今回から本編開始となります。
第一話 「始まりの司書室」
「父さん、母さん、夢、行ってきます」
返事を返す事もしない遺影に手を合わせて、
玄関でスニーカーに履き替えて、家を出る。
少し前まで夢と二人で歩いていた通学路を一人で歩いている。
もう、寂しいなんて感情も悲しいなんて感情も無い。
何も考えずに歩いていると、後ろから誰かに背中を叩いてきた。
「おっす、空!」
坊主頭に俺と同じくらいの身長で学ランの前を前回にしている、まさに野球部といった姿の男子生徒が笑いながらこっちを見ている。
こいつは三室戸徹、小学生からの幼馴染だ。
小中と野球をやっていたが、中学最後の夏に当時の部長と仲たがいして野球をやめたらしく、今はよくわからない部活に入っているらしい。
「なぁ、昨日出された宿題だけどさ、やってねぇんだよ、空はやってるよな?」
すがるような目で俺の方を見てくる。
「やってあるが、写させないからな」
冷たく言い放つと、顔が引きつらせている。
「んなこと言わないでくれよ!お前以外の誰に頼ればいいんだよ!?」
すがりついてくる徹に対しどうしようか考えていると、徹の後ろから歩いてきた女生徒が徹の頭に学生鞄を振り下ろす。
徹の顔が地面に衝突する。
「痛って!?何するんだよ、奏音!」
徹が瞬時に起き上がり女生徒に対し叫ぶ。
「空が困ってるんだから、助けただけですけど何か?」
嫌味たっぷりの口調で静かに言い返す。
奏音は俺のもう一人の幼馴染で、元・剣道部の部長だったが人数不足のため、やはり中三の夏に帰宅部になった。
奏音の名前は鞍馬奏音、茶髪のショートカットで、年相応のスタイルで、背は俺より十センチくらい低い。成績はそこそこで、学校では結構人気が高いらしい。
「ところで空、宿題写させて」
「なんだよ!奏音もやってねえんじゃねえかよ!」
徹が大声を上げる。
「私はあんたと違って色々と忙しかったからいいの!」
「何が違うって言うんだよ?」
「と、とにかく私はいいの!」
「それ、横暴じゃねえかよ!?」
そんなやり取りを聴いているうちに学校に着きそうになったので、これ以上言い争いを続けられても迷惑なので、宿題をやったノートを奏音に渡すことにした。
奏音は一瞬驚いた表情をしたが、ノートを嬉しそうな表情で受け取った。
「ありがと、空♪」
「ちょっ!?空、俺には貸してくれなかったのに酷くねえか!?」
「奏音の後に写せばいいだろ」
「まじか?よし、早く行くぞ、奏音!」
徹が奏音の腕をつかみ引っ張っていく。
「ちょっ!?離してよ!」
「うるせえよ!早く行って早く写さねえと間に合わないじゃねえか!」
「私は空と一緒に学校に行きたいのに!」
そんなやり取りをしながら空と奏音の二人が学校に走っていく。
二人を見送った後、のんびりと歩いて行く。
しばらくすると俺の学校に着いた。
私立雨宝高校、地元で二番目に偏差値の高い進学校で、生徒総数は四百人と近隣の高校より若干少なめだが、大学への進学率は九十五パーセントと高く部活動も全国大会などの常連で地元ではそこそこ有名だ。
今日も新入生を獲得するため昇降口の前で各部活動がチラシ配りなどをしているようだが新入生は一人を除いて全員が決まった部活に所属している。ただ一人、俺以外だ。
この学校には必ずどれか一つの部活に入部しなくてはならないという校則がある
何にもやりたくないため部活には入ってなかったが、さすがに教員もカバーしてくれるのは今日までだろうから選ばないとまずいだろうな、などと考えているとチラシ配りしていた先輩達が俺を見つけたらしく、こちらの方に駆けてくる。それに伴い他の部活の先輩達が俺を取り囲んでくる。
「八坂! 今日こそ我が野球部に入って貰うぞ!」
