泉真理
吏玖/黒影
ブラックアイ
オフィサー
トンプソン
ガーランド
サボット
捜査官
ヒットマン(男)
ペイシェントゼロ(少女)
第11話
第11話「黒い真実・影の愛」
「189便の発着は予定通り行われます。お乗りになる方は…」
成田空港。
一般人には想像つかないがこの空港には様々な区画に区分けされた施設が無数に散在している。
その中の一つであるとある荷役施設に彼等はいた。
一見すると東京の地下鉄にでもいそうなスーツマンだが一つだけ違う所があるとすればそれは彼等の妙に膨らんでいる脇だった。その脇にはスーツに隠れて見えないが拳銃が吊るされている。
ジェット機の離発着で発生する轟音の中スーツマン達は荷役施設の出入り口の前に一斉に整列した。
荷役施設の出入り口に隣接しているシャッターが開きその中から浅黒い肌の外人2人が彼等よりも一回り小さい少女を連れて出てくる。
「Is she vip for the protection?」
「yes.The disposal of this baggage entrusts you Japanese.」
短い会話の後東洋人達は少女をスーツマン達に引き渡し元いた方向へと踵を返したその時だった。
「fire!」
突如目出し帽の集団が現れスーツマンや東洋人達に向けてvz61マシンピストルをフルオートで発砲した。
「What that⁉︎」
東洋人は事態を把握出来ずに殺到する小口径弾に身体を穿たれ死亡した。
それとは反対にスーツマン達は物陰に隠れてからsigP230拳銃を引き抜き応戦する。
お互い物陰に隠れて発砲している為どちらの弾丸も目標に命中する事はない、筈だった。
銃声や航空機の轟音に紛れてどこからか矢が飛来しスーツマンの内の1人の首に突き刺さる。
「⁉︎」
首を刺されたスーツマンは泡を吹きながら倒れ伏しそのまま起き上がる事はなかった。
その後も矢は次々とスーツマンや目出し帽の男の首に刺さっていき数分後には銃声は止み後には大量の死体だけが残った。
少女はいつの間にか銃撃戦を潜り抜けどこかへ逃亡したらしく銃撃戦が止んだ後にスーツマン側の増援として現場に到着したMP5FサブマシンガンやUSP拳銃等で身を固めた重装備の空港警備隊は消えた少女の事等気にかける事も無くすぐに現場の封鎖作業に移った。
時間にして数十分のこの出来事がニュースに取り上げられる事は無く事件は国家機密として闇に葬られる。
「高校生討論会フォーラム?」
勇介は真理からの突然の誘いに困惑していた。
「うん。成田空港の近くでやるんだけど大会本番の3日前に成田に行くんだって。」
「俺以外に適任がいるんじゃないの?」
「誰もやりたがらないのよ。正直私も内申点欲しいから仕方なくって感じだし。勇介も内申点欲しいでしょ?」
「う、う〜む。確かにそれなら行ってもいいかも…」
実際勇介は最近中等部との戦いに明け暮れておりそのせいで成績が落ちているのは明らかであり悪い話ではなかった。
それに最近距離が離れつつあった真理と久しぶりに一緒にいられるというのなら…。
「よし。行くよ。その高校生何とかってやつ!」
成田行きが決定した翌々日に勇介と真理は彼等の母校の代表として引率の教師と共に六本木を後にした。
「資座勇介が六本木を出ただと?」
中等部の本拠地にある防音設備が施されたある一室でブラックアイはオフィサーからの報告を受けていた。
「はい。彼は今高校の行事の一環として成田に向かっているそうです。」
「なるほど!そこで素面の状態の彼を仕留めればいい、そういう事ですね?」
2人の会話に割り込んで来たのは新参の幹部であるサボットだった。
「…フン。相変わらず矮小な考えしか出来ない様だな。サボット。」
ブラックアイの本気で呆れた声がかえってサボットを苛立たせる。
「坊ちゃんの言う通りだぜ!ただ殺すだけなら瞬きする間に出来るってんだよ!ま、お前じゃビビって話にならないだろうけどな!」
いつの間にかサボットの背後にいたトンプソンが嘲笑し彼の隣にいたガーランドも発言こそしなかったがサボットを小馬鹿にしている様だった。
