ドラゴンクエストⅩ 招かれし光の戦士 オフライン   作:プードル警部

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今更ですけど、独自解釈、独自設定のオンパレードです。今更ですけど。


第五話 脳筋無職

『風の町アズラン』はエルトナ大陸にあり、エルフである領主タケトラが治める町。代々続く風乗りの一族が行う、古き澱んだ風を運び去り、新しい風を招く風送りの儀が有名。儀式を助けるカムシカと共に多くのエルフが暮らしている。

 

 

 

 

「ふー、ついに着いたよ」

「着きましたねー。苦節二日にしてようやくですよ」

「風の町アズラン……この古き良き町並みはなんと言うか、心をくすぐる言葉に出来ない良さがあるよね」

 

 

 

道中数回の戦闘があったが、危なげなくアズランの町まで到着した。一度バブルスライムを踏みつけて、盛大に転倒するというハプニングがあったが、自称本の精の腹筋を痛めただけで終わったので、危なげなかったはずだ。絶対復讐してやる。

 

 

 

「えーっとまだ日は高いけど、まずは宿をとろう」

「そうですね、この町にはどのくらい滞在するんですか?」

「とりあえず情報収集にかかる時間や旅の疲れも考慮して、最低でも1週間はここにいようかなって……というか次にどこに行くかも決まってないんだから、もしかしたら長い滞在になるかもな」

 

 

 

宿は問題なくやっており、ほのかに畳の香りがする和風の部屋を借りることが出来た。荷物を部屋に置き、さっそく町に繰り出す二人。

 

 

 

「ずっと歩いてきたんですから、もうちょっと部屋でゆっくりしてもいいんじゃないですかー?」

「これからはしばらくの間くつろげるんだから、先に町中を見て回りたくてさ、施設の種類や位置を記憶と照らし合わせて調べて行きたいんだ」

「はしゃいじゃって……まるで初めて都会に来た田舎者みたいですね」

「正直テンションあがってるのは認めるよ。知らない町を探検って心が躍るわ。ぱっと見渡しただけでもゲームより広く感じるし、家も多いし、人も多い気がする。お!あっちは酒場か、夜になってきたら行ってみたいな」

「酒場って大丈夫ですか?多分人とお話しますけど、昨日みたいに話しかけられてもガチガチに緊張したりしませんか?」

 

「だから昨日は違うんだって!この世界での初コミュニケーションだし、しかも初めてエルフを見たんだからしょうがないじゃん。肌ピンクで耳とがってて、でもそれが自然な造形で成り立ってるっていうか、なんとも不思議な…………とにかく、最初見たときは驚いたけど、すぐ慣れたから大丈夫だって、羽だったらミドリだって似たようなの生えてたし」

 

 

 

昨日はアズランまでの道中にある休憩所。木かげの集落で宿をとったのだが、タスクはこの世界での第一村人との会話にものの見事に失敗していた。

 

 

 

「優しく声かけてきてくれた宿屋の人をにらみつけながら「一晩泊まりたいでござる!」……って言い出したときは笑うよりも呆れが先にきましたよ」

「違うんだって……ちょっとだけミスっただけなんだって……これでも向うの世界だと営業職だったんだって……」

 

 

 

どう考えてもちょっとしたミスではない。明らかにやっちまっている。楽天家なタスクもかなり凹んでいたが、ベッドに入って一晩寝ただけで、まあいいやと開き直った。簡単に寝逃げでリセットできるのも才能だ、きっと。

 

 

 

「とりあえず他を見て行こう。武器防具もいいけど特に道具屋とか気になるんだよね。薬草の味とかちょっと楽しみ」

「良薬は口に苦しといいますし、どうせ物凄く苦いですよ」

「それも一興だって」

 

 

 

意気込んで町に繰り出した二人は、道具屋を筆頭にゲームで存在した店だけでなく、本屋や食べ物の屋台、色々な店を回り、なんとか各店員とのコミュニケーションには成功。あたりが薄暗くなる頃には、一通り町内を回る事ができた。