「待て、八坂の才能を発揮出来るのは、我がサッカー部だ!」
「男なら柔道部だ!」
「剣道部にはお前が必要だ!」
「待ちなさい。彼は文芸部で私と愛を育むのよ!」
「クッキング部で究極のメニューを作りましょう!」
「ダンス部で青春の汗を流しましょう!」
などと様々な部活から勧誘が来たが、どれも興味がわかないため逃げることにした。
余裕を持って登校したはずが先輩達から逃げるのに夢中になり、気づけば始業ぎりぎりの時間になってしまっていた。
急いで教室に行くと、すでに担任の興聖光一先生が教壇に立っていた。
「八坂君、早く席に着きなさい」
席に着くと机の中に奏音に貸したノートが入っていた。
ノートの内側には二人分の感謝のメモが入っていたが、よく見ればもう一枚、オカルト研究会のチラシが入っていた。
午前午後と授業を適当に受け、帰ろうとすると徹が駆け寄ってきた。
「空、部活決めてないんだってな、ちょっと来てくれないか?」
と言って、俺の返事も聞かずに旧校舎の旧図書室に俺を引っ張って行く。
旧図書室には、俺と徹以外にも、奏音に俺と同じ一年で元、剣道部の常照郁人に生徒会副会長の六波羅蜜慶吾先輩に生徒会書記の高台笹江先輩がいた。
「徹、新入部員は見つかったの?」
奏音が振り返らずに声をかけてくる。
「見つけて来たぜ、お前もよく知っている奴を!」
自信満々に言い放つ徹の方を旧図書室にいる四人が見る。
「よく知っている?……って、空!?」
とたんに奏音の顔が赤くなり俯いてしまう。
「お前が八坂空かよ……クラスの奴らが騒いでるからどんな奴かと思ったがそんなに強そうにも見えねえし、たいしたことなさそうだな」
俺より背の低い常照が見上げてきている。
常照郁人は俺と同じ一年生で中学生時代は公立中学校の剣道部の部員で全国大会にまで出場した事もあったらしいが、中三の最後の大会の直前に大怪我をしたらしく、それ以来剣道はしていないらしい。
容姿は金髪にツンツン髪で背は奏音とたいして変わらない、目つきは悪く制服は何故か学ランだ、教師からは不良扱いされている。
「常照、私の前で喧嘩を売るとはいい度胸だな」
副会長が常照を見下すような口調で常照の襟を掴んでいる。
六波羅蜜慶吾は二年生で周りからは型物副会長と呼ばれているだけあって、融通がきかず、他人を見下す態度をとるため生徒から嫌われているらしい。
容姿は髪をオールバックに整え、特徴的な釣り目、身長は俺より二センチくらい高く制服はきちんと着崩さずに着ている。
「べつに喧嘩なんて売ってないっすよ!こんな奴に喧嘩なんか売らなくても俺の方が強いんすから」
俺を嘲るように言うと
「空の方があんたより、強いわよ!」
奏音が常照に我を忘れたように怒っている。
どうやら、徹も怒っているようで、バックからバットを取り出している。
「はぁ?こんなひょろとした奴が俺様より強いってか?んなわけねえだろうが!」
どうやら、短気で自分最強主義者らしい。
「筋力・知力と空さんの方が常照君より上です。」
突然、席に座り全員を眺めていた生徒会書記の高台笹江先輩が喋り出す。
高台笹江は二年生で生徒会書記で周りからはスペシャリストと呼ばれていて、他人の体の状態把握が得意である。
容姿は三つ網にメガネ、スタイルは良く身長は奏音より三センチ高い。
「笹江先輩、どういう意味っすか?」
「言った通りの事だけど……」
おどおどして、常照の顔を見ないようにしているようだ。
「ちっ……今日は帰ります」
常照が荷物を片づけて帰ろうとして、俺の前に立ち見上げるように俺をにらみ、
「俺はお前なんか認めねえ、俺が最強だ!」
と言って帰って行った。
