ~、それもありえるのか」

「考えるほどドツボですね」

「まさにそれだわ……まあいい!もう気楽に行こう!とりあえずアズランでこの世界の情報を得る。そしてそれぞれの村を巡ってでも主人公を探す。ハイ決めた!考え事終わり!」

「そうですよ、今そんなこと気にしても無駄です!そんなことよりこの冒険の書によるとアズランには温泉があるんですよ温泉が!」

 

 

 

強引に思考を打ち切り、歩みを進めるタスクとミドリ。基本的に二人とも楽天家なので長く物事を考えるのが苦手だ。そんな二人だからこそ短期間でここまで打ち解けているのかもしれない。

 

 

 

「あっそこに敵いますよ」

「ほいっと通常攻撃」

 

 

 

――サクッ

 

 

 

『ギャァ』

 

 

 

「うわー実はモンスター初討伐なのにすっごい軽いですね」

「正直あの悪魔のせいでどうにもインパクトが欠けてね」

 

 

 

悲鳴をあげ倒れたもみじこぞうは、しばらくすると体が薄くなり消え去った。

 

 

 

「おっ消えてお金が出てきたぞ。へーリアルで見るとなんか面白いな」

「冒険の書によると自然発生した魔物は、倒してある程度の時間が過ぎると魔力に還元されるみたいですね。その際にゴールドが出てくるのはどうやらこの世界での人々の間でも謎みたいです。魔物の部位が欲しければ倒す前に刈り取るなりしておくか、倒した後の時間で剥ぎ取るみたいですね」

「へぇーなるほどねゲームだと宝箱からのドロップ扱いだったのが、剥ぎ取りに変わってるってことかな」

 

 

 

まあ敵を倒したら宝箱が降ってくるなんてのは明らかにおかしい現象である。そう思いながら、またも現れたもみじこぞうに矢を放つ。一撃で問題なく倒れ、消えるのを待っていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリーン!ドスッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「結局宝箱落ちてくるんかいっ!!!!!!」

「この現象もどうやら謎みたいですね」

 

 

 

 

もみじこぞうは たからばこを おとして いった という具合でタスクの前に大きな音を立てて宝箱が出現した。

 

 

 

「あ、これレア箱じゃん!おお!ちいさなメダル」

「順応めっちゃ早いですね」

 

 

 

 

 

なんだかんだ楽しんでます。

 

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