泉真理
志道/ブラックアイ
オフィサー
星泉(ゲスト登場)
佐久間真(ゲスト登場)
第14話
第14話「WAR ZONE」
ブラックと黒影、資座勇介と吏玖が中等部と呼ばれる私設武装組織と繰り広げる激闘は水面下で熾烈さを増していったがその一方では彼等と同様に降り注ぐ銃弾の雨、金や欲望らが蠢き文字通り血で血を洗う程の抗争に身を投じる者たちがいた。彼等とは戦後急速に勢力を拡大していったが日本の復興が進むと同時に次第に社会の闇へと潜っていった者達…そうヤクザ、極道と呼ばれる連中の事だった。
ブラック、黒影、ブラックアイ…。
彼等の戦いは今、果てしなく続く争乱が絡み合う「大河」の一部になろうとしていた…
「お前ら!もう隣町には絶対近寄るなよ‼︎あそこはもう日本じゃないと思え‼︎」
担任の若干緊張感を感じる口調の一言でクラス内は一瞬静まり帰った。
だが、
「日本じゃねーとかまじ戦場じゃん!」
「俺あそこで戦場カメラマンになろっかなー」
生徒達は担任の話を真に受ける事はなくいつも通り野次を飛ばしていた。
「勇介はヤクザ相手に戦いにいったりしないの?」
クラスの喧騒に紛れて真理は勇介に話しかける。
「いや…俺は中等部が倒して武器を回収出来ればそれでいいんだよなぁ…」
勇介はやる気の無い口調で返事を返した。返事を返しながら帰りの準備をする勇介を見て真理も机の下で携帯を弄り出す。中等部との戦いを除けばいつも通りの日常が続くと思っていた勇介だがその考えは次の瞬間鳴り響いた発砲音によって脆くも崩れ去る事となった。
発砲音が外で響いた事に気づいた生徒達は発砲音がすると同時に外に出ようとパニックを起こし我先に教室を出ようとする。
「勇介‼︎今の⁉︎」
一瞬で静まり返る教室内。教師は狼狽えながらも教室を後にし廊下で他の教師達と話し合っている。
その会話は生徒に悟られないよう小声で行われているが会話の所々が壁で隔てた教室の中にも漏れてくる。
暫くすると駆け足の足音が近づき教師達の会話に聞きなれない声が混じり始めた。
「今警察から連絡がありました。どうやら近所で遊んでいた小学生が癇癪玉を鳴らしてたようで…」
「なんだよ…じゃあ生徒達は帰しちゃっていいんだよな?」
「ハイ。それと今夜の見回りも地区全部の教員でやることになりました…」
「んん……」
呻き声の直後に担任が教室に戻り説明を始めた。
「みんな!今日は強制帰宅だ!さっき聞こえてたと思うけど見回りも厳しくなるから絶対に外出するんじゃないぞ!解散!」
解散の号令と同時に生徒達は一斉に立ち上がり教室を後にし始めた。
真理はその集団に紛れて先に帰ってしまった様だ。
中等部は通常夜に紛れて行動する為このような騒ぎは起こさない。そう考えると今回の異常事態の原因となっている暴力団達よりはいくらかマシなのかもしれない。
(子供の火遊びでこれか…。本当に何とかしないと…!)