「なんだと…⁉︎、…チッ。」
サボットは怒りが込み上げてきたが新参の幹部という立ち位置を考え舌打ちしながら部屋を後にした。
「で、実際どうするんだ、坊ちゃん。」
「…あの町の空港周辺では公にこそされてはいないが銃撃戦や小競り合いがそこかしこで起きている。それはつまり、あの町には俺達以外の勢力が暗躍していると言う事だ。下手に干渉すれば俺達もタダでは済まないだろう。…今回は静観するしかない。」
ブラックアイの声は心無しか不機嫌の様な気がした。
「なるほど。じゃあ奴を仕留めるのはまた今度、って訳だ。」
少なくとも今回限りは、勇介は中等部との戦いから完全に離れるという事になった。
六本木を出て半日弱。目的地の成田についた勇介と真理は同じく討論会の為に来た他の高校生達と共に本番の会場で3日間の日程の説明を受けていた。
説明を受けた後はそれぞれ自由時間になるのだが学生らはどれも宿舎に戻り討論会で喋る内容についての打ち合わせを始めていた。勇介と真理は真剣に打ち合わせをしている彼等を見て愕然とする。
「真理、討論会って、ただ決められた内容について話し合うだけだよな…?」
「そのはず、だよね」
「……練習、するか。」
「うん…」
勇介は正直この討論会を舐めてかかっていた。だが現実はそう甘くはなく否応でも勇介に事実を突き付けている。
「どこらへんで練習するかな…あ!すいません!」
打ち合わせの場所を探す勇介の肩に少女がぶつかった。
「sorry、あ、すいません…」
日本人離れした流暢な発音のsorryの後にすぐに日本語に直して発言した。普通の人なら帰国子女か何かだろうと高を括ってそのまますれ違うのだろうが中等部との戦いで日に日に戦闘経験を積みいわゆる”場慣れ”した勇介は自分と同い年程度である少女の異変にすぐに気がつく。
勇介が何か怪しんでいるのを勘付いたのか少女はすぐに学生らの人混みを掻き分け会場の駐車場へと続く出入り口へと進んでいった。勇介は少女に感じた異変への疑惑を確信に変え少女の後を尾けていく。
その頃真理は勇介がいつまでたっても戻ってこない事に苛立ちを募らせていくだけであった。
「ねぇ、ちょっと……⁉︎」
駐車場の奥へと進んでいく少女に話しかけてその歩を止めようとした勇介はすぐに乗用車の影に隠れた。
少女の隣にスーツマンがいるが何か様子がおかしい。そもそも普通のスーツマンは腰のベルトから黒光りする拳銃のホルスターなど見え隠れはしないし少女の手を無理矢理引っ張ってどこかへ連れていこうともしない。
(どうする…?女の子に意識が集中してる今なら…)
勇介はブレザーに隠していた警棒を音を立てない様手動で展開しじりじりとスーツマンの背後へと距離を詰めていく。
いよいよスーツマンに襲いかかろうとしたその時、かつて感じた風を切る鋭い音が聴こえ音がする方向にすぐに振り返ると同時に警棒を振るうと甲高い音と共に細い矢が地面に叩き落とされた。
「‼︎。こいつ、いつのまに⁉︎」
音に気づいたスーツマンは勇介に拳銃を向けようとホルスターに手をかけたがそれよりも早く飛翔してきた矢を躱す為に勇介がスーツマンを押し倒した。
「ぐっ…!俺達の死角から撃って来てる!ここを出るぞ‼︎」
勇介はスーツマンと少女に向けて言い放つ。
スーツマンは勇介への対応に戸惑っていたが勇介の指示を聞いて行動に移った少女を見てすぐに立ち上がって勇介と共に出口へ走り出した。
駐車場を後にした勇介達を支柱に隠れていたチェストリグを身に纏い白髪の混じったオールバックの男が見送っていた。
「妙に勘のいい子供だな…奴も捜査官か…?」
勇介にとって全く縁の無い土地での新たな戦いの火蓋が今、切って下ろされた。
「さっきは助かったよ。でもいつから後ろにいたんだい?」
結果的に助けられた事となったスーツマンは息を切らしながら勇介に話しかけた。
「そんな事より!さっきの矢は何だ⁉︎」
勇介も同じく息を切らしながら質問する。
「そ、それは…」