「私たちも生徒会に戻るとしよう」
「はい、副会長」
「じゃあ、三人で残りの活動を頼む」
「よろしくね」
と言って、六波羅蜜先輩と高台先輩の二人が出ていった。
「空、とりあえずオカ研に入れよ」
「そうよ、空もオカ研に入ればいつも一緒」
などと、二人して俺をオカ研に入れようとしている。
さて……どうするか、正直言ってめんどうくさいが、ここに入っておけば先輩達からの勧誘も無くなるだろうし、オカ研は活動が自由と聞いた事がある、なら……
「わかった」
そう返事すると二人は満面の笑みを浮かべて喜んでいる。
「よっしゃ!空も同じ部活とか最高だぜ!」
「これで空と一緒にいられる時間が増えた!やった♪」
「とりあえず、顧問には後で伝えておくから、部長に挨拶してこいよ!」
「部長って、どこにいるんだ?」
「部長なら、そこの司書室にいるわよ」
司書室を指さしながらいかにも嫌そうに顔をしかめて奏音が言う。
「部長はなんていうか、めったにあそこから出てこないんだよ……授業にも出てないらしくてな、テストは一人で別室で受けてるらしいんだが、テストの点数が良くて教師もあまり強く言えないらしいんだよ、その司書室も部長専用の教室なんだが、さっきも言ったようにめったにでてこないんだよ、だから人と話すときは扉越しでな、司書室に入って話す事すら出来ないんだよ」
徹の説明にめんどうくさそうだなと思いつつ司書室の前に行く
「私、あの人嫌い……」
「そんなこと言うなって」
「あの人、いつも私たちの心を見透かしたように話すんだもん」
随分とめんどくさそうな人なんだなと思いつつ扉をノックした。
すると扉が開き奥の方から透き通るような女性の声が聞こえてきた。
「入りなよ、君を待っていたんだ」
一瞬驚いたが、それ以上に後ろの二人が驚いているらしい。
「部長が司書室に人を入れるなんて、雨が……いや、槍が降るんじゃねえか!?」
「何で空だけ?私たちの時は文章だけだったのに……」
気にせずに司書室に入ると扉が自動的に閉まり自動的にロックされた。
木造で年季のある扉なのに何で電子ロックが付いているのかは突っ込まないでおく。
司書室内部は意外と広く、大きめの本棚が七つあり、部屋の中央には木製の長机が一つに背凭れのついた木製の椅子が三脚置いてある、窓は一つだけ扉の反対側にあり、そこから入ってくる夕陽が部屋の内部を真っ赤に染めている。
「何をぼけっと部屋を眺めているのかな?
立ってないで椅子に座りなよ」
どこから声を掛けられたのかと辺りを見回してみると、一つしかない窓の前に女生徒が微笑みを浮かべ、分厚い本を片手に持ち立っていた。
「はじめまして、八坂空君、私がオカルト研究会部長の御香宮桜だよ、さっきも言ったけど君を待っていたんだよ」
御香宮桜、名前だけは聞いたことがある。
確か、学園始まって以来の天才と言われている三年生だ。
容姿は黒く艶やかな腰まである長い髪に触れれば折れてしまいそうな華奢な体に白い肌、何処か妖艶さが漂っている。
背は俺より二センチ低い。
夕陽をバックに著名な画家が描いた絵のような美しさを醸し出していた。
そんな先輩が俺を待っていただと?
「俺を待っていた?」
「うん、そうだよ」
「それは俺を……って訳じゃなく、新入部員を……ってことですか?」
「違う違う、私が待っていたのは君だよ、八坂空君、君以外の人間なんてどうでもいいんだよ、」
わけが解らない、この人は何を言っているのだろうか?俺を待っていただと?というより、この人はいったい何者だ?
「いいから座りなって」
「わかりました」
とりあえず近くにあった椅子の汚れを掃い座ることにした。
「いきなりだけど、君はいつから感情を失ったんだい?」
!?