「なぁ?ちょっと金貸してくれね?後輩だしいいだろ?な?」
その少年はゲームセンターで3人組のチンピラに絡まれていた。
少年が絡まれる原因となったのは彼の後ろで縮こまっている女子達だった。
彼女らは帰宅途中にたまたま目があったという半ば言いがかりじみた理由で3人組に目をつけられてしまったのだ。
そこに少年が通りがかり彼が彼女らの異変に気付き3人組の前に現れる。
普通の人なら何かしらの理由をつけて彼女らを助けには行かなかっただろう。だが少年は臆する事なく立ち向かっていった。その勇気は資座勇介にも通ずる所がある。マスクと銃がなくても彼は勇介と同じヒーローだった。
ただしそれは”本当”にその少年がマスクも銃もないどこにでもいる普通の高校生だったならの話である。
「おい。早く金出してくれないとそこの女のコ達と遊べねぇじゃんか?早く出してくれないかな〜」
言いながらチンピラが彼の胸倉を掴んだその時彼は瞬間的に掌底を繰り出し胸倉をつかむチンピラを後ろのUFOキャッチャーの筐体に吹き飛ばした。筐体を遊んでいたカップル達は筐体に突然衝突してきた事に驚き逃げ出した。
「テメェ舐めてん」
チンピラの仲間が威勢良く啖呵を切る、事すら出来ず少年にローキックで足を挫かれ続けざまに顎を掠める様に殴られ気絶した。
残った1人がズボンから拳銃を抜いたが構える前に少年に拳銃をもつ手を蹴られその衝撃で真上に飛んだ拳銃を少年に奪われ額に突き付けられてしまった。時間にして数秒で彼等と少年の戦闘に決着が着いてしまったのだ。
「お、おおお前分かってんのか⁉︎俺はヤクザなんだぞ!ただで済むと思ってんのか‼︎」
脂汗を吹き出しながらも少年を牽制しようとしたチンピラだが少年は全く意に介さず奪った拳銃のグリップでチンピラのこめかみを殴り気絶させた。
少年は周囲を見渡すが辺りに人はおらずどうやら先程のカップルを最後にここから一斉に逃げ出してしまったのだろう。目撃者がいないのは逆に都合が良い。
スライドを引いて拳銃の初弾を装填、チンピラ共を始末しようと引き金に指をかけた瞬間後ろから聞き慣れた声がした。
「シドウ!……始末する必要はありませんよ。もっとも、末端を3匹間引いた所で大局には何の影響もないのでしょうが。」
「…姉さんか……。また仕事か?」
「はい。今回は同業者の始末をお願いします。場合によっては他の部隊も同行させての掃討作戦にも発展するかもしれません。これまで以上に重要度の高い作戦です。…おそらくそこに資座勇介も現れるでしょうね。」
資座勇介、というワードに少年は反応した。
「奴か…。暫く戦っていなかったが…ちょうどいい。そろそろ奴との決着をつけたくなってきたのでな。
…基地には寄らずに出撃する。他のメンバーに伝えてくれ。今日はブラックアイ単独で行動するとな。余計な手出しはかえって邪魔になる。」
「承知しました。私から伝えておきましょう。」
資座勇介=ブラック、シドウ(少年)=ブラックアイ。こうして彼等は再び夜の闇の中で合間見える事となったのだった。
こうしてブラックは戦場と化しつつある夜の街へと身を投じていくのだった。
蔦に侵食されている廃屋の屋上で双眼鏡を覗き街の異常な部分を探す。聞いただけでは至難の技の様なイメージだが実際はそれほど難しい事ではない。やけに静かな裏通り、ひと気のないテナントビルなど意外に探そうと思えば街の異常な部分は自然に見えてくる。
(……どこもやけに静かだ。ん?あれは⁉︎)