勇介の質問にスーツマンは口を濁らせた。
「私が、話します。いいですね?」
意外な事に勇介の質問に答えようとしたのはそれまで殆ど喋らなかった少女であった。
「さっきの矢を撃った人物は、私を回収する目的で雇われたHITMANです。そのHITMANはそこの彼と同じコーアンのPOLICE MANのteamを全滅させ私を捕まえようとしています。」
「コーアン…?あ、公安の事か…」
「そうだ。我々は彼女の為とは言え表立った行動を取る事が出来ない。だから今回の作戦指揮所に向かって安全を確保しようとしていたのだが…」
スーツマン改めこの公安の捜査官は身元を明かすと同時に情報を開示し始めた。
「それで指揮所ってのはどこにあるんだ?」
「君にそこまで話すつもりは…!…いや、指揮所は空港の貨物を保管する為の倉庫エリアにある。作戦通りならこうはならなかったが…」
「私が逃げ出してしまったので…申し訳ありません…」
「いや!貴方が悪いのではありません!悪いのはヒットマンなんです!私がもっとしっかりしていれば空港から出なくてもよかったものを…!」
少女と捜査官の会話を聞いていた勇介はそこで彼等の会話に割り込んだ。
「違うな。あんた達は誘導されてるんだ。空港であんた達を逃がしたのもわざとだ。多分あんたの仲間の警察が公の前では動けないという事を知ってて、警察の動きを牽制する為だろうな。」
「何⁉︎…君、さっきの矢を弾いた時といい今の指摘といい…一体何者なんだ⁉︎」
勇介の指摘に捜査官は顔を青ざめながら反応を示した。
「ちょっとした用事で来た高校生さ。
それよりも話の中に出てくるヒットマンが俺の考え通りの敵ならさっきのゴタゴタの時に俺の顔も見たはずだ。
俺の格好を見て高校を特定でもされたら俺の連れもいよいよ危なくなってくる。
警察の保護を受けるかどうかはともかく、せめてあんた達を狙うヒットマンを始末とまではいかなくても身の安全の為にも牽制をしたい。これからはあんた達に協力させてもらおう。」
結論から言うと勇介の異常な提案に捜査官は首を縦に振ることは無かった。
しかし勇介の言う事にも一理ある事は分かっているようで結局勇介達フォーラムに参加する学生の宿舎に退避しそこで情報は明かさずに「酔っ払いが宿舎内で暴れている」という嘘の情報で通報し制服警官の応援を要請しそのままパトカーに同行し所轄署で保護を受けるという事になった。
「釘を刺すようだけどさっきみたいな無茶な真似はしないでくれよ?君は応援が来るまで他の学生の中にあの子と紛れているだけでいいんだ」
「分かってますよ。それじゃあ行こうか。」
勇介は少女の手を握り集団の中へと連れていこうと促す。
「あ、…忘れてた。その…さっきは勘違いして悪かっ…」
先刻の警棒で襲い掛かった時の事を謝ろうと捜査官のいた方向に振り返るがそこにはもう捜査官の姿はなかった。
「もしもし、花江です。目標を確保し現在市民ホールで所轄の応援を待っています。」
「はい。そうです。襲撃を受けた後に現地で協力者を得ました。彼も我々と同行しています。」
「…了解しました。では応援が到着した時点で彼を始末する、という事ですね?了解しました。…失礼します。」
公衆電話の受話器を置いた捜査官はホルスターから拳銃を抜き残弾を確かめる為に弾倉を引き抜いた。
「……3発か…問題ないな…」
サイレンの音が聞こえパトカーが到着した事に気付いた捜査官が電話ボックスの扉を開けたその時、彼のいた電話ボックスが爆発した。
「何だ⁉︎」
爆発に気付いた制服警官達がパトカーから一斉に降りてくる。
「爆発したぞ!すぐに人払いと現場の封鎖だ!」
「酔っ払いの通報はどうする⁉︎包丁を持ってるんだぞ!」
「俺達だけじゃ無理だ!応援を呼べ‼︎」
右往左往する警官達の間に白髪混じりの男が立ち止まった。
「おいアンタ‼︎すぐに離れろ!…おい聞いているのか⁉︎」
制服警官の1人が男の右肩を掴んだ瞬間、男は一瞬で身を翻してから警官を足掛けで地面に倒し姿勢が低くなった状態で足首からナイフを取り出し警官の脇腹を突き刺した。