 

 

 

 

「んまーーーーーーーー薬草、激おいひいでふ!!」

「お前がハマってどうする」

 

 

 

ちなみに薬草は普通に苦い、すごく苦いという訳でもないので十分に食べられる。どうせなら調理しておいしく回復したいところだが、やはり生で摂取しないと効果が格段に落ちるらしく、話を聞いた道具屋の人に苦笑いされた。ミドリがなんで喜んで食べてるのかはわからない。よくわからないし緑色のもん食わせとけば良いんじゃないかな。その辺の草とかバブルスライムとか。

 

 

 

「あと目ぼしい所で行ってないのは、教会と酒場と領主様のお屋敷だけかな」

「領主さんのお屋敷は多分無理ですよね。兵士さんが見張ってましたし」

「だろうね。夜も更けてきたし、当たり前だけどゲームより厳重だったよ。特別な理由とかコネがない限り、こんな夜に会うには一人前の証が必要だろうな」

「一人前の証?身分証明書みたいなものですか?」

「うーん多分そんな感じじゃないかな。あんまり覚えてないけどゲームだと始まりの村の偉い人がくれて、冒険の書の表紙に目立つ感じで刻まれたはず」

「ふむふむ、とりあえず私のオリジナルのマークなら刻めますけど?」

「やめてください。お願いします」

 

 

 

どこにだしても恥ずかしくない、不審冒険者が出来上がってしまう。

 

 

 

「王城に入るのに必要だったきがするけど、とりあえず今は特に問題ないさ」

「となるとやっぱり酒場ですか?」

「ああ、いくら開かれているとはいっても夜に教会いくのはちょっと遠慮したいところだし、情報収集はやっぱ酒場って決まってるからね、この世界の酒も飲んでみたいし」

「ああーいいですねぇ……私も早く実体化して飲み食いしたいですよ……」

「へっへっへ……ミドリの分まで飲みまくってやるぜ。いざ乗り込むぞ!」

 

 

 

目を輝かせ、意気揚々と酒場にむかうタスク。その頭の中には希望しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭が痛ぇ……」

「あんだけ浴びるように飲んでたんだから当たり前です」

 

 

 

 

町に到着して二日目の朝、タスクは悶えていた。

 

 

 

「だって……無職ってなんだよ……」

「文字通りノージョブです」

「ノージョブ……」

「まあいきなり絡まれて、『あなた無職ですね!』なんて言われたら凹みますよね」

「正直その発言を聞いてからの記憶がないわ」

 

 

 

 

それもこれも昨日の夜のこと。酒場に突入して席についてすぐ、神官の格好をしたエルフが近づいてきて、珍しいものを見たという目を隠しもせずに話しかけてきたのだ。元の世界では働いていたタスクだが、このアストルティアでは無職扱い。一応FF14の吟遊詩人であるキャラを引き継いでいるのだが、どうやら反映されていないらしい。悲しみの無職だ。速攻で酒に逃げた。

 

 

 

「もうヤダ、絶対他の人にも笑われただろ……もうあの酒場いけない……」

「いや、どうやら神官の人は、タスクを煽ったわけでも嘲笑ったわけでもないみたいです。純粋に無職が珍しいってことみたいですよ」

「なにそれどういうこと。なんでミドリが知ってるの?」

「心をノックダウンされたタスクの代わりに、その後私が神官さんと話してましたから」

「いや本が会話するって……」

「案の定、本の精ですと自己紹介したら、そんな妖精もいるのかーと割と素直に納得してくれました」

「なにそれすごい」

 

 

 

アストルティアの懐はクッソ深い。

 

 

 