ブラックが見つけたのは全速力で商店街を走る少女と中年の男だった。中年の不自然に派手なスーツを着くずし左手で少女の手を引っ張り右手には小型の自動拳銃を持っている。拳銃のモデルまでは距離が離れているせいで分からなかったが本物だというのは男の格好を見れば分かる。
「まずは女の子を何とかしないと!」
ブラックは空挺部隊仕様のM1カービンを片手に屋上の手摺にセットしていたロープを使ってラペリングで一気にビルから飛び降りた。
「お嬢!野郎どもは俺が引き受けます‼︎ここで別れやしょう‼︎」
「駄目‼︎もう誰も死なせないってお父さんに約束したから‼︎」
お嬢と呼ばれる少女は男の申し出を即断し男から拳銃を奪い取った。
「何する気でずお嬢‼︎もうチャカ一丁
でどうにかなる状況じゃ…!」
「静かに!」
少女は男から取った拳銃のスライドを引き次弾を装填した。
路地裏に入った彼らはゴミ箱の影に隠れていたのだが追跡者達は真っ直ぐ少女達のいる路地裏に入っていった。その数8人。8人は袋小路に鎮座するゴミ箱を囲みそれぞれ懐から刃物や銃を取り出しじりじりと包囲網を狭めていく。
(私が今飛び出せば真が逃げる隙を作れるかも!でも…)
少女の隣にいる中年が少女を囮にして逃げ出す様な真似をするはずがないというのは分かり切っている。何も策が思いつかないまま追跡者達が近づいてくる。聞きなれない鈍い音が連続したのはその時だった。
ゴミ箱の物陰から顔を覗かせた少女は追跡者の内の1人が血を流しながら倒れたのを見た。
その後も鈍い音は一定の間隔を開けて連続し音がなる度に追跡者達は1人、また1人と倒れていく。少女はその鈍い音が銃声だという事にはすぐに気づいた。
「ちくしょうどこから撃たれてやがる⁉︎」
残った追跡者はそれぞれ障害物となる物に隠れるがそれらはまるで意味を為さず次々と追跡者達を仕留めていった。
「くそがぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
残った1人が拳銃を狙いも付けずに発砲し辺りに弾丸を撒き散らしていく。その内の一発がゴミ箱の角を抉り飛ばし少女はすぐに顔を下げた。
弾を打ち切るより先に残った1人は左胸を撃ち抜かれ驚愕の表情を浮かべたまま壁にもたれかかり息絶えた。
その後数分が経ち少女と中年がゴミ箱から身を出したその時少女達の背後に「何か」が着地した。
「えっ…」
少女が振り返るよりも先にその何かはカービンの針金の様なストックで中年の鳩尾を突き後ろそのまま回し蹴りで中年を追跡者達の死体の方向に蹴り飛ばた後に身を翻し少女が震える手で持っていた拳銃を少女の手ごと蹴り上げた。
蹴りの衝撃で拳銃は「何か」の後方に飛んでいきたった数秒の間で少女は丸腰にされてしまう。
路地の出た先を自動車が通った事でそのライトで今まで姿が見えなかった「何か」が照らし出された。
その「何か」は全身を戦闘服で包み防弾チョッキ、拳銃、格好に合わぬ妙に古い銃剣を装着したカービン銃を装備していたがなにより特徴的なのは顔を縦に黒と黄色で塗り分けられた奇妙なマスクが覆っていたからだ。
「あ、あなたは…?」
少女はまるで死神にも見えるその「何か」に接触を試みるのだった。
「あ、あなたは…?」
少女の問いかけに勇介は一瞬迷った。自分の本名を教える訳にはいかないが少女を助けに来たという事は伝えなければならない。勇介は咄嗟に吏玖が名乗っていた「黒影」を思い出した。
「……俺は…便宜上、ブラックと呼ばれている。君をこいつらから助けに来た。」
「ぶ、ブラック…私は泉、星泉。助けに来たのになんで銃と真を蹴り飛ばしちゃったの…?」