「⁉︎。があああああああああああ⁉︎」
刺された警官は一瞬遅れた後に絶叫する。
「!、こいつ…!」
その場にいた3人の警官は男を取り押さえようと警棒を取り出す。
1人が警棒で殴りかかるが逆に取り押さえられた直後顔面をモロに殴られ気絶してしまう。
それに驚き一瞬怯んでしまった2人目は首元にどこからか取り出したアイスピックを突き刺される。
首元は防刃ベストで守られているはずだったが点の貫通力に優れるアイスピックの刺突の前には意味を為さなかった。
「くそ!」
残る3人目は後退し38口径のM37J拳銃を取り出し構えるが銃を取り出し構える間に男は既に警官の懐に潜り込んでいた。
拳銃を握る警官の手首を男が掴むと警官は呻き声を上げて手から拳銃を滑らせてしまう。
手から滑り落ちた拳銃はあっという間に男の手の中に収まり男は奪った拳銃を警官の胴体に向けて発砲した。
「ぐあ‼︎」
当然だが警官の身に纏われた防刃ベストでは拳銃の弾丸を防ぐ事など出来ず3人目は穴が穿いたベストから血を流しながら倒れる。
男は奪った拳銃を捨て倒した警官達に目も暮れる事も無く市民ホールへと向かうのだった。
男はホール内に入ってすぐ警備室に侵入する。外での爆発騒ぎで警備員達は出払っているのか警備室には椅子に座ってマイクを使ってる1人しかいなかった。その1人をベルトから引き抜いたワイヤーで首を締めて窒息させて気絶するのを待ってから非常用シャッターを閉じるようモニターの下にある操作盤を操作する。
モニターの中に映る学生達は混乱しているようだった。
その学生達の中に目的の少女を見つけた男は警備室を着ているコートからサプレッサーと銃身が一体化したウェルロッド拳銃を取り出し目的の少女がいるホールを見通せる2階の通路に辿り着くとそこには学生の集団に紛れる少女を捉え拳銃を向ける。
男が発砲しようと引き金を引こうとしたその時視界に黒一色の装備を身に纏った仮面の男が視界に入った事ですぐに通路の曲がり角に隠れた。
一瞬轟音にも聞こえる銃声が響き男がいた場所にあったダンボール箱に
パチンコ玉大の孔が6箇所開く。それが仮面の男が放った散弾銃のものだと男はすぐに分かった。
「勇介の奴、こんな所でまで物騒な事持ち込んできやって…!」
散弾銃を発砲した仮面の男は黒影だった。
ソウドオフ加工されたイサカM37散弾銃を構えながら黒影は男がいた場所に近付いていく。
曲がり角を出た瞬間男の蹴りが黒影の胴体に飛んでくるがそれをイサカM37でガードしそのままグリップを握る右腕の肘を男の顔面に繰り出した。
男はそれを左腕で弾いてから右アッパーで反撃しアッパーは黒影のボディに命中してしまう。
「ぐぁ⁉︎」
ダメージを受けて後ろに退いてしまった黒影は男が投げたアイスピックを銃声で弾く事に集中してしまい続け様に繰り出された右足の回し蹴りでイサカM37を叩き落とされたしまった。
勇介が使っていた物と同じ警棒を腰のベルトから取り出し反撃するが回し蹴りの勢いを利用した左足の前蹴りをボディに食らってしまいその威力を殺し切れなかった黒影は手摺りを越えて2階から落ちてしまう。
「ぐぁ……!」
ホールに並んでいた学生達の昼食の弁当が積まれた発泡スチロール箱の山に落下した黒影はそのまま床に転がり落ちた。突如2階から落ちて来た黒影に学生達は驚き叫び声を上げた。
落下した時の衝撃は発泡スチロール箱に落ちた事で上手く緩和されたが鳩尾に食らった前蹴りのダメージが大きく暫く倒れ伏している黒影の前に2階から飛び降りた男が近付いてくる。
男は再びウェルロッドを取り出し黒影の頭に突き付けた。
その時男の背後に勇介=ブラックが飛び出しナイフを突き立てる。
だがナイフが刺さった状態でも男は倒れず背後にのしかかったブラックを巴投げで黒影の隣に投げ飛ばしてしまう。
投げ飛ばされた衝撃を諸に背中で受けたダメージで肺から一気に酸素が抜けて呼吸が出来なくなっていた。
(こいつ強い…中等部の幹部と同じか、それ以上だ…!)