「どうやらこの世界の人々は魔物と戦う人以外でも、ほぼ全ての人が戦闘職についているらしいです」

「え?そうなの?」

「ええ、なんでも子供の頃に武器や魔法の適正を調べて、各自に合った職業の祝福を受けるらしいです」

「ほー、なるほどねえ。そういえば主人公も初めから職業についていたし、それはこういう仕組みだったのか」

「ちなみに、武器はどの職でも自分が扱えるならば装備可能ですが、スキル、呪文の覚えやすさなどは職が大きく影響してくるみたいです。あくまで覚えやすさなので絶対ではないそうですが」

「ゲームとの相違点だなー。まあ戦士が短剣を絶対使えない。とかは不自然だしね。人それぞれって部分もあるよね」

「ステータスも職によって大きく左右されるそうです」

「それでもほぼ全ての人が戦闘職についているのか?」

「どうやら無職ってのはなかなかのハンデみたいですね。無職の人の力のステータスよりも、腕力は脆弱な職業である魔法使いの力のほうが強いんですって。そして魔力も無職より戦士のほうが多いという始末で」

「……つまり、職に就かない理由がないってことか」

「イエス、そういうことですね」

「そりゃ驚くわ、神官の人……」

「リアル人生縛りプレイですもんね」

 

 

 

チャレンジ精神は大事だからね

 

 

 

「あ、ちなみに転職についても聞いてみたんですけど……」

「おお、それも知りたかったんだ。ミドリが聞いててくれて本当に助かる。なんで僕は自棄酒なんてしてたんだろう……」

「元気出してくださいよ無職」

「普通に凹むのでやめて下さい」

「それより転職ですけど、どうやら一流の冒険者でも、気軽に出来るようなものじゃないらしいです」

「え、マジかい」

「マジです。どうやら職によるステータス変化というのは相当なものだそうで、いままで培ってきた感覚が全く変わってしまうそうです。変わってしまった自分の能力に振り回されてしまい、慣れるのも困難。一応ダーマ神殿本部から認められたもののみ他の職の祝福を受けられるそうですけど、今まで良い結果を得たものはいないらしいです」

「うわー難易度物凄い高くなってるのか。ゲームと全く違うなそれは」

「ですから、ダーマ神殿本部では部分的に他の職業の力を与えることが出来る方法を模索しているみたいです。まあ進展はないようですが」

「望み薄いねぇ、とりあえず僕が職につくときは、どれを選ぶか真剣に悩まないとな……」

「職を与えること自体は簡単みたいで、酒場の神官さんでもできるそうです。とりあえずタスクも早めについておいたほうがいいんじゃないですかね」

「転職できないとなると……とりあえず保留にしたいなあ」

 

 

 

そもそも武器も弓しか使っていないし、魔法も詩人は使えないと思っていたので試してすらいない。自分の適性を調べてからにしようと、タスクはとりあえず得意の後回し作戦を決行する。

 

 

 

「とりあえず体調が落ち着いたら、武器屋いって色んな種類の武器を買って適正試してみるか。魔法は……本屋にマニュアル本みたいのあったしそれを買うかね」

「そんな買いあさって、お金大丈夫ですか?」

「多分大丈夫。結構袋に入ってたから。それにモンスター倒しつつ試すんだから少しだけど稼げるしね」

「それならいいんです。袋の中身は私も入れましたけど、この世界の中の物とかはルビス様に頼んだので、よく把握してないんですよね」

「今のところ不足はないよ。さすがルビス様だ。一人前の証がなかったのは、自分でどうにかしろっていう遠まわしな激励みたいなものだろうし。二日酔いの薬が入ってたらよりパーフェクトだったんだけど……」

「薬草食べます?おいしいですよ」

「傷にしか効かないって言ってたでしょうが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、やってまいりました町の外。武器を試しますよ、ミドリ君」

「テンション上がってて、そこはかとなくウザいですね」

「いいからいくぜ!」

 

 

 

体調回復してもろもろ買いこんで、いざ適正を調べるとき。

 

 

 

「とりあえず弓!」

「サクっと見事にど真ん中。まあ当然適正ありでしょう」

 

 

 