「…パニックになった君に撃たれるのはごめんだからな。その真っていうのは…もしかしてあの君と一緒にいた男の事か?」
「うん、真は私の仲間なんだけどもしかして…」
「あ、あぁ…」
勇介はマスクの下で眉を顰めた。あの状況では少女以外だれが敵味方だったのかを判別するのは難しかった。むしろ少女への誤射を防ぐ為に真と呼ばれる中年には撃たなかったのは不幸中の幸いとでも言うべきか。
「おい…あんた大丈夫か…?」
おそるおそる先程蹴り飛ばしてしまった中年に話しかけるブラック。
「くそったれ…お嬢を助けようとした事だけは認めてやる…」
「あ、ぁ…ありがとう」
ひとまず誤解を解いた彼等はお互いの置かれている状況の整理を始めようとしたが彼等を取り巻く状況はそんな時間も許されなかった。
「チンピラ相手にはしゃいでいて楽しいか?貴様との決着をつけてやる」
路地裏の出入り口に勇介の因縁の相手が立ち塞がっていた。
「ブラックアイ…!こいつらをけしかけてたのはお前か⁉︎」
「なんでもかんでも俺達の仕業にされては困るな。まるで映画の悪の組織だ。」
マスクごしでも苦笑しているのが分かる。暗闇に紛れてブラックは密かに先刻までかけていたM1カービンのセーフティを解く。
ブラックアイとブラックのやり取りに泉と真は戸惑っていた。
「こいつらが暴れ回ってるのはお前等も困るんじゃないのか?ならお前も俺と…」
「論外だ。奴等も貴様も俺達がその気になればどうとでも始末出来る。」
「そうかよ!だったらやっぱりお前は敵だ‼︎」
勇介は腰だめでM1カービンを発砲した。しかし照準が定まっていない射撃はあっさり躱され返す刀でレバーアクション拳銃を撃ち返すされる。
前転で銃弾を回避したブラックは銃剣で突撃しブラックアイは焦る事なくベルトからトンファーを外し銃剣を防いだ。
トンファーと銃剣の剣戟は二度三度と続いたがブラックアイは剣戟の間に空いた片手で再びベルトから銃を取り出す。今度の銃はあのレバーアクション拳銃ではなくワルサーP38、厳密には戦後に再生産されたP5という旧西ドイツ製のモデルであったがこれは後で吏玖から教わった事だ。
トンファーで銃剣を装着したM1カービンを押さえられワルサーをマスクで覆った顔面に突きつけられてしまう。ブラックはその引き金を引かれるより先にM1カービンを床に落とし空いた両手でワルサーの射線を逸らし地面に向けて押さえ付け回し蹴りでブラックアイを蹴り付けた。
蹴られた衝撃でワルサーを落としたブラックアイ。武器を落とし追い詰められた筈だが彼は声を抑えながら不気味に笑っていた。
「ははは……会う度に強くなっていくなお前は。…この国で俺達程物騒で強い奴等はいない。お前を倒せば、俺はその頂点になれる。そして頂点に立った俺が組織を動し俺達は人々に影で支配する…」
「大層な理想だな‼︎だが俺は倒されないし中等部にも好き勝手はさせない‼︎」
2人の戦闘の興奮が頂点に達したその時再び事態は急変した。
「ぶっ飛べやぁぁぁァーーッ‼︎」
怒鳴り声の主は先刻ブラックアイがいた出入り口に集結していたチンピラ達の中の1人だった。数はやはり8人。一目で盗難車と分かる錆び付いたバンで通りへの出入り口を塞いだ事で物理的にも視覚的にも外界からシャットダウンされてしまった。別働隊だったか。舌打ちしながらブラックはブラックアイにのしかかりながらゴミの集積箱に隠れた。泉と真もゴミ箱から集積箱に場所を移した。彼等はブラックが倒した8人と同様に粗末な構えでTT-33拳銃を乱射、その中には吏玖も使うソウドオフ加工のイサカM37とストックのみを切り詰めたレミントンM700を持った者もいる。分厚い鉄板と幾重にも押し詰められたゴミ袋が防護壁になっていて拳銃弾や散弾のペレット程度なら防げるがM700の小銃弾は防げないだろう。ジリ貧になっていくのは明白だった。
