インフィニット・ストラトス 黒い鳥降臨 作:禿げ眼鏡(三十路)
4月
学園では入学式が行われていた。
ハインツ達も出席していた。が、一部の新入生達はハインツ達を小馬鹿にしているような視線に少々苛立ちを感じていた。
「なんで男なんかがISに・・・」ヒソヒソ
「男がISに乗るなんて生意気よ。」ヒソヒソ
楯無が祝辞を述べているなか、聞こえないような小声で文句を言っていた。
だが新入生達は知らない。彼女らの会話は全て待機状態のISを通じて筒抜けであった。
苛立ちを隠せないのはハインツだけではない。顔に出ていないがシュヴァルツェア・アードラー隊は勿論、出席している教師達も、在校生達もである。かつて起きた事件を教師達や在校生達も知っている。
だからこそ、出席している教師達や在校生は新入生の小声に怒りを感じていたのだ。
楯無「では、教師を代表してハインツ・ガーランド先生
お願いいたします。」
ハインツは呼ばれて壇上に立つ。
ハインツ「指名を賜った実技担当兼学園防衛部隊、シュヴァルツェア・アードラー隊隊長のハインツ・ガーランドだ。新入生諸君、入学おめでとう。そして諸君らに言わなければならない・・・」
挨拶したと思った瞬間、空気が変わった。
ハインツ「文句あるなら教師陣全員で相手してやろうか小娘共・・・」
新入生だけではない。一部の教師達や在校生達がその暗く冷たい空気に呑まれた。あの初代ブリュンヒルデと呼ばれた織斑千冬ですらその空気に呑まれた。まるで鋭く研ぎ澄まされたナイフを喉元に突きつけられる・・・
千冬(これがハインツさんの・・・恐ろしい。今にも殺されそうだ・・・)
ハインツ「俺達はな・・・ファッション感覚で乗ろうなんて思っている奴等と女尊男卑なんて下らねぇ思想掲げているバカタレが嫌いだ。ここにいる在校生達はそう思ってはいない。ISは女尊男卑のシンボル?女が乗れるから立場は男より上?
んな訳ねぇだろうが!」
ハインツの怒号が鳴り響く。
ハインツ「ある人は言っていた・・・ISは成層圏を超えたその先・・・宇宙へ行くパートナーであると!フロンティアを目指す友であると!なにより・・・道具や玩具じゃねぇ・・・心を持つ相棒だと!」
新入生達は驚いていた。ISは本来宇宙開発の為に開発された。だが、一部の権力者達はISを兵器として利用しているのはだれもが知っている。だが彼女らが驚いていたのはそこではない。
ハインツははっきり言った。道具や玩具ではない。
共にフロンティアへ行く相棒だと・・・
ハインツ「・・・女が乗れるから偉いなんて思っていたら駄目だ。裏方の整備班や開発、製造に携わる人間には大勢の男がいる。ISだけで戦争なんて出来ねぇ。補給路や兵站の確保・・・それに関わる全ての任務に沢山の男達がいるんだ!
・・・話が反れた・・・女尊男卑なんて下らねぇ思想は捨てろ。いずれそのツケが倍になって返ってくる。最悪・・・後ろから殺られる羽目になるぞ。」
新入生達は戦慄した。女尊男卑の思想は捨てるべきだと。でなければ逆襲されると・・・
ハインツ「・・・もし俺達が気に食わないんだったら何時でも相手をしてやる。ただし騙し討ちなんて下らん真似はするな・・・真正面から正々堂々とかかって来い!」
マギー(ふぅ・・・一時はどうなるかと思ったけど・・・大丈夫みたいね・・・)
ハインツの怒号で危うくどうなるかと思ったが特に大事にはならなかった。在校生達や教師陣全員胸を撫で下ろす。
ハインツ「最後に、諸君らに贈る言葉がある。
困った時や悩み事がある時は周りを頼れ。俺達シュヴァルツェア・アードラー隊やブリュンヒルデがいる。在校生の専用機持ち達を頼れ。だが間違っても甘えるな。
技術は唯真似するな。技を盗め、そして己の力で磨き昇華しろ。
そして最後だ・・・命を軽んずるな。命を捨てるな!俺は・・・自分の命を捨てる事や他人の命を奪うような真似は学園にいても、いなくても・・・俺が許さん!」
不器用ながらもハインツなりに言える言葉である。
ハインツ、ギュンター、悠翔・・・そしてマギーはかつて傭兵だった。子供にそんなバカな真似はさせまい・・・子供が戦争に行って人を殺す・・・青臭いかもしれない。だが学園に在籍している以上、それは絶対許さない。
だからこそ、ハインツは断言する。そんな子供にはさせない、させる訳にはいかないと。
ハインツ「新入生諸君、さっきは怒鳴ってすまなかった。許してくれ。」
ハインツはそう言って謝った。
ハインツ「そして新入生諸君!IS学園へようこそ!歓迎しよう、盛大にな!」
10秒ほど遅れて拍手が鳴る。そして1人、また1人と拍手をする。
鳴り響く拍手と共に、入学式は無事に終了した。