一瞬が何秒にも感じる感覚の中勇介はいよいよ死を覚悟した。
学生達はいつの間にか別の出口から逃げた様で阿鼻叫喚だったホール内はまるでその場から音が消えて無くなったかの様に静かになっていた。
(真理……)
男が引き金を聞いた時、ウェルロッドの銃口から勇介に向けて銃弾が撃ち出された。
「……」
勇介に向けて放たれた弾丸は男の当初の目的であった少女に命中した。
少女の腹部が血に染まり始め少女は黒影とブラックの間に倒れた。
(な、なんであの子が…!いつの間に…!)
勇介は一時的な呼吸不全が治まった事で体が自由に動ける様になる。
吏玖もいつの間にか動ける様だ。
ブラックが立ち上がってタックル、黒影は立ち上がると同時に男の顔下に前蹴りをそれぞれ男に食らわせた事で男は手からウェルロッドを落とした。
ブラックと黒影の攻撃はそのまま止む事なく男にダメージを与え続ける。
ブラックが上段回し蹴りで男の顔を蹴り飛ばし黒影が先刻自分が食らったアッパーで鳩尾を殴りつける。
次にブラックがパンチの3連撃、黒影が2連発の顔と胴体を狙った前蹴りを繰り出す。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
その後も次々と一方的な格闘戦を仕掛けてから最後のダメ押しでブラックの上段前蹴り、黒影の右アッパーが命中し男は相次いで受けたダメージが効いたのか足元をふらつかせながら後ろに後ずさり続けホールの中央にある噴水に転げ落ちた。
「このまま仕留めるぞ勇介‼︎」
「⁉︎。あぁ分かった‼︎」
しかしそれでもブラックと黒影の追撃な止む事なくついに彼等はそれぞれホルスターから9mm拳銃とM1911A1拳銃を取り出しスライドがホールドオープンするまでまるで自動小銃のバースト射撃と見間違う程連射し全弾を撃ち尽くした。
男は身体中を弾丸に穿たれ水中を血で染めた。
「…君‼︎しっかりしろ‼︎」
男を倒した後ブラックのマスクを脱ぎ顔を露わにした勇介は倒れている少女を抱き上げ2階の通路に移動した後必死に話しかける。
黒影はポーチから応急キットを取り出した時少女が目を覚ました。
「はやく、ここから逃げて…!」
「え⁉︎」
「捜査官の言っていた事は、嘘なんです…。彼等は目撃者を、ヒットマンも貴方達も、私も。証人を、Erasure(抹殺)しようとするはず。殺されるんです、私達…。」
黒影は思わず止血する手を止めて少女の顔に振り返った。
「そんな…じゃあ、あいつの言っていた事は全部嘘だって事か…⁉︎」
「勇介‼︎ボマーと戦った時と同じだ、下水道で逃げるぞ‼︎」
「この子、もう動かせる状態なのかよ⁉︎まさか見捨てる訳じゃ、」
「止血は済んだが弾がまだ残ってる‼︎下水道で応急措置の続きをした後に、お前が言ってる捜査官とやらが気付かない所まで連れて行く。そこで救急車を呼んで病院まで運んでもらう‼︎…見捨てたりなんかしない‼︎」
「でも…!」
「いいんです…。私、もう動けます。置いて行って下さい、自分で何とかしますから…」
「何言ってるんだ⁉︎吏玖、担ぐのを手伝ってくれ!」
「これは…⁉︎勇介、応急措置の必要はなくなった。」
黒影の発言に勇介は目を疑った。