「…何のつもりだ。あの脳筋野郎の様に助けたつもりか?」
「…お前は維持を張って死ぬつもりか?ここで戦わないとどっちも死ぬぞ。覚悟を決めろ‼︎ブラックアイ!」
「…」
数秒の沈黙の後ブラックアイはレバーアクション拳銃に再装填を始めた。
「お前それ以外使えるやつないのかよ…」
「今から俺がバンのエンジン部分を撃ち抜く。そこからガソリンが漏れ出すのを待ってお前が拳銃で火を点けろ。爆発で仕留められなかった奴は俺とお前で始末する。…準備しろ」
遂にブラックとブラックアイの共闘が始まった。
散弾銃や拳銃の銃声の中で数回鈍い銃声が響く。ブラックアイの拳銃だ。集積箱からの反撃に驚いた彼等は一旦は銃撃を止めるがすぐに再開してしまう。彼等は興奮と銃声で自分達を運んだ車の異常に気付く事はなかった。
「今だ、ブラック」
燃料が漏れ出してから数秒経った後にブラックが車の直下に数回発砲する。9mm弾がコンクリートを抉った時に発した火花が着火しバンが爆発、その場に近かった3人は爆炎と衝撃を受けて2人は衝撃で吹き飛んだ。その機に乗じてブラックとブラックアイが集積箱から姿を現す。
残った3人に向けて走り出した2人は一気に距離を縮めてそれぞれに格闘戦を仕掛けた。
ブラックはナイフを出して拳銃を持った手を切りつけてから首元にナイフを滑らせ頸動脈は敢えて外しその後も太腿や腹部を流れる様に連続して切りつけた後ハイキックを顔面に食らわせ一切の反撃を許さずに無力化、ブラックアイはイサカM37を持った男の首に手首から出したワイヤーカッターを巻きつけ最後の1人に向けて投げナイフを放つ。
ナイフが刺さり苦痛で怯んだ男をブラックが大外刈りで投げ地面に伏した男の顎にダメ押しのパンチを掠めて気絶させる。
その間もブラックアイはワイヤーカッターで男の首を締め続ける。
「あ……あがっ…!」
男は白目を剥き泡を吹き始めている。無力化が完了しているのは明白だった。
「やめろ!殺すな!」
ブラックが止めようとブラックアイに近付いた瞬間ブラックアイは男を地面に投げてからいつの間にか拾っていたワルサーで男の胸を撃ち抜いた。
「生かしてどうするつもりだ?後後の面倒が増えるだけだろうに」
言いながら次々とブラックが無力化した男達を撃ち殺してからワルサーの再装填を始めた。
「お前…!」
「ここにいると駄目!あなた達も来て‼︎」
再び一触即発の状態になっていた2人の間にさっきまで隠れていた泉が割って入っていった。
「なんであんな簡単に殺せるんだよ‼︎お前なら殺さなくても」
「なら何故お前は俺の仲間を殺したんだ?お前なら殺さなくても済んだだろうに」
「ッ!それは…!」
警察の追跡から逃れる為に路地裏で見つけたドアを破って逃げ出したブラック達。依然ブラックとブラックアイの間は剣呑なままであった。
先程の別働隊との戦闘では全く喋らなかった泉は痺れを切らして再び2人の会話に割って入る。
「2人ともいい加減にしてっ!あなた達仲間なんじゃないの⁉︎」
「「一緒にするな」」
「…仲間じゃないのに息は合うのね…。まぁいいわ!あなた達に頼みがあるの。」
勇介は泉の言う「頼み」に嫌な予感がしていた。
「あなた達…私の子分になって!」
「「断る」」
嫌な予感は的中していた。
(こいつ…可愛い顔して無茶苦茶言ってくるなぁ…)
(この女、自分が言ってる事の意味を分かってるのか…?)