「なんでその事を知っているんですか?」
「見ればわかるよ、そんなことより、いつ感情を失ったんだい?」
誤魔化すことも出来るが、この人にはすぐにばれてしまうだろうし諦めるとするか。
「去年の冬です、詳しい事を話す気はありません」
「去年ね~そっかそっか、ところで空君はこの部活に入ってくれるんだよね?」
「入ろうとは思っています」
「そっか、空君が入ってくれるなら私もきちんと部活動をしないとね」
「とりあえず、よろしくお願いします、五香宮先輩」
「かたっ苦しいね、私の事は桜って呼んで」
上級生に対して名前で呼ぶというのはあんまり良くない気がするが、本人がそう呼べと言うなら仕方ないだろうな。
「では桜先輩、オカルト研究会とは何をやる部活なんですか?」
オカルト研究会と言うんだから、きっと妖怪とか都市伝説を調べたりするんだろう。
「特にないよ」
「は?」
「だからこの部活の活動内容は自由ってことだよ」
なんでこの部活は廃部になっていないんだろうか?そもそも生徒会に許可すらされないはずだ。
「大丈夫、生徒会の許可くらい取ってるよ。ついでに教員の許可も取ってるよ」
信じられない、こんな活動で生徒会や教員の許可しているなんて、どんな手を使っているのだろうか、監視に来た時にだけ真面目な活動しているってところだろうか?
「もう一回聴くよ、君はこの部活に本気で入部する気はあるんだよね?」
意思確認をされているだけなのに、まるで兵士が戦場に行く前に遺書を書かされている気分だ。
「入ります」
考え直そうと思っていたはずだったのに、即答してしまった。
何故自分が即答したのか考えてみたがよくわからない。
ただ、この人といれば何かが変わるかもしれない、そう思う。
「そっか、じゃあ、空君には私と一緒に裏の活動をやってもらうよ」
前言撤回、この人に着いて行くとロクなことにならなそうな気がする。そもそも‘裏の活動とは何なのだろう?非合法な活動とかだった場合は即座に逃げるとするか。と、そんな事を考えていると、桜先輩が手に持っていた分厚い本を置き、話を始めた。
「裏の活動っていうのはね、怪談集めだよ」
「怪談集めって、人から怪談話を聞いて集めるとかですか?」
「違うよ、怪談集めっていうのはね、この街の至る所で起こる怪談をあの本に封印することだよ」
怪談が実際に起こっているなんて、常識的に考えてありえるわけがない、桜先輩は中二病なのだろうか?……と、二年前の俺なら考えたんだろうな。俺は二年前に怪談を体験をした事がある。
「ちょっと訂正するよ、この街の至る所って言っても怪談が起こっているのは正確には違う空間でなんだけどね」
違う空間っていう説明は微妙に間違っている気がする。
「怪談にはそれぞれ一つずつ独立した世界があるの、その世界に入るには街の何処かに出現する扉を探さなくちゃならないんだけどね、その世界に入ったら、その怪談の謎を解かなくちゃいけないんだよ、解かないと出れないからね、謎を解けばその怪談を封印することが出来るんだよ、それが裏の活動だよ。ちなみに怪談収集をするのは私と空君だけだからね」
何故、二人だけでやらなくちゃいけないのだろうか?俺はどこにでも居る高校生だ。特別な事は何も出来ない。こんな俺に何が出来るんだ、夢の事も守れなかった俺にいったい何が……
「空君には出来るよ、だって空君には特別な力があるんだから。そんなにも強い力をそのままにしておくなんてもったいないよ」
特別な力があるかどうかはこの際どうでもいい。どうせ何もやる気にはならないんだ、手伝ってみよう。それに、怪談を集めていればもしかしたら……
「わかりました、桜先輩のような美人と一緒に行動できるなんて光栄です」
「……」
どうしたんだろうか?顔を俯いている。夕陽のせいか頬が赤く染まっている。何なのだろうか?もしかして熱でもあるのだろうか、とりあえず熱を測ってみようか、熱を測るにはまず、お互いの額をくっつければいいんだったな。そんな事を考えながら桜先輩の額に俺の額をくっつける。熱はないみたいだ。となるとなぜこんなにも顔が赤くなっているのだろう?わけがわからない。