「お前何言って…!」
言い終える前に黒影は少女の服を半分脱がせ傷口が見える様にしたのを勇介は見た。
少女の言っている事は確かに本当だった。出血で赤く染まり見えなくなっていた傷口をガーゼで拭き取ると確かに傷口は塞がっていたのだ。
「どうなってるんだ…⁉︎」
勇介は目を見開き少女の傷口を見続けていた。
その時、ホールの出入り口の向こう側で足音や怒鳴り声が聞こえて来る。
「勇介‼︎まずいぞ…ここから離れないと‼︎」
「…言って下さい。勇介さん、吏玖さん。…嬉しかったです。懸命に私を救おうとしてくれて…。初めてです。私の事を真っ直ぐ見てくれた人達は…」
黒影は勇介から少女を抱きかかえて進もうとしていた。
「勇介さん、どんなに辛く厳しくても戦う事を諦めないで…
吏玖さん、貴方の好意、受け取れなくてごめんなさい。どうかこれからも、戦い続けて…」
勇介は黒影の方を見たが吏玖の表情は黒影の仮面に隠れており窺い知る事は出来なかった。
「お二人へのお願いです。私の事をどうか忘れないで、下さい…」
言い終えると少女は黒影から肩から離れ外へと続く窓から飛び降りていった。
「おい‼︎」
勇介は窓に向かおうとしたが黒影に止められた。
「お前…!」
「無理だ。今の装備で窓の所まで出てみろ、あっという間に増援に制圧されるぞ。それに……あの高さじゃ、あいつは死なない…見ただろ、あいつのあの回復力…」
「吏玖…」
「急ぐぞ!ここで捕まる訳にはいかないだろ⁉︎中等部と決着を着ける為にも‼︎…あいつと、また会う為にもな」
勇介は再びマスクを着けてブラックに戻り黒影と共にホールから脱出した。
「来てくれて本当に助かったよ吏玖。まさかこんな所でも戦う羽目になるなんてな。」
「イサカも回収出来たし空薬莢も回収出来た。
硝煙反応以外の痕跡は処分出来た。後始末は上手い事いったな。」
「なぁ、吏玖。あの子がさっき言ってた事って…」
「聞くな。誰にも話すつもりは無い。」
下水道の中を装備を外した勇介と吏玖がライトを照らしながら警察の初動捜査を潜り抜ける為に市民ホールから距離を開けた場所で地上に出ようと歩いていた。
「まぁ…良いけどさ。…なぁ、あのヒットマン、死んだかな?」
「あれだけの攻撃を受けても生きてるのならそれこそ化物さ。死体を確認する暇が無かったからな」
「化物といえばあの子のアレ…」
「あの子は化物なんかじゃない。俺達を庇って撃たれたのも、脱出の時に俺達から離れたのも。あの子が見返りを求めずに他人を救おうとした、俺達なんかよりよっぽど人間らしかった。」
吏玖の発言に勇介は頷いた。
「あぁ…。そうだよな。…でもさ。ヒットマンも、捜査官も…俺達が中等部と戦ってる間に知らない所でこんな事が起きてたんだよな。」
「中等部も大概だがまだまだあんなの序の口なんじゃないか?」
「え…」
「きっと世界には、いやもしかしたらこの国の中にでも。あの子みたいな能力を持った連中がうじゃうじゃいるはずだ。必然的にそいつらと戦う俺達みたいな奴等も現れてくる。この戦いの中、もしそいつらと出会ったとして…お前はどうする、勇介?」
「俺は、俺は…………」
吏玖の問いに勇介は答えを出せずにいた。