勇介とブラックアイは半ば苦笑めいた表情になる。
「う〜ん、言い方が悪かったのかしら?じゃあ、私の仲間になってよ!」
「話にならんな。第一仮に貴様の仲間としてゴロツキ共を一掃して、何のメリットがある?さっき手を組んだのはあくまで一時的な物に過ぎん。」
ブラックアイは呆れた口調で反論する。この数時間でブラックアイの人となりが分かってきた様な気がし始めてきたような感覚が勇介の胸中にあった。
「俺もこいつに賛成…まではいかないけど、そもそも君もあいつらと同じヤクザなんだろ?俺もこいつも君達の戦争に手を貸すつもりはないよ。」
「一緒にしないで‼︎あんな奴等と‼︎」
突然の泉の反応に一瞬怯んでしまう勇介。そこからまくし立てる様に泉は話し始めた。
「あいつらは本物のクズよ‼︎薬を学生にばら撒いて、それを暴こうとしたお父さんまで殺した‼︎警察の中にも連中の仲間がいてまるっきり役に立たない‼︎私達がやるしかないのよ‼︎」
「貴様達2人でか?フン、それでは飛んで火に入る虫だろうに。この男でさえもっと賢く動くぞ。」
「ちょっと聞き捨てならないけど最初の部分は全部こいつの言う通りだ。…警察も手が出せない様な相手になんで戦おうとするんだ?いっそこの街から逃げる事だって、」
「じゃあこの街から逃げられない人達はどうするの⁉︎この街の人皆があなた達程強い訳じゃない。中にはどうしようもない事情でこの街にいる人だっているの!そんな人達を、私は見捨てる訳にはいかないわ‼︎」
勇介は激情に駆られた泉の言葉の中に彼女の確かな覚悟を垣間見た。
そんな勇介と無言のブラックアイを真っ直ぐ見据え泉は言葉を続ける。
「私はあいつらに何度も狙われたわ!でもその度に目高組の皆が命を捨てて助けてくれた‼︎皆いい人達だった。私は、あの人達の犠牲を無駄にする事だけは絶対にしたくないの。
例え…例えあなた達が協力してくれなくても私は行くわ‼︎」
おそらく本当にこのままでは1人で敵陣の中に切り込みそしてその命を散らすのだろう。彼女の言葉がハッタリ等ではないことは分かり切っていた。
勇介の胸中で後もう少しで踏ん切りが付こうとしていた時泉の後ろにいた真と呼ばれる中年が重い口を開く。
「仮面の旦那方、わしからもお願いします。お嬢は誰よりも強い方なんでさぁ。きっとあんた達とも肩を並べ合える程に…わしだって決して足手まといにはなりません。どうかこの街を、お嬢の事を!助けてやって下さい…」
この場で真が負傷している事に気付いているのは勇介だけだった。それだけにこの男の言葉に人一倍重みを感じてしまっている。
そして遂に勇介が口を開いた。
「………分かった。手伝うよ。この街の事も、君の事も。絶対に救ってみせる。…ブラックアイ、お前はどうする?」
勇介はブラックアイの方に振り向いた。
「…いいだろう。貴様の言うクズ共は俺達にとっても目障りだったからな。奴等を殲滅するまでは、貴様ともブラックとも…今後も手を貸してやる。」
2人の言葉に泉は年相応の笑顔を見せた。
「ありがとう…。あいつらをやっつけて必ずこの街を救ってみせる!」
「ところでブラック。貴様、今回はもちろん貴様の相棒も呼ぶのだろうな?」
「相棒…?あぁ、り、じゃなくて黒影の事か!」
「成る程。奴は黒影というのか…。フフ。さっきも言ったが、クズ共を殲滅する迄だけだ。それが終わったら必ず貴様を…」
「決着はつけてやる。ただしこれが終わってからな。」
「フン…」
3人の会話を隅に真は1人無言になってしまった。先程の負傷のせいだ。
(今俺がいなくなったらお嬢が…。もう少し、もう少し保ってくれよ、俺の身体…。)
こうしてブラック、ブラックアイ、そしてこの場にはいない黒影の3人は初めての共闘を経験する事になる。この共闘が最初で最後なのか…それは当人達も分からない…
To be continued…