「なっ、いきなり何をするんだい!?」
さっきまであんなに冷静だったのに今は顔を真っ赤にしながら叫んでいる。
「顔が真っ赤になっているので熱でもあるのかと思って確かめようとしただけです。」
「君は色々とずれているよ!」
何を間違ったのだろうか、熱があるか方法がまずかったのだろうか?でも、夢は別に嫌がっていなかったし、間違ってはいないはずだ……と、思いたい。
「とりあえず、正式に入部おめでとう。顧問の先生には適当に伝えておくよ。」
「顧問の先生って誰なんですか?」
「えっと、空君のクラスの担任の興聖先生と泉涌理事長だよ、何かあるときしか来ないけどね。まぁ、表向きはそれだけゆるい部活ってことだよ。……表向きはね。」
そう言いながら帰り支度を始めた桜先輩を待ちながら、手近にあった本棚の本を読むことにした。
「おやおや、待っていてくれたんだね。それじゃあ、これからちょっと付き合ってもらうよ」
「どこへいくんですか?」
「怪談集めを手伝ってもらうんだから、きちんと説明をしとかないといけないからね、私よりいろんなことを知っている人に聞いた方がいいからね。」
「分かりました」
一言返答をして、司書室から出ると図書室には奏音が1人だけ残っていた。
「徹はどうしたんだ?」
「徹ならお姉さんから電話がきて、飛ぶように帰ったわよ」
相変わらず徹は姉である明枝さんには弱いようだな。
「そうか、それでお前は帰らないのか?」
ふと疑問を投げかけてみると、奏音は急に頬を赤らめてもじもじしだした。
「えっと、空と帰りたかったから・・・」
「残念だけど、空君はこれから私と行くところがあるんだよ。
だから、今日は諦めて帰りなさい。」
奏音と話しているといつの間にか桜先輩が後ろに立っていた。
「えっと・・・あなたが部長ですか?」
「あ~そっか、君たちには書面で活動内容を説明していたから会った事無いんだっけね」
何処か惚けたように言う桜先輩に奏音がだんだんといらいらしてきたようだ。
「会った事は無いですけど、扉越しの会話ならありますよ!」
「へ~そうなんだ。」
桜先輩、完全に遊んでいるな。
「空! どういうこと!?」
今度は俺の方にしかもいらいらもプラスしてきたようで、めんどうくささが増していた。
「何がだよ?」
「何で部長は私たちの時は書面だったのに空には会って、しかも誰も入った事のない司書室に入る事を許可されてんのよ!」
「知らないよ、桜先輩が入れっていったんだからさ」
「桜先輩って・・・何で名前呼びしてんのよ!」
何でこんなにいらいらしているんだ? カルシウムが不足してるんじゃないか。
「それも同じ、桜先輩がそう呼べって言うからだよ」
「そうなんですか、部長?」
奏音が鋭い視線を桜先輩に向ける。
それに対して桜先輩はいたずらっぽい笑みを浮かべていた。
「そうだよ、空君には私の事は名前で呼んでいいって言ったよ。」
「くっ・・・じゃあ何で空だけ司書室に入れたんですか?」
「君が知る必要はないよ。」
「なっ・・・」
笑顔のままで冷たく言い放ち、俺の手を掴んできた。
「それじゃあ、行こうか空君」
「あ、はい」
一緒に旧図書室から出ると、後ろから奏音が何か言っていた。
だが、桜先輩はそれを聞かずに俺の腕を引っ張って、下駄箱まで走っていく。
奏音は別に追いかけてくる気は無いらしく少ししたら声は聞こえなくなった。
下駄箱に着くと、朝もいたが各部活の勧誘の生徒が待ち構えていた。
この人たちは暇なのだろうか? 別に俺が入ろうが入るまいが部活には何も影響なんか無いだろうに。
今の時刻は4時24分、部活動は基本的に5時までだからこんなとこで油を売っている暇は無いはずなんだが。
「八坂、野球部にはいってくれ!」
「待ってよ! 八坂君は私たちクッキング部で楽しく調理よ!」
「八坂には剣道こそふさわしい!」
「そんな奴らの遊びに付き合うより俺たちとサッカーで青春の汗を流そうぜ!」
「待ちなさい、青春の汗なら歌って踊ってのダンス部よ!」