プスっと眉間を射抜かれて力なく消えていく赤い魔物。相手役は町を出て直ぐの場所をうろついていたスライムベスさんです。ぷるぷるしてて可愛いけど魔物だから慈悲はない。

 

 

 

「こっから本番!片手剣!セアッ!」

「お見事!きれいな剣筋です。適正ありじゃないですかね?」

「あれまいきなり?確か武器屋の人は……」

「生まれ持っての武器適正は、平均一人に二つくらいって言ってましたよね」

 

 

 

片手剣と弓、遠距離と近距離でバランスもいいし癖があまりない。かなり当たりの適正である。

 

 

 

「せっかく買ったし、一応全部試してみないとね。次はこのでっかい剣だ。そりゃっ」

「んースライムは倒せてますけど、なんとなく違うような。適正ありとするには弱いような?」

「やっぱりか、自分でもわかるくらいだ。多分両手剣は適正なしだな」

 

 

 

体捌きが明らかに今までの武器と違う。素人目にもわかる違和感が存在している。スライムベス氏も切られたというよりは、重さで潰されたという様相で消えていった。

 

 

その後も武器屋で買えた装備の範囲で調べた結果……

 

 

 

「適正ありと思われるものは、片手剣、短剣、両手杖、槍、斧、弓、格闘、盾だな」

「もう、見事に前衛というか……ザ・脳筋って感じですね」

「弓と杖なかったら近寄って物理で殴る!って感じだったな……」

「……杖も魔法使うんじゃなくて、突いたり払ったりしてましたからね?杖術は結局物理ですからね?」

「あー、あー、聞こえないっすわ。何も聞こえないっす」

 

 

 

STR特化魔法使い、ワンチャンあるか……?

 

いやナイっすね。

 

 

 

 

「それにしても、多いですね。一人に平均二つのところを八つですよ」

「……これ適性あるのどう見てもFF14の職の武器だよなぁ」

「どうしますかね、基本一つを大きく上げて、サブでもう一つ軽くってのが冒険者の間で多いみたいですけど」

「器用貧乏になってもしょうがないしな。弓メインでいくのは確定として、あとは……無難に片手剣をやってみようかな」

「本当に堅実なところにしましたね。弓と斧を使い分けるタスクとかちょっとだけ見たかったんですけど」

「実際きついよね、それ。楽しそうだけど」

 

 

 

弓を掻い潜って接近戦に持ち込んだと思ったら、相手が斧を振りかぶってきたら焦る。ヤツラはビビる、私もビビる。

 

 

 

「そして残念な結果として、今のところ魔法は全く使えないと……」

「いやだって……急に魔力とか言われましても」

「ですから、体の中を巡ってるコレですってば!」

「ごめん本当にわけわかんない」

「正直魔力がどれかわかんなくても集中して呪文を唱えるだけですってば!メラなんて詠唱なくて子供でもできるんですよ!ほらもう一回!」

「ふぅ……」

 

 

 

 

息を整え、目を閉じて集中力を高める。そして、

 

 

 

 

 

 

「メラッ!!」

 

 

 

 

 

 

叫びながら目を見開き、気合を入れて杖を突き出したら、そこには体を見事に刺し貫かれたスライムベスの姿が……

 

 

 

 

「今のは惜しかったな」

「どこがですか!!」

 

「ほら、スライムがメラの熱で赤くなってるし?」

「こいつはベスですよ!!赤いのは生まれながらのアイデンティティです!!」

 

「魔法はほら、そのうちできるようになるって」

「いやあどうでしょう。正直センスを感じませんね」

 

 

 

ミドリから魔法センス×とお墨付きをもらったタスク。テンションはまた下がる。今日だけで下がって、上がって下がって、と実に忙しい。

 

 

 

「えーっとエオルゼアに伝わる魔法も無理なんですか?」

「無理無理、やり方インストールされてない」

 

 

 

 

 

 

それでも物は試しと、ケアル!と叫びながら正拳突きをするタスク。ベス氏はまた犠牲になった。犠牲の犠牲に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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