吏玖(白の仮面の男)
泉真理
舞
フードの男
第3話「可能性の塊part1」
大雨に打ちひしがれ仰向けに地面に伏している俺。その手に握られているはずの9mm拳銃は自分の眼前で装填不良を起こしたまま転がっていた。そして俺に例の友人が拳銃を向けるがそのトリガーガードからは指が外れておりどうやら発砲するつもりはないようだ。
「 。 」
「へ?」
友人は口は動かしているが何を言っているかまでは分からなかった。だがその次の瞬間にトリガーガードに指がかかり友人の拳銃が火を噴いた。そしてその瞬間に自分の視界が暗転した。
真理は家族と共に駅の改札口前で人を待っていた。一斉に改札口が開き人がなだれ込んで行きその人混みの中に探していた人を見つけた。
その人とは私の親戚の女の子の事でおとなしそうな女の子が駆け足で此方に寄って来た。
「いらっしゃい!舞ちゃん!」
真理が快活な声で挨拶するとその女の子、舞が気恥ずかしそうに挨拶した。どうやら舞の大人しい性分は相変わらずの様だ。
「じゃあ行こっか!」
真理が舞の手を引き駅の出口で待っていた家族(親戚)の元に2人は向かった。
その背後で2人が駅を出るまでその後ろ姿を見続ける男がいた。
「…」
目覚まし時計をセットしたのに起きた時間は本来目覚まし時計を使って起きるはずの時間より2時間経った午前11時だった。例の友人に撃たれる夢を観てたのを思い出す。
布団から出ると隣の真理の家に見慣れた車が停まっていた。思い出した。今日は真理の親戚の女の子が来るのだった。確か俺も起きたらすぐ真理の家に行かなきゃいけなかった気が…しない訳でもない。
「勇介!起きろよ!舞ちゃんもう来てるんだよ⁉︎」
寝室の窓から真理の自分を呼ぶ大声が聞こえる。
「分かったからちょっと待ってて!」
自分も大声で真理に返事する。勇介は急いで支度を始めた。
「じゃあ舞ちゃんここから近い女子校に進学するんだ!」
「うん。だから今日は見学に来たんだ。」
「舞ちゃん小学生なのに真理より賢いもんな」
「おい勇介」
叔母さん達はリビングで話しており自分は真理と舞ちゃんの3人で談話していた。
「最後に舞ちゃんこの町に来たのいつだっけ?」
「えーと私が保育園の時だったからー、たぶん7年前かな」
「7年前か!あの時は父さんもいたっけなぁ」
「勇介…私達その話しないように気をつけてたのに自分で地雷踏んじゃうんだ…」
「地雷じゃないし。てかその話はもう俺の中で折り合い付けてあるから大丈夫」
「ごめん勇介兄ちゃん…」
「いいってば!気にしないでよ舞ちゃん!」
「それ普通俺が言うべきじゃないのか?」
すっかり話し込んでいて時計を見たら既に2時半になっていた。
「じゃあ私行くね‼︎」
真理は今日部活の午後練があり学校の体育館ではなく町が管理する公共の体育館にいくらしい。
部活の準備を終え急ぎ足で家を出てった真理の後ろ姿を見送る舞ちゃんを見て思いついた。舞ちゃんに真理の練習を見せるのはどうだろうか。
「舞ちゃん。真理の練習してる所見たい?」
「いいの?」
「もちろん!てかバレなきゃ基本何しても問題ないし」
「えぇ…」
公共の体育館は学校に行くよりも近い距離にある。徒歩で向かっても問題無いはずだ。
「じゃあ行こうか」
「うん。」
体育館に行く途中勇介はクラスメイトと偶然会い延期されたテストについて話し合っていた。その間に舞はジュースを買いに自販機に寄る。自販機からジュースを取ろうとしたその時だった。
急に後ろからジュースを取ろうとした手を掴まれたのだ。
「え…」
舞の腕を掴んだフードを被った男は無言のまま舞を対向車線側に停めてあるバンの方向に連れていく。小学生の、しかも女子の華奢な力では当然逆らえる訳もなくそのままバンの中に引きずり込まれようとした時だった。
「舞ちゃん!させるかよ‼︎」
助走をつけた勇介の飛び蹴りがフードを被った男に炸裂しバンの中に男が吹っ飛んでいった。そのまま舞の手を引きながらバンのドアを閉め体育館の方向に走っていった。
その2人を車の中で見続けていた男は無表情、無言のまま、まるでハリウッド映画の未来から来た暗殺ロボットを連想させる動きで2人を追ってバンを走らせた。
「そんな事があったんだ…」
さっきまでの経緯を真理に話した。
「でもこの前みたいにやっつけちゃう辺りやっぱり勇介は凄いよ」
「まだ駄目だ。この前と同じならあいつも俺達を追ってくるかもしれない」
「…」
追撃の可能性を完全に捨てきれない今は安易に行動してはいけない。男に襲われたショックが大きいのか舞は黙り込んだまま俯いている。とりあえずは警察に通報したのだが完全に任せ切りにはしておけない。また仮面を付けて相手を倒す事も考えたが相手の行動を先回り出来なければ戦う事すら出来ない。どうすれば…。
勇介は話しかけてくる真理を完全に意識から外して1人悩んでいた。
フードを被った男は体育館から2人が出るのを待っていた。待つ事数時間。高校生が出入りしたり販売機の補充の為の業者が出たりしていたが男が狙っていた2人はいつまで経っても出てこなかった。そして男は体育館の裏口に存在に気付きバンを移動させた。
裏口前に着いた男はそこで2人と女子高生、数人の警官を見つけた。しばらくすると2人は警官とその場を後にし女子高生は裏口からそのまま此方側に向かって歩き出した。
夜7時半。
真理は2人を見送った後部活のバスに乗り込もうと駐車場に向かって歩き出していた。そのまま顧問に手招きされてバスに乗ろうと小走りになった時、肩を急に掴まれた。振り返ると後ろには勇介から聞いていた通りの風貌のフードを被った男がいた。
「きゃあああああ‼︎」
意識するより先に悲鳴が上がった。顧問やバスの中の部員達は事態の異変に気付いたらしくざわついている。だが誰も助けには来ず男は真理に顔を近づけ何かを言おうとしていた。
「あの2人の身元を…」
言い終えるより先に男の顔面が真理の視界から消えた。視界から消えた直後そこで始めて真理は男が殴り飛ばされていた事に気づいた。
「…勇介…?」
男を殴った人物は勇介と同じく防弾ベストの様な物を着込み顔にも仮面を付けていた。だが勇介と決定的に違っていたのはその仮面だった。その仮面は勇介の左右に塗り分けられた仮面とは違いSF映画に出てきそうな銀色での仮面でその中央の部位には赤いモノアイが妖しく光っていた。