「青春は汗をかくだけじゃないわ! 私たちと未来の文豪を目指しましょ!」
「黙れ、腐女子共っ! こいつの力なら柔道界のてっぺんを目指せる!」
朝と同じように構想状態になっている。
桜先輩は何時の間にか下駄箱の裏に行っていた。
ここは正直に言った方がいいな。
「すみません、俺はもうオカルト研究会に入るって決めてますから・・・」
「「「「「「「オカルト研究会!!??」」」」」」」
先輩達が顔を見合わせている。
「八坂、悪い事は言わない、オカ研はやめておいた方がいい」
「あそこはお前のような才能がある奴が行く場所じゃない」
「わざわざ、魔女のいる場所に行くべきではないわ」
「だいたい、あそこは暇人の集まりじゃないか」
「魔女と一緒にいるとロクな事にならないよ」
「とにかく、あの魔女は危険なんだ」
皆、本当に心配そうな顔をしている。
桜先輩って、魔女と呼ばれてるんだ。
あの人は何をやったんだ。
「随分な言いようだね」
先輩達の後ろにはいつの間にか桜先輩が立っていた。
タイミングを計ったように・・・いや実際、見計らっていたんだろう。
「空君はもう、オカルト研究会に入る事に決めたんだ、それを外野がとやかく言うことじゃないよ」
どうやら先輩達は何も言えないみたいだ。
この人は本当に何をしたのだろうか。
「ただ、君たちの要望もわかるし、どうだろう?
月に一度だけ、空君を助っ人として貸し出そう」
この人は何を言っているのだろうか?
俺はそんな事を許可した覚えはない。
これ以上の面倒事は止めてほしい。
どうせ俺は何かをやって、楽しむ事も悔しがる事も怒る事も泣く事も無いんだから。
そんな事を考えている間に話はまとまったようで、先輩達は部活に戻っていった。
「というわけだから」
桜先輩が笑みを浮かべながら俺の顔を覗き込んでくる。
何が「というわけだから」だ。
俺の意見は完全に無視じゃないか。
まぁ、いまさら言っても無駄だし、これ以上争われてても迷惑だったし、良しとする事にしておこう。
「それじゃあ行こうか」
そう言って、再び俺の手を掴み歩きだした。
「さっきも言ったけど、私よりもいっぱい怪談について知っている人のところに行くよ。」
「えっと・・・その人は何処にいるのですか?」
「行けば分かるから」
「はぁ、それで何者なんですか、その人は?」
「えっとね~朝比神社の神主さんだよ」
「・・・その人の名前は?」
「猿田彦 結縁さん」
「・・・・・・」
「知っているの?」
知っているも何も俺の師匠だ。
夢が死んでからは会っていなかったがな。
会いたくない。
あの人に今の俺は見られたくない。
だけど、いつかは会いに行かなくちゃいけないんだ。
だったら、いまがいいチャンスじゃないか。
「知り合いですよ・・・
場所は分かりますし早く行きましょう。」
そう言って歩き出す。
一瞬、ぼーっとしていた桜先輩も後ろから追いかけてくる。
「ちょっと待って、置いていかないでよ~!」
この人はときどき子供っぽい仕草をするな。
「子供っぽいとは失礼なことを考えるね」
「何で考えていた事がわかったんですか?」
「いやいや、せめて誤魔化すとか隠すとかしてよ!」
「事実なんだから隠す必要はないでしょう」
「やっぱり、君は少しずれているよ・・・」
そんな会話をしながら、バス亭への道のりを歩んでいった。
今の俺を見たら夢はどう思うんだろうか、そんな事を心の中で自らに問うていたが、答えが出る事は無かった。
あとがきって何を書けばいいんですかね?
こんな疑問からですみません、桜吹雪虎奏です。
あとがきに使えそうなネタが全然ありませんね。
あるとすれば・・・ホワイトデーにお返しをするためにチョコレートとキャンディーとマシュマロを作ったことですね。
いやいや、たいへんでしたよ~
何がって、お返しにどれを選べばいいかですよ。
当日まで悩んで悩んで結局のところ全部を詰め合わせにしました。
そういえば、本命の人には何がいいんでしたっけ?
最近見たアニメにサプライズで豚足をマシュマロで(以下略)
ではでは、感想・ご意見をお待ちしております。
またね~!